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Home > サプライチェーン> 公正取引委員会の改正物流特殊指定|2027年荷下ろし規制で食品卸に負担増
サプライチェーン 2026年11月4日

公正取引委員会の改正物流特殊指定|2027年荷下ろし規制で食品卸に負担増

公正取引委員会の改正物流特殊指定|2027年荷下ろし規制で食品卸に負担増

2027年4月に施行される公正取引委員会の改正物流特殊指定を巡り、食品卸業界が荷下ろし作業の責任区分に関する懸念を強めています。新告示では特定着荷主が契約外の荷下ろしを運送事業者に無償で行わせ、その費用を特定発荷主に負担させる行為が規制対象となるため、発荷主側が荷下ろしまで担ってきた食品流通の商慣行との間で解釈の齟齬が生じています。

2027年4月施行の改正物流特殊指定と食品流通における荷下ろし慣行の摩擦

公正取引委員会が所管する「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法」(物流特殊指定)の改正告示は、2026年6月17日に公布され、2027年4月1日に施行されます。今回の制度改正では、従来の荷主(発荷主)と物流事業者間の取引規制に加え、力関係で優位にある「特定着荷主」と「特定発荷主」の取引が独占禁止法に基づく優越的地位の濫用規制の対象へ新たに追加されました。

公取委が公表した運用基準では、特定着荷主が契約内容に含まれていない荷下ろしを運送事業者を通じて提供させ、その費用を特定発荷主に負担させる行為を「不当な経済上の利益の提供要請」と規定しています。適用対象の判定には、資本金基準(3億円超と3億円以下、1千万円超3億円以下と1千万円以下など)に加え、2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)と共通の「従業員300人基準」が導入されました。

項目 従来の物流特殊指定 2027年4月施行の改正物流特殊指定
規制対象の取引 発荷主と物流事業者の委託取引 発荷主と物流事業者、および特定着荷主と特定発荷主の取引
適用判定基準 資本金区分のみ 資本金区分、および従業員300人基準
着荷主への規制 なし 契約外荷役の無償要請、自社都合の荷待ち費用転嫁、報復措置の禁止
食品流通の主な論点 運送委託契約内の附帯作業範囲 納品先(卸拠点等)における荷下ろし責任の所在と費用負担者

この規制方針に対し、日本加工食品卸協会(日食協)の時岡肯平専務理事は、食品流通の商慣行と新告示の解釈に食い違いが生じている点を指摘しています。

食品流通では、メーカーから卸への納品時はメーカー(発荷主)が、卸から小売業への納品時は卸(発荷主)が荷下ろしまで担う慣行が続いてきました。2024年4月に適用された改善基準告示(トラックドライバーの時間外労働年960時間上限規制)を見据え、日食協と大手NBメーカー8社(味の素、キユーピーなど)で構成される「食品物流未来推進会議(SBM会議)」は、2023年10月に「荷待ち・荷役作業削減に向けた加工食品業界の取組みガイドライン」を取りまとめています。この指針では、「発荷主の業務範囲は荷を下ろして、着荷主が検品できる状態に整列するまで」と明確に合意していました。

しかし、新告示の公表を受け、時岡専務理事は「メーカーが『今後、荷下ろしは卸の役割』と受け止めかねない事態が生じている」と懸念を示しています。卸の物流拠点でメーカー手配のドライバーが荷下ろしを行わなくなった場合、卸側には自社スタッフや構内作業員を新たに手配する人件費が発生します。また、荷物がトラックから下ろされて整列されない限り、卸側は外装検品や受領書の発行手続きに着手できず、受入拠点の業務停止につながる懸念が持ち上がっています。

日食協側は、ドライバーの本来業務である配送と荷役作業を契約上分離し、適正な対価を支払うという規制趣旨自体には賛同しています。その上で、荷下ろしを着荷主の義務とするのではなく、発荷主であるメーカーが運送事業者と荷役作業の別建て契約を結び、対価を支払う商流スキームによって解決を図るべきだと主張しています。日食協は今後、公取委やSBM会議との間で運用指針の擦り合わせを本格化させる方針です。

参考記事: 公正取引委員会、2027年4月施行の物流特殊指定で着荷主の無償荷役を禁止

サプライチェーン各層に及ぶ実務運用の再編とコスト負担の行方

改正物流特殊指定の施行は、食品流通に関わる3つの主要プレイヤーに業務プロセスと契約形態の再構築を強いることになります。

卸・問屋・流通業者

卸売業者は、メーカーから商品を受け取る「着荷主」としての法的リスクと運用コストの二重課題に直面します。納品に来たドライバーに対して慣習通りに荷下ろしや仕分けを指示した場合、契約内容の明文化がなされていないと「不当な経済上の利益の提供要請」として公取委から指導や勧告を受けるリスクが生じます。

卸側が自前で荷下ろし設備や構内作業員を配置する場合、物流センターごとの人件費やマテハン導入費用の増加は避けられません。ドライバーが荷下ろしを行わない場合の検品ラインの滞留や、受領印押印までのタイムラグといった検品オペレーションの混乱を避けるため、バース予約システムの導入や納品バースへの人員最適配置といった受入体制の再設計が進められます。

製造業者・メーカー

発荷主となる食品メーカーは、運送事業者との運送委託契約において「配送」と「荷役(荷下ろし・整列等)」を別個の業務として契約書面へ明記し、適正な荷役料を上乗せして支払う体制の整備が求められます。2026年1月に施行された改正取適法(特定運送委託の新設)により、運賃や荷役料の据え置きは買いたたきとして規制対象となるため、運送会社からの価格交渉申し入れに対する適切な協議対応が必須です。

一方で、卸(着荷主)側に対して荷下ろし作業の負担を求める場合には、商流における製品卸価格の引き下げや物流諸掛の条件改定など、取引条件全体の見直し交渉が発生します。日食協は今後、公取委をはじめ、味の素やキユーピーなど大手NBメーカー8社で構成される食品物流未来推進会議(SBM)と改正告示の運用方針や受け止め方について十分な議論を重ね、問題解決への道筋を探りたい考えです。

運送事業者

運送事業者にとっては、長年「運賃に含まれる無償のサービス」として扱われてきた荷下ろしや検品待ちが、法的な裏付けを持って対価を請求できる業務へと切り替わります。2024年4月の改善基準告示適用以降、ドライバーの拘束時間削減が経営上の最優先課題となっている運送会社にとって、契約外荷役の排除は実稼働時間の短縮に直結します。

実務上は、荷主との基本契約書に「附帯作業料」の項目を明確に規定し、発地・着地での作業実績をデジタルタコグラフや作業日報によって記録・可視化して請求書へ反映させる運用が不可欠となります。荷役契約を結ばない荷主に対しては作業の実施を断る運用基準を徹底することで、ドライバーの労務管理適正化と収益性の向上が図られます。

参考記事: 公正取引委員会、2027年4月施行の物流特殊指定で着荷主の荷待ち規制へ

LogiShiftの視点:荷役別建て契約と納品プロセスの標準化が不可避に

長年にわたり商慣行として曖昧に処理されてきた荷下ろし作業は、独占禁止法の改正告示という法的強制力を伴う形で、契約と対価の明文化が義務付けられる局面を迎えました。運送の対価である「運賃」と、荷積み・荷下ろし・仕分けの対価である「荷役料」を分離する構造転換は、もはや避けて通れません。

着荷主である食品卸が危惧するオペレーションの崩壊を防ぐためには、日食協が提唱するように、発荷主(メーカー)が運送事業者と明確な荷役委託契約を結び、ドライバーが適正な対価を得た上で所定の位置まで荷下ろし・整列を行う運用が最も現実的な選択肢となります。仮に荷下ろし責任を着荷主側へ移管させる場合、卸拠点の設備改修や要員確保に必要なコストを、商流の仕入れ価格や取引条件へ反映させる協議プロセスが不可欠となります。

2027年4月1日の改正物流特殊指定の施行に向け、日本加工食品卸協会と食品物流未来推進会議(SBM会議)が公取委を交えて進める解釈の統一は、食品サプライチェーン全体の物流契約を再編する試金石となります。メーカーと卸の双方が自社の責任境界と費用負担を契約書面で再定義し、運送事業者に対して荷役料を別建てで支払う運用体制を確立できるかが、2027年以降の拠点停止リスクを回避する分岐点となります。

参考記事: 日本3PL協会「食品物流&3PL総合展 2026」9月開催|商流・物流再設計と法改正への対応策


出典: Yahoo!ニュース
出典: 日本食糧新聞
出典: Hacobu

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編集責任者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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