岡山県貨物運送、ロジスティード、安田ロジファーマ、医薬品卸のサンキで構成する「中国地方医薬品共同物流推進協議会」の事業が、国土交通省の「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」に採択されました。本事業は、岡山県貨物運送が保有する通過型拠点「広島医薬TC」の共同利用とミルクラン集荷を組み合わせ、先行2社で達成した1日当たり3台のトラック削減実績を4社体制へ拡張する枠組みです。
国交省事業採択に見る中国地方の医薬品共同物流スキーム
国土交通省が推進する「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」は、トラックドライバーの時間外労働上限規制や改善基準告示の適用により長距離輸送の担い手確保が困難となる地域において、複数事業者による協調体制の構築を支援する公的枠組みです。
本協議会が対象とする中国地方の医薬品サプライチェーンでは、厳格な温度管理とトレーサビリティを担保する医薬品適正流通基準(GDP)への準拠が求められる一方、各社が個別に運行する中間輸送において低積載運行が発生しやすい構造的課題を抱えていました。今回の事業採択を受け、参加4社はインフラの相互利用と集荷工程の統合に着手します。
協議会参画企業と各社の役割
参画する4社は、総合物流企業、医薬品物流専門企業、地域卸売業者とそれぞれ異なる機能を有しています。個社単独での投資負担を抑えつつ、相互のリソースを補完し合う座組みが設計されています。
| 参画事業者名 | 事業区分・機能 | 本事業における主な役割 |
|---|---|---|
| 岡山県貨物運送 | 特積・一般貨物運送 | GDP準拠の通過型センター「広島医薬TC」の提供、地域輸配送の運行 |
| ロジスティード | 総合3PL・幹線輸送 | 幹線輸送ネットワークと医薬品荷主貨物の集約管理 |
| 安田ロジファーマ | 医薬品専門物流(安田倉庫グループ) | 医薬品保管・管理ノウハウに基づく適正流通オペレーションの運用 |
| サンキ | 医薬品総合卸 | 中国地方における日次6,000軒超の医療機関・薬局向け需要と中間物流の連携 |
参考記事: 薬機法(医薬品物流)とは?GDPガイドラインへの対応と実務者が押さえるべきポイント
広島医薬TCの共同利用とミルクラン方式による運行設計
本事業の運用フローは、ハブ拠点のシェアリングと中間物流の巡回集荷(ミルクラン)という2段階の効率化によって構成されています。
[各社工場・保管倉庫] (荷主・メーカー・各社拠点)
│
│ (ミルクラン方式による巡回集荷:1台のトラックで各拠点を回収)
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[岡山県貨物運送「広島医薬TC」] (通過型センター・GDP準拠での仕分け・積み替え)
│
│ (幹線混載便・方面別一括配送)
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[中国地方の納品先・医療機関・配送拠点]
従来は各物流企業や卸が自社手配の車両を用い、工場や倉庫から個別に配送先へ運ぶピストン輸送を行っていました。この運行方式ではロットの変動によってトラックの積載率が30〜40%程度まで低下するケースがあり、運行台数の無駄が生じていました。
新スキームでは、1台の車両が各社の工場や倉庫を計画的に巡回して貨物を集約するミルクラン方式を採用します。集荷した貨物は岡山県貨物運送の「広島医薬TC」へ集約され、同センター内で仕分け・積み替えを行い、各方面へ高積載で一括配送されます。先行段階において2社間で実施された実証では、運行ダイヤの統合と積載率改善により、すでに1日当たり3台のトラック削減という成果を出しています。4社体制への拡大により、さらなる車両削減と二酸化炭素排出量の抑制を図ります。
参考記事: ミルクランとは?巡回集荷の仕組みと導入メリット・失敗を防ぐポイントを徹底解説
医薬品サプライチェーンの主要プレイヤーに及ぶ実務的影響
特殊な品質基準と配送リードタイムの維持が義務付けられる医薬品流通において、インフラ共有と集配集約の取り組みは各業態の収益基盤や運用設計に直接影響します。
運送事業者における車両稼働率の適正化と拘束時間圧縮
医薬品輸送を請け負う運送事業者にとって、定温車両の空車運行や低積載での長距離走行は収益性を悪化させる要因でした。荷室内の厳格な温度管理を維持するための燃費負荷がかかる中で、パレット数枚程度の荷量に対して専従便を仕立てる慣行が続いていたためです。
ミルクランによる中間集荷とハブ拠点への集約が定着すれば、集荷先ごとの待機時間をタイムスロット管理で平準化できます。実車率と積載率が同時に引き上げられることで、1運行当たりの売上単価が安定し、ドライバーの拘束時間を短縮しながら輸送能力を維持できます。
参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説
倉庫事業者・3PLにおける設備投資の回収効率化
GDPガイドラインへの準拠には、庫内の連続温度マッピング、防塵・防虫設備の二重化、非常用自家発電装置の設置といった多額の設備投資(CAPEX)が伴います。地域の中堅・中小倉庫や3PLが単独で専用拠点を新設した場合、固定費の回収に必要な貨物量を安定的に確保し続けることは容易ではありません。
既存の「広島医薬TC」のようなハブ拠点を複数社でシェアリングする形態をとることで、3PL事業者は自社で巨額の施設投資を行わずにGDP適合スペースを顧客へ提案可能になります。一方、拠点を保有する事業者側も稼働率のブレを最小化でき、インフラの投資回収期間を大幅に短縮できます。
参考記事: 三和倉庫が横浜市に定温自動倉庫を新設|医薬品物流の品質を劇的に高める3つの戦略
医薬品卸・流通業者における納品ネットワークの維持
医薬品卸のサンキをはじめとする流通事業者は、医療機関や調剤薬局に対して欠品を許さない高頻度納品網を維持する義務を負っています。しかし、輸送コストの上昇と車両不足により、従来の自前配送網だけで中間調達からラストワンマイルまでを完結させる体制はコスト上限に達しつつあります。
中間物流を物流専門事業者との協調領域へと移行させ、ミルクランとTC経由の共同輸配送へ切り替えることで、卸業者は仕入れ段階の車両手配にかかる間接コストを抑制できます。これにより、限られた自社の車両と人員をラストワンマイルの配送品質向上と納品精度の確保へ集中させることが可能になります。
参考記事: 共同輸配送事業計画とは?認定要件や税制優遇のメリット・申請手順を解説
LogiShiftの視点(独自考察)
今回の中国地方医薬品共同物流推進協議会の取り組みは、高水準の品質管理が求められる商材において「自前主義の個別最適」から「地域インフラの共同利用型シェアリング」への移行が具体的な運用段階に入ったことを示しています。
医薬品は温度逸脱や混載時のコンタミネーションに対する許容度が極めて低く、従来は競合他社との荷物の混載や拠点共有に慎重な業界でした。しかし、先行2社ですでに「1日当たり3台のトラック削減」という数値根拠を確立した上で、国交省の補助金採択を足がかりに4社へと拡大したプロセスは、合理的な合意形成の手順として他地域にも応用可能です。
今後、地方部における幹線・中間輸送を維持するためには、同業他社や川上・川下の関係企業が温度帯や荷姿の標準化ルールを早期に固め、単一企業の損益を超えた「オープンプラットフォーム」へ合流できる体制を整えられるかが分水嶺となります。
まとめ
本事業から得られる実務上の指針は、自社が抱える低積載運行区間を特定し、競合関係にある事業者とも拠点を相互接続する運用へ切り替える点にあります。明日から着手すべき具体策は以下の通りです。
- 自社の中間物流における平均積載率と空車回送区間の洗い出し
運行実績データを抽出し、積載率が50%を下回る拠点間輸送やピストン運行便を特定する。
- 同一配送エリアを持つ他社との中間ハブ拠点共有のフィジビリティスタディ
自前での拠点整備に固執せず、既存のGDP準拠施設や他社TCの余力スペースを活用した共同利用案を試算する。
- ミルクラン集荷を前提とした受発注締め時間と納品枠の標準化
巡回集荷を実現するために、荷主・取引先と協議して出荷ロットの固定化とバース予約時間帯の共通化を進める。



