- キーワードの概要:通い箱(リターナブルボックス)とは、工場や倉庫、取引先との間で製品や部品を輸送する際に、何度も往復させて繰り返し使用する輸送容器のことです。使い捨ての梱包資材から切り替えることで、ゴミの排出を実質ゼロに抑え、中長期的な資材コストを削減する役割を持ちます。
- 実務への関わり:実務においては、プラスチックやプラダンなどの素材選定が重要となり、耐久性とコストのバランスを考慮して導入します。また、空き箱の回収、検品、洗浄といった運用プロセスの構築や、紛失を防ぐための管理体制づくりが現場の主要な業務となります。
- トレンド/将来予測:環境負荷の軽減や輸送力不足問題への対応が急務となる中、通い箱の重要性はさらに高まっています。近年では、紛失や所在不明を防ぐためにRFIDやQRコードを活用したデジタル管理が進んでいるほか、管理・洗浄を外部委託するアウトソーシングの活用も注目されています。
1回限りの使用で廃棄される梱包資材を、10回、100回と繰り返し使用可能な資材に切り替える。これにより資材調達コストを数十%削減し、同時に廃棄物排出量を実質的にゼロに抑える手法が「通い箱(リターナブルボックス)」の導入です。通い箱とは、自社工場と物流倉庫の間、あるいは特定の取引先との間で、製品や部品を輸送する際に、中長期的に何度も往復させて使用することを前提に設計された輸送容器を指します。
通い箱を導入する最大の理由は、包装資材の廃棄量を削減できる環境面でのメリットと、資材購入費用を削減できる経済的なメリットにあります。ただし、繰り返し利用するためには、配送先から空箱を回収し、検品や洗浄を行って再び自社に戻すという運用の仕組みを構築しなければなりません。自社の物流ルートが同一拠点間の往復便(シャトル便)であるか、あるいは回収コストが発送コストを上回らないかを見極めることが、導入を決定する判断基準となります。
- 通い箱(リターナブルボックス)とは?基本定義と代表的な3大素材・サイズ比較
- 主要3素材(プラスチック・プラダン・強化ダンボール)の特徴と適性サイズ
- ワンウェイ(使い捨て)梱包材から移行する判断基準
- 通い箱導入のメリットと中長期的なコストシミュレーションの考え方
- 初期投資と回収サイクルから算出する「損益分岐点」のシミュレーション
- CO2排出量削減と積載効率向上による「輸送力不足問題」への対応効果
- 現場で発生する「紛失・管理・洗浄」リスクの現実と解決策
- RFIDやQRコードを活用した「通い箱の所在・紛失」デジタル管理術
- 自社回収か外部委託か?洗浄・保管オペレーションの標準化設計
- 精密機器から部品輸送まで!自社に最適な通い箱を絞り込むための選定基準
- 輸送対象(精密機器・部品・食品等)に応じた緩衝材設計とオーダーメイドの要否
- 倉庫内の省スペース化を左右する「折りたたみ機能」と「段積み強度」の評価軸
- 通い箱の導入決定から実運用開始までのステップ別アクションチェックリスト
- 関係先(納品先・運送会社)との回収オペレーション合意の3大チェックポイント
- 試作・テスト輸送から本格運用(リプレイス)開始までのマイルストーン
通い箱(リターナブルボックス)とは?基本定義と代表的な3大素材・サイズ比較
主要3素材(プラスチック・プラダン・強化ダンボール)の特徴と適性サイズ
通い箱を選ぶ際、最も重要となるのが素材の選定です。用途や製品の重量、輸送頻度に応じて最適な素材は異なります。現在、物流現場で広く採用されている代表的な3つの素材について、それぞれの実務的な特徴を比較します。
| 素材名 | 耐久性・耐用年数 | 標準的なサイズ展開 | 導入・運用コスト |
|---|---|---|---|
| プラスチック成形コンテナ (射出成型プラスチック) |
極めて高い。破損しにくく、屋外保管や洗浄にも耐える。耐用年数は5〜10年程度。 | JIS規格に準拠したサイズが主流。1100×1100mmパレットに効率よく積載できる外寸(例:530×366×325mmなど)が多く展開されている。 | 初期費用(購入単価)は高め。ただし、5年以上繰り返し使用できるため、長期的なランニングコストは3素材の中で最も安価に抑えられます。 |
| プラダン(プラスチック段ボール) (ポリプロピレン製) |
高い。軽量かつ耐水性があり、1〜3年程度の使用(数百回の往復)に耐える。 | 自由設計が可能。既製品サイズだけでなく、内容物の形状に合わせて1mm単位で「通い箱 サイズ」をカスタマイズできる。 | 初期費用は中程度(金型不要で小ロットから製作可能)。製品のモデルチェンジに合わせてサイズを変更しやすく、初期投資の回収バランスが良い。 |
| 強化ダンボール (高強度原紙・重包装用) |
低い。通常のダンボールより強固だが、湿気や摩耗に弱く、実質的な耐用回数は3〜5往復程度。 | 宅配便サイズ(60〜160サイズ)から、大型のパレット一体型サイズまで幅広く対応可能。 | 初期費用は極めて低い(1個あたり数百円から購入可能)。ただし、短期間で寿命を迎えるため、定常的な「通い箱 運用」では長期的コストが高くなる。 |
ワンウェイ(使い捨て)梱包材から移行する判断基準
使い捨てのワンウェイ梱包資材から通い箱へと切り替えるべきか否かは、発生するコストと手間のバランスで判断します。具体的には、以下の3つの実務的条件を基準として、移行の適否を評価します。
1. 配送ルートが固定されており、回収便が確保できるか
通い箱の導入が成立する大前提は、空箱を効率的に回収できるルートが存在することです。例えば、同一県内にある自社工場と外注加工先の間を毎日3往復しているピストン便のようなケースでは、納品時に前回の空箱を回収できるため、追加の回収コストをゼロに抑えられます。一方で、不特定多数の配送先へ出荷するEC物流のようなケースでは、空箱の返送に新規の宅配便運賃が発生するため、回収コストがメリットを上回り、経済的合理性を欠くことになります。
2. 1ルートあたりの往復回数が投資回収ラインを超えているか
通い箱の購入費用はワンウェイ資材よりも高額になります。例えば、1個1,500円のプラダン製通い箱を導入する場合、1枚150円のワンウェイダンボールと比較すると、少なくとも10往復以上使用しなければ資材費の元が取れません。月間の稼働回数が少ないルートに導入すると、投資回収までに数年を要し、その間に製品の仕様変更や規格変更によって通い箱そのものが使えなくなるリスクが高まります。最低でも月間20往復、年間240往復以上の頻度があるルートから優先的に導入するのが実務的な判断基準です。
3. 管理・保管スペースおよび作業工数を許容できるか
通い箱は折りたたみ式であっても、回収後の保管スペースを必要とします。また、異物混入を防ぐための検品作業や、衛生面を維持するための洗浄作業といった、ワンウェイ資材では不要だった運用工数が発生します。これらの作業に必要な人員や、洗浄設備の導入費用を加味した上で、トータルのコストシミュレーションを行うことが不可欠です。
通い箱導入のメリットと中長期的なコストシミュレーションの考え方
梱包資材を使い捨てのダンボールから、繰り返し使用できる通い箱へ移行するにあたり、社内稟議の獲得や投資対効果(ROI)の検証は避けて通れません。ここでは、資材調達担当者が最も重視すべき「コスト削減」と「環境負荷低減」の2軸から、具体的な数値を用いたシミュレーションとメリットを解説します。
初期投資と回収サイクルから算出する「損益分岐点」のシミュレーション
通い箱導入時に発生する初期投資(イニシャルコスト)は、ワンウェイのダンボール利用と比較して一時的に高くなります。そのため、メリットを最大化するには「何回の往復(ローテーション)で初期投資を回収できるか」という損益分岐点を正確に算出することが欠かせません。
例として、拠点間で月間1,500個の資材を輸送する状況を想定し、使い捨てダンボールと、折りたたみ式のプラダン製通い箱を導入した場合のコスト比較を行います。通い箱の耐用回数は、丁寧な運用を前提として30回と設定します。
| 比較項目 | ダンボール(使い捨て) | プラダン製通い箱(折りたたみ式) |
|---|---|---|
| 初期導入コスト(1個あたり) | 0円 | 1,500円 |
| 1回あたりの資材・廃棄費 | 160円(本体150円+廃棄費10円) | 0円 |
| 1回あたりの輸送・管理費 | 0円 | 50円(回収・管理按分) |
| 1往復あたりの実質費用 | 160円 | 50円 |
この条件において、1往復あたりのコスト差額は「160円 - 50円 = 110円」となります。初期導入コストである1,500円をこの差額で割ると、以下の計算式により損益分岐点が導き出されます。
1,500円(初期投資) ÷ 110円(1回あたりの削減額) = 13.6回
つまり、約14回往復させた段階で初期投資を回収でき、15回目以降の輸送では1往復あたり110円のコスト削減効果がそのまま利益として蓄積されます。耐用回数の30回まで使い切った場合、通い箱1個あたり「110円 × 16回 = 1,760円」の経費削減につながります。
ここでポイントとなるのが、適切なサイズと素材の選定です。さらに強度の高いプラスチック成形品を選定した場合、初期投資は1個あたり3,000円程度に上昇しますが、耐用回数は100回以上に向上します。回収・洗浄の手間や保管スペースといった自社の運用フローを考慮し、最も早く損益分岐点に到達できる素材とサイズを設計することが重要です。
CO2排出量削減と積載効率向上による「輸送力不足問題」への対応効果
通い箱の導入は、調達コストの削減だけでなく、持続可能な物流体制の構築にも直結します。特に、廃棄物の削減によるCO2排出量の抑制に加え、トラックドライバーの労働規制強化に伴う輸送力不足への対策としても有効に機能します。
物流効率化において大きな役割を果たすのが、返送時の「折りたたみ機能」です。折りたたみ式のプラダン製やプラスチック製の通い箱は、使用後の組み立てられた状態と比較して、折りたたみ時の容積を約4分の1から5分の1にまで圧縮できます。この容積削減が、帰りの便(返送便)の積載効率を大幅に向上させます。
- 折りたたみ機能がない場合: 納品時と同等の容積を占有するため、返送時もトラック1台分(100%)の運賃スペースを消費し、運送コストが二重に発生します。
- 折りたたみ機能がある場合: 容積が4分の1に圧縮されるため、復路のトラックの荷台スペースを25%しか占有しません。空いた75%のスペースに他商材を積み込む「共同配送」や、別路線の荷物を運ぶ「帰り便の有効活用」が可能になります。
限られたトラックの輸送力(キャパシティ)を最大化することは、運行本数の削減につながり、実質的なCO2排出量削減と輸送運賃の抑制を同時に達成します。適切な機能とサイズを持つ通い箱の導入は、自社の物流コストを削減するだけでなく、運送事業者とのパートナーシップ維持や、法令を遵守した持続可能なサプライチェーンの構築に寄与する有効な手段です。
現場で発生する「紛失・管理・洗浄」リスクの現実と解決策
通い箱の導入は、使い捨てのダンボール資材を削減し、中長期的な資材コストを削減できる大きなメリットがあります。しかし、実際の運用においては、「取引先から戻ってこない(紛失)」「回収した箱の汚れ(洗浄コスト)」「空き箱の保管スペース圧迫」という3つの現実的な課題に直面し、結果的にコスト削減効果が相殺されるケースが少なくありません。これらの運用リスクを抑え、投資対効果を最大化するための具体的な解決策を解説します。
RFIDやQRコードを活用した「通い箱の所在・紛失」デジタル管理術
通い箱の紛失を防ぐためには、Excelなどによる手入力の台帳管理から脱却し、個体管理を自動化・デジタル化することが不可欠です。例えば、1万個のプラダン製通い箱を運用する部品メーカーの場合、手作業での個数管理では月間3〜5%の通い箱が紛失し、年間で数百万円規模の再購入費用が発生するケースがあります。
この紛失を防ぐためのデジタル管理手法として、以下の3つのアプローチが有効です。
| 管理手法 | 主な特徴 | 導入コストの目安 | 適した通い箱の仕様 |
|---|---|---|---|
| QRコード / バーコード | スマートフォンで容易に読み取り可能。1箱ごとの管理を低コストで開始できる。 | 低(ラベル印刷およびリーダーアプリ代) | 標準的なサイズのプラダン製通い箱 |
| RFID(UHF帯) | ゲートを通過するだけで、複数の通い箱を瞬時に一括読み取り。 | 中〜高(ICタグ・アンテナ等の設備投資) | 高耐久なプラスチック成形コンテナ、中〜大型の箱 |
| GPS / LPWA端末 | リアルタイムの位置情報を追跡。屋外の滞留場所や輸送ルートを可視化。 | 高(通信端末および通信費) | 高価格帯の大型プラスチックコンテナ |
例えば、RFIDを用いたゲート検知システムを導入することで、倉庫の入出荷口を通過するだけでどの個別IDの通い箱が「どこから出荷され、いつ戻ってきたか」を自動で記録できます。これにより、滞留期間が30日を超えた取引先に対して自動で返却を促すアラートメールを送信する仕組みを構築でき、未返却率を従来の15%から1%未満へと低減させた実績があります。管理の自動化により、現場スタッフが手作業で行っていた検収作業時間を、1出荷あたり約2分削減する効果も得られます。
自社回収か外部委託か?洗浄・保管オペレーションの標準化設計
通い箱の運用において、回収後の「洗浄」と「空き箱の保管」は、物流現場のオペレーションに直接負荷をかけます。特に精密機器や食品・医薬品関連の配送では、付着した油脂や塵埃、雨水による汚損を防ぐため、高い洗浄基準が求められます。
自社で洗浄・保管を行うか、外部のアウトソーシング(シェアリング/プールサービス)を活用するかは、以下の運用判断基準に基づいて選択します。
| 管理項目 | 自社運用のメリットと特徴 | 外部委託(プール運営)の特徴 | 判断基準 |
|---|---|---|---|
| 洗浄作業 | 自社で手洗いまたは洗浄機を導入。管理基準を自社専用に細かく設定可能。 | 委託先で自動洗浄・殺菌を行うため、現場の作業工数がゼロになる。 | 汚れの度合い、必要とされる洗浄レベルの有無 |
| 保管スペース | 自社倉庫内に空き箱保管エリアを確保。折りたたみ機能付きなどを選び省スペース化。 | 不要な時はプール運営会社の最寄りデポ(拠点)に返却するため、保管不要。 | 自社倉庫の坪単価と、空きスペースの有無 |
| 回収・返却輸送 | 出荷先の戻り便(復路)を活用して自社回収。復路がない場合は運賃負担が発生。 | 最寄りデポへ直接返却できるため、長距離の「空コンテナ返送」が不要。 | 取引先(納品先)の分布状況と、既存の便網 |
例えば、1拠点の稼働で、月間の通い箱流通数が2,000個以下の場合は、折りたたみ式のプラスチック成形コンテナを採用し、自社倉庫の余剰スペースで段積み保管する自社運用が適しています。しかし、全国複数の拠点に分散し、月間1万個を超えるような大規模な循環が発生する場合は、自社で回収便を仕立てるよりも、専門のレンタル会社が展開するデポ(返却拠点)を活用した「通い箱プール」の利用が現実的です。
外部プールを利用することで、出荷先の近くにあるデポへ通い箱を直接返却できるため、空き箱を回収するためだけの「実車率の低いトラック復路便」を削減できます。これにより、物流の積載効率を維持したまま、通い箱回収にかかる輸送コストを約30%削減可能です。自社のコア業務に人員を集中させるためにも、回収数と拠点の広がりに応じた役割分担の設計が必要です。
精密機器から部品輸送まで!自社に最適な通い箱を絞り込むための選定基準
通い箱の導入によってコスト削減や環境負荷低減といったメリットを最大化するためには、輸送する荷物の特性や現場のオペレーションに合致した「仕様の絞り込み」が不可欠です。単に強度や価格だけで選んでしまうと、輸送中の破損リスクが高まるだけでなく、現場での作業効率が著しく低下する原因になります。自社に最適な仕様を見極めるための実務的な評価基準を解説します。
輸送対象(精密機器・部品・食品等)に応じた緩衝材設計とオーダーメイドの要否
輸送対象が自動車部品や電子基板などの精密機器である場合、単に規格品のプラスチックコンテナに製品を詰め込むだけでは、輸送中の振動や衝撃による破損を防げません。こうしたデリケートな荷物には、個々の形状にフィットする「緩衝材(仕切り)一体型」のオーダーメイド設計が必要となります。
例えば、電子部品の基板を輸送する場合、静電気による回路破壊を防ぐために、導電性のあるプラダン製通い箱(導電性ポリプロピレン製)を採用し、内部には基板同士が接触しないよう等間隔のスリット(溝)を設けたポリエチレン製の発泡緩衝材を固定する設計が標準的です。一方で、形状が均一なボトルや単純な成形品であれば、規格品のプラスチックケースに汎用の格子状仕切りを組み合わせるだけで十分に対応でき、初期の型代コストを抑制できます。
オーダーメイド(特注設計)と規格品のどちらを選択すべきかは、以下の評価基準に基づいて判断します。
| 選定要素 | 規格品+汎用仕切り | オーダーメイド設計(専用緩衝材) |
|---|---|---|
| 主な対象貨物 | ボトル、缶、均一形状の金属部品など | 自動車用コネクタ、基板、ガラス製品など |
| 初期コスト | 極めて低い(型代不要) | 高い(緩衝材のカット型代・設計費) |
| 梱包作業効率 | 標準(緩衝材の調整が必要な場合あり) | 極めて高い(個体をはめ込むだけで完了) |
| 製品保護性能 | 中(隙間が生じやすい) | 極めて高い(ジャストフィットでズレ防止) |
月間3,000個以上の高精度センサーを納品する精密機器メーカーの事例では、これまで使い捨ての梱包材とダンボールを用いて個別梱包していた作業を、専用の型取り緩衝材を内包したプラスチック製の通い箱に切り替えたことで、1個あたりの梱包時間を60秒から15秒へと短縮し、輸送中の不良発生率を0.01%以下に抑え込むことに成功しています。製品の付加価値と年間輸送量から逆算し、初期投資を回収できるかを算出することが、オーダーメイド採否の分水嶺となります。
倉庫内の省スペース化を左右する「折りたたみ機能」と「段積み強度」の評価軸
通い箱の導入において、見落とされがちなのが「使用していないときの保管スペース」と「回収時の積載効率」です。これらをクリアするための機能が「折りたたみ」や「ネスティング(入れ子)」であり、これらは運用の効率を直接左右します。
空箱の回収頻度や保管スペースに制約がある現場では、折りたたみ機能が極めて有効です。例えば、外寸が「縦530mm×横366mm×高さ325mm」の一般的な50Lサイズの折りたたみコンテナの場合、折りたたむことで高さが約86mm(約4分の1)に縮小します。これにより、帰りのトラックの積載スペースを大幅に節約でき、1回あたりの回収コストを削減できます。
しかし、折りたたみ式の構造は、壁面を可動させるためのヒンジ(継ぎ手)が存在するため、固定式のプラスチック製通い箱と比較して「段積み強度(耐荷重性能)」が低下するというデメリットがあります。自動倉庫でのスタッカークレーンによる昇降や、1パレット上に1トン近く荷重がかかるような多段積みを行う場合は、ヒンジ部の破損や撓みが発生し、荷崩れを起こす危険性があります。そのため、現場の保管・搬送環境に応じて、以下の3つの形状から適切な選択を行う必要があります。
- 固定式(コンテナタイプ):強度が極めて高く、自動倉庫やコンベアラインなどのマテハン機器と高精度に連動可能。ただし、空箱時も占有するサイズが変わらないため、保管・返送スペースの確保が必要です。
- 折りたたみ式:空箱時の容積を最小限に抑えられるため、返送効率と省スペース性に優れます。手作業中心のラインや、限られた保管エリアの有効活用に適しています。
- ネスティング・スタッキング両用式:箱の向きを180度回転させることで、使用時は「段積み」、空箱時は「噛み合わせて収納」できるタイプです。可動部がないため、折りたたみ式よりも耐久性が高く、食品業界や配送センターのピッキングライン等で広く使われています。
例えば、10段積みで総重量150kgの荷重を最下段 of 箱にかける運用を行う場合、許容圧縮荷重が1,500kgf以上に設計されている固定式の高耐久プラスチック製通い箱の選定が必須となります。自社および納品先における「積み上げ段数」「積載荷重」「トラックの復路スペース」をあらかじめ数値化し、耐久性と省スペース性のバランスを実務レベルで評価することが、運用の破綻を防ぐ唯一の方法です。
通い箱の導入決定から実運用開始までのステップ別アクションチェックリスト
関係先(納品先・運送会社)との回収オペレーション合意の3大チェックポイント
通い箱の運用を軌道に乗せるには、自社内だけでなく、納品先(顧客)および運送会社との事前の合意が不可欠です。現場間の調整不足は、紛失の多発や回収コストの高騰を招き、導入効果を相殺しかねません。実務レベルで合意を形成しておくべきポイントを以下に整理しました。
| 関係先 | 協議すべき項目 | 具体的な合意内容の例 | 対策・配慮事項 |
|---|---|---|---|
| 納品先(顧客) | 保管場所と回収時期 | 週1回、指定のパレット位置から回収する | プラダン製などの折りたたみ式を採用し、相手側の保管負荷を削減する |
| 納品先・運送会社 | 破損・紛失時の責任 | 個体識別ラベルで検収し、過失のある側が補填費を負担する | QRコードや管理タグを通い箱に貼付し、流通過程をトレースする |
| 運送会社 | 回収便の運賃と積載 | 納品時の帰り便を活用し、回収にかかる追加運賃を発生させない | パレット(JIS規格)に適合するサイズ設計により、復路の積載効率を最大化する |
試作・テスト輸送から本格運用(リプレイス)開始までのマイルストーン
通い箱の導入効果を最大化し、ダンボールからの切り替えをスムーズに進めるためには、いきなり全量をリプレイスするのではなく、スモールスタートによる段階的な検証が必須です。試作から本格運用開始までの実務マイルストーンを以下に示します。
| フェーズ | 実施アクション | クリアすべき基準(検証内容) |
|---|---|---|
| 1. 試作・強度検証 (1〜2ヶ月目) |
選択した素材と必要な内寸サイズに基づき、プロトタイプを作成。実梱包によるハンドリングテストを実施。 | 製品保護性能(傷やズレがないか)、フォークリフト荷役時の剛性に問題がないこと。 |
| 2. テスト輸送 (3ヶ月目) |
自社工場と特定の協力会社間など、クローズドループ(閉鎖循環ルート)を1つ選定し、30〜50個でテスト運用。 | 実輸送中の振動や衝撃による製品破損がゼロであること、回収時にスムーズに返送されること。 |
| 3. 運用マニュアル策定 (4ヶ月目) |
テスト輸送での課題(折りたたみ手順、仕切りの紛失等)を反映し、洗浄基準や段積み制限を記した手順書を作成。 | 現場スタッフ、フォークリフトオペレーター、運送会社ドライバー全員が共通の基準で作業できること。 |
| 4. 段階的リプレイス (5ヶ月目〜) |
対象ルートを徐々に拡大し、初期ロットの20%から段階的にリプレイスを推進。 | 設定した「目標回転数」を管理台帳で維持でき、投資コスト削減効果が計画通り推移していること。 |
上記のロードマップに沿って進めることで、予期せぬ通い箱の滞留や紛失といったトラブルを防ぎ、中長期的な梱包資材コストおよびCO2排出量の削減という、通い箱本来のメリットを確実に享受することが可能になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 物流における「通い箱」とは何ですか?
A. 通い箱(リターナブルボックス)とは、自社工場や物流倉庫、特定の取引先との間で、製品や部品を輸送する際に何度も繰り返し使用する輸送容器のことです。1回限りで廃棄されるダンボール等の使い捨て資材とは異なり、プラスチックやプラダンなど中長期的な使用に耐える素材で設計されているため、資材調達コストと廃棄物の削減に貢献します。
Q. 通い箱を導入するメリットとデメリットは何ですか?
A. メリットは、資材の購入費用を数十%削減できる経済的効果と、包装資材の廃棄量を実質ゼロに抑えられる環境的効果です。デメリットは、導入時の初期投資費用が発生する点や、使用後の空箱を配送先から回収し、検品・洗浄して自社に戻すための手間と回収コスト(シャトル便などの運行体制の構築)が発生する点にあります。
Q. 使い捨ての梱包資材から通い箱へ移行する判断基準は何ですか?
A. 最大の判断基準は、自社の物流ルートが「同一拠点間の往復便(シャトル便)」であり、「空箱の回収コストが発送コストを上回らないか」です。初期投資と回収サイクルから損益分岐点をシミュレーションした上で、中長期的なコスト削減が見込めること、またRFID導入などの紛失対策や洗浄・保管の管理体制が構築できるかで移行を判断します。