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ニュース・海外 2026年4月15日

欧州Thule事例!42m超高層自動倉庫で実現する空間最大化と物流DX3つの戦略

欧州Thule事例!42m超高層自動倉庫で実現する空間最大化と物流DX3つの戦略

物流業界において「倉庫の空間価値」をどう最大化し、サプライチェーンの分断をいかに防ぐかは、経営層やDX推進担当者が直面する極めて重要なテーマです。特に日本では、地価高騰に伴う保管スペースの制約に加え、2024年問題やそれに続く2026年問題によって「モノを運ぶ・保管する」リソースそのものが枯渇しつつあります。

この課題に対し、圧倒的なスケールと最先端のアプローチで一つの最適解を示したのが、カーキャリアやアウトドア用品で世界を牽引するスウェーデンの製造大手Thule(トゥーレ)です。同社は物流自動化の世界的企業であるMecalux(メカルクス)と提携し、ポーランドのクシシュ・ヴィエルコポルスキに高さ42メートルに達する「ビル式(クラッドラック)」の超高層自動倉庫を建設することを発表しました。

なぜ今、日本企業が遠く離れた欧州の事例を知る必要があるのでしょうか。それは、このプロジェクトが単なる「巨大な倉庫の建設」ではなく、工場での生産から保管、そして出荷に至るプロセスを完全に自動化し、物流を「顧客満足度を高めるための戦略的武器」へと昇華させる次世代モデル(ファクトリー・ロジスティクス)を体現しているからです。本記事では、この先進的な事例を紐解きながら、日本の物流現場が取り入れるべき空間活用とデータ統合の極意を解説します。

グローバル市場で進む自動化トレンドと空間活用の違い

Thuleの事例を深く理解するためには、まず世界の主要国でどのような物流自動化の波が起きているかを俯瞰する必要があります。各国が抱える特有の市場課題と、それに対するテクノロジーのアプローチを以下の表に整理しました。

地域 主な市場課題 注目の自動化トレンド 日本企業への示唆
欧州 厳格な環境規制と土地不足 ビル式自動倉庫による超高層化と省エネ型搬送システム 限られた敷地面積の極大化と環境配慮を両立させる拠点設計が求められる。
米国 圧倒的な物量と激しい出荷波動 AMR(自律走行搬送ロボット)群や複数荷主によるシェアード型倉庫 需要変動に柔軟に対応できるスケーラビリティの確保が重要。
中国 ECの爆発的成長とスピード競争 4方向シャトルやACRを用いた高密度かつ超高速な立体保管 既存の平置きから高密度な立体保管への移行が空間効率を劇的に高める。
日本 2024年問題や建屋の厳しい法規制 多層階倉庫内でのGTP(Goods to Person)や既存拠点の全体最適化 地震や消防法をクリアしつつ縦の空間を最大限に活用する技術の選定が鍵。

欧州ではサステナビリティと土地の有効活用が強く求められており、建屋の構造そのものをラック(棚)が兼ねる「ビル式倉庫」が大規模製造業を中心に普及しています。これに対して日本では多層階倉庫が主流ですが、「空間(高さ)の価値を極限まで引き出す」という思想は共通して直面している命題です。

先進事例:ThuleとMecaluxが挑む42mの超高層ハブ拠点

それでは、Thuleがポーランドで進めるメガプロジェクトの全貌と、その成功を支える具体的な技術要素を深掘りします。この新施設は、欧州全域の製品フローを統合し、グローバル市場への供給体制を支える戦略的要所として機能します。

ラックが建物を支える「ビル式(クラッドラック)」の圧倒的収容力

本施設の最大のハイライトは、高さ42メートルに達する「ビル式(クラッドラック)」構造の採用です。これは、保管用のラック(棚)そのものが建物の屋根や外壁を支える構造体となる仕組みです。一般的な倉庫のように建屋を先に建ててから内部にラックを組む方式に比べ、デッドスペースを極限まで排除でき、敷地面積に対して最大限の容積を確保できます。この構造により、Thuleは単一拠点で約40,000パレットという膨大な保管能力を実現しました。

6台のスタッカークレーンと電動モノレールによる完全自動搬送

広大な空間を効率的に機能させるため、庫内には6台の自動スタッカークレーンが導入されます。これにより、高所へのパレットの出し入れが完全無人化されます。さらに注目すべきは、荷受けから保管、出荷エリアまでの水平移動を担う「床設置型の電動モノレールシステム」の採用です。コンベアの渋滞リスクを回避し、複数のパレットを高速かつ独立して搬送することで、庫内全体の処理能力(スループット)を大幅に引き上げています。

生産ラインとの直結による「横持ち輸送」の完全排除

物流コストとリードタイムを悪化させる最大の要因の一つが、製造工場から保管倉庫への「横持ち輸送(拠点間移動)」です。Thuleのプロジェクトでは、新設される自動倉庫と既存の生産ライン、さらに従来の手動倉庫とをコンベアやパレットリフトで物理的に直結させています。製品が工場で完成した瞬間から出荷ドックに並ぶまで、人間の手を一切介さずに一気通貫で流れる動線を構築しました。

『Easy WMS』が実現する完全なトレーサビリティ

高度なハードウェアを統括するのが、Mecaluxが提供するソフトウェア『Easy WMS』です。在庫の最適な配置アルゴリズムから、注文に応じたピッキングの自動調整、さらには製造ロットから最終出荷に至るまでの完全なトレーサビリティを提供します。Thuleの欧州ディストリビューションセンター責任者であるPaweł Pępiak氏が「自動化は顧客満足度を向上させる戦略的武器である」と語る通り、このデータ基盤が供給網の強靭性を担保しています。

参考記事: 世界で急増「4方向シャトル」の実力とは?日本上陸の物流DX新潮流

日本企業への示唆:海外モデルを国内でどう実装するか

Thuleの事例は極めて先進的ですが、これをそのまま日本国内に建設するには大きなハードルが存在します。日本企業がこの事例からエッセンスを抽出し、自社の環境に適用するためのポイントを解説します。

日本特有の「法規制」という壁と代替アプローチ

高さ42メートルのクラッドラック自動倉庫を日本で建設する場合、極めて厳しい耐震基準と消防法(スプリンクラーの設置義務や防火区画の制限)が立ちはだかります。日本は地震大国であるため、ラックを建屋の構造体とするビル式倉庫の認可ハードルは高く、建築コストも膨大になります。
しかし「空間の最大化」を諦める必要はありません。日本の多層階倉庫においては、既存の梁下有効高をフル活用できる「4方向シャトルシステム」などの高密度保管システムを採用することで、クラッドラックに匹敵する保管効率(坪単価効率)を追求することが十分に可能です。

日本企業が今すぐ真似できる「製造と物流の融合」

Thuleの事例から日本企業が最も学ぶべきは、工場と倉庫を分断させない「SCM全体最適化」の思想です。多くの日本の製造業では、生産管理と物流管理のシステムが分断されており、工場で作られた過剰な在庫が物流拠点を圧迫するケースが散見されます。

  1. 生産計画とWMSのリアルタイム連携
    工場側の生産完了データとWMS(倉庫管理システム)をAPI等で直接連携させ、製品がラインを降りる前に保管ロケーションを自動で引き当てる仕組みを構築します。
  2. 工場隣接型ハブの再評価
    トラックドライバー不足が深刻化する中、分散していた外部倉庫を解約し、生産工場に隣接した敷地に高層自動倉庫を集約する「ファクトリー・ロジスティクス」の構築は、横持ち輸送費とCO2排出量を劇的に削減する最も有効な投資となります。

参考記事: パナソニックコネクト関西物流展2026初出展!SCM全体最適化がもたらす3つの変革

データの可視化による「サイロ化」の打破

巨大な自動倉庫を稼働させるには、正確なマスターデータと経営層のコミットメントが不可欠です。IT(情報技術)とOT(制御技術)を融合させ、サプライチェーンの全貌を一つのダッシュボードで管理できる体制を整えることで、属人的なオペレーションから脱却できます。ソフトウェアの力でトレーサビリティを確保し、どの拠点にどの製品がどれだけあるかを瞬時に把握する基盤づくりは、明日からでも着手できる重要な一歩です。

参考記事: 人手不足時代の物流をどう変える?日立が考えるSCM全体最適化と3つの手順

まとめ:将来の展望

スウェーデンのThuleがポーランドに建設する42メートルの自動倉庫は、単なる保管効率の向上にとどまらず、製造プロセスと物流プロセスを物理的・システム的に統合した見事なケーススタディです。

日本企業を取り巻く環境は厳しさを増していますが、「空間を立体的に使い倒す」「製造と物流の壁を取り払う」という2つのアプローチは、今後の生き残りをかけた物流DXの確かな羅針盤となります。ロジスティクスを単なる「コストを消費する場所」として捉えるのではなく、市場への供給速度と品質を飛躍させ、企業の成長を牽引する「戦略的インフラ」へと転換させる決断が、今まさに経営層に求められています。


出典: Logistics Manager

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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