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Home > 物流用語辞典 > 輸配送> 内航海運

内航海運とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:日本国内の港湾同士を結んで荷物を運ぶ海上貨物輸送のことです。鉄鋼や石油などの産業基礎資材から日用品まで、国内貨物輸送の約4割を担う重要な物流インフラです。
  • 実務への関わり:長距離の幹線輸送をトラックから内航船へ切り替えるモーダルシフトにより、トラックドライバー不足の解消やCO2排出量の大幅な削減、輸送コストの最適化が可能になります。
  • トレンド/将来予測:船員の高齢化や人手不足に対応するため、自動運航船の実証実験やEV船の開発が進んでいます。また、企業の脱炭素化ニーズの高まりに伴い、環境負荷の低い幹線輸送手段としての活用がさらに拡大しています。

内航海運は、国内貨物輸送の総輸送活動量(トンキロベース)において約4割を占め、鉄鋼・石油・セメントといった産業基礎資材輸送では約8割のシェアを担う基幹物流インフラです。長距離大量輸送による単位あたりのCO2排出量抑制や、トラックドライバー不足に対応する幹線輸送の受け皿として、物流構造の再構築を図る荷主企業からの注目度が高まっています。本稿では、内航海運の制度的基礎から主要船種の特徴、モーダルシフトの実務手順、業界が直面する構造的課題と最新の技術動向までを網羅的に解説します。

目次
  • 内航海運とは?外航海運との違い・法規制・カボタージュ制度の基本
  • 外航海運との違いとカボタージュ制度(自国船主義)の仕組み
  • 内航海運業法に基づく2つの事業形態(オペレーターとオーナーの役割)
  • 国内物流における内航海運の役割とシェア|運ばれる貨物と主要な船種一覧
  • 産業基礎資材の約8割を輸送する国内貨物シェアのリアル
  • 用途に応じた内航船の種類(貨物船・油槽船・RORO船・専用船)
  • モーダルシフト推進における内航海運の強み|輸送効率と環境負荷低減効果
  • トラック・鉄道との比較で見る大量輸送力とCO2削減効果
  • 長距離幹線輸送の代替とBCP対策
  • 内航海運が直面する構造的課題|船員不足・高齢化と老朽船のリプレイス問題
  • 船員の高齢化(50歳以上が過半数)と労働環境改善・育成の急務
  • 建造コスト高騰と船齢20年超の老朽船リプレイス問題
  • 荷主企業が内航海運を活用するための導入ステップとDX・次世代船の動向
  • トラックから内航船へシフトする際の検討手順と注意点
  • 自動運航船・EV船の実用化と海運DXによる積載効率向上

内航海運とは?外航海運との違い・法規制・カボタージュ制度の基本

内航海運とは、日本国内の港湾相互間において貨物を輸送する海上運送事業を指します。鉄鋼、石油製品、セメント、化学薬品といった基礎資材の原料・製品輸送をはじめ、トラックやトレーラーを積載して運ぶRORO船やフェリーによる消費財の定期輸送まで、国内幹線物流の中核を形成しています。

外航海運との違いとカボタージュ制度(自国船主義)の仕組み

海上運送事業は航行区域と取引形態により「内航海運」と「外航海運」に大別されます。両者は準拠法令や取引環境において明確に区別されています。

比較項目 内航海運 外航海運
運航エリア 日本国内の港湾相互間 日本と諸外国、または外国相互間
主要な準拠法令 内航海運業法、船舶法、海上運送法 海上運送法、国際条約(SOLAS条約・MARPOL条約等)
使用通貨 日本円(JPY) 米ドル(USD)中心
使用船舶の船籍 原則として日本籍船に限定(カボタージュ) 便宜置籍船(パナマ・リベリア等)を含む世界各国の船籍
主な輸送品目 石油製品、鉄鋼、セメント、自動車、日用品 原油、鉄鉱石、石炭、穀物、国際コンテナ貨物

内航海運を規律する重要な法規が、船舶法第3条に規定される「カボタージュ制度(沿岸貿易権・自国船主義)」です。これは自国内の港湾間輸送を自国籍船に限定し、外国籍船の参入を原則禁止する国際的な慣例法制です。

日本でカボタージュ制度が厳格に維持されている背景には、主に3つの理由があります。

  • 安全保障とサプライチェーンの維持: 有事や災害時において、自国の管理下にある船舶と船員により国内物資の輸送ラインを確保するため。
  • 沿岸・港湾の治安と環境保全: 日本の海域特性や航路事情に精通した自国船員が運航することで、座礁・衝突事故や油流出による環境汚染を防止するため。
  • 国内海運産業の基盤維持: 税制や人件費基準が異なる外国籍船との過度な価格競争を防ぎ、国内の造船・海運インフラを安定的に維持するため。

内航海運業法に基づく2つの事業形態(オペレーターとオーナーの役割)

内航海運の実務構造は、内航海運業法に基づき「内航運送業」と「内航船舶貸渡業」に分業化されています。

荷主や利用運送事業者と運送契約を結び、集荷や配船計画、運航管理全般を担う事業者を「オペレーター(内航運送業者)」と呼びます。一方、船舶を所有し、船員の配乗管理や船体の保守・修繕を行いながら、定期傭船契約等を通じてオペレーターに船舶を貸し出す事業者を「オーナー(内航船舶貸渡業者・船主)」と呼びます。

内航海運事業者の多くは、愛媛県今治市や瀬戸内沿岸地域に集積する中小のオーナー企業です。オペレーターが荷主ニーズに合わせた営業活動と輸送網の最適化に特化し、オーナーが船舶管理と船員育成を担う分業体制によって、日本の内航物流は高い運航密度と輸送効率を実現してきました。

国内物流における内航海運の役割とシェア|運ばれる貨物と主要な船種一覧

内航海運は、国内の長距離輸送において他の輸送機関を補完・代替する基幹インフラとして定着しています。特に臨海部に立地する製鉄所、石油精製所、化学コンビナート、セメント工場などを結ぶ拠点間輸送において極めて高い分担率を有します。

産業基礎資材の約8割を輸送する国内貨物シェアのリアル

国土交通省の統計データによると、国内貨物輸送における輸送機関別の分担率は、評価基準によって実態が大きく異なります。重量(トン数ベース)では内航海運のシェアは約8%にとどまり、トラック輸送が9割以上を占めます。しかし、輸送距離を掛け合わせた活動量(トンキロベース)で見ると、内航海運は全体の約4割(40〜44%前後)を担っています。

国内貨物の平均輸送距離は、自動車が約50〜60kmであるのに対し、内航海運は約500kmと長距離帯に集中しています。とりわけ重量物や液体危険物などの基礎資材輸送において圧倒的なシェアを持っています。

主要品目分類 主な輸送貨物 国内輸送シェア(目安) 輸送の特徴
石油製品・原油 ガソリン、軽油、重油、灯油、ナフサ 約80〜90% 製油所から各地の油槽所・中継基地への一括海上輸送
セメント・石灰石 ばら積みセメント、石灰石、骨材 約80〜90% 専用設備による密閉荷役で粉塵防止と高速荷役を両立
鉄鋼・金属資材 鋼板、コイル、形鋼、鋼管、半製品 約60〜80% 重量物・長尺物を一度に数千トン単位で大量輸送
化学薬品・液体原料 エチレン、ベンゼン、苛性ソーダ 約70〜80% 危険物・高圧ガスを厳格な温度・圧力管理下で輸送

用途に応じた内航船の種類(貨物船・油槽船・RORO船・専用船)

内航船は、運航形態や貨物の荷姿(固体、粉体、液体、高圧ガス、完成車両、ユニットロード)に合わせて高度に専用化されています。

船種 主な積載対象貨物 荷役方式・構造上の特徴 実務上の主な利点
一般貨物船(在来船) 鋼材、機械類、フレコンバッグ、原木 クレーンやフォークリフトによる艙内荷役 多様な荷姿や長尺・重量物に柔軟に対応可能
油槽船(タンカー) 重油、ガソリン、軽油、ジェット燃料 陸上配管と船側ポンプを接続したパイプライン荷役 大量の液体燃料を連続的かつ安全に移送可能
RORO船(貨物専用船) シャーシ、トラック、日用品、食品、紙 ランプウェイを介したトレーラー等の自走荷役 港湾荷役が迅速で、定期運航によるリードタイムが安定
セメント専用船 ばら状セメント、フライアッシュ 空気圧送やスクリュー式アンローダー 完全密閉構造により天候に左右されず無発塵で荷役可能
ケミカルタンカー 液体化学品、溶剤、苛性ソーダ、酸類 ステンレス製タンク、耐食コーティング、独立配管 多品種の化学品を品質混触なく厳格な管理下で輸送
内航コンテナ船 海上コンテナ(20ft/40ft)、内航専用コンテナ ガントリークレーンによる垂直荷役(Lo-Lo) 国際コンテナの内陸二次輸送や定時幹線輸送に適合

日用品や消費財の幹線輸送を転換する場合、トレーラーヘッドを切り離してシャーシのみを積載するRORO船の活用が適しています。一方、定期的に大量調達する原材料については、一般貨物船や専用タンカーの不定期チャーター輸送によって輸送単価を最小化する運用が一般的です。

モーダルシフト推進における内航海運の強み|輸送効率と環境負荷低減効果

トラックドライバーの時間外労働上限規制が適用されたことを受け、長距離幹線輸送のキャパシティ維持と環境負荷低減を両立する手段として、内航海運へのモーダルシフトが加速しています。

トラック・鉄道との比較で見る大量輸送力とCO2削減効果

内航海運の特性は、1運行あたりの圧倒的な積載能力と、単位輸送量あたりの二酸化炭素排出量の低さにあります。国土交通省のデータに基づく輸送モード別の比較は以下の通りです。

輸送モード 1運行あたりの積載能力(目安) CO2排出原単位(g-CO2/トンキロ) 主な適正輸送距離・領域
内航貨物船・RORO船 約1,000〜5,000トン(トレーラー100〜150台分) 約39〜43 500km以上の長距離大量輸送
貨物鉄道 約500〜600トン(コンテナ列車1編成) 約20〜22 中長距離の定時大量輸送
営業用大型トラック 約10トン(1台あたり) 約216 中短距離の機動的輸送・ラストワンマイル

内航海運のCO2排出原単位は大型トラックの約5分の1です。関東—九州間(約1,000km)で月間1,000トンの貨物を輸送する場合、10トントラックでは延べ100台の手配が必要ですが、中型内航船であれば1隻、大型RORO船であれば船内の一区画で完了します。輸送モードの転換は、荷主企業のサプライチェーン排出量(Scope 3)削減に直結します。

長距離幹線輸送の代替とBCP対策

長距離トラック輸送のドライバー拘束時間管理が厳格化する中、RORO船を活用した無人航送(シャーシのみを船積し、ヘッド車両は港湾で切り離す運用)を導入することで、陸上ドライバーの業務を発着港と物流拠点間の短距離集配(ドレージ)に限定できます。これにより、ドライバーの日帰り勤務体制が確立され、拘束時間を法定基準内に収めることが可能になります。

さらに、自然災害時におけるBCP(事業継続計画)の観点でも有効です。豪雨や地震による高速道路の寸断や鉄道の運転見合わせが発生した場合でも、海路はインフラ損壊の影響を受けません。主要港湾に整備された耐震強化岸壁を活用することで、緊急時の物資供給ラインを維持できます。

内航海運が直面する構造的課題|船員不足・高齢化と老朽船のリプレイス問題

内航海運がモーダルシフトの受け皿として期待される一方、現場の運航供給力は「就航船員の減少・高齢化」と「船舶の老朽化」という2つの構造要因によって制約を受けています。

船員の高齢化(50歳以上が過半数)と労働環境改善・育成の急務

内航海運の就航船員数は約2万1,000人で推移していますが、50歳以上の船員が全体の約50%を占めています。外国人船員の混乗が一般的な外航海運と異なり、カボタージュ制度下の内航海運は原則として国内船員で運航されているため、ベテラン層の大量退職に伴う輸送枠の収縮が懸念されています。

これに対し、2022年4月施行の改正船員法により、労務管理責任者の選任や船員の労働時間管理が義務付けられました。また、内航定期傭船契約書において交代要員(予備船員)の員数を明記する運用が導入されるなど、過密な運航ダイヤを見直す制度改革が進んでいます。

労働時間管理の厳格化に伴い、荒天時の遅延を連続当直で挽回するような無理な運航は制限されています。荷主企業においては、港湾荷役の待機時間削減や、余裕を持ったリードタイム設定への協力が不可欠です。

建造コスト高騰と船齢20年超の老朽船リプレイス問題

もうひとつの課題は船舶の経年化です。内航船の法定耐用年数は14年程度ですが、実際には船齢20年を超える船舶が多数就航しています。老朽船の運航は、燃費の悪化や修繕費の増大を招くだけでなく、機器トラブルによる突発的な運休リスクを高めます。

しかし、近年の鋼材価格や舶用機器コストの上昇により、新造船の建造費用は大幅に高騰しています。加えて、1998年以来の内航海運暫定措置事業が2021年8月に終了し、完全自由建造体制へ移行したことで、資金調達力に劣る中小オーナーの代替建造は停滞傾向にあります。

船主単独での投資回収が困難な中、船舶の計画的な更新を促すためには、荷主企業による長期輸送契約の締結や、建造原価に見合った適正運賃の設定が求められます。

荷主企業が内航海運を活用するための導入ステップとDX・次世代船の動向

トラック輸送から内航海運へのシフトを具現化するには、運賃比較にとどまらず、発注ロット、リードタイム、港湾アクセスを含めた運用全体の最適化が必要です。

トラックから内航船へシフトする際の検討手順と注意点

荷主企業が導入を検討する際は、以下の4段階で進めます。

検討ステップ 主な実施内容 実務上の判断基準・留意事項
1. 貨物特性と航路の選定 出荷ロット・頻度・リードタイム許容度の算出 500km以上の長距離区間で、数日のリードタイム延伸が許容できる貨物を抽出
2. 船種・荷姿の選定 RORO船、コンテナ船、一般貨物船の比較 荷崩れリスク、フォークリフト荷役やトレーラー積載など荷姿に合致した船種を指定
3. 港湾アクセス・二次輸送設計 発着港でのドレージ・横持ち輸送の手配 拠点〜港間のトラック手配枠とバース荷役の受入可能時間を確認
4. 運送契約と運用設計 内航運送業者との契約締結、BCP策定 運送約款の確認と、荒天・抜港時における代替輸送ルートの事前取り決め

実務上の留意点として、リードタイム延伸に伴う安全在庫の見直しが挙げられます。例えば、関東—九州間をトラック翌日着からRORO船輸送へ切り替える場合、輸送日数は中2〜3日となります。納品先拠点での欠品を防ぐため、受発注サイクルの前倒しや在庫バッファの再計算を並行して実施します。

また、港湾におけるドレージ能力の確保も重要です。本船スペースを確保しても、発着港でシャーシを牽引するトラクターが不足すれば貨物は滞留します。船舶の入出港スケジュールと連動した陸上集配ダイヤの構築が必要です。

自動運航船・EV船の実用化と海運DXによる積載効率向上

内航海運の供給力向上と環境対応に向け、先端技術の実装が本格化しています。

操船負担の軽減と安全性向上に向けては、無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」をはじめとする自動運航技術の実証が進んでいます。離着岸の自動化やAIによる避航操船支援システムの搭載により、少人数での安全運航体制の確立が進められています。

動力源の脱炭素化においては、大容量リチウムイオン電池を搭載した完全電動推進(EV)タンカーが就航したほか、水素燃料電池やバイオ燃料、アンモニア燃料に対応した次世代船の開発計画が進展しています。

さらに、荷主企業の出荷データと内航船の空きスペースをオンラインで照合する求荷求車プラットフォームや、AIS(自動船舶識別装置)データを活用したリアルタイム運航管理システムの普及により、復航の空船率削減とマッチング精度の向上が図られています。データ連携による積載率向上は、輸送コスト抑制と安定的な輸送枠確保に寄与しています。

よくある質問(FAQ)

Q. 内航海運とは何ですか?外航海運との違いは何ですか?

A. 内航海運とは、国内の港の間で貨物を輸送する海上物流のことです。国境を越えて輸送する外航海運と異なり、自国船による輸送に限定される「カボタージュ制度」が適用されます。国内貨物輸送量(トンキロベース)の約4割、鉄鋼や石油などの産業基礎資材輸送では約8割を占める基幹物流インフラです。

Q. トラック輸送から内航海運へモーダルシフトするメリットは何ですか?

A. 長距離大量輸送による輸送単位あたりのCO2排出量削減と、深刻化するトラックドライバー不足の解消が主なメリットです。一度に大量の貨物を運べるため輸送効率が高く、陸上交通の寸断リスクに備えるBCP(事業継続計画)対策としても有効な手段となります。

Q. 内航海運業界が抱えている主な課題は何ですか?

A. 船員の過半数が50歳以上という「高齢化と担い手不足」、そして建造コスト高騰に伴う「船齢20年超の老朽船のリプレイス問題」が大きな課題です。これらを解決するため、労働環境の改善や若手育成とともに、自動運航船・EV船の実用化やDXによる効率化が進められています。

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