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倉庫の人件費高騰2026|普通・冷蔵の経営比較と生産性を劇的に高めるDX手法

レポート更新日: 2026年6月19日

この記事の要点
  • 概要:2026年最新の倉庫業経営動向において、深刻な人手不足から人件費および外部派遣などの請負費用が急増しており、特に作業環境の過酷な冷蔵倉庫でそのコスト圧力が顕著になっています。
  • 実務への影響:倉庫オペレーターや荷主企業は、コスト上昇分の適正な価格転嫁を進めると同時に、ロケーション・スロット管理の最適化や高機能物流センター化による労働生産性(1人あたり営業収益)の向上が不可欠です。

2026年、日本の物流網はかつてない地殻変動の渦中にある。トラックドライバーの時間外労働規制強化に伴う輸送力不足、いわゆる「2026年問題」が本格化する中、スポットライトが当たっているのが、物流の結節点である「倉庫」だ。

荷物の滞留を防ぎ、いかに効率よく次の輸送モードへ引き渡すか。その成否を握る倉庫業界だが、その足元は深刻な人手不足と労務コストの急騰に脅かされている。本記事では、普通倉庫と冷蔵倉庫の経営指標を徹底比較し、浮き彫りになった課題と、この難局を切り抜けるための「現場DX」の具体策に迫る。


1. 限界に達する自社雇用、高騰し続ける「倉庫人件費」のリアル

倉庫業を営む企業にとって、最大の経営課題は「人の確保」だ。近年の最低賃金引き上げと労働人口の減少により、倉庫現場の求人倍率は高止まりを続けている。特に、フォークリフトオペレーターやピッキングスタッフの獲得競争は熾烈を極める。

普通倉庫と、マイナス20度以下の過酷な環境下で作業を行う冷蔵倉庫。この両者における「人件費(直接雇用費用)」の推移を比較すると、いずれの業態でも右肩上がりの推移をたどっていることが分かる。

人件費 比較
出典:国土交通省「令和6年度 倉庫事業経営指標(概況)」

普通倉庫では、多品種小口化するEC需要への対応から、ピッキングや検品といった荷役(にやく)プロセスに多くの人員を割かざるを得ない。結果として、人件費の絶対額は上昇の一途をたどる。

一方で冷蔵倉庫は、極寒の作業環境という特殊性から、普通倉庫以上に人材が集まりにくい。求人単価の上昇は普通倉庫を上回るペースで進行しており、固定費化する人件費は経営の自由度を著しく奪っている。詳細なデータについては、普通倉庫業の経営指標および冷蔵倉庫業の経営指標を参照されたい。

2. 外部依存の代償:請負費用の膨張が示す「二重苦」

自社での直接雇用が立ち行かなくなった倉庫事業者が頼るのが、人材派遣や業務委託といった「外部リソース」だ。しかし、この解決策はさらなるコスト負担となって跳ね返っている。

各業態における「請負費用(外部委託費)」の推移に目を向けると、その膨張ぶりは顕著だ。特に、季節波動や物量の増減に柔軟に対応せざるを得ない倉庫業において、請負費用の上昇は営業利益を直接的に圧迫する最大の要因となっている。

請負費用 比較
出典:国土交通省「令和6年度 倉庫事業経営指標(概況)」

この請負費用の急増は、倉庫事業者だけの問題にとどまらない。荷主に対する保管料や荷役料の値上げ交渉へと直結するからだ。実際に、物流コスト上昇の実態:企業向けサービス価格指数が示す荷主負担の変化を見ても、倉庫関連のサービス価格は過去最高水準を更新し続けている。

特に冷蔵倉庫では、冷凍食品の需要拡大に対して設備や人員が追いつかず、スポット派遣への依存度が高まりやすい。これが請負費用を押し上げ、利益率を押し下げる「悪循環」を生み出している。

3. 「労働生産性」の分岐点:1人あたり営業収益に見る二極化

コストがどれだけ上昇しようとも、それ以上の価値を生み出せていれば経営は健全だ。そこで、企業の「稼ぐ力」を示す重要指標である「1人あたり営業収益」を比較してみよう。

1人あたり営業収益 比較
出典:国土交通省「令和6年度 倉庫事業経営指標(概況)」

データが示すのは、普通倉庫と冷蔵倉庫の間にある明確な「稼ぎ方の構造差」だ。冷蔵倉庫は、高度な温度管理や特殊設備が必要とされるため、一般的に保管単価(保管料)が高く設定されている。そのため、1人あたり営業収益の絶対額は普通倉庫を大きく上回る。

しかし、手放しでは喜べない。営業収益は高くとも、前述した「人件費」と「請負費用」、さらには近年の電気料金高騰による施設維持費のダブルパンチにより、実際の経常利益率は極めて低い水準に抑え込まれているのが実態だ。

一方で、普通倉庫は1人あたりの営業収益こそ冷蔵倉庫に及ばないものの、高層ラックの導入や、保管スペースの有効活用による効率化を進めることで、着実に生産性を向上させている企業も多い。単にスペースを貸し出すだけの「賃倉庫」から、高度な配送・流通加工機能を備えた「物流センター」へと脱皮できるかどうかが、成長の分岐点となっている。

4. コスト高を突破する「現場DX」と「オペレーション改革」

人件費や請負費用の高騰という外部要因は、個別企業がコントロールできるものではない。ならば、倉庫事業者が生き残るために取り組むべきは、徹底的な「庫内オペレーションの効率化」と「労働生産性の向上」だ。具体的には、以下の3つのアプローチが不可欠となる。

① 「ロケーション管理」と「スロット管理」のデジタル化

倉庫内のどこに、何を、どれだけ配置するか。この最適化を感覚値で行っている現場は未だに多い。作業員の「歩行ロス」や「商品を探す時間」は、ダイレクトに人件費の無駄遣いにつながる。

  • ロケーション管理の徹底:固定ロケーションからフリーロケーションへの移行、WMS(倉庫管理システム)を用いたリアルタイムの棚番管理により、作業効率を劇的に向上させる。
  • スロット管理の最適化:季節波動や出荷頻度(ABC分析)に応じて、高頻度で出荷される商品を動線の短い手前側に配置し直す。これだけで、ピッキング工数を最大3割削減可能だ。

② 「高機能物流センター」へのアップグレード

これからの時代、単純な保管スペースの提供だけでは荷主に選ばれない。AIやロボティクス、自動搬送車(AGV)などを備えた高機能物流センターへと進化させることが求められる。初期投資はかさむものの、倉庫税制などの優遇措置や特例措置を活用すれば、実質的な財務負担を軽減しつつDXを進めることができる。

③ 先進事例に学ぶ「付加価値型物流」への転換

単に「モノを右から左へ流す」だけでなく、荷主のビジネスプロセスに深く食い込み、全体最適なサプライチェーンを共同で構築する姿勢が必要だ。花王やトラスコ中山の事例が示すように、物流部門を「コストセンター」から「企業の競争力の源泉(プロフィットセンター)」へと変貌させる思想が、これからの倉庫事業者にも求められている。

5. まとめ:問われる「適正転嫁」と「自律的改善」の両輪

2026年問題という嵐が吹き荒れる中、倉庫業はインフラとしての重要性をますます高めている。しかし、人件費と請負費用の高騰を自社努力だけで吸収するのには限界がある。

今こそ、倉庫業法に則った適正な事業運営を維持しつつ、荷主企業との対話を通じて「労務コスト・電気代上昇分の適正な価格転嫁」を進める時だ。そして同時に、ロケーション管理やスロット管理といった「現場のムダ」を徹底して排除するデジタル投資を緩めてはならない。この「価格交渉」と「自社改善」の両輪を回し続けた企業だけが、次の10年を勝ち抜くことができる。


出典: 国土交通省「令和6年度 倉庫事業経営指標(概況)」 / 統計最終更新: 2024年度

よくある質問(FAQ)

Q. 普通倉庫と冷蔵倉庫で、人件費や請負費用の動向にどのような違いがありますか?

A. 冷蔵倉庫はマイナス20度以下という過酷な労働環境であるため、普通倉庫以上に直接雇用が難しく、派遣などの外部依存度(請負費用)が高まる傾向にあります。人件費・請負費用の合計値は、冷蔵倉庫の方が普通倉庫よりも高水準で推移しており、経営を圧迫する最大の要因となっています。

Q. 倉庫業における「1人あたり営業収益」を高めるための最優先課題は何ですか?

A. 単なる「保管スペースの提供」から、流通加工や仕分けなどの付加価値を生む「高機能物流センター」への転換です。これに加え、庫内オペレーションでの「歩行ロス」や「探索ロス」を徹底的に排除するロケーション管理やスロット管理のシステム化(DX)が最優先課題といえます。

Q. 高騰する倉庫コストや人件費は、荷主企業へ転嫁できているのでしょうか?

A. 一部で交渉は進むものの、依然として荷主側の抵抗は強く、十分な転嫁には至っていません。しかし、2026年問題に伴う輸送力不足が深刻化する中、荷主側も「運べない・保管できない」リスクを避けるため、適正運賃や適正保管料の受け入れ、さらには共同物流への参画といった妥協を迫られ始めています。

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この統計レポートは政府統計局公開(e-Stat)に基づき、LogiShift が独自に解析・生成したものです。

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