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輸配送・TMS 2026年6月8日

SBSホールディングス提言、軽油190円台突入で価格転嫁が必須対応に

SBSホールディングス提言、軽油190円台突入で価格転嫁が必須対応に

2026年6月8日、物流業界に大きな衝撃が走りました。東洋経済オンラインが公開したインタビューにおいて、「物流業界の風雲児」と称される3PL大手・SBSホールディングスの鎌田正彦社長が、政府の実施してきた燃料価格の「激変緩和措置(補助金)」をあえて縮小・廃止すべきという極めて大胆な提言を行ったのです。

この発言は、同年6月3日に高市首相が燃料補助金の在り方を見直す出口戦略(事実上の縮小・終了)を示唆した直後のタイミングであり、業界のトップリーダーが政府による「温室」からの脱却を自ら求めた形となります。現在、中東情勢の悪化(ホルムズ海峡封鎖)に起因する原油価格の高騰と、それに伴う深刻な石油関連製品の不足が日本の物流網を直撃しています。その最中において、なぜ鎌田氏は「痛みの共有」を求めるのでしょうか。その本質に迫り、2026年現在の緊迫する物流情勢を徹底解説します。

鎌田社長インタビューの背景と「燃料補助金見直し」の全貌

鎌田社長の提言の背景には、政府による支援が本来の市場原理を歪め、社会全体での危機感を麻痺させているという強い問題意識があります。事実関係と2026年現在のエネルギー情勢を、以下の時系列テーブルで整理します。

項目 2026年6月の実態 鎌田社長の提言内容 業界および現場への示唆
外部環境の緊迫 ホルムズ海峡封鎖による原油高と石油製品不足の深刻化。 外部リスクを一時しのぎの補助金で隠蔽すべきではないと主張。 地政学リスクがダイレクトにエネルギーコストに反映される構造へ。
補助金によるクッション 補助適用後の軽油は158.5円付近。実勢価格は190円台半ば。 補助金を縮小し、実勢価格(190円台)を社会に直視させるべき。 約40円分の「人工的な低コスト」の温室がまもなく取り払われる。
政府の動き(首相発言) 6月3日の衆院本会議で高市首相が補助金の柔軟な見直しを表明。 政府の出口戦略への移行を「社会構造変革の好機」として肯定。 累計9兆円規模の国費投入は限界に達し、補助縮小は既定路線へ。
物流企業の現在地 2026年4月に改正物流効率化法が完全施行。CLO設置などの義務化。 3PL大手として、単なる運送に留まらない「物流設計」を重視。 コスト転嫁の遅れは、即座に事業継続のボーダーラインを割り込む。

中東情勢の緊迫化に伴い、資源エネルギー庁が緊急的に実施してきた「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」は、ガソリンや軽油の店頭価格を一定水準に抑える強力なクッションとなってきました。しかし、国費による補填がなければ、軽油価格は「190円台半ば」に達することが確実視されています。

鎌田社長は、この「40円分のクッション」が、結果として荷主企業や消費者の危機感を削ぎ、物流の「真のコスト」を不透明にしていると指摘。あえて激変緩和措置を縮小・廃止し、社会全体でコスト上昇の痛みと危機感を共有することで、適正な価格転嫁や物流の構造改革を促進すべきであると強く主張しています。

プレイヤー別に見る「補助金終了」の破壊的インパクト

政府の補助金という「麻酔」が切れ、軽油価格が本来の実勢価格である190円台半ばへと急上昇した場合、サプライチェーンの各プレイヤーにはどのような影響が及ぶのでしょうか。

1. 運送事業者:利益率0.7%の脆弱な経営と淘汰の波

多くのトラック運送事業者にとって、軽油代は利益を直接的に削り取る最大の変動費です。日本のトラック運送事業者の平均営業収支率は「100.7%」と極めて脆弱であり、手元に残る利益はわずか0.7%に過ぎません。

このような薄氷の経営において、補助金縮小に伴う軽油価格の急上昇は、即座に「営業赤字」への転落を意味します。試算によると、軽油が1リットルあたり10円上昇した場合、大型車(10トン級)1台あたり月間約19,000円、年間で約23万円の追加負担となります。30台の大型車を保有する中規模事業者であれば、年間約700万円のコスト増が雪だるま式に積み上がります。

これまで「補助金が継続しているから」と荷主との燃料サーチャージ交渉を先延ばしにしてきた事業者や、基本運賃の中に燃料費を含める「オールイン契約(どんぶり勘定)」を続けてきた中小運送会社は、急激な原価上昇に耐えきれず、資金繰りのショートによる黒字倒産や廃業に追い込まれるリスクが極めて高くなります。経営能力の差、そして「データに基づく価格交渉力」の差が、そのまま生存条件となるのです。

参考記事: 利益率転嫁できず運送業87%が事業継続不安!倒産を防ぐ3つの対策

2. 荷主企業:運賃=固定の幻想を捨てる「社会インフラ」への投資

荷主企業(製造業、メーカー、小売、EC事業者など)にとっても、今回の補助金見直しは他人事ではありません。長年、日本の産業界には「物流費は期初に決定した固定費である」という不条理な認識が深く根付いていました。しかし、エネルギー市場の乱高下がダイレクトに反映される「コスト連動型物流」への移行を受け入れなければ、自社の製品を市場に届けるための「輸送枠(トラック)」そのものを失うことになります。

運賃転嫁や燃料サーチャージの導入を拒絶し続ければ、パートナーである運送会社が次々と不採売ルートから撤退し、廃業に追い込まれます。結果として「商品はあるのに運べない」という物流崩壊の当事者になるのは、荷主企業自身です。

特に宅配便を大量に利用するEC業界においては、すでに運賃の「聖域」が崩れ始めています。荷主は物流を単なる「外注コスト」と見るのではなく、事業継続における最大のリスク因子、すなわち「社会インフラ」として捉え直し、経営陣が直接コミットしなければならないフェーズに突入しています。

3. 行政・規制当局とSaaS・テクノロジーベンダーの勝機

国費を原資とした「人工的な低コスト輸送構造」の維持(累計9兆円規模の補助金)は限界を迎えており、行政・規制当局も市場原理を歪める補助金から、物流インフラの強靭化や自動化(LT/DX)への投資へと予算をシフトする局面を迎えています。

この燃料価格高騰の局面において、SaaSやテクノロジーベンダーには大きな勝機があります。燃料サーチャージの交渉において最大のボトルネックとなっているのは、「交渉の手間と計算の複雑さ」です。

  • デジタルタコグラフ(デジタコ)から得られる実走行データや燃費データを自動で収集・可視化する
  • 資源エネルギー庁が毎週発表する店頭価格と連携し、燃料サーチャージを自動で計算・請求書へ反映する
  • 共同配送のシミュレーションを行い、燃費の最適化ルートを自動提示する

このような「コスト転嫁の正当性」をファクトデータで裏付ける輸配送管理システム(TMS)や物流DXツールの提供こそが、今後の不透明な時代における強力な支援策となります。

LogiShiftの視点:公的補助の限界と「物流の内部化」への構造転換

高市首相の補助金見直し発言、そしてSBS鎌田社長の「社会全体での危機感の共有」という提言が意味する本質は、物流コストを他者に押し付ける「コストの外部化」の限界です。これまで誰かが負担を被ることで成り立っていた低コスト物流を止め、社会の全構成員が物流の維持コストを分担する『物流の内部化(持続可能なコスト負担)』への構造転換が本格的に始まっています。

改正物流効率化法とCLO制度が迫る「自立」のロードマップ

さらに警戒すべきは、この補助金縮小の足音が、2026年4月に完全施行された「改正物流効率化法」に伴う法規制への対応コストと完全に重なる点です。いわゆる「2026年問題」の到来です。

年間9万トン以上を取り扱う特定荷主に対しては、役員クラスの「物流統括管理者(CLO)」の選任と、中長期計画の国への定期報告が義務付けられています。初回提出期限に向けて、各企業は「燃料サーチャージの基準価格と改定頻度」や「積載率の改善ロードマップ」を具体的な計画(KPI)として組み込まなければなりません。

補助金が縮小されて燃料費が跳ね上がる最悪のタイミングで、法改正に基づくコンプライアンス対応(待機時間削減や附帯作業の分離など)にかかる投資も発生する。この「二重の負荷」を乗り越えるためには、もはや補助金継続を当然の前提とした古い経営モデルから脱却し、コストの変動を速やかに取引価格へ反映させる「コスト連動型物流」へと強制的にシフトするしかありません。

参考記事: 日本政府が燃料補助金縮小を示唆、軽油190円台突入で価格転嫁が必須対応に

参考記事: ホルムズ危機が招く燃料高騰!補助金終了に備える物流防衛3つの対策

SBSグループが体現する「配送密度の向上」と「自動化・共同配送」のシナジー

鎌田社長が率いるSBSグループは、まさにこの「運べない時代」を見据え、単なる運送事業者の枠を超えた抜本的な構造改革を矢継ぎ早に展開しています。

高度な「物流設計」によるECフルフィルメントの変革

SBSロジコムが展開する「物流設計」支援戦略では、年商3億円以上の成長フェーズにあるEC事業者をターゲットに、属人的なオペレーションからシステムによる自動化、WMS/OMSのデータ一元管理への移行をプロデュースしています。これは、物流を「コストセンター」から「プロフィットセンター」へと昇華させる取り組みです。

地方拠点における「自動化と共同配送」の地方実装

SBSグループが鹿児島県霧島市に竣工した「鹿児島霧島物流センター(仮称)」は、南九州エリアの広域配送ハブとして、共同配送と最新の自動化設備(LT)を導入可能な設計となっています。人口減少が顕著な地方において、複数メーカーの商材を混載する「共同配送」を推進し、配送密度を人工的に高めることで、赤字路線を維持し「運べないリスク」を回避しています。さらに、LT(Logistics Technology)検証拠点「LTラボ」で蓄積されたAutoStoreやPopPickといった最先端ロボティクスのノウハウを地方拠点にも水平展開し、深刻な地方の労働力不足を補っています。

業界を挙げた「競合協調(全体最適)」への移行

個社単独での閉鎖的な物流ネットワーク構築は限界を迎えており、今後は物流機能を「協調領域」へと移行させることが不可欠です。花王や三菱食品をはじめとする大手9社が参画する共同配送コンソーシアム「CODE」のような取り組みは、データ(Snowflake等のセキュアなプラットフォーム)を共有することで、容積勝ちの日用品と重量勝ちの食品・書籍をダイナミックに混載し、配送効率を20%向上させることに成功しています。

参考記事: SBSロジコムに学ぶ!年商3億円EC of の壁を破る「物流設計」3つの解決策

参考記事: SBS鹿児島・霧島市で物流センター竣工!地方の自動化がもたらす3つの影響と戦略

参考記事: 「物流2024年問題」の先にある勝機 自動化と共同配送が切り開く新・産業構造|担当者必見の対策ガイド

参考記事: 共同配送コンソーシアムCODEで効率20%増を実現し物流維持に直結

まとめ:明日から実行すべき業界の生存戦略

政府による燃料補助金の縮小と、SBS鎌田社長の「痛みと危機感の共有」という提言は、すべての物流関係者に「自立」を強く迫っています。麻酔が切れる「2026年問題」の冬を乗り越えるために、明日から直ちに取り組むべき具体的なアクションプランを提言します。

トラック運送事業者のロードマップ

  • 3つの指標を定点観測する
    • 基準価格「170円程度(目安)」の見直し方針
    • 週次の支給単価(補助削減のピッチ)
    • 軽油の実勢小売価格(180円〜190円台への到達スピード)
  • ファクトデータの即時整理と準備
    • デジタコのデータや車両ごとの正確な燃料消費実績を整理し、「軽油が10円上がれば自社のコストが具体的にいくら増えるのか」を数値で提示できる資料を直ちに作成する。
  • サーチャージ契約の再設計
    • 荷主に対し、基本運賃と燃料費を分離したサーチャージ制の導入(改定頻度や基準軽油価格の再確認)を早急に申し入れる。

荷主企業(メーカー・EC事業者)のロードマップ

  • 物流統括管理者(CLO)の権限強化と全社タスクフォースの組成
    • 物流部門だけの課題とせず、調達・営業・財務部門を巻き込んだ横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、サーチャージの受け入れに伴う「製品価格へのパススルー」の社内基準を策定する。
  • 輸配送プロセスの見直しによる燃費負荷の低減
    • 納品リードタイムの緩和やパレット化(T11型への標準化)の推進、同業他社・異業種との共同配送(CODE等のプラットフォーム活用)を検討し、運送会社が燃料を消費しにくい環境(運行効率の最大化)を荷主側から提供する。

補助金の縮小という「逆風」を、旧態依然とした不透明な取引慣行(どんぶり勘定)をリセットし、データに基づく健全で持続可能なサプライチェーンへと生まれ変わらせる「好機」と捉える。その覚悟を持った企業だけが、これからの過酷なエネルギー高騰時代を生き抜くことができるのです。

出典: 東洋経済オンライン

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監修者プロフィール
近本 京

近本 京

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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