運輸業の人手不足D.I.がプラス61へ上昇した背景
厚生労働省は2026年9月29日、全国の主要産業における民営事業所を対象に実施した「労働経済動向調査(令和8年8月)」の結果を公表しました。
調査結果によると、2026年8月1日時点における「運輸業,郵便業」の正社員等労働者過不足判断D.I.はプラス61ポイントとなり、全産業計(プラス47ポイント)を大きく上回る高い人手不足感が示されました。また、特別項目として調査された働き方改革の取組では、運輸業・郵便業の74%が長時間労働の是正等に取り組んでいる実態が明らかになっています。
労働経済動向調査の概要と政策的位置づけ
労働経済動向調査は、景気の変動や労働力需給の変化が雇用や労働時間等に及ぼしている影響、今後の見通しや対応策を迅速に把握し、労働政策立案の基礎資料とすることを目的に四半期(2月・5月・8月・11月)ごとに実施されている一般統計調査です。
今回の2026年8月調査では、共通の雇用・需給判断項目に加え、特別項目として「令和7(2025)年度新規学卒者の採用枠での募集に関する事項」および「働き方改革の取組に関する事項」について集計が行われました。
2026年8月調査の結果詳細(雇用・人手不足・働き方改革)
調査は常用労働者30人以上を雇用する民営事業所から抽出された5,786事業所を対象に実施され、3,175事業所から有効回答を得ています(有効回答率54.9%)。主な結果は以下の通りです。
- 労働者の過不足状況(2026年8月1日現在)
- 正社員等労働者過不足判断D.I.
- 調査産業計はプラス47ポイント(前回2026年5月調査と同水準)。
- 「運輸業,郵便業」はプラス61ポイント(不足62%、過剰1%)となり、2026年5月調査(プラス55ポイント)から6ポイント上昇して全産業で最も高い水準となっています。
- パートタイム労働者過不足判断D.I.
- 調査産業計はプラス26ポイント。
- 「運輸業,郵便業」はプラス29ポイント(不足31%、過剰2%)となっています。
- 正社員等労働者過不足判断D.I.
- 労働力不足部門への対応状況(2026年4~6月期実績)
- 運輸業,郵便業において労働者が不足している部門がある事業所は87%に達し、そのうち67%が何らかの対応を実施しています。
- 主な対応内容(複数回答)は、「中途採用の開始・拡大・強化」(67%)、「業務の効率化の推進」(40%)、「在職者の労働条件の改善(賃金)」(36%)、「求人条件(募集賃金)の引き上げ」(34%)、「新規学卒者の採用の開始・拡大・強化」(32%)、「臨時、パートタイム労働者の採用」(32%)、「定年延長、定年廃止、再雇用者の採用・受入れ」(29%)などとなっています。
- 働き方改革の取組状況(2026年8月1日現在)
- 長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現
- 「運輸業,郵便業」で「取り組んでいる」事業所は74%。
- 取組内容(複数回答)では、「業務の効率化」(71%)、「長時間労働抑制に関する数値目標の設定」(56%)、「省力化投資(機械化・自動化、IT化)」(33%)、「時間外労働の事前申告制」(30%)などが上位を占めています。
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金等)
- 「運輸業,郵便業」で「取り組んでいる又は取り組んだ」事業所は59%。
- 具体的な見直し項目(複数回答)は、「基本給」(62%)、「諸手当」(53%)、「福利厚生」(47%)となっています。
- 長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現
影響を受ける関係事業者
- トラック運送事業者・倉庫事業者
- 物流サービスを利用する荷主企業(製造業・卸売業・小売業等)
- 物流業界向け人材紹介・派遣事業者および採用支援サービス
物流実務への影響と各立場の現状
- トラック運送事業者・物流事業者
- 正社員の過不足判断D.I.がプラス61ポイントと高止まりしており、中途採用の強化(67%)や募集賃金・在職者賃金の改善(各30%台半ば)といった人件費を伴う対策が続いています。
- 長時間労働是正策として「長時間労働抑制に関する数値目標の設定」に取り組む事業所が56%に達しており、運行計画の再編や拘束時間管理の見直しが現場レベルで進んでいる様子がうかがえます。
- 荷主企業(製造業・卸売業・小売業など)
- 運送事業者の労働力不足感が依然として極めて強いことから、リードタイムの緩和や荷待ち・荷役時間の削減、付帯作業の見直しなど、運送現場の運行効率化に資する協力姿勢が引き続き取引維持の要素となりえます。
今後の雇用見通しと調査公表スケジュール
- 2026年10~12月期の雇用見込
- 運輸業,郵便業の正社員等雇用判断D.I.見込はプラス9ポイント(増加12%、減少3%)となっており、採用意欲そのものは継続する見通しです。
- 次回以降の調査公表
- 労働経済動向調査は四半期ごと(2月、5月、8月、11月)に実施されています。
- (独立行政法人労働政策研究・研修機構の公表資料によれば)今回の2026年8月調査の詳細な報告書は、2027年2月に公表される予定です。
今後の焦点となる論点
- 運輸業における人手不足対応が中途採用(67%)に偏る一方、新規学卒者採用(32%)や省力化投資(6%)の割合が相対的に低調である点について、中長期的な人材確保・設備投資へどうシフトしていくか。
- 募集賃金の引き上げや同一労働同一賃金への対応が進む中、増加する人件費の運賃・料金への価格転嫁がどの程度進展するかが事業継続の焦点となります。
関連する業界動向と労働環境の背景
- 道路貨物運送業では、就業者全体の規模が約200万人前後を維持しているものの、55歳以上の就業者比率が36%前後に達するなど高齢化が進んでおり、若手層(15~29歳)の比率が約10%で固定化している構造的課題が指摘されています。
- 2024年4月からの時間外労働上限規制(年960時間)適用以降、拘束時間の短縮や休息期間の確保が求められる中、運行効率化と適正運賃の収受による収益改善が各社で進められています。
よくある質問
Q. 労働経済動向調査における「労働者過不足判断D.I.」とはどのように算出されていますか?
A. 調査日現在において、労働者数を「不足(やや不足、おおいに不足)」と回答した事業所の割合から、「過剰(やや過剰、おおいに過剰)」と回答した事業所の割合を差し引いて算出されます。プラスの値が大きいほど、人手不足を感じている事業所の割合が高いことを示します。
Q. 2026年8月調査における運輸業・郵便業の人手不足感は他の産業と比べてどのような水準ですか?
A. 正社員等労働者過不足判断D.I.において、調査産業計がプラス47ポイントであるのに対し、運輸業,郵便業はプラス61ポイントとなっており、建設業(プラス59ポイント)や学術研究,専門・技術サービス業(プラス59ポイント)などを上回り、調査対象産業の中で最も高い水準となっています。
Q. 運輸業・郵便業では働き方改革に関してどのような取組が多く行われていますか?
A. 長時間労働の是正等の取組を行っている事業所(74%)のうち、最も多い取組は「業務の効率化」(71%)で、次いで「長時間労働抑制に関する数値目標の設定」(56%)、「省力化投資(機械化・自動化、IT化)」(33%)、「時間外労働の事前申告制」(30%)となっています。
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出典
- 発表主体: 厚生労働省 / 発表日: 2026-09-29
- 調査の概要(PDF)
- 主な用語の定義(PDF)
- 利用上の注意(PDF)
- 結果の概要(PDF)
- 付属統計表(PDF)
- 報道発表資料(PDF)
- 概況全体版(PDF)
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