Skip to content

LogiShift(ロジシフト)

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • 事例
  • ツール紹介
  • 統計分析
  • 用語辞典
Home > 輸配送・TMS> 2028年6月全面施行!国土交通省の適正原価制度で運送事業者の淘汰が加速
輸配送・TMS 2026年7月26日

2028年6月全面施行!国土交通省の適正原価制度で運送事業者の淘汰が加速

2028年6月全面施行!国土交通省の適正原価制度で運送事業者の淘汰が加速

国土交通省は2026年7月17日、改正貨物自動車運送事業法に基づき導入される「適正原価」制度の設計に向け、第1回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」を開催しました。本制度は適正な利潤を含まないものの法的拘束力を持つ事実上の「最低運賃」として機能し、継続してこれを下回る事業者は5年ごとの事業許可更新が認められず市場からの退出を迫られることになります。


ニュースの背景・詳細:物流業界初の「最低運賃」適正原価制度の全貌

日本の物流業界において、長年問題視されてきた運賃ダンピングや多重下請け構造による買いたたきに対し、国が強力な法的介入を断行しました。

国土交通省が設置した第1回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」は、2025年6月11日に公布されたトラック適正化二法(改正貨物自動車運送事業法等)に基づき、事業者が遵守すべき「適正原価」の具体的な算出方法や制度運用のあり方を整理するために発足したものです。

本制度は公布から3年以内、すなわち2028年6月までの全面施行が法で定められており、2026年年内の提言取りまとめに向け、月1回ペースで議論が加速しています。

「標準的な運賃」と「適正原価」の決定的な違い

実務担当者や経営層が最初に正確に把握しなければならないのは、これまで運用されてきた「標準的な運賃」と、今回新設される「適正原価」の違いです。両者は定義、法的性質、ペナルティにおいて決定的に異なります。

比較項目 標準的な運賃(現行・順次廃止予定) 適正原価(新設・2028年6月までに施行)
制度上の定義 能率的な経営における原価+適正な利潤(事業報酬) 適正な事業運営に必要な最低限の原価(利潤は含まない)
法的拘束力 なし(交渉を円滑にするための告示・参考指標) あり(継続して下回る取引を法的に禁止)
不遵守時のペナルティ 直接的な処分・罰則なし 事業許可の更新不許可(運送免許の失効・市場退出)
提示・告示形式 タリフ表(車種・距離・時間別の運賃一覧表) 算定式(稼働時間や走行距離等の実績値を代入する計算式)
適用・義務の範囲 自社で受託する運賃設定の目安 自ら運送する場合・他者へ委託(再委託)する場合の両方

従来の標準的な運賃は、適切な利潤を上乗せした「めざすべき推奨運賃」として告示されていましたが、法的拘束力がなかったため、市場での浸透は限定的でした。

これに対し「適正原価」は、利潤を一切含まない「法令を遵守して事業を継続するための床(フロア)」として位置づけられます。適正原価を下回る価格での運送は、安全対策費用の削減やドライバーへの不当な低賃金を前提としなければ成立しないと国が法的に定義することを意味します。

参考記事: 国土交通省が2028年6月適正原価を全面施行、取引見直しが必須に

参考記事: 標準的な運賃とは?2024年4月改定の5大ポイントと実務対応を徹底解説

固定的なタリフから「実績値を代入する算定式」へのシフト

適正原価の提示方法においても、従来の一覧表(タリフ形式)からの根本的な変更が行われます。

貨物輸送は荷物の種類、車両、稼働条件が多岐にわたるため、一律の価格表を示すことは現実的ではありません。そのため新制度では、国が基準となる「算定式」を示し、各事業者が自社の運行実態に基づく「走行距離」「稼働時間」「実車率」などの実績データを代入して、自社固有の適正原価を算出する仕組みが採用されます。

算定式の基本的な構成イメージは以下の通りです。

$$\text{適正原価} = \text{運賃原価(固定費+変動費)} + \text{委託手数料} + \text{料金原価等} + \text{燃料サーチャージ} + \text{実費}$$

算定式に含まれる構成要素の具体的な内訳は以下の通りです。

  • 運賃原価(固定費):
    • 人件費(全産業平均を踏まえた適正な給与水準)
    • 車両減価償却費・各種保険料・税金
    • 輸送の安全確保に必要な経費(ドラレコ、デジタルタコグラフ、任意保険料等の維持費)
    • 事業継続投資原資(人材確保・育成費用、労働環境改善投資、BCP対策費)
  • 運賃原価(変動費):
    • 燃料代、油脂費、車検・修理費、タイヤ消耗費
  • 料金原価等:
    • 荷扱い作業料、検品料、長時間待機に伴う待機時間料
  • 委託手数料:
    • 下請(実運送事業者)に委託する際の適正な手配手数料(不当な中抜きの禁止)
  • 実費:
    • 高速道路利用料(有料道路代)、フェリー代、中継輸送料等

なお、一度のスポット取引で偶発的に適正原価を下回ったからといって直ちに違法とされるわけではありません。事業者の決算期等を考慮した一定期間(1年間などが検討中)において「継続して下回っている状態」が確認された場合に行政処分の対象となり、事業許可の更新が拒否されます。

参考記事: 貨物自動車運送事業法第24条と2026年7月9日の原単価方式転換への必須対応

適正原価制度の導入に向けたタイムラインとロードマップ

適正原価制度は単独で運用されるものではなく、2025年に成立した法改正および「5年ごとの事業許可更新制」と一体で導入されます。

実施期日・時期 決定事項および重要ファクト 業界・実務への具体的なインパクト
2025年6月11日 改正貨物自動車運送事業法(トラック適正化二法)の成立・公布 法的規制強化の枠組みが確定
2026年7月17日 第1回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」の開催 原価の構成要素および算定式の論点整理がスタート
2026年8月〜9月 事業者・荷主・関係団体へのヒアリング実施 実車率の想定やインセンティブ設計など実務課題の抽出
2026年12月 検討会による提言取りまとめ公表予定 適正原価の骨子および算定式の基本構造が確定
2027年中 国土交通省による「適正原価」の正式告示 約1年間の周知期間。全事業者に原価算出の準備を要求
2028年6月まで 適正原価制度および「5年ごとの事業許可更新制」全面施行 適正原価を下回る運送契約の継続に対し許可更新拒否を適用
2030年以降 既存運送事業者の順次更新審査が本格化 ダンピング事業者の強制排除・市場からの退出が現実化

参考記事: 国土交通省が2028年6月までに適正原価を全面施行へ、運賃未達で事業許可更新拒否に直結


業界への具体的な影響:4つのプレイヤーに迫る構造的変化

適正原価制度の導入と事業許可更新制の連動は、物流に関わるすべてのステークホルダーに対し、これまでの商習慣や管理体制の抜本的な刷新を迫ります。

1. 行政・規制当局:努力義務から「更新拒否による強制市場退出」への転換

規制当局である国土交通省および関係省庁は、これまでの「指導・推奨」というソフトロー主導のアプローチから、強力なペナルティを伴うハードロー主導の市場ガバナンスへと完全に舵を切ります。

監査においては「トラック・物流Gメン」や国交省の適正化機関が全面的に稼働します。走行データや契約書面面の監査を通じ、適正原価を下回る水準で契約を継続している運送事業者を特定します。

最大の変化は、違反事業者に対して「改善命令」にとどまらず、「5年ごとの事業許可更新を不許可にする」という強力な行政処分を行使できる点です。これにより、安全を軽視し過度な安値で仕事を請け負う悪質なダンピング事業者を法的強制力によって市場から排除する体制が完成します。

参考記事: トラックGメンとは?2024年問題に立ち向かう不適切取引の監視体制と企業の必須対策

2. 運送事業者(実運送・元請):データ管理が「経営ライセンスの維持条件」に激変

運送事業者にとって、自社の原価管理は単なる努力目標ではなく、運送業の経営ライセンス(事業許可)を維持するための絶対条件となります。

これまでの「他社がこの金額だから」「従来のタリフ表の通りだから」というような曖昧などんぶり勘定は一掃されます。事業者は、デジタルタコグラフ(デジタコ)や動態管理システム(TMS)等を駆使し、自社トラックの「1時間あたり・1キロあたりの稼働コスト」を精緻に算出・立証できる体制を整えなければなりません。

また、自社で車両を直接保有しない元請事業者や利用運送事業者に対しても、下請け(実運送事業者)へ支払う委託運賃が適正原価を下回らないようにする法的義務が課されます。中間マージンの不当な搾取や「中抜き」によって下請けの収受運賃が適正原価を割り込むような構造は、元請自身の処分・更新不許可につながるため、多重下請けの整理と適正な手数料設定が不可欠となります。

3. 製造業者・小売業者(荷主):「運送会社任せ」の買いたたきが自社の物流停止リスクに

製造業や流通業などの荷主企業にとって、「物流費は削るべきコスト」という昭和・平成型の調達姿勢は直ちに是正しなければならない経営リスクとなります。

仮に荷主側が強い立場を利用して運送事業者に適正原価未満での運送を強制し続けた場合、その運送事業者は更新審査を通らず倒産・廃業に追い込まれます。その結果、自社製品を運ぶ手段を失い、サプライチェーンが物理的に途絶するという深刻な事態(物流難民化)を招くことになります。

また、2026年4月から特定荷主に対して選任が義務化された「物流統括管理者(CLO)」の存在が重要になります。国が示す算定式によって運送コストの構造(燃料代、人件費、高速代、待機料金等)が客観的に可視化されるため、CLO主導で適切なコスト負担を受け入れ、長時間の荷待ち解消や付帯作業の有償化に応じることが強く求められます。

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策

4. 物流市場の構造的変化:「安さ競争の完全終焉」と品質・効率へのシフト

1990年の物流二法による規制緩和以降、30年以上にわたって続いてきた「安さを武器にした過当競争」の時代は完全に終焉を迎えます。

今後は、国が設定する適正原価(法的最低ライン)が市場の強固な「床(フロア)」として機能します。価格の引き下げによる顧客獲得が不可能となるため、物流市場における競争の軸は「いかに自社データを活用して積載率や稼働効率を高められるか」「いかに良好な労働環境を整備して優秀なドライバーを確保できるか」という、サービス品質と運行効率、コンプライアンスの信頼性を競う「準公的インフラ産業」へと構造的に再編されていきます。


LogiShiftの視点(独自考察):適正原価制度がもたらす実務上の陥穠と真の経営戦略

適正原価制度の具体化は、物流業界の正常化に向けた歴史的転換点であると同時に、実務運用において極めて注意すべき「2つの落とし穴」をはらんでいます。LogiShiftでは、本記事固有の制度構造(算定式と利益を含まない定義)に基づき、以下の論点を提示します。

1. 適正原価への「価格の硬直化」リスク:適正原価は「利益」ではない

最も懸念されるのは、国が提示する適正原価の「算定式」が公表された際、荷主企業や運送事業者がそれをそのまま「適正運賃(契約額)」と誤認し、実際の取引価格が適正原価へ一律に張り付いてしまう「運賃の硬直化」です。

繰り返しになりますが、制度上の「適正原価」には、事業者が将来の投資や株主還元、企業存続のために必要な「適正な利潤(利益)」が一切含まれていません。適正原価はあくまで「これ未満で走らせると法令違反(安全不履行・買いたたき)とみなされる最低ライン」にすぎないのです。

運送事業者が適正原価そのものを契約運賃として収受し続けた場合、法的なペナルティは免れたとしても、企業としての営業利益はゼロのままとなり、最終的には黒字倒産や資金枯渇による事業断念へと追い込まれます。運送会社は、算定式で導き出した「適正原価」をベースにしつつ、自社に必要な「適正利益」を明確に乗せた「本来の請求運賃」を荷主に提示し、交渉する強固なエビデンス武装が不可欠となります。

2. 効率化努力が原価低減とみなされる「逆インセンティブ」の解消

算定式に基づく運賃設定において制度設計上の大きな課題となるのが、「物流効率化努力に対するインセンティブの確保」です。

運送事業者や荷主が共同配送やバース予約システムを導入し、車両の稼働効率を高めたり荷待ち時間を削減したりした場合、従来の単純な算定式にあてはめると「必要な稼働時間や走行距離が減ったため、算定される適正原価が下がる」という事態が発生し得ます。自らの努力によって効率化を進めた結果、収受できる原価の上限が削られてしまうようでは、現場のDXや効率化投資のモチベーションが完全に失われてしまいます。

検討会においても、この「効率化による逆インセンティブ」をいかに防ぐかが主要な論点として挙げられています。単なる走行時間・距離の掛け算ではなく、高い稼働率や実車率を達成した事業者に対しては、適正なインセンティブ(利益幅の拡大や優遇措置)が担保されるような精緻な算定式の設計を国交省に強く期待したいところです。


まとめ:2028年の全面施行に向けて明日から着手すべき3つの実務アクション

2028年6月までの適正原価制度の全面施行に向け、残された準備期間は決して長くありません。すべての物流関係者および荷主企業が、明日から直ちに取り組むべき3つの実務アクションを提示します。

1. 自社の運行・労務データをデジタル化し、「原単価」を可視化する

感覚的な運賃設定から完全に脱却し、デジタコやTMS(運行管理システム)等のデータを活用して、自社のトラックを1時間・1キロ走らせるために必要な固定費・変動費・人件費を精緻に算出する原価管理体制(ABC分析)を直ちに構築してください。データを客観的に示せることが、2028年以降の免許維持と価格交渉の唯一の武器となります。

2. すべての契約において「運賃」と「付帯作業・待機時間料」を完全分離する

長時間の荷待ち、手荷役、検品、ラベル貼りといった作業を「サービス(無償)」として運賃に含める商習慣を全廃してください。運賃とは明確に別建てで「待機時間料」「荷役作業料」を規定し、書面または電子データで契約を交わすことで、算定式に対応できる契約体系へ移行させましょう。

3. 荷主・元請との間で「データ共有に基づく対等な対話」を開始する

適正原価制度の開始と事業許可更新制の連動は、荷主企業にとっても自社の調達網を守るための重要課題です。運送会社は自社の稼働データやコスト構造を透明性持って開示し、荷主側もCLOを中心にそのデータを受け入れて適切なコスト改定に応じるという、真のパートナーシップの構築を今すぐ進めてください。

法令順守とデータ経営を徹底する企業にとっては、不公正な価格競争が排除される「千載一遇のチャンス」となります。変化を先取りした迅速な決断と行動が、2028年以降の企業の生存を決定づけます。


出典: Yahoo!ニュース
出典: 国土交通省(検討会資料等)
出典: LNEWS
出典: LOGI-TODAY

Share this article:

監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

関連記事

トラック上限960時間規制に対応!JR貨物越谷積替ステーション活用が加速
2026年7月25日

トラック上限960時間規制に対応!JR貨物越谷積替ステーション活用が加速

国土交通省2024年4月調査で非対面受取が31.0%突破|都市部高止まりへの必須対応
2026年7月10日

国土交通省2026年4月調査で非対面受取が31.0%突破|都市部高止まりへの必須対応

国土交通省が示す改正物流効率化法2026年成果|平均拘束時間1時間33分短縮と経営層の必須対応
2026年7月13日

【2026年最新】ドライバー平均拘束時間は10時間13分に!1時間33分短縮の実態と荷主企業の対応策|国交省発表

表示できるコメントはありません。

LogiShift

物流担当者と経営層のための課題解決メディア。現場のノウハウから最新のDX事例まで、ビジネスを加速させる情報をお届けします。

カテゴリー

  • 物流DX・トレンド
  • 倉庫管理・WMS
  • 輸配送・TMS
  • マテハン・ロボット
  • サプライチェーン

もっと探す

  • ツール紹介
  • 海外トレンド
  • 事例
  • 統計分析
  • 物流用語辞典

サイト情報

  • 運営者情報
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • LogiShift Global
  • FinShift

© 2026 LogiShift. All rights reserved.