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輸配送・TMS 2026年6月28日

物流倒産が52件に急増、帝国データバンク調査が示す選ばれる荷主への転換期

物流倒産が52件に急増、帝国データバンク調査が示す選ばれる荷主への転換期

物流業界における「人手不足倒産」が深刻な局面を迎えています。帝国データバンクの最新調査「人手不足倒産の動向調査(2025年)」によると、物流業(道路貨物運送業)における人手不足を原因とした倒産件数は2025年に52件に達し、過去最多を更新しました。特に倒産した企業の約77.0%が従業員10人未満の小規模事業者であり、限られた人員で現場を回す企業の脆弱性が浮き彫りになっています。

背景には、2024年問題に伴う残業時間上限規制によって従来の運行計画が崩れたことや、人件費・燃料費の高騰に対して適切な価格転嫁が進まないといった構造的課題が存在します。今後は、十分な賃上げ原資を確保できない企業が急速に淘汰される「賃上げ難型」の倒産がさらに増加すると見込まれます。

本記事では、この深刻なデータの背景と、物流事業者、荷主企業、そしてテクノロジーベンダーそれぞれが直面する影響と取るべき対策について、LogiShift独自の視点を交えて徹底解説します。


1. 物流業界における人手不足倒産の最新動向

帝国データバンクが発表した最新データから、物流業界および全産業における人手不足倒産の推移と、その特徴について整理します。

帝国データバンクの調査に基づく件数推移

道路貨物運送業(物流)を含む人手不足倒産の件数は、近年右肩上がりで推移しており、インフラとしての機能不全が現実味を帯びています。以下のテーブルは、物流業、建設業、および全産業の過去3年間の人手不足倒産件数の推移をまとめたものです。

業種・対象 2023年件数 2024年件数 2025年件数 特徴と動向
物流業(道路貨物運送業) 39件 46件 52件 3年連続で増加。過去最多を更新。人員不足が即座に輸送力低下に直結。
建設業 91件 99件 113件 労働集約型産業として最多件数。現場作業員の離職が致命傷。
全業種合計 260件 342件 427件 初の400件台を突破。3年連続で過去最多を更新。小型化が顕著。

全業種の人手不足倒産が3年連続で過去最多を更新するなか、物流業界の件数も2025年には52件に上り、ドライバー不足の深刻化を明確に裏付けています。物流業は人員不足がそのまま積載率や運行効率、受託可否に直結するため、荷主側の「調達・納品リスク」として直接的に顕在化しやすいのが特徴です。

10人未満の小規模事業者に直撃する「従業員退職型」の恐怖

今回の調査結果において、最も警戒すべきファクトは「企業規模」による格差です。人手不足倒産全体(427件)のうち、実に77.0%にあたる329件が「従業員10人未満」の小規模事業者でした。

小規模な運送会社では、配車手続き、運行管理、倉庫内荷役、請求事務などの主要な業務が少人数に集中しています。このような環境下では、従業員1人の退職でも業務の継続が不可能になり、受注活動を絞らざるを得なくなります。これが、新たな人材を採用できないこと以上に、既存従業員の離職が致命傷となる「従業員退職型」倒産の正体です。求人倍率が高止まりする中、待遇や労働環境の改善に追随できない小規模事業者ほど、人材流出によって経営が急速に行き詰まりやすくなっています。

参考記事: 運送業の人手不足倒産が過去最多55件!連鎖を防ぎ人材流出を食い止める3つの対策


2. 物流業界で人手不足倒産が増え続ける2大背景

なぜ、仕事の需要はあるにもかかわらず、倒産という結末を迎えてしまうのでしょうか。その背景には、法制度の変更と商慣習の硬直化という2つの構造的な問題が横たわっています。

「物流の2024年問題」が引き起こす輸送力制約

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)などが完全施行されました。これにより、これまでの無理な長距離ピストン運行や長時間の荷待ちを前提とした運行計画が組めなくなりました。

従来の「労働時間の力押し」で売上を維持していた事業者ほど、この規制によって輸送能力(売上の上限値)が物理的に減少することになりました。結果として受託を絞らざるを得ず、売上・利益が減少した企業から順に、求人強化や定着のための投資が困難になり、人手不足をさらに悪化させる負のスパイラルに陥っています。

燃料費・人件費の高騰に対する「価格転嫁の遅れ」

少子高齢化でドライバーの絶対数が減少するなか、人材を確保するためには「賃上げ」や待遇改善が絶対条件です。しかし、運送会社にとって賃上げの原資は「荷主から受け取る運賃」のみです。

燃料価格の急激な高騰や採用コストの上昇に対し、多くの小規模運送会社は、荷主企業に対する運賃交渉を進められていません。「値上げを要求すれば他社に仕事を奪われる」という恐怖からコストを自己吸収し続けた結果、資金繰りが急速に悪化しています。価格転嫁の遅れは、人手不足を単なる経営課題から、一気に「倒産に直結する即効性の毒」に変えてしまう最大の引き金となっています。さらに主要な荷主企業自体が破綻した場合、未回収の運賃によって運送会社が連鎖倒産する二次的リスクも高まっています。

参考記事: 昨年度倒産1万件超!運送業を襲う3つの連鎖倒産リスクと自社を守る資金防衛策


3. 業界の主要プレイヤーが直面する課題と影響

輸送力の不足と人手不足倒産の急増は、物流に関わるすべてのプレイヤーに構造的な変革を迫っています。

運送事業者:属人化からの脱却と「選別」の生存条件

運送事業者、特に小規模な事業者にとって、これからは「特定の個人(経営者やベテラン配車マンなど)に依存した運用」からの脱却が、最大の生存条件になります。

1人の離職がそのまま廃業に直結する組織体制を再編するためには、配車手続きや運行管理、請求事務などの属人化しやすい業務をデジタル化し、誰でも代替できる仕組みへと転換しなければなりません。同時に、適正な原価(自社のトラックを1キロ走らせるために必要なコスト)を正確に可視化し、それに基づく価格転嫁に応じない不採算の取引先からは勇気を持って撤退する、という「仕事の選別」を徹底することが経営を守る防衛線となります。

製造業者・メーカー(荷主):「運賃を叩く」時代から「確保させてもらう」立場への転換

荷主企業にとって、人手不足倒産の嵐は対岸の火事ではありません。これまでは「運賃を安く値切って運ばせる」ことが可能でしたが、これからは「適正な価格と環境を提供しなければ、お金を払っても運んでくれる会社がいない」という「物流難民化」リスクに直面しています。

政府の閣議決定した次期「総合物流施策大綱」では、2030年度に輸送力の25%が不足すると警告されています。荷主が自社のサプライチェーンを守り抜くためには、トラック予約受付システムの導入によってドライバーの荷待ち時間を強制的に減らすなど、自ら受け入れ体制の改善に取り組まなければなりません。

SaaS・テクノロジーベンダー:AI活用意欲95%超が示す期待と実装のギャップ

Hacobuが実施した調査によると、物流現場におけるAI活用への関心は極めて高く、今後の導入に前向きな企業は95%を超えています。しかし、実際にAIを何らかの業務で導入・活用できている企業は36.6%に留まるのが現状です。

この「意欲と実装のギャップ」の裏には、社内に「AIを使いこなせる人材がいない」「本当に効果があるか分かりにくい」といった導入障壁が存在します。テクノロジーベンダーは、単に高機能なパッケージツールを売るだけのビジネスモデルを捨て、個々の企業の業務プロセスを再設計し、現場に定着するまで伴走する「伴走型・SI連携支援」を提供することが、今後の市場をリードする鍵となります。


4. 人手不足倒産を回避するための5つの抜本的対策

深刻化する人手不足に対処するため、企業が直ちに取り組むべき具体的な対策を5つの軸から整理します。

① 政府が進める「年収の壁」への対応

短時間労働者が「手取りの減少」を恐れて意図的に労働時間を抑えてしまう、年収106万円・130万円のいわゆる「年収の壁」。厚生労働省は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始し、パート等の労働時間の延長や社会保険加入に伴う企業への助成金制度などを導入しています。

こうした制度を活用し、現場スタッフが制限なく働ける環境を整えることは、小規模事業者や倉庫現場における労働力不足の緩和に極めて有効です。

② 物流DXの導入による業務の標準化

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質は、現場の非効率をデータで可視化し、少人数でも回る運用に変えることにあります。

特に、電話やFAX、紙の帳票(出荷指示書や受領書)に頼ったアナログな連絡業務は、二重の転記作業やドライバーの無駄な待機時間を生み出す最大の温床です。これらをクラウドシステムでペーパーレス化し、配車管理や作業実績を一元管理することで、少ない人員でも同じ出荷量を処理できる生産性の高い体制を構築できます。

参考記事: 紙とFAXの物流課題を解決!CLO設置義務化に対応する3つのDX戦略

③ AIによる熟練業務の自動化

AIの導入は、これまで「ベテランの勘や経験」に頼らざるを得なかった高度な判断業務を機械に任せ、属人化を完全に排除するための強力な手段です。

前述のHacobuの共同調査によれば、企業がAIを活用したいと考える業務のトップ3は、以下の通りとなっています。

  • 1位:配車の自動化・標準化(37.3%)
  • 2位:データ分析に基づく経営判断の支援(36.6%)
  • 3位:在庫管理や需要予測(35.8%)

AI-OCRによる帳票の自動処理や、AIによる配送ルートの自動立案などを組み込むことで、熟練者がいなくなっても高い業務品質を維持できます。Hacobuでは、こうしたAI導入の壁を突破するためのサービスとして、要件定義から運用まで一貫して支援する「Hacobu Solution Studio」を展開しています。

④ 多様な人材が働きやすい「定着型」採用

深刻な人手不足局面では、若年層の採用だけに固執するのは現実的ではありません。女性、シニア、そして近年特定技能の分野に加わった外国人ドライバーなど、多様な人材が活躍できる職場環境の構築(荷役負担の軽減、勤務時間の柔軟化、多言語マニュアルの整備など)が急務です。

さらに、採用した人材を「辞めさせない」ためのキャリアパスや待遇改善を整備し、定着率を高める必要があります。物流特化の人材紹介サービス「Hacobu Career」などを活用し、DXの進捗に合わせた最適な職種・役割の解像度を上げた採用を行うことが、長期的な安定を支えます。

⑤ “選ばれる荷主”への転換と「荷待ち時間」の撲滅

人手不足倒産の波から自社を守るため、荷主企業はドライバーや運送会社から選ばれるための環境改善を率先して行う必要があります。

Hacobuが実施したトラックドライバー1,271名を対象とした調査では、過半数が「1日1時間以上の荷待ち」を経験していると回答しました。さらに、負担に感じる業務の圧倒的第1位も「荷待ち時間」であり、荷主に対する改善要望として「待機場所の確保(63.0%)」「待ち時間の短縮(60.1%)」がいずれも6割を超えています。

トラック予約受付システムなどを活用し、到着時間を分散・管理して、荷待ち時間を劇的に削減する荷主こそが、今後激化するドライバー獲得競争で「確実に運んでもらえる」地位を確立できるのです。

参考記事: 総合物流施策大綱が示す2030年度輸送力25%不足に荷主の経営改革が必須


5. LogiShiftの視点:労働集約型から「データ駆動型の選別」への地殻変動

今回の「物流人手不足倒産、過去最多」という衝撃的なニュースは、一時的な景気の波ではなく、物流業界全体の構造的な「地殻変動」が最終局面に入ったことを示しています。

これまでの日本の物流は、安価な運賃、長時間の無償待機、手積み・手降ろしといったドライバーの自己犠牲と、人を集めるだけの「労働集約型・力押し」のモデルで成立していました。しかし、そのモデルは完全に崩壊し、これからは「データ駆動型の選別」の時代へと移行します。

「賃上げ難型」が浮き彫りにする企業の格差

今後は、価格転嫁とDX投資を同時に成功させ、輸送効率を極限まで高めた企業だけが生存できる格差社会になります。

適正な原価交渉によって十分な利益(キャッシュ)を確保し、それをドライバーの給与(賃上げ)とDXへのシステム投資へと還元できる運送会社だけが、優秀な人材と強靭な運行ネットワークを維持できます。一方で、価格交渉から逃げ、属人的なアナログ業務にしがみつく運送会社は、人を失い「従業員退職型倒産」へ一直線に進むことになります。

2026年4月法改正という強力な淘汰装置

荷主にとっても、この転換は経営の死活問題です。2026年4月に本格施行される「改正物流総合効率化法」により、特定荷主には役員クラスの「CLO(物流統括管理者)」の選任が義務化されました。これにより、長時間の荷待ちや不効率な配送を放置することは、現場の課題から「荷主企業の役員の法的責任(最大100万円の罰金や社名公表)」へと昇格しました。

日清食品の深井CLOが提唱するように、完璧な計画に拘らず「まずは特定の拠点や配送ルートで6割の完成度でもいいからアジャイルにスタートする」姿勢が求められます。

営業部門や生産部門の一方的な要求によるサイロ化された非効率を、役員権限の「物流改善命令権」を用いて強制的に是正し、運送会社と対等なパートナーシップを結べる荷主こそが、2030年のさらなる輸送力不足(輸送力25%不足、ドローン配送実装などの激変期)を乗り越えられるのです。

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた対象基準と実務対応を徹底解説

参考記事: 2026年4月法改正へ日清食品のCLO選任後アクションで物流効率化が加速


6. まとめ:明日から意識すべき3つの即時アクション

倒産件数の増加という過酷な現実から目を背けず、自社の持続可能性を高めるために、明日から取り組むべき3つのアクションを提言します。

  1. 運送事業者:属人化している「熟練業務」の棚卸しと可視化を行う
    配車や運行管理、請求事務など「この人がいないと回らない」業務をリストアップし、明日新しい人が入っても引き継げるマニュアル化、あるいは配車管理システム等のデジタル化への移行に着手してください。
  2. 荷主企業:バース予約システムを導入し、現場の荷待ちデータを正確に測定する
    運送会社に負担を強いている現状(荷待ち時間、荷役時間など)を、紙の受付簿を廃止してデジタルで可視化しましょう。客観的なデータがあれば、全部門横断のルール変更や特定の時間帯への車両集中の是正に向けた交渉をすぐに開始できます。
  3. 両者共通:コンプライアンスを前提とした、データに基づく対等な関係の再定義
    これまでの「発注者と下請け」という上下関係を捨て、データを共通言語にした、持続可能な運賃交渉・条件改定を推進してください。

人手不足の時代を生き抜くために。DXと協調、そして覚悟を持った経営判断によって、強い足腰を持ったサプライチェーンを再設計していきましょう。


出典: ハコブログ | 株式会社Hacobu – 物流の今と未来を伝える

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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