- キーワードの概要:アルコールチェッカー義務化とは、自社荷物や社員を運ぶ「白ナンバー」の車両を一定台数以上保有する企業に対して、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認を義務付ける制度です。2023年12月から完全義務化され、安全運転管理者の選任や測定結果の1年間保存などが必要となりました。
- 実務への関わり:対象企業の実務担当者は、毎日の運転前後にドライバーの酒気帯び確認(対面または非対面)を行い、その結果を漏れなく記録・保管しなければなりません。万が一義務を怠ったり飲酒運転事故が発生したりした場合は、公安委員会からの是正命令や民事上の損害賠償、社会的信用の失墜といった深刻なペナルティを科されるリスクがあります。
- トレンド/将来予測:手書き台帳やExcelによる手動管理は、転記ミスや確認漏れといった管理工数の増大が課題となっています。今後は、検知結果をスマートフォン経由で自動的に同期できる「クラウド型アルコールチェッカー」へのデジタル移行が主流となり、なりすまし防止や管理業務の自動化・効率化がさらに進むと予想されます。
2023年12月1日施行の改正道路交通法施行規則により、自社荷物や社員を運ぶ「白ナンバー」の車両を一定台数以上保有する企業に対しても、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認が完全に義務化されました。対象となるのは、乗車定員11人以上の車両を1台以上、またはその他の自動車を5台以上保有する事業所です。本記事では、自社が対象かどうかの判定基準から、安全運転管理者が行うべき日常の実務フロー、違反時のペナルティ、最適な検知器の選び方、そして管理工数を削減するデジタル移行の手順までを実務に即して解説します。
- 【対象確認】自社は「白ナンバー義務化」の対象か?条件とカウント方法の全解説
- 乗車定員11人以上の車1台、または自動車5台以上(自動二輪は0.5台換算)の基準
- 本社・支店・営業所など「事業所(拠点)単位」でカウントする際の注意点
- 【実務フロー】安全運転管理者が毎日行うべき「酒気帯び確認」と4つの必須業務
- 運転前後の2回実施:対面および「非対面(直行直帰時等)」の具体的な確認手順
- 漏れなく残す:アルコールチェッカーの「1年間」の記録保存項目と台帳運用
- 【違反リスク】義務を怠った場合の罰則と企業が負う「安全配慮義務違反」の代償
- 道路交通法に基づく安全運転管理者の解任および是正命令
- 飲酒運転事故発生時に企業が負う「民事上の損害賠償」と社会的信用リスク
- 【機種選定】自社に最適な「アルコール検知器」の選び方と2大タイプの徹底比較
- 拠点設置に適した「据置型」と、直行直帰・出張に対応する「携帯型」の比較
- 検知器のセンサー特性(半導体式 vs 電気化学式)と寿命・交換目安
- 【運用効率化】紙からクラウドへ!現場の管理工数を最小化するデジタル移行3ステップ
- ステップ1:現状の直筆台帳・Excel管理の課題(転記漏れ、確認漏れ)の洗い出し
- ステップ2:検知結果を自動同期するクラウド型管理システムの選定とルール構築
- ステップ3:ドライバーへの指導とシステム運用定着化のためのテスト稼働
【対象確認】自社は「白ナンバー義務化」の対象か?条件とカウント方法の全解説
道路交通法の規定に基づき、緑ナンバー(運送事業者)だけでなく、自社荷物や社員を運ぶ「白ナンバー」の車両を一定台数以上保有する企業に対しても、アルコールチェックの実施義務が適用されています。自社がこの対象になるか否かは、保有する車両の種類や台数、そしてそれらがどのように配置されているかによって厳密に判定されます。
乗車定員11人以上の車1台、または自動車5台以上(自動二輪は0.5台換算)の基準
義務化の対象となるのは、道路交通法における「安全運転管理者」の選任義務がある事業所です。具体的には、以下のいずれかの条件を満たす場合に、その事業所が対象として規定されます。
| 車両の種類 | 対象となる台数基準 | 換算ルール |
|---|---|---|
| 乗車定員11人以上の乗用自動車(マイクロバス、中型バスなど) | 1台以上 | 1台でも保有していれば、その時点で対象 |
| その他の自動車(普通乗用車、軽自動車、トラック、営業車など) | 5台以上 | 1台を「1台」としてカウント |
| 自動二輪車(排気量50ccを超えるバイク) | 5台以上(他と合算可) | 1台を「0.5台」として換算(原付50cc以下は除外) |
例えば、営業車を4台、そして排気量250ccの配送用バイクを2台保有している事業所の場合、自動車4台 + バイク2台(0.5台×2=1台) = 合計5台となり、義務化の対象となります。このように、自動車だけでなく自動二輪車を組み合わせた業務形態であっても、基準を満たせば例外なく対象として判定されます。
対象となった事業所は、速やかに安全運転管理者を選任しなければなりません。選任後は、酒気帯びの有無を確認する業務が義務付けられます。これには、目視および検知器を用いた確認だけでなく、測定結果を記録し、定められた1年間の記録保存期間に則って厳格にデータを保管する体制構築を推進します。自社が対象であると判明した段階で、速やかに適切な検知器の選定と確保を進めます。
本社・支店・営業所など「事業所(拠点)単位」でカウントする際の注意点
車両台数のカウントにおいて最も誤解されやすいのが、企業全体(法人単位)での合算ではなく、「事業所(拠点・営業所)単位」で独立して台数をカウントするというルールです。自動車登録上の名義がすべて「本社」であっても、実際に車両が配置され、日々の業務の起点となっている場所(支店や営業所)ごとに判定を行います。
例えば、企業全体で営業車を合計13台、マイクロバスを1台保有している場合でも、拠点の配置状況によって以下のように義務適用の有無が分かれます。
- 本社(東京都):営業車3台 ➡ 対象外(5台未満のため、選任および義務化の対象外)
- A支店(神奈川県):営業車6台 ➡ 対象(5台以上の基準を満たすため、安全運転管理者の選任とチェックが必須)
- B営業所(埼玉県):営業車2台、マイクロバス(定員14人)1台 ➡ 対象(定員11人以上の車両が1台あるため、他の台数に関わらず必須)
- C出張所(千葉県):営業車2台、自動二輪(250cc)2台 ➡ 対象外(営業車2台 + バイク1台分[0.5台×2] = 合計3台のため、5台未満で対象外)
このように、同一企業内であっても拠点ごとに適用の有無が異なります。直行直帰が多く営業所に車両が常駐しない営業活動スタイルであっても、その車両を管理・運行指示している「使用の本拠地(事業所)」がどこであるかによって判断されます。「全社で5台以上だから、義務のない出張所にも安全運転管理者を置かなければならない」といった過剰な対応や、逆に「各拠点は3台ずつだから全社で対象外」という誤認を防ぐため、まずは拠点ごとの正確な保有台数を把握し、法令に適した配置計画を策定します。
【実務フロー】安全運転管理者が毎日行うべき「酒気帯び確認」と4つの必須業務
安全運転管理者の主要な実務となるのが、日々の運行前後に実施する酒気帯び確認と、その結果の正確な記録・保存です。単なる「点呼時の確認」にとどまらず、法的な要件を確実に満たす日常の実務フローを確立する必要があります。
運転前後の2回実施:対面および「非対面(直行直帰時等)」の具体的な確認手順
警察庁のガイドラインにおいて、アルコールチェックは「運転しようとする運転者」および「運転を終了した運転者」の双方に対して行うことが定められています。これは「出勤時」と「退勤時」の2回ではなく、実際に「車両を運転する前」と「運転した後」のそれぞれに実施する必要がある点に注意が必要です。例えば、午前中に1回運転し、午後に再度別の用件で運転する場合は、それぞれの運転前後に確認を行うのが原則です。
確認は対面で行うことが原則です。安全運転管理者は、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などを目視で確認した上で、アルコール検知器による測定を行わせます。しかし、営業活動などで直行直帰が発生する場合や、遠隔地での業務など、対面での確認が困難なシチュエーションにおいては、以下の代替手段を用いて法的な要件を満たす必要があります。
- 電話や運行管理用ITツールによる通話:運転者に直接電話をかけ、声の調子や応答の様子を確認します。
- ビデオ通話機能(Zoom、Teamsや専用スマートフォンアプリなど)の活用:カメラを通じて、運転者の顔色や表情を確認するとともに、アルコール検知器の液晶画面に表示された測定結果をリアルタイムで画面越しに目視確認します。
- 測定データの即時送信:Bluetooth連携機能を備えたアルコール検知器を使用し、測定結果をGPSによる位置情報や測定時の顔写真とともに、管理システムへリアルタイムに送信させ、安全運転管理者がPC等の管理画面で確認します。
例えば、直行直帰が発生する営業スタッフが50名在籍し、各スタッフにモバイル型のアルコール検知器を配備している組織の場合、毎朝の出発前と夕方の業務終了時に、スマートフォンのビデオ通話機能を用いて安全運転管理者と相互に連絡を取りながら測定を行う運用フローを構築することで、非対面時であっても確実な酒気帯び確認が可能となります。
漏れなく残す:アルコールチェッカーの「1年間」の記録保存項目と台帳運用
確認結果は、測定だけで終わらせず、法的に定められた8項目を漏れなく記録しなければなりません。記録台帳の保存期間は1年間と定められており、公安委員会の監査等で即座に提示できる状態を維持します。
記録すべき項目は、以下の8項目です。抜け漏れを防ぐため、あらかじめフォーマットを統一した台帳(紙またはデジタルデータ)を用意しておく必要があります。
| 記録項目 | 具体的な記載内容 |
|---|---|
| 1. 確認者名 | 確認を実施した安全運転管理者(または副安全運転管理者、補助者)の氏名 |
| 2. 運転者名 | 対象となる車両を運転する(または運転した)従業員の氏名 |
| 3. 対象車両の登録番号等 | 運転する車両のナンバープレートの番号や、社内で管理している車両番号 |
| 4. 確認の日時 | 酒気帯び確認を行った正確な日付と時間(運転前、運転後のそれぞれ) |
| 5. 確認の方法 | 「対面」による確認か、直行直帰等による「電話」「ビデオ通話」などの非対面方法かの別 |
| 6. 酒気帯びの有無 | アルコール検知器の測定結果(数値、またはアルコール検出の有無)および目視での確認結果 |
| 7. 指示事項 | 運転手に対して行った安全運転上の指示(例:「安全運転に努めること」「体調に留意すること」など) |
| 8. その他必要な事項 | 確認時に気づいた運転者の体調変化や特記事項など |
これらの記録は、手書きの用紙やExcelなどのスプレッドシートで運用することも可能ですが、記入漏れや紛失のリスク、さらに1年間という保存義務を考慮すると、システム化による効率化が有効です。測定データが自動でクラウドに保存されるタイプの機器を導入することは、実務における管理負荷を大幅に軽減します。自社の拠点数や車両台数、直行直帰の頻度、現場のIT習熟度を総合的に評価し、最適なツールを選定します。
【違反リスク】義務を怠った場合の罰則と企業が負う「安全配慮義務違反」の代償
アルコールチェックを怠る、または形骸化した運用を放置した場合、企業は行政処分だけでなく、経営基盤を揺るがす甚大な法的・経済的リスクを負うことになります。法令違反に対する罰則は、段階的に厳格化されています。
道路交通法に基づく安全運転管理者の解任および是正命令
安全運転管理者の未選任や、法的に定められた業務を適切に遂行していない場合、企業および安全運転管理者個人に対して道路交通法に基づくペナルティが科されます。
具体的には、酒気帯び確認の義務を怠り、警察や公安委員会からの指導・是正勧告に従わない場合、公安委員会は道路交通法第74条の3第18項に基づき、安全運転管理者の「解任」を命じることができます。この解任命令に違反した場合、企業(法人)またはその代表者等に対して50万円以下の罰金が科されます(道路交通法第120条第1項第11号の3)。
また、確認記録を規定通り1年間保存することも管理者の法的な義務です。記録の未保存や虚偽記載が発覚した場合、適切な業務が行われていないとみなされ、是正勧告の対象となります。
| 違反項目 | 対象 | 適用される主な罰則・処分 |
|---|---|---|
| 安全運転管理者の未選任 | 法人・代表者等 | 50万円以下の罰金(法第74条の3第1項違反、第120条第1項第11号の2) |
| 安全運転管理者の解任命令違反 | 法人・代表者等 | 50万円以下の罰金(法第74条の3第18項違反、第120条第1項第11号の3) |
| 酒気帯び確認・記録保存の義務違反 | 企業・安全運転管理者 | 公安委員会による是正勧告・指導、および安全運転管理者の解任命令の引き金となるリスク |
公安委員会から解任命令を受けたにもかかわらず、新たな安全運転管理者を選任しない、または無資格の者を充てていた場合、さらに「未選任」としての罰則が重複して適用されるため、実質的な経済的・行政的打撃はさらに膨らみます。
飲酒運転事故発生時に企業が負う「民事上の損害賠償」と社会的信用リスク
企業にとって最大の経営危機となり得るのは、アルコールチェックを怠った自社車両が公道で飲酒運転事故を起こした際に発生する「民事上の損害賠償責任」と「社会的信用の失墜」です。
従業員が業務中に飲酒運転による人身事故を起こした場合、企業は民法第715条に基づき「使用者責任」を問われます。さらに、義務化されたアルコールチェックを日常的に実施していなかった場合、企業が果たすべき必要な注意義務を組織的に怠っていたとみなされ、民法第415条(債務不履行)または民法第709条(不法行為)に基づく「安全配慮義務違反」が極めて高い確率で成立します。
実際、業務外の帰宅途中に従業員が飲酒運転で人身事故を起こしたケースにおいて、勤務先企業に対し「管理監督義務の怠慢」を理由に1億円を超える高額な損害賠償の支払いを命じた判決があります。対人・対物無制限の任意保険に加入している場合であっても、企業側がアルコールチェック義務を組織的に無視していたなどの「重過失」があると判断された場合、保険契約の免責事項に該当し、保険金の支払いが全額または一部拒絶されるケースもあります。
また、飲酒運転事故を引き起こした企業の受ける損害は、金銭的補償だけに留まりません。
- 取引先からの即時契約解除:法令遵守を重視する上場企業や元請け企業から、「CSR(企業の社会的責任)に反する不祥事」として、一切の取引を停止されるリスクがあります。これにより、長年築き上げた取引関係を一瞬にして喪失する現実に直面します。
- 社名公表とブランド価値の失墜:事故の悪質性が高い場合、警察や行政機関、報道機関による実名発表が行われ、インターネット上に「法令違反によって飲酒運転事故を起こした企業」として情報が残り続けます。
- 採用活動への打撃:求職者がコンプライアンス姿勢を最重要視する昨今、法令違反企業としての情報が拡散されることで、採用応募数が激減し、将来的な人員確保が著しく困難になります。
これらの重大なリスクを回避するためには、なりすまし防止機能や通信機能を備えた検知器を選定し、測定データが自動的にクラウドへ記録・保存される体制を構築します。これにより、人為的な確認ミスや記録漏れを根本から排除します。
【機種選定】自社に最適な「アルコール検知器」の選び方と2大タイプの徹底比較
測定体制を維持する上で、安全運転管理者はアルコール検知器を「常時有効に保持」しなければなりません。国家公安委員会が定める基準(呼気中のアルコールを検知し、音、色、数値等で確認できるもの)を満たすデバイスの中から、自社の運行体制に合致した機種を導入します。
拠点設置に適した「据置型」と、直行直帰・出張に対応する「携帯型」の比較
アルコール検知器は、主に事務所などの拠点に固定して設置する「据置型」と、ドライバーが個々に携行して車内や出先で測定する「携帯型」の2タイプに分類されます。
例えば、毎朝全員が一度営業所に出社してから業務を開始する運行パターンの場合、据置型の設置だけで対応可能です。一方で、自宅から担当車両で直接目的地に向かう直行直帰のケースや、複数日にわたる長距離配送・出張が発生する場合には、各ドライバーに携帯型を配布する必要があります。
それぞれの導入コスト、メンテナンス性、寿命、用途などの特徴は以下の通りです。
| 比較項目 | 据置型(事務所設置) | 携帯型(モバイル・車載) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 営業所や事務所に出社・退社するドライバーの点呼時の測定 | 直行直帰、出張、遠隔地での運行中における測定 |
| 導入コスト(1台あたり) | 約5万円〜20万円 (高精度なセンサーや測定結果の自動記録機能が搭載されているため初期コストは高め) |
約1万円〜3万円 (比較的安価だが、対象ドライバーの人数分を揃えるための総額設計が必要) |
| メンテナンス性 | 高い(営業所に固定されているため、一括管理や定期校正・清掃が容易) | 低い(ドライバー個人の管理に依存するため、紛失、落下破損、校正遅れのリスクがある) |
| 寿命(センサー交換頻度) | 約1年〜2年、または測定回数1万回〜2万回 (耐久性が高く、センサーモジュールのみを交換できる機種が多い) |
約1年、または測定回数1,000回〜5,000回 (本体ごと使い捨てるタイプ、または個別送付によるメーカー校正が必要) |
| 測定の正確性と安定性 | 非常に高い(設置環境が一定であり、呼気吹き込み時のブレが少ない) | 環境に左右されやすい(車内の温度変化や、喫煙・飲食直後の吹き込みによるエラーが生じやすい) |
検知器のセンサー特性(半導体式 vs 電気化学式)と寿命・交換目安
アルコール検知器の性能や運用コストを大きく左右するのが、搭載されている「センサーの測定方式」です。センサーには「半導体式」と「電気化学式(燃料電池式)」の2種類が存在し、それぞれ検知の仕組みや精度、特定のガスに対する反応性が異なります。
自社で導入する際、単に「初期費用が安いから」という理由だけで選ぶと、日常の運用において誤反応が多発し、点呼業務が滞る原因になります。以下の特徴を理解した上で、自社に適したタイプを選択します。
- 半導体式(ガスセンサー方式)
呼気中の酸素とアルコールが反応した際の、半導体の電気抵抗値の変化を測定します。- メリット: 1台あたりの導入コストが非常に安価(数千円から購入可能)であり、測定時間が短いこと。
- デメリット: アルコール以外の成分(タバコの煙、歯磨き粉、口臭清涼剤、栄養ドリンク、ミント系のガムなど)に反応して誤検知(陽性反応)を起こしやすい点です。
- 寿命・交換目安: 測定回数約1,000回〜2,000回、または使用開始から1年。センサーの経年劣化が早いため、頻繁な買い替えや校正が必要です。
- 電気化学式(燃料電池式)
呼気中のアルコール分を燃料として電気化学反応を起こさせ、その際に発生する電流の値を測定します。- メリット: アルコール分子のみに極めて正確に反応するため、他成分による誤検知がほとんど発生しません。周囲の環境温度による影響を受けにくく、測定精度が安定しています。
- デメリット: 半導体式と比較して、本体価格が数倍から十倍程度と高価です。また、測定から結果表示までに数秒から十数秒の時間がかかる傾向があります。
- 寿命・交換目安: 測定回数約1万回〜2万回、または使用開始から1年〜2年。センサーの耐久性が高く、長期的にはメンテナンス費用を含めてコストパフォーマンスが良くなるケースが多く見られます。
実務上の選定基準として、例えば「保有車両が5台で、安全運転管理者が毎日対面で点呼を行う営業所」であれば、誤検知による点呼の中断を防ぐために、拠点に「電気化学式の据置型」を1台設置して確実に測定するのが効率的です。一方で、「20人の直行直帰ドライバーが各自で点呼を行う」状況であれば、携帯性に優れた「携帯型」を全員に配布しつつ、予備機を用意しておく運用、あるいは精度を担保するために携帯型でも「電気化学式」を採用する設計が求められます。このように、保有台数と稼働体制を組み合わせることで、初めて最適なデバイス構成を導き出すことができます。
【運用効率化】紙からクラウドへ!現場の管理工数を最小化するデジタル移行3ステップ
ステップ1:現状の直筆台帳・Excel管理の課題(転記漏れ、確認漏れ)の洗い出し
アルコールチェックの完全義務化に伴い、安全運転管理者の業務負荷は増大する傾向にあります。特に、ドライバーが記入した紙の台帳をExcelへ転記する運用や、確認印の捺印を義務付けている体制では、記入漏れや回収の遅れが日常化しがちです。また、記録は法律で1年間の保存が義務付けられており、不備のある状態で保存することはコンプライアンス上の大きなリスクとなります。
例えば、営業車を30台保有し、1日2回(乗車前・乗車後)のチェックが必要な企業の場合、1ヶ月(20営業日)で発生する記録数は1,200件にのぼります。この1,200件の記録を管理者が目視で確認し、手入力でExcelに転記する作業には、月間およそ15〜20時間の工数がかかります。この過程で、直行直帰のドライバーによる「記入漏れ」や、多忙な管理者による「確認漏れ」が発生する確率は必然的に高まります。まずは、自社において月間でどれだけの「未記入」や「確認遅れ」が発生しているのか、過去数ヶ月分の台帳を精査し、運用エラーの発生率を数値化してボトルネックを特定します。
ステップ2:検知結果を自動同期するクラウド型管理システムの選定とルール構築
課題を特定した後は、測定結果を自動で送信・保存できるクラウド型管理システムへの移行を進めます。システム移行の成否を分けるのが、測定器の選定です。ドライバーの手入力を排除するためには、Bluetoothやモバイル回線を内蔵し、測定結果がスマートフォンのアプリを経由してクラウドへ直接同期される検知器が必須となります。
システム選定においては、単にデータを蓄積するだけでなく、異常検出時のリアルタイム通知機能や、なりすまし防止のための顔写真撮影機能を備えた仕様を選択します。これにより、管理者はダッシュボードを確認するだけで、未測定者や異常値を即座に把握できます。以下は、紙・Excelによるアナログ運用と、クラウド管理に移行した場合の業務フローの比較です。
| 項目 | 紙・Excelによる管理 | クラウドシステムによる管理 |
|---|---|---|
| 測定結果の記録方法 | ドライバーが用紙に手書きで記入 | 測定後にクラウドへ自動同期・保存 |
| なりすまし・改ざん防止 | 確認が困難(相互確認が必要) | 測定時の顔写真自動撮影により防止 |
| 確認・転記の工数 | 管理者が毎日目視確認し、Excelへ手入力 | 自動集計されるため、転記工数はゼロ |
| 未実施者の把握 | 用紙を回収するまで把握できない | 未実施者にアラートが自動送信される |
| 法的な保管管理 | ファイリングまたはサーバー保存(手動) | 1年間の保存期間をクラウド上で自動担保 |
システム選定と同時に測定ルールも更新します。「出庫の15分前までに測定を完了させること」「直行直帰の場合は遠隔地でのテレビ通話による確認を併用すること」などを明文化し、スムーズな移行のための基盤を整えます。
ステップ3:ドライバーへの指導とシステム運用定着化のためのテスト稼働
新システムとルールが決定しても、全社で一斉に導入を開始すると現場が混乱し、測定漏れが多発します。まずは、営業車両を多く動かしている特定の営業所や、5〜10名程度の先行導入グループを決定し、2週間程度のテスト稼働期間を設けて実務上の課題を抽出します。
テスト稼働にあたり、安全運転管理者は対象ドライバーに対して、専用アプリのインストール方法からアルコール検知器とのペアリング手順、実際の測定方法までを記載した1枚構成のクイックマニュアルを配布し、実践的な指導を行います。テスト期間中に「スマートフォンのOS更新に伴う一時的なBluetooth切断」や「電波の届きにくい地下駐車場での送信エラー」といった現場特有の課題を吸い上げます。「電波障害時は端末内に一時保存し、通信復旧後に再送信する」といった対処マニュアルを事前に作成しておくことで、本番移行時の混乱を最小限に抑え、確実な運用定着を実現します。
よくある質問(FAQ)
Q. 白ナンバーのアルコールチェッカー義務化の対象となる基準は何ですか?
A. 乗車定員11人以上の白ナンバー車両を1台以上、またはその他の自動車を5台以上保有する事業所が対象です。この台数は企業全体ではなく「本社」や「営業所」といった事業所(拠点)単位でカウントします。なお、50cc超の自動二輪車(バイク)は1台を0.5台として換算します。
Q. アルコールチェッカーの確認義務を怠った場合、企業にどのようなペナルティがありますか?
A. 直接的な罰則はありませんが、公安委員会からの是正命令に従わない場合は50万円以下の罰金が科されます。また、安全運転管理者が解任される対象となるほか、万が一飲酒運転事故が発生した場合には、企業は安全配慮義務違反として民事上の巨額な損害賠償や、社会的信用を失う重いリスクを負うことになります。
Q. アルコールチェッカーの測定結果は何年間保存する必要がありますか?
A. 測定した記録は「1年間」保存することが義務付けられています。記録項目には、確認日時、運転者および確認者の氏名、酒気帯びの有無、アルコール検知器の使用有無など計8つの必須項目があります。これらは直筆の台帳やExcelでの管理も可能ですが、クラウドシステム等のデジタルへ移行することで現場の管理工数を削減できます。