Skip to content

LogiShift(ロジシフト)

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • 事例
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 輸配送・TMS> 物流脱炭素が加速する2026年5月のマツダと日本通運による共同実証
輸配送・TMS 2026年6月2日

物流脱炭素が加速する2026年5月のマツダと日本通運による共同実証

物流脱炭素が加速する2026年5月のマツダと日本通運による共同実証

マツダ株式会社とNIPPON EXPRESSホールディングス株式会社のグループ会社である日本通運株式会社は、2026年5月よりバイオディーゼル燃料(HVO)を使用した完成車輸送トレーラーの実証走行を開始しました。

2050年のカーボンニュートラル(CN)実現が叫ばれるなか、サプライチェーン全体の脱炭素化は荷主・物流事業者の双方にとって避けて通れない最重要アジェンダとなっています。しかし、現在注目を集めている「車両の電動化(EV化)」や「水素燃料電池(FCV)の導入」には、巨額のインフラ投資や車両コスト、そして航続距離の制約といった非常に高い壁が立ちふさがっています。

こうした状況下で、今回のマツダと日本通運による実証プロジェクトは、既存のディーゼル車両と給油インフラをそのまま有効活用できる「燃料転換」という、極めて実効性の高い「即戦力」のソリューションを業界に提示しています。本実証は、単なる環境配慮のアピールにとどまらず、実運用における燃費や性能、現場での運用課題を2026年末までかけて徹底検証する本格的な試みです。本稿では、このプロジェクトの全容とともに、製造業、運送事業者、さらには物流デベロッパーに与えるインパクトと、次世代のグリーン物流における戦略的ロードマップを解説します。


2026年5月スタート:マツダと日本通運によるHVO実証走行の全容

今回の実証走行は、2050年のCN社会実現に向け、完成車・部品物流における具体的な「燃料転換」の選択肢を確立し、社会実装を加速させることを目的としています。実証の舞台となるのは、マツダの防府西浦工場と中関完成車プール場間の約12km。短距離かつ高頻度なピストン輸送の現場で得られるデータは、過酷な実運用に耐えうる実証知見として非常に信頼性の高いものとなります。

本プロジェクトの事実関係と実務的な骨子を以下の表に整理しました。

項目 詳細内容 参画主体・協力企業 実務上の検証意義
実施期間 2026年5月〜2026年末予定 マツダ、日本通運 短期的なテストにとどまらず、夏・冬の季節変動をまたぐ長期的な稼働データを蓄積。
実証ルート 防府西浦工場〜中関完成車プール場(往復約12km) マツダ(荷主)、日本通運(物流事業者) 稼働頻度の高い工場・港湾間のピストン輸送において、現場オペレーションへの影響を最小限に抑えつつ検証。
使用燃料 HVOを約51%混合した次世代バイオディーゼル燃料 NX商事(燃料調達を担保) 既存の給油インフラや調達ルートを活かしつつ、高濃度ブレンドによる環境価値の最大化と安定供給を両立。
使用車両 完成車輸送トレーラー2台 いすゞ自動車(車両・メンテナンス協力) 従来の軽油と同等の運用・点検体制で稼働。エンジン部品やフィルターへの影響をメーカー基準で精緻に追跡。

今回の実証で使用されるHVO(Hydrotreated Vegetable Oil:水素化植物油)は、廃食油や植物油などを原料とし、水素化処理を施した再生可能ディーゼル燃料です。従来の脂肪酸メチルエステル(FAME)などの第一世代バイオディーゼル燃料とは異なり、化学構造が石油由来の軽油とほぼ同一であるため、エンジンの改造や特別なメンテナンスを行うことなく使用できる「ドロップイン燃料」として世界的に普及が進んでいます。

今回のプロジェクトでは、いすゞ自動車の協力のもと、従来の軽油と同等の運用・点検体制で稼働させることが明記されています。これは、現場の運行管理者やドライバーに対し、燃料転換に伴う余計な作業負荷や心理的ハードルを与えないための極めて実践的な設計と言えます。

参考記事: バイオ燃料とは?カーボンニュートラル時代の物流実務と導入ロードマップ徹底解説


業界別・ステークホルダーに与える具体的な影響

本実証プロジェクトが物流業界およびサプライチェーンを構成する主要プレイヤーに与える影響は多多にわたります。製造業者(メーカー)、運送事業者、そして物流施設デベロッパーの3つの視点から、その具体的なインパクトを深掘りします。

製造業者・メーカー:物流を「CN実現のパートナー」と再定義する協調体制の構築

自動車メーカーをはじめとする製造業者にとって、今回の実証は「物流部門におけるScope3(他社から供給される輸送・配送に伴う温室効果ガス排出量)削減」の極めて現実的なモデルケースとなります。

これまでの多くのメーカーは、物流会社に対して単なる「外注先」としてCO2削減目標の達成を迫る傾向にありました。しかし、EVトラックやFCVトラックの導入を物流事業者だけの負担で進めることには限界があります。今回のマツダのように、荷主企業が自らプロジェクトを主導し、燃料調達や車両メーカーとのアライアンスを設計することは、物流を「CN実現のための戦略的共同パートナー」として再定義することを意味します。

実務上のインパクトとして、メーカーは燃料転換に伴うプレミアムコスト(従来の軽油との差額分)や実証に伴う運用リスクを物流事業者と共同で負担・シェアする協調体制を構築する必要があります。これは、企業の持続可能な調達(ESG調達)の観点からも、今後の取引先選定や入札(RFP)の標準的な評価軸となっていくでしょう。

参考記事: 脱炭素経営とは?物流現場の課題から実践ロードマップまで徹底解説

運送事業者:既存のディーゼル資産を活かし「2030年問題」を乗り越える現実解

中小の運送事業者にとって、車両フリートの電動化(EV化)には数千万円規模の莫大な初期投資や充電インフラの整備、さらには積載量の低下という三重苦が伴います。特に長距離幹線輸送や重積載領域において、EV化は現時点での技術・コストの双方において現実的ではありません。

その点、HVOを約51%混合したバイオ燃料は、既存のクリーンディーゼル車両をそのまま活用できるため、追加の車両投資を抑えつつ即座に環境対応を開始できるという、圧倒的な経営メリットをもたらします。

実務面において運送会社がこのチャンスを活かすためには、マツダ・日本通運のような大手主導のプロジェクトに参画し、燃料転換がエンジンの耐久性や燃費、メンテナンス周期に与える影響の「実稼働データ」をいち早く蓄積することが重要です。このデータを標準化し、荷主に対して「HVO使用によるCO2削減効果」を精緻に証明できる体制(環境価値の可視化)を整えれば、来る「2030年問題」におけるドライバー不足や物量減少の中でも、荷主から優先的に選ばれる「環境プレミアム運賃」を収受する強固な競争優位性を確立できます。

参考記事: 2030年問題(物流)とは?実務担当者が知るべき基礎知識と対策完全ガイド

物流施設デベロッパー:次世代エネルギー供給拠点化による差別化戦略

本プロジェクトにおいて注目すべきもう一つの存在が、燃料の調達を担う「NX商事」のようなエネルギー・商社プレイヤーと、それらが利用する物流インフラです。

HVOの普及における最大のボトルネックは、スタンド網などの「供給インフラの圧倒的な不足」です。運送会社が自社拠点にインハウス(自家用)の給油スタンド(インタンク)を持たない限り、日常的なバイオ燃料の補給は困難です。

ここに、先進的物流施設(マルチテナント型大型倉庫)を開発するデベロッパーの新たな差別化戦略が生まれます。施設内にNX商事などのサプライヤーと提携した「次世代バイオ燃料・HVOの共同給油ステーション」を設置し、テナント企業が優先的かつ容易にバイオ燃料を補給できる「エネルギー拠点化」を推進するのです。これにより、入居する荷主・物流企業は、当該施設に拠点を構えるだけでScope3削減に直結するクリーンな輸配送網を即座に構築できるようになり、施設自体の環境付加価値(ESG不動産としての価値)が飛躍的に高まります。


LogiShiftの視点:マルチパスウェイがもたらす「持続可能なグリーン物流」

マツダと日本通運の今回の実証は、日本の物流脱炭素化の方向性が「車両の電動化一辺倒」から、バイオ燃料や合成燃料を含む「マルチパスウェイ(全方位・多用的経路)」へと完全にシフトしたことを象徴しています。既存のディーゼルエンジンの高い熱効率と堅牢なフリート資産を活かしつつ、サプライチェーン全体でコストと環境負荷のバランスを取るこのアプローチこそ、日本が目指すべき現実路線の極みです。

今後、このマルチパスウェイ戦略が本格化するに伴い、物流企業や荷主は以下のような技術的・実務的な課題とその対応策(BCP)を深く理解しておく必要があります。

HVO導入初期における「インフラ洗浄作用」と車両側のトラブル対策

HVOは優れたドロップイン燃料ですが、石油由来の軽油を長年使い続けてきたインハウスの地下タンクや配管内に初めて導入する際、現場では特有のトラブルが発生します。HVOは軽油に比べて極めて高い「洗浄作用」を持っているため、タンクや車両の燃料配管内に長年こびりついていたスラッジ(微細な汚れや錆)を一気に剥離させてしまうのです。

この剥離したスラッジが、車両が走り出した初期段階においてインジェクターや燃料フィルターを詰まらせ、警告灯の点灯や突然の出力低下(セーフモード移行)といった突発的な車両ダウンタイムを招くケースが報告されています。実務的には、以下のステップによる予防保全とBCP対策が必須となります。

  • 導入前クリーニングの徹底:地下タンクへのHVO初充填前に、必ずタンク内部の精密高圧洗浄と水分除去を行う。
  • フィルター交換サイクルの短縮:導入後最初の3ヶ月間は、車両の燃料フィルターの点検・交換サイクルを通常の半分に設定し、予兆検知を徹底する。
  • 代替車両の即時アサイン体制:万が一、走行中に目詰まりが発生した場合に備え、同一ルート上に従来軽油で走るバックアップ車両を一時的に配備し、WMSやTMSを連動させた代替配送ルートの切り替え手順(SOP)を確立しておく。

FCV・EVトラックとの長中短レンジにおける最適な住み分け

物流の脱炭素化において、バイオ燃料、EV、FCV(燃料電池)は決して排他的な対立関係ではなく、それぞれの特性(航続距離・積載量・充電/充填時間)に応じた「距離・重量別」の適材適所のポートフォリオとして機能します。

以下の表に、3つのクリーンパワートレインにおける実務的な住み分けの最適解を示しました。

パワートレイン 得意とする輸送レンジ 積載効率(ペイロード) 実務的な導入メリット・課題
EVトラック 近距離エリア配送(100km〜200km圏内) バッテリー重量により重量勝ちの貨物では積載量が制限される 深夜の基礎充電で対応可能。ルートが固定された都市内ピストン輸送に最適。
FCVトラック 都市間・長距離の幹線輸送(500km〜800km圏内) 水素タンクの配置(キャブバック)により荷台容積が若干削られるジレンマ 10〜15分という短時間での水素充填が可能。夜間長距離のターンアラウンドを維持。
HVO(バイオ燃料) 全ての領域(特に長距離・重積載のクリーンディーゼル代替) 従来軽油車と同等(積載効率の低下ゼロ) 既存車両を100%活用できるためインフラ制約がない。EV/FCVへの完全移行期の最強の現実解。

この住み分けが示す通り、EVやFCVのインフラが全国的に完全に整備されるまでの「過渡期(10〜20年)」において、既存のディーゼル車を活かせるHVOは、すべての輸送レンジをカバーする極めて柔軟な滑空路(滑走路)となります。

参考記事: FCVトラックとは?物流現場での実務知識と導入のメリットを徹底解説

環境価値のトレーサビリティを担保する「Book & Claim」とデータ連携DX

マツダと日本通運の実証では、NX商事が調達したHVOが直接車両に給油されますが、バイオ燃料の社会実装が広がるにつれ、物流現場では「Book & Claim(ブック・アンド・クレーム)」方式の活用が主流になっていくと予測されます。

これは、HVOなどのバイオ燃料を物理的に全車両に給油するのではなく、特定の拠点でまとめて給油・使用された「CO2削減という環境価値」のみをデジタル証跡化し、他の拠点や他の荷主の輸送実績に対して割り当て(按分)処理を行う仕組みです。これを行うには、WMS(倉庫管理システム)の出荷データ、TMS(輸配送管理システム)の走行距離データ、そして給油スタンドのエッジデバイスから得られる給油ログをAPIでシームレスに統合し、「どの荷主の、どの貨物の輸送に、何リットル分のバイオ燃料の環境価値が割り当てられたか」を第三者監査に耐えうるレベルで精緻にトラッキングする「データマネジメントDX」が不可欠です。

環境価値の不当な二重計上(ダブルカウント)を防ぎ、透明性の高いデータを荷主のScope3報告用エビデンスとして自動生成できるプラットフォームを構築した企業こそが、真の「グリーン物流」の勝者となるでしょう。

参考記事: カーボンニュートラル物流とは?現場担当者が知るべき実務知識と実践ガイド


まとめ:明日から現場リーダーが意識すべきこと

マツダと日本通運によるHVO実証走行は、物流脱炭素化の現実路線を示す試金石です。この動きを「大手の実験」と傍観するのではなく、自社の明日からの事業戦略に落とし込むため、経営層や現場リーダーは以下の3点を即座に意識し、動き出すべきです。

  1. 自社保有フリートの「環境ステージ」の棚卸し
    自社が保有するクリーンディーゼル車両の比率、使用年数、および主な運行ルートを棚卸しし、「もし明日、荷主からHVOへの燃料転換を打診された場合、即座に対応可能な車両が何台あるか」を車台番号レベルで可視化・リスト化する。
  2. 荷主との「Scope3共同削減」の対話の開始
    荷主企業の環境推進部門や購買部門に対し、EV化によるコスト・インフラの限界を論理的に説明した上で、「既存のディーゼル車を活かしたHVOなどのバイオ燃料活用による、現実的なCO2削減ロードマップ」を共同で設計するための提案を行う。
  3. 燃料調達サプライヤーとのネットワーキング
    今回の実証でNX商事が果たしているような、地域に根ざしたバイオ燃料(HVO)の調達ルートを持つ商社や石油元売り、リサイクル事業者との接点を早期に持ち、自社の主要拠点(インタンク)でのHVO受け入れ体制や供給単価の見通しについての情報収集を開始する。

物流の脱炭素化は、もはや義務としてのコスト負担ではなく、強靭なサプライチェーンを築き、次世代の新規案件を獲得するための「最強の営業武器」です。マルチパスウェイの時代において、既存の現場力とデジタルテクノロジーを掛け合わせ、いち早く燃料転換の知見を蓄積した企業こそが、持続可能な未来への主導権を握るのです。


出典: マツダ ニュースリリース

Share this article:

監修者プロフィール
近本 彰

近本 彰

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

新東名の自動運転レーン整備で変わる幹線輸送。レベル4時代に必須の3つの対策
2026年4月15日

新東名の自動運転レーン整備で変わる幹線輸送。レベル4時代に必須の3つの対策

自動運転トラック実証が示す3つの影響!T2・ユニチャームの関東〜関西次世代輸送
2026年4月6日

自動運転トラック実証が示す3つの影響!T2・ユニチャームの関東〜関西次世代輸送

大雪警報時の決断 待っていたのは「契約解除」「配送止めたのはお宅だけ」
2026年3月16日

大雪警報の決断が「契約解除」に?「止めたのはお宅だけ」の異常な実態と企業防衛策

最近の投稿

  • 花王株式会社など9社が配送効率20%向上へ、データ標準化が必須対応に
  • コープさっぽろが配送を1日1便に削減し共同配送を加速させる
  • 国土交通省が鉄道貨物163.6億トンキロでD評価、輸送網再構築が加速
  • 鉄道シフト163.6億トンキロと国土交通省が示す輸送体制再構築の必須対応
  • 欧州物流でAmazonが1.8兆円を投じる自動化は国内DX加速に直結

最近のコメント

表示できるコメントはありません。

LogiShift

物流担当者と経営層のための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット
  • サプライチェーン

もっと探す

  • ツール紹介
  • 海外トレンド
  • 事例
  • 統計分析
  • 物流用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift Global
  • FinShift

© 2026 LogiShift. All rights reserved.