株式会社アンドエスティホールディングス傘下の株式会社アンドエスティ・ロジスティクスは、兵庫県神戸市の「西宮北物流センター」に次世代自動倉庫および搬送ロボットを大規模導入し、本格稼働を開始した。出荷作業の生産性が従来比196%へと劇的に向上しただけでなく、在庫保管効率も155%へと大幅に改善されたことで、アパレル物流における人手不足解消と柔軟なサプライチェーン構築の先駆的事例となっている。
ニュースの背景・詳細
アンドエスティの物流ネットワーク再編とプロジェクトの全体像
55を超える多彩なアパレル・ライフスタイルブランドを展開する株式会社アンドエスティHDは、全国7カ所の物流センターによってグループの強固なサプライチェーンを支えている。同社グループでは、大型ブランドについては東西2拠点からの発送を行い、中小規模ブランドについては関東のメインセンターから全国へ発送するマルチロジスティクス体制を敷いている。
今回、大規模なロボティクスソリューションが導入された「西宮北物流センター」(兵庫県神戸市北区、倉庫面積約1万9,339m2)は、同グループの主力ブランドである「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」などをはじめとする大型ブランドの西日本エリアの店舗・物流をカバーする中核拠点である。
同センターでは、従来の人的労働に依存した作業フローから脱却し、最新鋭の自動化設備を複合的に組み合わせることで、在庫保管能力の極大化と出荷スピードの倍増を実現させた。本プロジェクトの時系列および実施プロセスは以下の通りである。
西宮北物流センター開設と自動化推進の時系列
| 年月 | 出来事・取り組み内容 |
|---|---|
| 2023年8月 | 茨城県常総市に東日本の主要拠点となる「常総物流センター」を開設 |
| 2025年6月〜8月 | 常総物流センターへ搬送・仕分けロボットを先行導入し自動化・省人化を推進 |
| 2025年8月1日 | 関西エリアの集約・強化を目指し「西宮北物流センター」を新設(福岡物流センターの機能を統合) |
| 2025年10月1日 | グループブランディング強化に伴い、物流子会社社名を「株式会社アンドエスティ・ロジスティクス」へ変更 |
| 2026年7月 | 西宮北物流センターにて「AirRob PickingWall」および「t-Sort OPS」の本格運用を開始 |
| 2026年8月3日 | 西宮北物流センターへの最先端ロボティクス大規模導入を正式発表 |
プロジェクトを支える関係企業と各社の役割
本プロジェクトは、荷主であるアンドエスティ・ロジスティクスに加え、物流ロボティクスサービス(RaaS)を提供するプラスオートメーション株式会社(+A)、および物流インテグレーターである株式会社T5の3社による協同プロジェクトとして推進された。各社の得意領域を融合させることで、単一機器の導入にとどまらない総合的な物流DXが実現した。
プロジェクト参画企業と主な役割分担
| 企業名 | プロジェクトにおける主な役割 |
|---|---|
| 株式会社アンドエスティ・ロジスティクス | 荷主および拠点運用主体。現場オペレーションの要求定義と業務プロセスの再構築を担当 |
| プラスオートメーション株式会社(+A) | RaaS事業者。ロボティクス全体の構想設計、独自開発のWES/WCS「+Hub」の提供、機器のサブスクリプション供給および運用保守支援 |
| 株式会社T5 | 物流インテグレーター。庫内レイアウトの全体設計、機器の機械設計・調達・施工、およびPLC制御プログラムの実装を一元担当 |
導入された最先端ロボティクスソリューションの機構
西宮北物流センターに導入された主要設備は、空間の高密度利用と効率的な搬送・仕分けを同時に達成するための複合ソリューションとなっている。
1. 高密度ケース自動倉庫「AirRob PickingWall(エアロボピッキングウォール)」
天井高を最大限に活用し、最大5.5m強の高層ラック空間を高密度に利用する自動倉庫システム。同センターでは24の作業ステーションを備え、保管効率を従来比155%へと向上させた。季節変動やSKU数の増減が激しいアパレル商材を高密度かつ迅速に出庫できる。
2. 小型仕分けロボット連携システム「t-Sort OPS(Order Picking System)」
仕分けロボット「t-Sort」を作業者のピッキングおよびラインピッキング工程に組み込んだ高度なオーダーピッキングシステム。保管エリアから出庫された商品をステーションまで自動搬送する仕組みを構築している。
3. 搬送ラインを停滞させない「2段架台構造」
t-Sort OPSが走行する架台の周辺に、独自の「2段架台構造」を採用。出荷保留や時間待ちが発生した仕分けアイテムをメインラインの外側に一時的に退避・滞留させることで、搬送ロボットの走行ラインや全体の運用フローを一切止めない連続処理を可能にしている。
4. ロボティクス統合制御システム「+Hub(プラスハブ)」
プラスオートメーションが独自開発したWES(倉庫実行システム)/ WCS(倉庫制御システム)。各種ロボットや搬送設備、倉庫管理システム(WMS)のデータをリアルタイムで統合・制御し、ステーションごとの負荷平準化と最適なロボット配車を実現している。
コンベア廃止と「GTP / BTP」完全移行がもたらす構造改革
従来の倉庫運営においては、作業スタッフが広大な館内を歩き回り、目的の棚から商品を摘み取る「ウォーキング」と呼ばれる歩行作業が全体の労働時間の多くを占めていた。また、従来の自動化倉庫で一般的だった固定式の大型ベルトコンベアは、一度設置するとレイアウト変更が極めて困難であり、メンテナンス負荷や初期投資・ランニングコストの高さが課題となっていた。
今回の導入では、固定式ベルトコンベアを完全に排除し、ロボットによる自由軌道の搬送へ置き換えた。これにより、以下の2つの作業方式への完全転換を達成している。
- GTP(Goods to Person): 商品が作業者の元へ自動で届く仕組み
- BTP(Box to Person): 出荷用の箱やコンテナが作業者の元へ自動で届く仕組み
作業スタッフは所定のステーションに留まったまま検品・ピッキング・梱包作業を完結できるようになり、身体的負担が大幅に軽減された。この作業方式の抜本的改革により、出荷作業の生産性は従来比196%と、実質2倍近くに向上した。
参考記事: アパレル物流とは?実務担当者が知るべき基礎知識から自動化・3PL活用まで徹底解説
参考記事: 自動倉庫とは?仕組みから種類、失敗しない導入フローまで徹底解説
業界への具体的な影響
小売業者(経営・物流部門)への影響:高投資対効果(ROI)の提示とアパレル波動への即応
アパレル・小売業界において、物流センターの自動化投資は多額の固定費を伴うため、経営層にとって投資回収の不確実性がハードルとなってきた。しかし、本事例で示された「生産性196%(約2倍)」「在庫保管効率155%(1.5倍)」という明確な定量データは、大規模自動化プロジェクトのROIを算定する強力なベンチマークとなる。
また、季節ごとのセールやトレンド変化による物量波動が激しいアパレル市場において、固定設備に依存しないRaaS型のシステム構築は、経営のアジリティ(俊敏性)を飛躍的に高める。必要に応じてロボットの台数やステーションの稼働を調整できる柔軟性は、過剰投資リスクを抑えつつ販売機会損失を最小化する経営戦略として、今後の小売業の物流標準となっていく可能性が高い。
さらに、関東の常総物流センターと関西の西宮北物流センターによる「東西2拠点体制」の完成は、近年の自然災害リスクに対する強靭なBCP(事業継続計画)ソリューションとなる。西日本エリアの店舗に対する納品リードタイムが短縮され、配送距離の削減に伴う輸配送コストおよびCO2排出量の削減にも寄与する。
倉庫内作業員・現場リーダーへの影響:肉体労働からロボットとの協調作業(GTP)への役割シフト
倉庫内作業員に求められる役割は、重労働を伴う「肉体労働」から、定置型ステーションでロボットと協調しながら正確な処理を行う「知的作業」へとシフトする。広大な倉庫を1日に数万歩あるく身体的負担が解放されることで、労働環境は劇的に改善される。
これは単を作業効率を高めるだけでなく、人手不足が深刻化する日本国内において、シニア層や短時間労働者の採用口を広げ、現場スタッフの定着率(離職率低減)を高める重要な要因となる。また、作業手順が標準化・自動化されることで、新入スタッフに対する教育コストや習熟期間が短縮され、スポット作業員であっても即座に高い生産性を発揮できるようになる。
現場リーダーにとっても、従来の「作業員の歩行動線管理」や「コンベア詰まりの解消作業」といった突発的なトラブル対応から解放され、2段架台構造によるスムーズなデータ管理やデータ駆動型の工程改善など、より付加価値の高いマネジメント業務に集中できる環境が整う。
SaaS・テクノロジーベンダーへの影響:サブスク型RaaSとマルチベンダーインテグレーションの標準化
今回の導入劇は、倉庫自動化におけるパラダイムシフトを象徴している。従来の「マテハンメーカーが提供する固定式の巨大な専用設備」から、「自律走行ロボットやモジュール型自動倉庫を制御システム(WES)で束ねるフレキシブルなモデル」への移行である。
特に、プラスオートメーションが展開するRaaS(Robot as a Service)モデルの有効性が証明された意義は大きい。初期投資コストを抑え、月額等のサブスクリプション形式で最先端のロボティクスを導入できるRaaSは、技術の陳腐化リスクを荷主側から緩和する仕組みとして注目を集めている。
また、自社プロダクトのみで完結させるのではなく、+Aの「+Hub」を核としてT5のようなインテグレーターと連携し、異なるメーカーのロボティクス(AirRob PickingWallとt-Sort OPS)を高度に融合させた「マルチベンダーソリューション」の成功は、今後の倉庫DXにおける開発手法のモデルケースとなるだろう。
参考記事: 物流ロボティクスとは?2024年・2026年問題に立ち向かう省人化・自動化の基礎知識と導入ステップ
参考記事: ピッキングロボットの選び方|AMR・GTP・アーム型の違いと失敗しない導入5ステップ
LogiShiftの視点(独自考察)
「GTP+BTP+2段架台」が達成した“ノンストップ・連続処理”の革新性
自動化倉庫の導入において、スペック通りの生産性が出ない最大の原因は「例外処理によるライン停止」にある。ピッキング現場では、入荷時の数量違い、商品のバーコード読み取りエラー、あるいは特定のオーダーに対する出荷一時保留といった「例外」が日常的に発生する。従来の直線型コンベアや単一走行ラインの自動倉庫では、こうした例外が発生した際、後続のロボットや作業員が巻き込まれてライン全体が停止(あるいはボトルネック化)することが珍しくなかった。
アンドエスティ・ロジスティクスが導入したシステムの真の凄みは、t-Sort OPSの走行エリア周辺に構築した「2段架台構造」という物理的かつ運用上のバッファーを設けた点にある。処理が停滞したアイテムや保留オーダーを即座にメインラインから架台の別段へ退避・滞留させることで、搬送ロボットの走行流を1秒たりとも止めない「連続処理(ノンストップ・オペレーション)」を実現した。
GTP(モノから人へ)やBTP(箱から人へ)という概念自体は新しくないが、それを現場で「止めずに流し続ける仕組み」として昇華させた今回の設計思想は、ロボットの理論スペックを現場の実質生産性(196%)へと100%変換させた核心的技術である。
脱・コンベアがもたらす「アジリティ(俊敏性)」と「拠点ライフサイクル」の変化
従来の大型ベルトコンベアを中心とした自動化倉庫は、設置時の最適化には強いものの、将来の荷姿変更や取扱量の激減・激増、あるいは拠点の移転や縮小といった変化に対して極めて脆弱であった。床面にアンカーボルトで固定された大型コンベアは、撤去や改修に数千万円規模の費用と数ヶ月の工事期間を要するため、事業構造の変化に対する「重荷」となるリスクを常に孕んでいた。
アンドエスティ・ロジスティクスが選択した「固定コンベアの全廃と自由軌道ロボットの採用」は、物流拠点におけるアジリティ(俊敏性)を根本から変えるものである。自由軌道の搬送ロボットであれば、将来的に出荷量が拡大した際にはロボット台数や走行架台を継ぎ足すだけで簡単にキャパシティを拡張できる。逆に、事業再編が生じた場合でも、ロボットを他の拠点へ移設することが容易である。
つまり、倉庫設備の「可逆性(いつでも変更・元に戻せる柔軟性)」を担保した設計手法であり、アパレル市場のように流行の移り変わりが速く、将来の物量予測が困難な変化の時代において、リスクを極小化しながら自動化を達成する最も理にかなったアプローチといえる。
東西2拠点体制における「単なる分散」を超えた運用同期の実現
アンドエスティHDグループは、茨城県の「常総物流センター」と兵庫県の「西宮北物流センター」という東西の巨大中核拠点の双方において、最先端ロボティクスによる自動化を推進してきた。これにより達成されるのは、単なる物理的な災害リスク分散(BCP)にとどまらない。
両拠点でWES(+Hub)を介した高度なロボティクスオペレーションが標準化されることで、拠点間の「オペレーションの完全同期」が可能となる。万が一、東日本または西日本のいずれかで大規模な災害やシステム障害が発生した場合でも、もう一方の拠点へ出荷指示を即座に迂回させ、同一の生産性レベルで出荷業務を代替代行できる。この「真のデジタル・サプライチェーン・レジリエンス」の構築こそが、同社が目指す経営戦略の核である。
参考記事: ソフトバンクロボのSBフレームワークス向け自動倉庫が示す、人手不足解消への道筋【事例あり】
まとめ
本事例は、アパレル物流における労働集約型オペレーションからの脱却を示した、極めて先進的な成功モデルである。現場のリーダーや経営層が明日から自社の物流改革に向けて意識すべきアクションを整理した。
明日から取り組むべき3つのアクション
- 固定型インフラ前提の設備計画を見直し、可逆性の高いRaaSソリューションを比較検討する
倉庫の自動化を計画する際、固定式ベルトコンベアや固定棚自動倉庫だけでなく、自由軌道ロボット(AMRやt-Sort)やモジュール型自動倉庫を検討対象に含めること。事業変化に対応できる柔軟なコスト構造(OPEX化)を優先検討する。 - GTP導入時は「例外品(エラーや保留)を滞留・退避させる仕組み」を標準設計に組み込む
単にロボットで商品を運ぶだけでなく、検品エラーや出荷保留が発生した際にメインラインを止めない「退避ライン」や「バッファー構造(2段架台など)」を設計段階から組み込み、稼働率の低下を防ぐ。 - 拠点間での標準化を進め、災害時にも同レベルで代替稼働できるマルチ拠点を構築する
特定の拠点だけでしか動かせない属人的・固有のオペレーションを排除し、WES/WCSを介して標準化されたロボティクス運用を複数拠点に展開することで、サプライチェーン全体の強靭性を高める。
出典: 物流ニュース LNEWS
出典: 神戸経済新聞
出典: PR TIMES


