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Home > ニュース・海外> 国交省・RTI活用事例|デンソー・JPRが挑む「脱バラ積み」国際物流改革
ニュース・海外 2026年2月19日

国交省・RTI活用事例|デンソー・JPRが挑む「脱バラ積み」国際物流改革

国交省/RTI活用で国際物流高度化へ、デンソーなど4社の事例を共有

国土交通省が主催した「リターナブル物流容器(RTI)の活用による国際物流の効率化・高度化に資する事例の共有を行うセミナー」は、これからの国際物流のあり方を根本から問う内容となりました。

2030年度までの「物流の集中改革期間」において、国内輸送の改善はもちろんですが、国際物流における「手荷役(手作業での積み降ろし)」の削減は喫緊の課題です。これまでの国際物流は、海上運賃を抑制するためにコンテナ内に隙間なく荷物を詰め込む「バラ積み(フロアロード)」が常識でした。しかし、深刻な人手不足と物流2024年問題を経て、この常識が崩れつつあります。

本記事では、国交省のセミナーで発表されたデンソー、JPR、XYZ Robotics、東洋運輸の4社の事例を深掘りし、なぜ今「RTI(通い箱・パレット等)」への転換が必要なのか、その業界インパクトを解説します。

国際物流における「RTI活用」が急務な理由

これまでの国際物流は「積載効率」が最優先でした。しかし、到着地(輸入側)でのデバンニング(荷降ろし)作業にかかる人件費の高騰や、ドライバーの待機時間が限界に達しており、「トータルコストとリードタイム」で見るとバラ積みは非効率になりつつあります。

そこで注目されているのがRTI(Returnable Transport Items:リターナブル物流容器)です。パレット、コンテナ、専用ラックなどを循環利用することで、以下の実現を目指します。

  1. 荷役時間の短縮: パレチゼーションによるフォークリフト活用
  2. 環境負荷低減: ワンウェイ(使い捨て)梱包材の廃止
  3. データ連携: 容器単位でのトレーサビリティ確保

セミナーで共有された主要4社の取り組み

今回のセミナーで報告された4社の事例は、それぞれ異なるアプローチで国際物流の課題解決を図っています。

企業・団体名 取り組みの概要 具体的な成果・目標
デンソー グローバルな通い容器のデータ一元管理 187社・62拠点で約500万箱を管理。紛失防止と在庫適正化を実現
JPR・コメリ・日通 日中一貫パレチゼーションの導入 40ftコンテナ1本当たりの荷卸し時間を約2時間短縮。年間170tのCO2削減
XYZ Robotics デバンニングロボットの社会実装 ニトリや丸紅ロジなどで導入。過酷な荷降ろし作業の自動化を推進
東洋運輸 折りたたみ式ラック「S-RACK」の活用 2026年度上期に国際一貫輸送サービスを開始予定。大型・不定形貨物に対応

先進事例の詳細解説

ここからは、各社の取り組みがなぜ画期的であり、現場にどのような変革をもたらすのかを詳しく見ていきます。

デンソー:500万箱を可視化する「QRコード管理」

自動車部品大手のデンソーは、グループ国内外187社、62拠点という広大なサプライチェーンを持っています。ここで運用される通い箱(RTI)の数は約500万箱に上ります。

課題と解決策

従来、通い箱は「資産」でありながら管理が曖昧になりがちで、紛失や滞留が頻発していました。デンソーはこれら全てにQRコードを付与し、クラウド上で個体管理を行うシステムを構築。
「いつ」「どこに」「どの箱が」「何個あるか」をリアルタイムで把握することで、容器の過剰在庫を削減し、輸送効率を最大化しています。これは、単なる容器管理を超えたサプライチェーン全体のデジタルツイン化の基盤となっています。

JPR・コメリ・日本通運:日中一貫パレチゼーションの衝撃

物流パレットレンタルのJPR(日本パレットレンタル)らが主導する事例は、最も即効性のある「手荷役削減」のモデルケースです。

バラ積みからの脱却

中国の工場から日本の店舗・倉庫まで、一度も荷物をパレットから降ろさずに輸送する「一貫パレチゼーション」を実施しました。
従来、積載効率を上げるためにコンテナ内ではバラ積みにされていた商品をパレット積みへ変更することで、積載率は若干下がります。しかし、日本の着地側でのデバンニング作業は劇的に改善しました。

  • 時間短縮: 40ftコンテナ1本あたり約2時間の短縮
  • CO2削減: 年間170トンの削減(車両待機時間の減少等含む)

「海上運賃の安さ」よりも「国内物流の円滑化」を優先したこの判断は、日本の人口減少社会における新たなスタンダードになる可能性があります。

XYZ Robotics & 東洋運輸:自動化と専用機材の進化

ハードウェア面での進化も見逃せません。

デバンニングロボット「Rocky One」

XYZ Roboticsが提供する「Rocky One」は、パレット化されていないバラ積み貨物の荷降ろしを自動化するソリューションです。丸紅ロジスティクスやニトリグループでの導入が進んでおり、RTI化が難しい貨物に対する現実解として注目されています。

併せて読む: FedExが本格採用。荷降ろしロボット「Scoop」が描く物流の未来図

国際一貫輸送ラック「S-RACK」

東洋運輸が開発した「S-RACK」は、段積みが難しい不定形貨物や重量物に対応する折りたたみ式ラックです。コンテナへの充填効率を高めつつ、リターナブル利用を前提とした設計で、2026年度からの本格運用を目指しています。

業界各プレイヤーへの具体的な影響

国交省がRTI活用を推進することで、物流業界の各プレイヤーにはどのような影響があるのでしょうか。

1. 荷主企業(メーカー・小売)

  • コスト構造の変化: 海上運賃単体ではコスト増になる可能性がありますが、国内デバンニング費用、トラック待機料、検品コストを含めたトータルロジスティクスコスト(TLC)での評価が必要です。
  • 梱包設計の見直し: コンテナサイズではなく、パレットサイズ(1100×1100など)に最適化した製品梱包(カートンサイズ)の再設計が求められます。

2. 物流事業者(倉庫・3PL)

  • 自動化への投資: 入荷形態がパレットやRTIに標準化されることで、AGV(無人搬送車)や自動倉庫の導入ハードルが下がります。
  • 付加価値の転換: 「手作業での荷降ろし」という労働集約的な売上から、「RTIの洗浄・管理・運用代行」というサービスへの転換がビジネスチャンスになります。

3. 運送会社

  • 待機時間の解消: 荷役時間が数時間から数十分へ短縮されることで、車両回転率が向上します。これは2024年問題への直接的な解決策となります。

LogiShiftの視点:RTIがもたらす「フィジカルインターネット」への第一歩

ここからは、今回のニュースをLogiShift独自の視点で分析します。単なる「容器の話」として捉えると、本質を見誤ります。これは、「物流の規格化(Standardization)」によるフィジカルインターネット実現への布石です。

「積載率の呪縛」からの解放

長年、日本の輸入物流は「コンテナという箱にいかに空気を運ばないか」に囚われすぎていました。しかし、国内の人件費高騰と労働力不足により、「空気(隙間)を運んででも、作業時間を削る」方が経済合理的になりつつあります。このパラダイムシフトを経営層が理解できるかどうかが、今後の物流戦略の分かれ目です。

RTIは「動くデータキャリア」になる

デンソーの事例にあるように、RTIは単なる入れ物ではありません。RFIDやQRコードを付与することで、RTI自体が情報のキャリアとなります。
これにより、検品レスでの入荷や、在庫のリアルタイム把握が可能になります。将来的には、これらのデータが自動運転トラックの運行計画と連動し、港から倉庫までの完全無人輸送を実現するキーデバイスになるでしょう。

併せて読む: 米PlusAI上陸。レベル4自動運転トラックが日本の物流を変える

今後予想される課題:「戻り荷」と「標準化」

RTIの最大の課題は「空容器の回収(リターン)」です。
– 日本から中国への輸出品が少ない場合、空のパレットやコンテナだけを戻すコスト(空回送費)が発生します。
– これを解決するには、業界を超えた「RTIの共同利用(プールシステム)」の拡大が不可欠です。

自社専用の通い箱に固執せず、JPRのようなレンタルパレットや標準コンテナを活用し、業界全体で容器をシェアする仕組みに参加できるか。企業の「協調領域」へのスタンスが問われています。

まとめ:明日から意識すべき3つのポイント

国交省のセミナー事例から見えてきた、持続可能な国際物流のために意識すべきポイントは以下の通りです。

  1. TLC(トータルロジスティクスコスト)での評価
    • 海上運賃の上昇のみを見ず、荷役時間短縮やCO2削減を含めた全体最適でRTI導入を検討する。
  2. 標準化への追従
    • 自社独自の梱包仕様を見直し、国際標準パレットやRTIに適合するサイズ設計へシフトする。
  3. データ連携の準備
    • 物流容器を「資産」として管理し、トレーサビリティを確保するシステムの導入を検討する。

「バラ積み」から「RTI」への転換は、単なる荷姿の変更ではなく、物流プロセスの自動化・DX化への入り口です。他社の成功事例を参考に、自社のサプライチェーンを「標準化」の視点で見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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