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輸配送・TMS 2026年7月8日

丸紅ロジスティクスら4社の7月1日脱炭素輸送開始が示す既存アセット延命の最適解

丸紅ロジスティクスら4社の7月1日脱炭素輸送開始が示す既存アセット延命の最適解

物流業界において、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルの達成は、避けて通ることのできない最重要課題です。しかし、多くの運送事業者が電気自動車(EV)トラックや燃料電池自動車(FCV)への移行に伴う高額な初期投資、航続距離や積載可能重量の減少といった実務的なジレンマに直面しています。

こうした中、株式会社ユーグレナ、丸紅ロジスティクス株式会社(以下、丸紅ロジ)、丸紅エネルギー株式会社、篠崎運輸株式会社の4社は2024年7月7日、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ51」を活用した脱炭素物流モデルを構築し、同年7月1日からトラックによる荷主の拠点間輸送を開始したと発表しました。

本取り組みは、車両の買い替えやインフラの大規模な設備投資を必要とせず、燃料の切り替え(ソフトの更新)だけでサプライチェーン全体の脱炭素化を即座に実現できる「極めて現実的な即戦力ソリューション」として、業界内外から強い注目を集めています。


4社連携による「サステオ51」物流モデルの全貌

今回のプロジェクトは、燃料供給会社、商社、物流事業者、そして運送事業者が一画に集い、それぞれの専門的な強みを融合させることで、単発の実証実験にとどまらない「持続可能な脱炭素物流スキーム」の社会実装を実現しています。

本プロジェクトの事実関係と実務的な骨子を以下の表に整理しました。

項目 詳細内容 参画主体と役割 実務上の意義
開始時期 2024年7月1日(発表は7月7日) 4社協調体制 早期の社会実装。実務運用ベースでの稼働。
運行ルート 茨城県内の2つの物流拠点間 篠崎運輸、丸紅ロジ(運用管理) 特定区間を限定したピストン運行による確実なデータ蓄積。
使用車両 10t大型トラック 1台 篠崎運輸(専用車両として運行) 既存の大型クリーンディーゼル車をそのまま転用。
採用燃料 サステオ51(HVOを51%混合) ユーグレナ(製造)、丸紅エネルギー(供給) 既存インフラを活用できる「ドロップイン型」バイオ燃料。

既存アセットを延命する「ドロップイン燃料」の優位性

「サステオ51」の最大の特徴は、廃食油や植物由来油脂などを原料としたHVO(Hydrotreated Vegetable Oil:水素化植物油)を51%混合した「ドロップイン型燃料」である点です。従来の化石燃料(軽油)と化学構造がほぼ同一であるため、以下のような圧倒的な実務メリットをもたらします。

  • 設備投資コストがゼロ:既存のクリーンディーゼルエンジン、自社給油タンク(インタンク)、給油機といった給油設備を一切改修・新設することなくそのまま活用可能。
  • オペレーションへの影響なし:軽油と全く同じ時間で給油が完了し、航続距離や積載効率(ペイロード)が低下しないため、運行管理の再設計が不要。

参考記事: バイオ燃料とは?カーボンニュートラル時代の物流実務と導入ロードマップ徹底解説


物流業界の各プレイヤーに与える具体的なインパクト

既存の資産を活用しながら即座に温室効果ガス(GHG)の排出削減を成立させる本スキームは、サプライチェーンを構成する主要プレイヤーそれぞれに強力なベネフィットと行動変容をもたらします。

1. 運送事業者:EVシフトを回避しつつ「グリーン運送」という高付加価値を提供

トラック運送事業者は、荷主からの脱炭素要請と自社の財務負担の狭間で苦悩しています。サステオ51を導入することで、高額なEVトラックの購入や充電インフラ整備といった巨額の初期投資を完全に回避しながら、荷主に対して「CO2を大幅削減したグリーンな運送」という高付加価値なサービスを提供できるようになります。競合他社との強力な差別化要因を即座に手に入れられる点が、最大の経営メリットです。

2. 製造業者・メーカー(荷主):改正省エネ法「非化石エネルギー自動車」への適合

委託先物流企業が「サステオ51」を専用車両で使用する場合、混合されている非化石エネルギー(バイオ燃料)の割合が過半(51%)を超えるため、改正省エネ法に基づき国に提出する中長期計画書において、該当車両を「非化石エネルギー自動車」として正式に報告可能となります。自社のサプライチェーン排出量(Scope3)の削減実績を法的に証明できるため、メーカー企業にとっては委託先物流企業への導入を強力に後押しするインセンティブが生まれます。

3. 3PL・倉庫事業者:GXコンサルティングを内包した「共有インフラ型物流」の提案

丸紅ロジが物流スキームの全体設計と運用管理を手掛けたように、これからの3PLには、単に「荷物を安く、安全に運ぶ」だけでなく、環境価値を物流網に組み込んで最適化する「GX(グリーン・トランスフォーメーション)コンサルティング」の職能が強く求められます。複数の荷主データを預かり、特定の運行ルートをHVO混合燃料に切り替える仲介者(オーケストレーター)としての機能が、3PLの新たな競争力となります。

参考記事: 既存車両で脱炭素化!東急バス「サステオ51」導入が物流業界にもたらす3つの恩恵


LogiShiftの視点(独自考察):なぜ「51%混合」なのか、制度をハックする戦略的インサイト

物流専門メディアである「LogiShift」の視点から、今回の取り組みにおける最も重要な戦略的インサイトを提示します。それは、なぜユーグレナ社と丸紅グループが、あえて「100%」ではなく「51%混合」を選んだのかという点にあります。

コスト高を抑えつつ、制度上のメリットを最大化する「51%」の黄金比

高度に精製された次世代バイオ燃料(HVO)は、化石燃料である軽油と比較して製造コストが高く、販売単価も割高にならざるを得ないという致命的な課題を抱えています。

燃料費がダイレクトに収益を圧迫する物流現場において、100%のバイオ燃料へ切り替えることは、採算性の面で極めて困難です。

そこで活きるのが「51%混合」という絶妙な比率です。軽油を49%混ぜることで燃料調達コストの上昇を最小限に抑えつつ、改正省エネ法における「非化石比率が過半数(50%超)を占めることで、非化石エネルギー自動車として報告できる」という法的メリットを的確にクリアしています。実務上のコスト負担を最適化しながら、公的な環境価値アピールを最大化する、極めてスマートな制度ハック(最適化)と言えます。

参考記事: 物流脱炭素が加速する2026年5月のマツダと日本通運による共同実証

「環境プレミアム(脱炭素価値)の運賃転嫁」が今後の勝負論に

物流企業がバイオ燃料への切り替えを持続可能なものとするためには、増加した燃料コスト(軽油との差額分)を自社だけで抱え込んではなりません。

今後は、荷主に対して「当社のトラックを使用することで、御社のScope3排出量をこれだけ削減でき、省エネ法の要件もクリアできます」という客観的なエビデンスを提示し、それ相当の「環境プレミアム(環境協力費)」を上乗せした適正な運賃交渉を仕掛けることが不可欠です。データを武器にした能動的な提案営業ができる企業こそが、持続可能なグリーン物流の勝者となるでしょう。

参考記事: 出光興産やT2等、500km自動運転トラックへ次世代バイオ燃料供給で幹線輸送脱炭素へ


まとめ:明日から現場リーダーが意識すべきアクション

ユーグレナと丸紅グループらによる「サステオ51」の拠点間輸送開始は、EVトラックなどの「車両(ハード)の更新」を待たずとも、「燃料(ソフト)」を切り替えるだけで、今すぐに物流の脱炭素化を極めて高い水準で達成できることを証明しました。

激動するグリーン物流のトレンドに取り残されないため、物流現場のリーダーや経営層は以下のステップを明日から意識し、動き出しましょう。

  • 自社保有クリーンディーゼル車両の棚卸し
  • 保有しているディーゼル車両の残存耐用年数を確認し、無理に高額なEVへ買い替えるのではなく、バイオ燃料(HVO)への切り替えによって現有資産を延命しながら脱炭素化を図るシミュレーションを行う。
  • 燃料調達サプライヤーとのネットワーキング
  • ユーグレナ社や関連する商社・元売りに対し、自社の拠点(インタンク)でのドロップイン型燃料「サステオ51」等の供給可能性とコスト感について初期的なヒアリング・情報収集を開始する。
  • 荷主を巻き込んだ「Scope3共同削減」の対話の開始
  • 荷主のESG部門や購買部門に対し、EV化に伴う積載量減少や初期コストの現実的な限界を論理的に提示した上で、「既存車を活用したHVO混合燃料による、実効性の高いCO2削減と省エネ法対応ロードマップ」を共同で設計するための提案を仕掛ける。

既存の現場力を生かした「マルチパスウェイ(全方位・現実的選択肢)」の活用こそが、持続可能で強靭な次世代サプライチェーンを築く最大の武器となるのです。


出典: LOGI-BIZ online

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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