関東運輸局管内でトラック運送事業者16社が処分、事業停止や200日車超も
関東運輸局は2026年7月、管内のトラック運送事業者16社に対する行政処分状況を公表しました。
今回の公表では、情報提供や重大事故、公安委員会・労働局からの通報などを端緒として実施された監査に基づき、事業停止60日間を伴う処分や200日車を超える輸送施設の使用停止など、極めて重い処分が複数下されています。
点呼の未実施・不実記載をはじめ、勤務時間等基準告示の遵守違反、指導監督や適性診断の未受診、点検整備の不備など、基本的な運行管理・安全管理体制全般にわたる複合的な違反が多くの事業者で確認されました。
処分の内訳:事業停止1社、車両使用停止14社、文書警告1社
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 事業停止(60日間)及び輸送施設の使用停止・輸送の安全確保命令 | 1 | 全事業用自動車の使用が停止され、営業所における運送事業の継続が2か月間にわたり完全にストップする極めて重大な状態 |
| 輸送施設の使用停止(車両使用停止) | 14 | 違反の規模に応じた一定期間、対象営業所の事業用自動車の使用が差し止められ、稼働停止による実務影響が生じる状態 |
| 文書警告 | 1 | 車両停止や点数付与は伴わないものの、違反事実が文書により厳重注意され、再発防止の徹底が求められる状態 |
日車数と違反点数の仕組み:累積による事業停止・許可取消リスク
輸送施設の使用停止処分で用いられる「日車(にっしゃ)」は、事業用自動車の使用停止規模を示す単位であり、例えば10台を10日間使用停止にする場合は100日車となります。
違反点数は原則として使用停止10日車ごとに1点が付与され、同一運輸局管内で過去3年間にわたり累積されます。
累積点数が51点〜80点に達すると事業停止処分、81点以上で事業許可取消処分に直結するため、日車数の大きい処分や累積点数の加算は事業継続に決定的な影響を及ぼします。
主な違反類型:点呼・改善基準告示・過労運転防止・法定教育に不備集中
点呼の実施義務違反・不実記載(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条)
運送事業者には、乗務前後に運行管理者等が対面等で点呼を実施し、運転者の健康状態や酒気帯びの有無を確認して記録・保存することが義務付けられています(本通達・法令基準)。
今回の処分一覧では、点呼そのものを実施していない不備や記載漏れに加え、点呼記録に虚偽の記載を行う不実記載が確認されました。
自社点検においては、対面点呼やIT点呼・遠隔点呼等の客観的なログ(アルコール検知結果や日時データ)と点呼記録簿が完全に一致しているかを厳密に照合・点検することが求められます。
勤務時間等基準告示の遵守違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項)
事業者は、運転者の過労運転を防止するため、拘束時間、休息期間、運転時間等の基準を定めた「勤務時間等基準告示(改善基準告示)」を遵守して運行を管理しなければなりません。
今回の事案では、拘束時間の上限超過や休息期間の不足など、告示基準およびなお書きに違反した運行実態が多数の事業者で認められました。
自社点検では、運行記録計(デジタコ等)のデータや業務記録から実労働時間・拘束時間を精査し、過密な運行計画の見直しとリアルタイムな労務把握を行う体制の確認が必要です。
疾病のおそれのある業務・過労運転防止(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項)
事業者は、疾病、疲労その他の理由により安全な運転ができないおそれがある運転者を事業用自動車に乗務させてはならないと定められています。
今回の処分では、健康状態に疑義があるドライバーの乗務継続や過労状態の放置など、健康起因事故に直結しかねない管理不備が複数社で発覚しました。
定期健康診断の受診徹底だけでなく、点呼時の体調確認や問診結果を記録し、異常が認められる場合に確実に乗務を見合わせる判断フローの確立が着眼点となります。
運転者・初任・高齢運転者に対する指導監督および適性診断受診義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項・第2項)
事業者は、運転者に対して適切な指導監督を実施するほか、初任運転者や高齢運転者に対して特定の指導および適性診断を受診させることが義務付けられています。
一覧中では、一般的な指導監督の未実施・記録不備にとどまらず、初任者や高齢者に対する特別指導や適性診断の受診を怠っていた事例が目立ちました。
対象ドライバーの入社時や加齢に応じた受診スケジュールを管理し、指導記録の法定記載事項に漏れがないかを定期点検することが重要です。
定期点検整備・点検記録簿の管理不備(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条の3、道路運送車両法第48条等)
事業者は、保有する事業用自動車について日常点検および定期点検整備を確実に実施し、点検整備記録簿を適正に作成・保存しなければなりません。
今回の監査では、定期点検の未実施や記録簿の不備・保存義務違反が多くの事業者で確認されました。
点検サイクルの台帳管理とともに、整備管理者が機能しているか、整備管理者研修を定期受講しているかを点検することが求められます。
その他の違反類型として、以下の項目が確認されています。
- 業務の記録義務違反・不実記載・保存義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)
- 運行記録計による記録義務違反・改ざん・不実記録(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条)
- 運行指示書の作成義務違反・記載事項違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の3)
- 整備管理者の選任届出・研修受講義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条の3、第3条の5、道路運送車両法第52条)
- 運行管理者の解任届出・講習受講義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第19条、第23条第1項)
- 事業計画の変更認可・事前届出・事後届出違反(貨物自動車運送事業法第9条第1項・第3項)
- 過積載運送(貨物自動車運送事業法第15条第3項)
- 損害賠償の支払能力確保義務違反(貨物自動車運送事業法施行規則第14条)
- 報告義務違反(貨物自動車運送事業法第60条第1項)
- 自動車に関する表示義務違反(道路運送法第95条)
注目事例:情報提供や重大事故から発覚した大規模処分
事例1: 事業停止60日間・輸送の安全確保命令と累積70点(株式会社モアライフ / 東京都葛飾区)
- 監査の端緒: 法令違反の疑いがある旨の情報提供を受けて監査を実施。
- 違反の内容: 点呼の実施義務違反、疾病のおそれのある業務、業務記録の不備、運転者・高齢運転者に対する指導監督違反および適性診断受診義務違反、日常点検・定期点検整備の不備、報告義務違反、表示義務違反など合計10件の違反が確認されました。
- 処分結果: 事業停止60日間、輸送施設の使用停止(98日車)、輸送の安全確保命令、処分点数70点。
- 教訓: 情報提供を端緒として運行・労務・車両の全般に及ぶ重大な管理不備が暴かれ、累積70点という事業存続を揺るがす極めて重い処分につながっています。
事例2: 死亡事故端緒の監査で改ざん発覚、233日車の使用停止(K.TransDrive株式会社 / 埼玉県蓮田市)
- 監査の端緒: 死亡事故が発生した旨の公安委員会からの通知を端緒として監査を実施。
- 違反の内容: 勤務時間等基準告示の遵守違反、点呼実施違反に加え、点呼記録の不実記載、業務記録の不実記載、運行記録計(タコグラフ)による記録の改ざん・不実記録、事業計画の変更認可違反など合計10件の違反が発覚しました。
- 処分結果: 輸送施設の使用停止(233日車)、処分点数24点。
- 教訓: 重大事故を端緒とする監査において、記録の不実記載や改ざん行為は厳しく追求され、長期の車両停止処分につながることが示されています。
事例3: 死亡事故から勤務時間や点呼違反など7件が発覚(株式会社小林運輸 / 埼玉県越谷市)
- 監査の端緒: 死亡事故の発生を端緒として監査を実施。
- 違反の内容: 勤務時間等基準告示違反、疾病のおそれのある業務、点呼違反、運行記録計の記録義務違反、運行指示書の作成義務違反、運転者指導監督違反、定期点検整備違反の7件が確認されました。
- 処分結果: 輸送施設の使用停止(90日車)、処分点数9点。
- 教訓: 事故発生時には運行管理・労務管理・車両整備状況が包括的に調査されるため、日常的な管理手順の遵守が不可欠です。
実務チェックポイント:行政処分一覧から抽出した重点点検項目
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 点呼の確実な実施と記録 | 輸送安全規則第7条 | 乗務前後の対面・IT点呼記録と運行データの突合 | 輸送施設の使用停止・事業停止 |
| 点呼記録の虚偽記載の排除 | 輸送安全規則第7条第5項 | 点呼簿とアルコール検知器ログ・出退勤時刻の照合 | 輸送施設の使用停止・処分点数加算 |
| 改善基準告示の遵守(拘束・休息・運転時間) | 輸送安全規則第3条第4項 | デジタコ運行記録と勤務割表による拘束時間等の精査 | 輸送施設の使用停止・文書警告 |
| 疾病・過労運転の防止と乗務判断 | 輸送安全規則第3条第6項 | 健康診断受診結果および点呼時の体調確認記録の確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 業務記録(日報)の記載・保存・改ざん防止 | 輸送安全規則第8条 | 運転日報の必要記載事項(発着日時・経路等)の確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 運行記録計による記録と適正管理 | 輸送安全規則第9条 | タコグラフの装着・記録状況および不実記録の有無確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 運行指示書の作成・指示・携行 | 輸送安全規則第9条の3 | 2日以上の運行等における指示書作成と携行実態の確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 初任・高齢運転者への特別指導監督 | 輸送安全規則第10条第2項 | 指導実施記録簿と法定12項目のカリキュラム履行確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 初任・高齢運転者の適性診断受診 | 輸送安全規則第10条第2項 | NASVA等の適性診断受診証明書と受診期日の突合 | 輸送施設の使用停止 |
| 定期点検整備の計画的実施と記録簿保存 | 道路運送車両法第48条・第49条 | 3か月・12か月点検整備記録簿の記載および保存確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 整備管理者・運行管理者の選解任と法定研修 | 輸送安全規則第3条の5・第23条等 | 選解任届出控えおよび定期講習・研修の修了証確認 | 輸送施設の使用停止 |
| 過積載運送の防止 | 貨物自動車運送事業法第15条第3項 | 積載伝票・計量器データと車両最大積載量の照合 | 輸送施設の使用停止 |
| 事業計画変更の認可・届出管理 | 貨物自動車運送事業法第9条 | 営業所・車庫・車両増減等の認可書・届出控えの確認 | 輸送施設の使用停止 |
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