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事例・インタビュー 2026年6月5日

コープさっぽろが配送を1日1便に削減し共同配送を加速させる

コープさっぽろが配送を1日1便に削減し共同配送を加速させる

日本物流団体連合会(物流連)は2026年6月5日、持続可能なサプライチェーンの構築に多大な貢献を果たした企業・団体を顕彰する「第1回日本物流大賞」の受賞企業を発表しました。

記念すべき第1回の大賞には、コープさっぽろ、北海道ロジサービス、エース、札幌軽量急送の4者による「『DX×匠の現場力』による物流構造改革」が選出されました。AIを用いた精緻な需要予測によって、従来の1日2便配送を「1便化」へと削減し、それによって生じた余剰リソースを地域全体でシェアリングする画期的な仕組みが極めて高く評価されました。

本アワードは、従来の「物流環境大賞」と「モーダルシフト優良事業者大賞」を統合し、生産性の向上と脱炭素化を総合評価する制度へと刷新されたものです。2024年問題や、2026年4月に本格施行された改正物流効率化法(CLO選任義務化など)という未曾有の環境変化に直面する中、この受賞事例は「個社単独の最適化」から「地域・業界全体の協調」へと物流のあり方をシフトさせる試金石となります。本記事では、この歴史的なニュースの背景、サプライチェーンの各プレイヤーに与える影響、そして今後の生存戦略に向けた独自考察を徹底解説します。


第1回「日本物流大賞」が示す新たな評価基準と受賞企業

今回の日本物流大賞の創設は、単なる表彰制度の統合にとどまりません。脱炭素(カーボンニュートラル)の達成と、労働力不足を背景とした生産性向上(2024年・2026年問題対応)を一つの評価軸に統合した、国や業界全体の新たな「指針」といえます。

まずは、第1回日本物流大賞の実施概要と受賞企業の実態をデータで整理します。

表彰制度の刷新に込められた物流連の狙い

従来の評価制度では、環境負荷低減(モーダルシフト等)と、現場の労働環境改善や生産性向上というテーマが、個別の枠組みで評価されがちでした。しかし、実務においてこの両者は表裏一体です。配送効率の向上は、CO2排出量の削減(環境)と、ドライバーの拘束時間短縮(働き方改革)を同時に実現します。

今回の制度刷新は、こうした「総合的な持続可能性」を定量・定性の双方から厳格に審査・評価することを目的としています。初年度である今回は41件の応募が寄せられ、いずれも多様なアプローチから物流の構造改革にアプローチした先進的事例が集まりました。

ニュースの基本情報と選考データ

第1回日本物流大賞の基本情報と選考プロセスの詳細は、以下の通りです。

項目 詳細内容 業界に与える示唆
発表主体 一般社団法人 日本物流団体連合会(物流連) 業界トップが一丸となり持続可能な物流の「目指すべき姿」を定義。
発表日 2026年6月5日 改正物流効率化法が施行された直後の象徴的なアワード。
応募件数 41件(鉄道・海上モーダルシフトが多数を占める) 多様な工夫(異業種連携、往復・共同輸送など)がみられた。
評価の軸 先進技術(DX)と熟練者の現場力(匠)の融合 単なる自動化ではなく「現場の運用変更」までやり切る姿勢を重視。

第1回「日本物流大賞」全受賞企業一覧

応募総数41件の中から選ばれた、大賞および各部門賞・特別賞の一覧は以下の通りです。

受賞区分 企業・団体名 対象プロジェクト名
大賞 北海道ロジサービス、コープさっぽろ、エース、札幌軽量急送 「DX×匠の現場力」による物流構造改革~AI需要予測による1日2便配送の1便化と地域シェアリングモデルの構築~
モーダルシフト賞 北越コーポレーション、ダイハツ工業、北越物流、日本通運、日本貨物鉄道 貨物鉄道を活用した紙と自動車、異業種ラウンドマッチング輸送~異業種連携による効率的で持続可能な輸送体系を構築~
事業者間連携賞 関光ロジNEXT、豊島、MNインターファッション、ヤギ、東京九州フェリー 3商社連携による輸入貨物の海上モーダルシフトを活用した共同輸送
先進技術活用賞 三五、Mujin Japan 工場物流改革への挑戦(自動車部品の完成品搬送~保管~集荷~ピッキング完全自動化)
環境負荷低減賞 東京九州フェリー、赤城乳業、タイセイ、マリネックス 関東発九州向けアイスクリーム低温輸送モーダルシフト(赤城乳業のアイスを東京九州フェリーで九州へ)
働き方改革貢献賞 日本通運サステナブル・ソリューション推進部・埼玉支店、WHILL、ミライロ 「多様な人財が活躍する誰にもやさしい倉庫」~持続可能な物流(サステナブル・ソリューション)の創出~
特別賞 クラベ、豊田通商、パンテック ストレッチフィルムの水平リサイクル
特別賞 日本通運、損害保険ジャパン 南海トラフ地震 国際輸送BCPサービス
日本物流記者会賞 村田製作所、ローム、日本通運 電子部品業界初のEVトラックによる共同輸送

大賞事例から読み解くサプライチェーン各プレイヤーへの影響

今回の記念すべき大賞に輝いたコープさっぽろ、北海道ロジサービス、エース、札幌軽量急送の4者による取り組みは、従来の物流改善の枠組みを大きく超えています。

この「AI需要予測による配送1便化と地域シェアリング」の成功は、小売業者(荷主)、運送事業者、そしてテクノロジーを提供するSaaSベンダーなどのプレイヤーに対し、非常に具体的な変革を迫るものです。

1. 小売・荷主企業:予測を「現場オペレーション」に踏み込ませる覚悟

多くの企業において、AI需要予測の導入は「発注精度の向上」や「庫内在庫の削減」といった、社内完結の最適化で終わっていました。

しかし、コープさっぽろらが実行したのは、AI需要予測から導き出された荷量の平準化をベースに、店舗への配送ダイヤを「従来の1日2便から1便へ削減する」という、現場オペレーションそのものの根本的な見直しです。

営業と物流のサイロを破壊する

小売業における「1日2便配送」は、店舗側の「品揃えの維持」や「品出し作業の分散」という店舗都合(営業都合)から、これまで聖域化されていました。これを1便化するには、店舗運営側の理解と、一時的な品薄リスク・作業負担増を受け入れる覚悟が必要です。コープさっぽろは、AI需要予測データの裏付けによって「1便でも店舗オペレーションを維持できる」ことを証明し、この高いハードルを乗り越えました。

改正物流効率化法への適合モデル

2026年4月から本格始動した「特定荷主」に対するCLO(物流統括管理者)の選任義務化は、荷主企業が主体となって中長期的な物流効率化計画を立てることを求めています。今回のコープさっぽろの事例は、まさにCLOが社内の営業部門や店舗運営部門を巻き込んで強力なリーダーシップを発揮した好例であり、他業界の荷主企業が踏襲すべき「物流の経営課題化」の具体像を示しています。

参考記事: AI需要予測とは?仕組みから導入メリット・失敗しない選び方まで徹底解説

2. 運送事業者:余剰リソースを外販する「地域シェアリング」モデル

配送効率化を進めて「便数が減る」ということは、運送事業者(北海道ロジサービス、エース、札幌軽量急送)にとっては一見すると「売上(稼働)の減少」に直結するように思えます。しかし、本事例の真の革新性は、1便化によって浮いた車両とドライバーの空きリソースを、地域の他の事業者のために共有する「地域シェアリングモデル」を構築した点にあります。

新たな収益源の創出と車両効率の最大化

運送事業者は、自社のトラックを「特定の荷主専用」のクローズドな資産として遊ばせておくのではなく、地域の共同配送や他社貨物の混載(スポット輸送など)に活用することで、車両1台あたりの積載率と稼働効率を極限まで高めることが可能となります。

ドライバー不足への強力な処方箋

1日2便の配送を1便に集約したことで、ドライバーの拘束時間が大幅に短縮され、改正改善基準告示の厳しい労働時間規制をクリアすることが容易になります。空いた時間や車両をシェアリングに回すことで、人手不足に悩む地域物流の「受け皿」としての機能を果たし、運送事業者としての社会的プレゼンスと事業の持続可能性を飛躍的に向上させました。

参考記事: AI配車完全ガイド|導入メリットと失敗しない選び方を徹底解説

3. テクノロジーベンダー:全体最適に応える「統合ソリューション」

先進技術活用賞を受賞した三五とMujin Japanによる「自動車部品の完全自動化(搬送〜保管〜集荷〜ピッキング)」の事例が示すように、テクノロジーベンダーに求められる要求水準は、「特定のハードウェアを部分的に省人化する」段階から、「サプライチェーン全体を見通したトータルシステムとしての統合」へと完全にシフトしています。

ハードとソフト、予測と現場の「シームレスな融合」

AI需要予測を構築するシステムと、配車計画を作るTMS、そして現場の運送事業者の運行管理や倉庫のWMSがバラバラのシステムで稼働していては、リアルタイムな軌道修正(ダイナミックな1便化やシェアリング)は実現しません。ベンダーは、API連携などを通じた「オープンなシステム間接続」を最初から設計思想に組み込む必要があります。

熟練工の経験をデジタルに組み込むアプローチ

大賞のテーマ「DX×匠の現場力」にある通り、システムをただ導入するだけでなく、長年現場を支えてきた配車担当者やドライバーの「暗黙知(匠の技術)」をいかにルール化し、AIに学習・反映させるかが、現場への定着を左右します。こうした現場に寄り添う「伴走型の開発力」こそが、次世代の物流コンペティションにおいてテクノロジー企業が選ばれる条件となります。


LogiShiftの視点(独自考察):物流は「自社利益の追求」から「社会インフラの防衛」へ

今回の「第1回日本物流大賞」の受賞顔ぶれ、そして大賞を受賞した「地域シェアリングモデル」を俯瞰したとき、日本のロジスティクスが根本的なパラダイムシフトを迎えていることが極めて鮮明に浮かび上がってきます。

ここからは、専門的視点から、このニュースの背後に潜む「構造的変化」と、今後企業がとるべき次世代の戦略を考察します。

「競争」から「協調」への完全なるパラダイムシフト

これまでの日本の物流は、いかにライバルに勝つか、いかに自社だけの運賃を抑えて優位性を保つかという「競争領域」として捉えられていました。しかし、国土交通省の統計が示すように、日本のトラックの平均積載率は「約38%台」という、荷台の約6割が空気を運んでいる非効率極まりない「空気輸送」が常態化しています。

労働人口の急減と法規制の強化がダブルで押し寄せる中、個社単独での物流維持は完全に限界を迎えました。

共同物流で「空気輸送」を埋める

今回の受賞事例の多くは、この「空気輸送」を、ライバル企業や異業種同士がタッグを組んで解消しようとする取り組みです。
* モーダルシフト賞: 紙と自動車という、重量や荷姿が全く異なる「異業種」を貨物鉄道で組み合わせたラウンドマッチング。
* 事業者間連携賞: 3社の商社(通常は競合関係や異なる仕入れルートを持つ)が海上フェリーを活用して共同輸送。
* 日本物流記者会賞: 村田製作所とロームという電子部品のライバルメーカー同士が、EVトラックを共同利用。

これらの事例が証明しているのは、物流を「自社の優位性を競う競争領域」から、「社会インフラとして共同で守り抜く協調領域」へと再定義することの不可避性です。

参考記事: 積載率38%台を脱却する三菱食品らの共同配送は2026年必須対応

異業種混載(重軽混載)と「フィジカルインターネット」への布石

大賞の地域シェアリング、あるいはモーダルシフト賞における「異業種ラウンド輸送」は、まさに国が2030年を目指して推進する「フィジカルインターネット(物流インフラをインターネットの通信規格のように共有・標準化する思想)」の先進的な社会実装例です。

同業種での共同配送は、荷姿が統一されていて連携しやすい反面、「繁忙期が重なる(例:お中元やお歳暮期、飲料の夏期ピークなど)」という致命的な弱点があります。これに対し、異業種が手を組むことで、年間を通じた需要の平準化(ピークの分散)が可能になります。

また、かさばるが軽い「容積勝ち」の日用品と、小さくても重い「重量勝ち」の書籍や電子部品、食品を同じトラックに混載する「重軽混載」を実現できれば、トラックの容積と重量制限を限界まで使い切ることができ、積載率は飛躍的に向上します。花王や三菱食品ら卸大手9社が立ち上げた共同配送コンソーシアム「CODE」も、この異業種混載によって配送効率を20%以上向上させることを狙っています。

参考記事: 卸大手9社が共同配送へ!効率20%増を実現する異業種連携と3つの影響
参考記事: 花王・三菱食品ら9社が挑む!共同配送「CODE」が支線配送にもたらす3つの影響

拠点(ノード)の共有が切り拓く「アセットライト」な生存戦略

飲料大手であるサッポロとキリンが、神奈川エリアにおける全商品の共同配送と、物理的な拠点の集約(サッポロの営業機能をキリン川崎支店へ物理統合)に踏み切ったニュースは業界に衝撃を与えました。

今回のコープさっぽろの「地域シェアリング」も、自社専用の物流アセットを「他者にも開放し、また他者のアセットも利用する」という、物理拠点の共有(シェアード・ノード)の一形態です。

持続可能なサプライチェーンを築くためには、倉庫やトラックといった固定資産を自社だけで抱え込まず、アセットライト(資産を持たない・共有する)な体制へ移行することが、コストを変動費化し、急激な需要変動に対応するための必須の生存戦略となります。

参考記事: サッポロ・キリン共同配送の衝撃!拠点統合が現場に与える3つの影響


まとめ:明日から経営層と現場リーダーが実践すべき3つのアクション

第1回日本物流大賞の受賞事例は、けっして「大手企業だけの華々しい成功ストーリー」ではありません。そこで語られている「データを共有し、現場の古い運用を廃棄し、他者とリソースを分かち合う」という本質は、中小・中堅の物流現場でも十分に実践可能なものです。

この歴史的なゲームチェンジの波に取り残されないよう、明日から直ちに取り組むべきアクションを3点提示します。

1. 自社の「物流のサービスレベル(SLA)」を全社で疑う

「毎日決まった時間に納品する」「1日複数回配送する」といった、当たり前とされてきた商慣習が、どれだけトラックの空気輸送(積載率低下)を生み出しているかを客観的なデータとして可視化しましょう。営業部門や顧客に対し、AI需要予測に基づいた配送ダイヤの1便化やリードタイム延長の交渉を開始することが、CLO(物流統括管理者)の最重要任務となります。

2. 自社に「足りない隙間」と「提供できる余剰」を定義する

「自社の荷物は軽いのか、重いのか」「トラックの帰り便が空いているか」「倉庫に空きスペースはあるか」。自社の物流リソースの凹凸を明確に言語化・可視化することで、地域の同業者や異業種とマッチングを行う際、すぐに交渉のテーブルにつくことができます。自前主義を捨て、「インフラのシェア」を前提とした対話を開始しましょう。

3. データの「標準化」に今すぐ投資する

いつ他社や地域シェアリングプラットフォームとのアライアンスを求められてもスムーズに対応できるよう、自社の商品マスターコード、伝票の電子化、使用パレット(T11型など標準規格への統一)を今すぐ進めてください。標準化されたデータと荷姿こそが、持続可能な共同物流網(フィジカルインターネット)に相乗りするための「パスポート」となります。

物流は、一企業のみで抱え込んでコスト削減を競う時代を終えました。競合であれ異業種であれ、信頼できるパートナーと手を取り合い、持続可能なロジスティクスの仕組みを「共創」すること。この迅速な決断と変革の実行こそが、次代の覇者となるための唯一無二の羅針盤となるでしょう。


出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS

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監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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