2025年度の航空安全情報で何が公表された?
国土交通省航空局は、航空法に基づき本邦航空運送事業者から報告された2025年度(令和7年度)の「航空輸送の安全にかかわる情報」を取りまとめ、公表しました。第39回航空安全情報分析委員会(2026年6月16日開催)での審議結果を踏まえたもので、航空事故8件、重大インシデント2件、安全上のトラブル921件の合計931件に関する発生状況や要因分析、再発防止に向けた取組方針が示されています。
航空安全情報の報告・公表制度の背景
航空法第111条の4に基づき、航空運送事業者は航空機の正常な運航に支障を及ぼす事態(安全情報)を国土交通大臣へ報告することが義務づけられています。また、同法第111条の5に基づき、国は毎年度これらの情報を整理・公表することとされています。国土交通省では、報告された情報の客観的な評価・分析および適切な公表を行うため、有識者等で構成される「航空安全情報分析委員会」を原則として6か月ごとに開催しています。
事故・トラブル件数の内訳と要因分析
公表された2025年度(令和7年度)の安全情報の概要および分析結果は以下のとおりです。
- 発生件数の内訳(合計931件)
- 航空事故:8件(回転翼機の不時着水や阿蘇山火口付近での機体損傷、誘導路走行中の接触、被雷、機体動揺による乗客・乗務員の負傷、着陸時の機体尾部接地、離陸後の鳥衝突など)
- 重大インシデント:2件(作業車両が存在する滑走路への着陸、上昇中のエンジン意図せず停止および推力一時低下)
- 安全上のトラブル:921件(航行中のシステム不具合122件、機器からの指示による急な操作等169件、運用限界の超過・経路・高度の逸脱113件、非常用機器等不具合33件、構造損傷4件、その他480件)
- 安全上のトラブルの要因別分類
- ヒューマンファクター事案:378件(内訳:整備従事者166件、運航乗務員99件、地上作業員82件、製造16件、客室乗務員10件、その他5件)
- 機材不具合:257件
- 回避操作:147件(航空機衝突防止装置[TCAS RA]134件、対地接近警報装置[GPWS]13件)
- 危険物の誤輸送等:88件(ヘアアイロンの持ち込みや形状多様化による見間違い事案など)
- アルコール事案:19件(運航乗務員8件、客室乗務員8件、整備従事者3件)
- 発動機の異物吸引による損傷:9件
- 部品脱落:9件
- その他:14件
- 分析傾向と対応方針
- 整備従事者および地上作業員のヒューマンファクター事案が増加傾向にある一方、集中した特異な傾向は見られず、引き続き適切なフォローアップを実施する方針です。
- 危険物の誤輸送等については、国際民間航空機関(ICAO)の基準改定を受けて2026年4月24日から機内でのモバイルバッテリー充電禁止等の基準を新たに適用したほか、旅客への周知活動を継続して実施します。
対象となる関係事業者
- 本邦航空運送事業者(国内・国際定期便、不定期便、貨物専門航空会社など)
- 航空フォワーダー(利用航空運送事業者)
- 航空輸送を利用する荷主企業(精密機器、電子部品、医薬品、EC貨物などを取り扱う事業者)
- 空港グランドハンドリング事業者・航空整備事業者
航空輸送実務への影響
- 航空運送事業者・空港ハンドリング事業者
- 整備従事者や地上作業員によるヒューマンファクター事案の増加傾向が示されたことから、地上作業や機体整備の工程における手順遵守やエラー防止策の再点検が進む方針です。また、個々の事業者の特徴に応じた国の安全監査が実施される見通しです。
- 荷主・フォワーダー(利用航空運送事業者)
- 旅客便ベリー(床下貨物室)や貨物専用機を利用した輸送において、危険物輸送ルールの厳格な運用が再確認されています。特にバッテリー類などの危険物誤輸送防止に向けたチェック体制の維持や、定時運航・安全運航を前提としたリードタイム管理の意識合わせが継続して求められます。
今後の公表スケジュール
- 2026年12月頃:第40回航空安全情報分析委員会を開催し、2026年度上半期に報告された安全情報の中間報告について評価・分析を行う予定です。
今後の議論とフォローアップの焦点
- 整備従事者や地上作業員のヒューマンファクター事案が増加したことを受け、航空会社や委託先ハンドリング事業者に対して具体的にどのような監査手法や是正指導が行われるかが今後の焦点となります。
- モバイルバッテリーや各種電子機器をはじめとする危険物輸送ルールについて、国際基準の改定に伴う手荷物・受託手荷物・航空貨物への波及影響や追加ルールの有無は現時点で示されていません。
航空安全プログラム(SSP)と関連の法改正動向
- 国土交通省は「航空安全プログラム(SSP)」に基づき、運送・空港・航空管制の3分野でそれぞれ安全情報の分析委員会を設置し、半期ごとに安全情報の分析・公表を行っています(国交省公表資料より)。
- 2025年12月には改正航空法等が施行され、滑走路の安全対策強化や操縦士に対するCRM訓練の義務化など、安全管理体制の強化が進められています(国交省公表資料より)。
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出典
- 発表主体: 航空局安全部航空安全推進室 / 発表日: 2026-09-01
- 報道発表資料(PDF)
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