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事例・インタビュー 2026年6月26日

2時間以内の荷待ち制限に挑む不二製油の3PL共同改善が効率化に直結

2時間以内の荷待ち制限に挑む不二製油の3PL共同改善が効率化に直結

「3PL事業者にすべてを任せているのに、物流費が下がらない」
「運送会社から値上げを要求されるが、妥当な金額なのかわからない」
「現場の課題がブラックボックス化していて、改善の手がかりがない」

多くの倉庫管理者や実務担当者の皆様が、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。

特に食品物流の現場は、今もっとも深刻な局面に立たされています。

冷凍・冷蔵の厳格な温度管理、多頻度小口配送による非効率、そして賞味期限に合わせたきめ細かな日付管理。
これらの厳しい条件が重なり、現場の負担は限界に達しています。

さらに、物流の「2024年問題」による時間外労働の上限規制(年960時間)に加え、2026年には「改正物流効率化法」が本格施行されます。
特定荷主に対するCLO(物流統括管理者)の選任や、荷待ち時間の2時間以内制限が義務化され、違反企業には罰則(最大100万円の罰金)が科されるリスクも生じています。

これまでの「3PL事業者に一任(丸投げ)する」という昭和型の物流モデルは、すでに維持できません。
委託先任せの管理を続ける企業は、近い将来、トラックを確保できなくなる「運べないリスク」に直面することになります。

本記事では、この危機を乗り越えるための切り札を紹介します。
それは、荷主企業がみずから主導権を握り、3PL事業者と共同で物流網を再設計する「荷主主導の3PL改善」です。

現場が明日から実践できる具体的なノウハウと、導入プロセスを詳しく解説します。

物流の「丸投げ」が生むブラックボックス!現場が抱える限界の現実(Before)

食品物流の現場では、日々どのような課題が噴出しているのでしょうか。
まずは、実務担当者が直面している「Before」の過酷な状況を整理します。

多頻度小口配送と厳格な温度管理による疲弊

食品は日用品に比べ、鮮度の維持や賞味期限の管理が極めて重要です。
そのため、小売店舗や卸先からは「必要な時に、必要な分だけ運んでほしい」という多頻度小口のオーダーが殺到します。

この要望に応えるため、トラックの積載率は著しく低下し、非効率な配送が常態化しています。
また、コールドチェーン(低温輸送網)を維持するためには、専用の冷蔵・冷凍車両が欠かせません。
近年の軽油価格の高騰や電気代の上昇は、これらの運行・保管コストを直撃しています。

3PL委託における「要件定義不足」の代償

多くの企業が物流業務を3PL事業者に委託していますが、その多くが「丸投げ」状態にあります。
荷主企業側で業務要件定義が曖昧なまま委託した結果、現場では以下のようなトラブルが頻発します。

  • 納品条件の変更に伴う追加作業(ラベル貼りやラップ巻きなど)の責任分解点が不明確。
  • WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)のデータ連携エラーが発生しても、原因究明に時間がかかる。
  • 繁忙期の急激な物量変動(波動スパイク)に対して、3PL側の作業人員が確保できずに出荷遅延が生じる。

現場の課題と、実務に与える直接的な影響を以下の表にまとめました。

評価項目 従来の「丸投げ3PL」の状態 現場管理者の悩み 経営に与えるリスク
コスト管理 3PL事業者からの請求を鵜呑みにする 運賃高騰の理由や妥当性が不透明 物流費比率の上昇による利益圧迫
現場の可視化 倉庫内の実作業や配送ルートが不透明 荷待ちや手荷役の負荷が見えない 2024年問題への適切な対策が困難
温度・品質管理 委託先任せでコールドチェーンを維持 結露や再凍結による品質劣化が不安 製品廃棄や顧客からのクレーム増加

荷主主導の「3PL改善」とは?物流の新ステージへ進むための戦略(What)

この未曾有の危機に対抗する手段こそが、日刊工業新聞 電子版などで紹介された「物流 新ステージ/不二製油 3PL改善主導で効率化」の考え方です。

植物性油脂や製菓用チョコレートなどの食品素材で世界的なシェアを持つ不二製油。
同社は、物流を単なる「コスト」ではなく「企業の持続可能性を担保する重要な経営基盤」と再定義しました。

3PLに「丸投げ」しない!荷主と委託先のワンチーム化

不二製油の取り組みの核心は、荷主企業みずからが物流実態を細かくデータで把握し、3PL事業者と共同で改善を進めるガバナンス体制の確立にあります。

3PL事業者は現場の作業効率化(部分最適)には優れていますが、調達から販売にいたる「全体最適」の設計は荷主の協力なしには不可能です。
不二製油はみずからがハブ(司令塔)となり、3PL事業者と定例的な進捗管理の場を設け、生産性や誤出荷率、配送遅延率などの生データを定期的に共有・監査する体制を構築しました。

これにより、従来の「言われた通りにモノを動かすだけで、現場はブラックボックス」という歪んだ関係性を脱却。
お互いのデータをオープンにし、共に配送効率を高める「戦略的パートナーシップ」へとシフトしたのです。

参考記事: ロジスティクス・プロバイダーとは?3PL・4PLの違いや選定の基準、2026年問題への対策まで解説

部分最適から全体最適(4PLアプローチ)への昇華

従来の3PLは、特定倉庫内の作業スピード向上や配送ルートの適正化といった部分最適に留まりがちでした。
しかし、不二製油が主導する「物流 新ステージ」では、複数サプライヤーを統合したサプライチェーン全体の再設計を目指します。

これは、3PLが担う「現場業務の実行力」に、中立的な立場からの「コンサルティング機能」と「高度なITテクノロジー」を融合させた「4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)」に近いアプローチです。
特定の物流アセット(自社の倉庫やトラック)の稼働率に縛られないフラットな視点で、最適な配送網を構築できるのが強みです。

参考記事: 4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)とは?3PLとの違いや導入メリットを徹底解説

荷主主導で3PL改善を推進するための「3つの実践手順」(How)

「大手企業の事例だから、自社には真似できない」と諦める必要はありません。
中堅・中小の倉庫現場や実務担当者であっても、以下の3つのステップを踏むことで、不二製油のような「荷主主導型3PL改善」を自社に導入することができます。

ステップ1:物流データの標準化と可視化

最初のステップは、3PL事業者と繋がれる「オープンなデータ基盤」を整えることです。
属人化された配車管理や、倉庫ごとの独自の運用プロセスのままでは、他社や委託先とのシームレスなデータ連携はできません。

  • 商品マスターや出荷データ(重量、サイズ、SKU情報など)をクレンジングし、統一フォーマットにする。
  • WMS(倉庫管理システム)とTMS(輸配送管理システム)をAPI連携させ、運行データや庫内進捗をリアルタイムで可視化する。
  • 11型パレットなどの業界標準パレットの採用を進め、バラ積み・バラ降ろし(手荷役)を排除する。

参考記事: 物流標準化推進とは?実務担当者が知るべき基礎知識と最新トレンド

ステップ2:SLA(サービスレベル合意書)の策定とゲインシェアリング

次のステップは、3PL事業者との間で「曖昧な要望」を一切なくし、定量的かつ測定可能な評価指標(KPI)を設計することです。
単に見積もり金額を買い叩くのではなく、お互いにメリットが生じる契約形態を構築します。

  • 誤出荷率(PPM)、棚卸差異率、当日出荷率、荷待ち時間などの重要KPIをSLAに明記する。
  • 目標以上の効率化(コスト削減)が達成された場合、その原資を荷主と3PLで分配する「ゲインシェアリング(利益分配)」ルールを導入する。
  • クラウドWMSやシステムがダウンした際、現場がパニックにならず、即座に紙のピッキングリストやアナログ運用に切り替えるBCP(事業継続計画)手順を共同で策定しておく。

参考記事: 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)完全ガイド|基礎知識から導入メリット・失敗しない選び方まで

ステップ3:非競争領域における「協調」と共同配送への参画

最後のステップは、自社の枠を超えて他社と「協調領域」を広げることです。
特に食品物流や温度管理が必要な領域では、個社単独での配送網の維持は不可能です。
同じ配送エリアを持つ他社とトラックや保管スペースをシェアする仕組みを構築します。

  • 自社の「重量物」(小さくても重い商品)と、パートナー企業の「軽量物」(かさばるが軽い日用品など)を混載し、トラックの容積と重量を無駄なく限界まで使い切る。
  • 業界の垣根を越えた共同配送コンソーシアム(例えば、花王や三菱食品などが主導する「CODE」など)の仕組みや共同配送網を研究し、参画の道を探る。

参考記事: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説

参考記事: 共同配送コンソーシアムCODEで効率20%増を実現し物流維持に直結

実務に落とし込むための具体的なアクションと役割を以下の表に整理しました。

手順 具体的なアクション 担当者の役割 実務におけるポイント
ステップ1 出荷データと現場作業の可視化 倉庫システム管理者 荷待ち時間や積載率を数値データで直視する
ステップ2 SLAの締結とKPIの共同管理 物流部門長・3PL窓口 誤出荷率やFEFO管理の基準を明文化する
ステップ3 共同配送ネットワークへの参画 経営層・SCM推進部門 T11型パレットなどの業界標準規格を採用する

配送効率20%向上!「荷主主導3PL改善」がもたらす劇的変化(After)

荷主主導による3PL改善を導入することで、現場にはどのような変化が起きるのでしょうか。
定量・定性の両面から、期待される具体的な効果を解説します。

定量的効果:配送コストの削減とトラック積載率の最大化

不二製油の事例や共同配送の先進モデルにおいて、実証されている数値効果は極めて強力です。

  • トラック積載率の劇的向上: 容積と重量の最適なパズルを組み合わせることで、積載率が飛躍的に向上。配送効率は約20%改善し、トータルの配送費用を大幅に削減できます。
  • 年間CO2排出量の削減: 運行台数を削減できるため、環境負荷低減(グリーン物流)に大きく貢献。荷主企業のESG経営(Scope 3削減)の要請に直接応えることができます。

定性的効果:荷待ち時間の削減とドライバーの安定確保

数字に表れるコスト削減効果だけでなく、現場の「持続可能性」も向上します。

  • 荷待ち・荷役時間の劇的削減: 荷受バースの予約システムやパレット化の推進により、ドライバーの待機時間はほぼゼロに近づきます。ドライバーの長時間労働を是正できるため、運送会社から「選ばれる荷主」となり、輸送力を安定確保できます。
  • 倉庫管理者の手配負担の軽減: 「明日のトラックが足りない」と、毎日焦って運送会社に電話をかけまくる必要がなくなります。強固に結ばれた3PLとのパートナーシップと、可視化されたデータ基盤により、計画的な配車体制が維持されます。

導入前後の変化と具体的なメリットを以下の表にまとめました。

評価指標 導入前の状態(Before) 導入後の状態(After) 期待される効果
トラック積載率 平均40%から50%台の低水準 共同配送や効率化で80%以上に向上 配送費用の削減と車両の安定確保
荷待ち・荷役時間 バース混雑で2時間以上の待機が発生 予約システムの導入とパレット化で削減 改正物流効率化法の罰則リスクを回避
品質維持(温度帯) 委託先任せで温度異常の検知が遅れる リアルタイム監視とSOP構築で最適化 品質事故ゼロによる顧客信頼の獲得

まとめ:持続可能な物流を築くための成功の秘訣

食品物流をはじめ、すべての産業における物流クライシスは、一社単独の努力で解決できる限界を超えています。

政府が閣議決定した次期「総合物流施策大綱」では、2030年度に日本の輸送力の約25%(約7.2億トン分)が不足する深刻な需給ギャップが生じると試算されています。
このまま「昭和型」の丸投げ物流を続ければ、製品を作っても「運んでもらえないリスク」により、市場から退場を余儀なくされます。

不二製油が主導する「3PL改善による効率化」というアプローチは、この難局を乗り切るための唯一の生存戦略です。

成功のための最も重要な鍵は、現場や経営層の「マインドセットのシフト」にあります。
これまで物流は、コスト削減のための「外部委託作業」と捉えられてきました。
しかしこれからは、異なる業界のパートナーや委託先3PLと手を結び、持続可能なインフラを共に築く「共創(協調)」の時代です。

まずは自社の出荷データをデジタル化し、他社や委託先と繋がれる状態を作ることから始めてください。
競合や委託先を「下請け」ではなく「インフラをシェアする仲間」として捉え直した時、2030年の物流危機を生き抜く強靭な弾力性が手に入ります。

参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須


出典: ロジスティクス・プロバイダーとは?3PL・4PLの違いや選定の基準、2026年問題への対策まで解説
出典: 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)完全ガイド|基礎知識から導入メリット・失敗しない選び方まで
出典: 4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)とは?3PLとの違いや導入メリットを徹底解説
出典: 物流標準化推進とは?実務担当者が知るべき基礎知識と最新トレンド
出典: 共同配送コンソーシアムCODEで効率20%増を実現し物流維持に直結
出典: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説
出典: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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