鉄道の運転事故は530件に減少、輸送障害は7,445件に微増
国土交通省は2026年9月8日、鉄道事業法第19条の3の規定に基づき取りまとめた「鉄軌道輸送の安全に関わる情報(令和7年度)」を公表しました。
令和7年度(2025年度)における鉄軌道の運転事故件数は530件(対前年度比66件減)、死傷者数は495人(同1人減)、うち死亡者数は227人(同18人減)となり、長期的にも減少傾向が続いています。一方で、列車の運休や旅客列車の30分以上の遅延等を指す「輸送障害」の件数は7,445件(対前年度比40件増)となり、長期的な増加傾向が継続している実態が示されました。
鉄道事業法に基づく毎年度の安全情報公表と政策位置づけ
本公表は、2006年10月に施行された改正鉄道事業法第19条の3に基づき、鉄道運転事故等の報告や行政指導の実施状況、安全に関わる鉄道施設の整備状況等を国土交通省が毎年度整理して公開しているものです。
また、内閣府中央交通安全対策会議が策定した「第11次交通安全基本計画」(計画期間:令和3年度〜令和7年度)では、鉄道交通分野において乗客の死者数ゼロや運転事故全体の死者数減少、踏切事故件数の削減(令和7年までに令和2年比で約1割削減)などが掲げられており、本公表はその進捗状況を示す基礎資料としての性格も持っています。
令和7年度の事故・障害データ:踏切事故の45%は自動車関係
公表された概要資料によると、令和7年度の運転事故および輸送障害の発生状況は以下の通りです。
- 運転事故の発生状況(合計530件)
- 列車事故: 15件(列車脱線事故11件、列車衝突事故4件、列車火災事故0件)
- 踏切事故: 184件(対前年度比33件減。死傷者数149人、うち死亡者数65人)
- 人身障害事故: 298件(線路内立入り等接触168件、ホーム接触118件など。死亡者数161人)
- 道路障害事故: 28件(死傷者数23人、うち死亡者数1人)
- 物損事故: 6件
- 事業者区分別の運転事故件数
- JR(在来線):273件
- JR(新幹線):2件
- 民鉄等:215件(大手民鉄161件、中小民鉄51件、公営2件、新交通・モノレール1件)
- 路面電車:40件
- (再掲)地域鉄道:78件
- 踏切事故の内訳と要因(合計184件)
- 踏切道種別: 第1種踏切道が164件(89.1%)、第4種踏切道(警報機・遮断機なし)が18件(9.8%)、第3種踏切道が2件(1.1%)。
- 衝撃物別: 自動車が83件(45.1%)、歩行者が79件(42.9%)、軽車両が19件(10.3%)、二輪が3件(1.6%)。
- 原因別: 直前横断が88件(47.8%)、落輪・エンスト・停滞が64件(34.8%)、側面衝撃・限界支障が23件(12.5%)。
- 輸送障害の発生状況(合計7,445件)
- 部外原因: 3,575件(48.0%)。線路内立入り、踏切道障害、動物との接触、妨害など。
- 災害原因: 2,260件(30.4%)。風水害、雪害、地震等(対前年度比134件増)。
- 部内原因: 1,610件(21.6%)。鉄道係員、車両、鉄道施設等に起因するもの(対前年度比45件増)。
影響を受ける物流関係者
- 鉄道貨物輸送を利用している、またはモーダルシフトを検討している荷主企業
- 鉄道貨物コンテナの手配や駅頭荷役・ドレージ輸送を担う利用運送事業者(通運事業者)
- 幹線輸送の一部区間で鉄道との複合一貫輸送・中継輸送を行うトラック運送事業者
- 踏切道が介在する運行ルートを設定しているトラック・物流事業者の運行管理者およびドライバー
立場別にみる物流実務への影響と運行管理の注意点
- モーダルシフトを進める荷主企業
- 運転事故自体は長期減少傾向にあるものの、輸送障害(運休や30分以上の遅延)は7,445件と高水準で微増傾向にあります。特に風水害・雪害などの自然災害に起因する障害が約3割(2,260件)を占めており、長距離幹線をトラックから鉄道へ移行する際には、定時運行を前提としつつも、天候悪化時等の遅延・運休を想定した安全在庫の確保や納品リードタイムの調整が実務上の検討事項となります。
- 通運事業者および複合一貫輸送を手掛ける物流事業者
- 部外原因(3,575件)や災害原因によるダイヤ乱れが発生した場合、貨物ターミナル駅周辺でのコンテナ滞留やトラック待機が発生しやすくなります。運行障害情報の早期把握と、納品先荷主への迅速な連絡、ドレージ集配トラックの柔軟な再配車管理が求められます。
- 踏切道を経由するトラック運送事業者
- 踏切事故184件のうち45.1%(83件)が自動車を対象としたものであり、原因の約35%が「落輪・エンスト・停滞」によるものです。大型車やトレーラーが集配ルートを設定する際、狭隘な踏切道や勾配のある踏切の回避、踏切手前での確実な一時停止など、安全運行管理上のリスク周知が実務に直結します。
今後の安全情報公表と対策の見通し
- 次年度の安全情報公表スケジュール
- (過去の公表実績によれば)本統計は鉄道事業法に基づき毎年度公表されており、次年度(令和8年度実績)の集計結果は例年通りであれば2027年8〜9月頃に公表される見込みです。
- 踏切道の改良計画
- (国土交通省の関連制度資料によれば)踏切道改良促進法に基づく改良指定箇所(カルテ踏切等)において、立体交差化や遮断機整備、第4種踏切道の安全対策(一旦停止を促す設備整備等)が計画的に進められています。
物流事業者が注視すべき今後の焦点
- 災害原因による輸送障害の抑止策
- 風水害や豪雪などの気象災害による輸送障害が2,260件と高い割合を占めており、激甚化する気象リスクに対して鉄道インフラの早期復旧体制や防護工がどのように強化されるかが焦点となります。
- 鉄道貨物寸断時におけるBCP代替輸送の連携
- 輸送障害発生時にトラック等への代替輸送(代行輸送)へ円滑に切り替えるための官民連携やプラットフォーム整備の進展状況は、本発表資料単体では示されておらず、今後の業界動向として注視されます。
- 第4種踏切道をはじめとする危険踏切の統廃合・保安対策の進捗
- 踏切事故のうち警報機・遮断機のない第4種踏切道での発生が18件(9.8%)確認されており、地域鉄道等における対策補助の活用状況や統廃合の推移が続報のポイントになります。
モーダルシフト推進とBCP代替輸送を巡る業界動向
- 鉄道貨物モーダルシフト目標と実績の乖離
- 政府の地球温暖化対策計画において2030年度の鉄道貨物輸送量は年間256.4億トンキロが目標とされていますが、2024年度実績は163.6億トンキロにとどまり、目標達成に向けた輸送枠の確保や利便性向上が課題となっています。
- トラック・鉄道の連携プラットフォームの胎動
- 鉄道寸断時のBCP対策として、求貨求車ネットワークと鉄道輸送枠をデジタル上で一元管理し、有事の際に代替トラックを即座に手配する民間連携サービス(トランコムとJR貨物ロジ・ソリューションズによる「トラ∞レール」など)の運用が開始されています。
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出典
- 発表主体: 鉄道局安全監理官室 / 発表日: 2026-09-08
- 報道発表資料(PDF)
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