四国運輸局が貸切バス事業者1社を処分、監査で8件の違反を確認
四国運輸局自動車運送事業安全監理室は2026年8月21日、貸切バス事業者である藤西阿観光株式会社(徳島県美馬市)の本社営業所に対し、道路運送法に基づく文書警告の行政処分を行いました。
監査方針に基づき実施された監査において、点呼の記録内容不適切、運転者等の業務記録不適切、乗務員等台帳の作成不備など、計8件の法令違反が確認されました。
今回の行政処分における処分日車数は40日車と算定され、行政処分基準に基づき文書警告が科されるとともに、営業所および事業者にそれぞれ違反点数4点が付与されました。
処分の内訳と事業者への影響
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 文書警告 | 1件 | 車両の使用停止には至らないものの、法令違反が行政記録に残り違反点数が累積する状態 |
処分日車数40日車と文書警告、累積違反点数の仕組み
行政処分における「日車(にっしゃ)」とは、事業用自動車が使用停止となる量定を表す単位であり、1日車は車両1台を1日使用停止にすることを指します。
貸切バス事業者の行政処分基準では、違反行為ごとに算出された基準日車等の合算である処分日車数が50日車以下の場合は、車両使用停止処分を行わず「文書警告」とする規定が設けられています。本件の処分日車数は40日車であったため、この規定に基づき文書警告となりました。
また、違反点数は処分日車数の合計10日車ごとに1点が付与される仕組みとなっており、今回は4点が事業者に付加されました。違反点数は原則として3年間累積し、累積点数が一定基準に達した場合は事業停止や許可取消といった事業継続を脅かす重大な処分へと発展します。
確認された主な違反類型と日常運行管理における着眼点
四国運輸局の監査では、安全運行の基本となる帳簿書類の管理や手続きを中心に計8件の違反が摘発されました。特に日常的な記録義務の形骸化が目立っています。
点呼記録の管理不備(旅客自動車運送事業運輸規則第24条第5項)
- 条項が求めていること
旅客自動車運送事業運輸規則第24条第5項では、運行管理者等が乗務前および乗務後の運転者に対して対面等による点呼を実施し、酒気帯びの有無、疾病・疲労等の健康状態、日常点検の実施状況などを確認した上で、その結果を遅滞なく正確に点呼記録簿へ記録・保存することを義務付けています。 - 今回確認された不備の具体的内容
藤西阿観光株式会社の本社営業所において、運転者等に対する点呼の実施結果について、記録すべき所定事項の記入漏れや不正確な記録が存在するなど、記録内容が不適切であった事実が確認されました。 - 自社点検の着眼点
点呼簿の各項目(アルコール検知器による測定結果、体調の報告、日常点検結果、運行指示内容など)が形骸化せず、運行の都度漏れなく記載されているかを確認する必要があります。手書き管理の場合は記入漏れや事後作成が起きやすいため、アルコールチェッカー等の客観的ログと連動した記録体制の構築が推奨されます。
乗務員等台帳の作成・記載不備(旅客自動車運送事業運輸規則第37条第1項)
- 条項が求めていること
旅客自動車運送事業運輸規則第37条第1項は、事業者が営業所ごとに運転者等の乗務員台帳を作成し、運転者の雇入れ年月日、運転免許の保有区分・番号、適性診断の受診状況、過去の事故歴などの法定事項を漏れなく記載・管理することを求めています。 - 今回確認された不備の具体的内容
対象営業所において、乗務員等台帳そのものの作成が確実になされていなかった違反(未作成)に加え、作成されていた台帳についても法令で定められた必須記載事項の記録が不適切である不備が重複して確認されました。 - 自社点検の着眼点
乗務員が新規雇用された際や免許更新・適性診断受診の都度、台帳情報が最新状態に更新されているか確認体制を総点検する必要があります。ドライバー台帳の作成漏れや法定記載事項の空白は、監査時に基礎的な管理体制の欠落として厳しく指摘されます。
運転者等の業務記録の不備(旅客自動車運送事業運輸規則第25条第1項・第2項・第4項)
- 条項が求めていること
旅客自動車運送事業運輸規則第25条は、事業者が運転者の乗務について、乗務した事業用自動車の番号、乗務の開始・終了の日時および地点、主な経過地点、運転を交替した場合はその地点と日時などを正確に記録させ、その記録を一定期間保存することを定めています。 - 今回確認された不備の具体的内容
本社営業所の運行において、運転者が作成すべき業務の記録(乗務日報等)において定められた所定の記録事項が適切に記載されておらず、運行実態を客観的に証明できない状態になっていたことが指摘されました。 - 自社点検の着眼点
日報上の発着時刻、運行経路、休憩場所および休憩時間などの必須項目が漏れなく記載されているかを日常的に照合点検する仕組みが必要です。運行記録計のデータと乗務記録の整合性が取れていない場合、不適切な運用とみなされるリスクがあります。
運行記録計による記録の不徹底(旅客自動車運送事業運輸規則第26条第1項)
- 条項が求めていること
旅客自動車運送事業運輸規則第26条第1項では、事業用自動車の運行時に運行記録計(タコグラフ)を作動させ、瞬間速度、運行距離および運行時間を確実に記録・保存することを事業者に義務付けています。 - 今回確認された不備の具体的内容
配置車両の運行において、運行記録計による記録が確実に行われていない運行が存在したことが監査によって確認されました。 - 自社点検の着眼点
運行記録計の機器故障やチャート紙の未装着、デジタコのデータ欠損が放置されていないか、運行前点検および帰庫時のデータ吸い上げ実務を点検する必要があります。無記録運行は安全管理の基本を放棄したと判断され、重い量定につながります。
その他に確認された違反類型一覧
上記の上位違反のほか、同社に対しては以下の管理・届出関連の違反が確認され、処分日車数の算定対象となりました。
- 運送引受書の記載不適切(運輸規則第7条の2第1項)
- 運送の引受けに際して交付する運送引受書において、法定の記載事項が適切に記載されていなかった不備。
- 運行管理者の補助者解任の未届出(運輸規則第68条)
- 貸切バス事業者に義務付けられている運行管理者補助者の解任に際し、管轄運輸支局長等への所定の届出手続きを怠っていた不備。
- 輸送の安全にかかわる公表情報の未報告(運輸規則第47条の7第1項)
- 道路運送法第29条の3および関係省令に基づき求められる、輸送の安全に関する公表事項について、所管行政庁への報告を行っていなかった不備。
四国運輸局管内における行政処分事例と実務上の教訓
事例1: 藤西阿観光株式会社 本社営業所(徳島県美馬市)に対する文書警告
- 監査の端緒
四国運輸局が定める自動車運送事業の「監査方針」に基づき、2025年12月11日および2026年2月4日の2日間にわたって本社営業所に対する立入監査が実施されました。 - 確認された違反の内容
運送引受書の記載不適切、点呼記録の不適切、業務記録の不適切、運行記録計による記録の不徹底、乗務員等台帳の作成不備および記録不適切、運行管理者補助者の解任未届出、輸送の安全にかかわる公表情報の未報告という、合計8件に及ぶ帳簿書類・届出関連の法令違反が確認されました。 - 処分結果
処分日車数は合算で40日車と算定されたものの、一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分基準の規定に基づき、50日車以下であることから「文書警告」となりました。同時に、営業所および事業者に違反点数4点が付与されました。 - 読み取れる教訓
大事故や重大な過労運転違反が直接確認されなかった場合でも、日常の点呼記録、乗務日報、乗務員台帳、タコグラフといった法定記録の不備が重なると、1回の監査で40日車相当の違反が累積します。今回は文書警告にとどまり車両停止は免れたものの、付与された4点の違反点数は3年間累積するため、今後の再監査で追加の不備が見つかれば即座に車両使用停止等の重処分へ直結します。帳簿作成や行政手続きの徹底が急務です。
貸切バス事業者が直ちに点検すべき実務チェックポイント
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 運送引受書の記載内容 | 運輸規則第7条の2第1項 | 契約締結時に交付した運送引受書に法定必須項目が漏れなく網羅されているか照合する | 文書警告・処分日車数の加算 |
| 点呼の実施および記録 | 運輸規則第24条第5項 | 乗務前後の点呼簿において酒気帯び、体調、日常点検結果等の記録漏れがないか確認する | 文書警告・車両使用停止・累積点数付与 |
| 運転者等の業務記録 | 運輸規則第25条第1項・第2項・第4項 | 乗務日報の発着日時、経過地、交替地点などの法定記載事項が正しく記入されているか確認する | 文書警告・処分日車数の加算 |
| 運行記録計の作動と保存 | 運輸規則第26条第1項 | 全運行においてタコグラフが正常作動し、速度・距離・時間のデータが欠落なく保存されているか点検する | 文書警告・車両使用停止・処分日車数の加算 |
| 乗務員等台帳の作成 | 運輸規則第37条第1項 | 在籍する全運転者の台帳が営業所に確実に作成・配備されているか確認する | 文書警告・処分日車数の加算 |
| 乗務員等台帳の記載内容 | 運輸規則第37条第1項 | 運転免許区分、適性診断受診日、事故歴等の法定項目が最新情報で記入されているか点検する | 文書警告・処分日車数の加算 |
| 運行管理者補助者の届出 | 運輸規則第68条 | 補助者を選任または解任した際、遅滞なく運輸支局等へ届出書を提出しているか確認する | 文書警告・処分日車数の加算 |
| 輸送の安全情報の報告 | 運輸規則第47条の7第1項 | 事業年度終了後、自社公表した輸送の安全にかかわる情報を所管運輸支局等へ期限内に報告しているか確認する | 文書警告・処分日車数の加算 |
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出典
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の対応については行政機関の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
