日本GLPは2026年8月6日、神奈川県厚木市において延床面積8万3,853.66㎡の先進的物流施設「Marq東名厚木」が2026年7月末に竣工したことを発表しました。建築資材や重量物の荷役に特化した低床バースやダブル連結トラック対応設備を備え、多様化する荷主企業のオペレーション課題を構造設計によって直接解決する次世代のソリューション型拠点として期待が高まっています。
新ブランド「Marq」の展開と「Marq東名厚木」の施設概要
日本GLPは、米投資会社アレス・マネジメント・コーポレーション(Ares Management Corporation)によるGLPキャピタル・パートナーズの中国を除く国際事業の買収に伴い、事業体制の再編とブランドの刷新を進めています。2025年12月にグローバル物流不動産の新統一ブランド「Marq Logistics(略称:Marq)」を発表し、従来の施設名称を順次移行していく計画です。
今回竣工した「Marq東名厚木」は、新規竣工物件として先行して「Marq」ブランドを冠した象徴的な施設となります。なお、同社が展開する大規模多機能型物流施設「ALFALINK」ブランドについては、今後も独立したブランドとして展開が継続されます。
ブランド名称変更の時系列
| 時期 | 出来事・戦略的意味 |
|---|---|
| 2025年3月 | 米アレス・マネジメントがGLPキャピタル・パートナーズの国際事業(中国除く)を買収し、日本GLPが傘下に入る。 |
| 2025年12月 | グローバル統一ブランド「Marq Logistics(Marq)」を正式発表。 |
| 2026年7月末 | 「Marq東名厚木」が竣工。新規物件として「Marq」名称を先行適用。 |
| 2026年8月6日 | 日本GLPが「Marq東名厚木」の竣工を発表。 |
| 2026年9月1日(予定) | 日本GLPが保有・運営する既存物流施設が一斉に「Marq」へ名称変更予定(※ALFALINKを除く)。 |
「Marq東名厚木」の施設スペックとBCP・環境性能
「Marq東名厚木」は、地上4階建てのマルチテナント型物流施設でありながら、このエリアのマルチ型施設としては希少なスロープ・ランプウェイを配置しています。最大の意図は、建築資材や重量物・長尺物を取り扱うテナント企業の荷役効率を最大化することにあります。
一般的に天井高が高く床面に段差がある高床式倉庫では、大型建材や重量機械の積み下ろしに制限が生じやすいため、本施設では1階および2階を「低床バース専用フロア」として設計しています。1階床荷重は2.0t/㎡を確保し、2.5tフォークリフトの直接走行を可能にすることで、重量物のスムーズな搬入出を実現しています。
| 項目 | 詳細スペック・特徴 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県厚木市酒井3316-1 |
| 敷地面積 / 延床面積 | 37,430.00㎡(約1万1,322坪) / 83,853.66㎡(約2万5,365坪) |
| 構造・規模 | 地上4階建て、耐震S造 |
| 設計・施工 | 株式会社鴻池組 |
| 着工 / 竣工 | 2024年11月 / 2026年7月末(2026年8月6日発表) |
| 荷役・車両設備 | ランプウェイ完備、1・2階低床バース専用フロア、2.5tフォークリフト対応、ダブル連結トラック対応駐車スペースおよび待機場整備 |
| 防災・BCP | 1階床面のかさ上げ(浸水リスク対策)、厚木市との協定に基づき4階カフェテリア(211㎡)を緊急避難場所として提供 |
| 環境認証 | ZEB Ready認証、BELS認証6stars、CASBEE認証Aランク取得、自家消費型太陽光発電・人感センサー付きLED照明導入 |
また、立地面では東名高速道路「厚木IC」から約900m(車で約2分)、新東名高速道路「厚木南IC」から約500m(車で約1分)という至近距離に位置します。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)との結節点でもあるため、首都圏全域への即日配送網を構築しやすい地理的優位性を誇ります。さらに、2028年度に予定されている新東名高速道路の全線開通後は、中京・関西圏へのアクセスが飛躍的に向上し、4時間圏内に日本人口の約47%に当たる約5,800万人を収める広域配送ハブとしてのポテンシャルを有しています。
参考記事: ダブル連結トラックの仕組みと導入基準|長距離輸送の生産性を高める法規・連結方式の違いを徹底解説
入居が決定した主要企業3社の活用戦略
「Marq東名厚木」の竣工発表時点で、すでに真栄運輸、日本エマソン、ホームエコ・ロジスティクス(住友林業グループ)の主要3社の入居が確定しています。各社が本施設を選定した理由は単なる立地の良さにとどまらず、それぞれの事業課題を解消するハードウェア仕様への評価が決め手となっています。
入居確定3社の活用計画と導入背景
| 企業名 | 主な事業領域 | 「Marq東名厚木」での拠点用途・評価ポイント |
|---|---|---|
| 真栄運輸株式会社 | 建築資材の一貫物流(輸配送、保管、在庫管理) | 首都圏全域への広域配送拠点。低床バースによる大型建材や重量物の積み下ろし作業時間の短縮・安全向上を高く評価。 |
| 日本エマソン株式会社 | 産業用精密機器・制御装置の製造・販売(米エマソン日本法人) | 機材保管に加え、顧客向け精密機器のショールーム機能および保守・メンテナンス拠点を併設。テナントの個別要望を具現化する日本GLPの設計対応力を評価。 |
| ホームエコ・ロジスティクス株式会社 | 住宅建設資材物流(住友林業グループ) | 神奈川内陸エリアに分散していた複数拠点を「厚木DC(約7,665㎡)」として集約。低床バース活用で長尺物・重量物の荷役を効率化し、2024年問題に伴うドライバー待機削減と配送効率化を推進。 |
ホームエコ・ロジスティクスによる拠点集約のインパクト
住友林業グループで建設資材の物流を担うホームエコ・ロジスティクスは、2026年8月6日に本施設1階へ「厚木DC」を開設し、稼働を開始しました。これまで神奈川県内陸エリアに点在していた複数の物流拠点を「Marq東名厚木」へ一元化することにより、拠点間輸送(横持ち輸送)の無駄を排除し、管理業務の集約を図っています。
特に住宅建材の物流現場では、外壁材や柱材などの長尺物・重量物の取り扱いが多く、高床式バースではクレーンやフォークリフトでの積み下ろしに危険と時間を要していました。1階の低床バースを活用することで、トラックの側面・後方からの直接積載が容易になり、作業負担の大幅な軽減とトラックの港留め(待機)時間の削減を実現しています。
日本エマソンに見るショールーム・メンテナンス機能の統合
米エマソン・エレクトリックの日本法人である日本エマソンは、単なる機器の保管保管庫としてではなく、精密機器のショールームや製品のメンテナンス・修理を行う技術拠点として「Marq東名厚木」を活用します。
高荷重に耐えうる床構造や大容量の電源インフラ、来客を想定した洗練された施設デザインなど、製造業が求める高度な機能を物流施設内に取り込むことで、サプライチェーンの最終拠点そのものを顧客との重要な接点(タッチポイント)へと変容させています。
参考記事: 共同配送とは?仕組みやメリット・デメリット、導入成功のポイントを徹底解説
プレイヤー別に紐解く「Marq東名厚木」が業界に与える影響
「Marq東名厚木」の開設と特化型設計の提示は、物流業界に関わる各プレイヤーに具体的な示唆と戦略の再考を促しています。
倉庫事業者・3PLへの影響:汎用マルチからの脱却と荷役特化提案
従来の先進的物流施設(ALF)は、汎用性を最優先した「高床式・天井高5.5m・床荷重1.5t/㎡」の標準スペックが主流でした。しかし、電子商取引(EC)や日用品以外の領域、特に建設資材、重量機械、自動車部品といった荷姿においては、高床バースや標準床荷重がかえってオペレーションの頸木(くびき)となっていました。
「Marq東名厚木」の事例は、1・2階を低床バースに特化させ、床荷重2.0t/㎡と2.5tフォークリフト走行に対応させることで、特定の荷姿に強みを持つ荷主企業の需要を確実に捉えられることを実証しました。3PL事業者にとっては、荷主の貨物特性に寄り添った荷役効率化を根拠とした強固な提案力を構築するためのモデルケースとなります。
製造業者・メーカーへの影響:保管拠点から「複合ソリューション拠点」への転換
メーカー企業において、物流拠点は長らく「コストセンター(保管と輸配送にかかる費用)」として捉えられてきました。しかし、日本エマソンのようにショールームやアフターメンテナンスの拠点を物流倉庫に集約する動きは、物流施設を「プロフィットセンター(顧客体験価値の向上とサービス収益創出の場)」へと変える先駆的な事例です。
特に精密機器や産業機械メーカーでは、部品在庫の保管場所と修理工場、製品デモストレーションの場が近接していることで、不具合発生時のリードタイム短縮や顧客対応力の飛躍的な向上が見込めます。物流効率化法で求められる「物流構造改革」の観点からも、自社拠点の多機能化・集約化は重要な選択肢となります。
運送事業者への影響:ダブル連結トラック対応と中継輸送ハブとしての活用
運送事業者にとって深刻化するドライバー不足(2024年問題・2026年問題)への解として、1台で大型トラック2台分の輸配送を可能にする「ダブル連結トラック」の活用が急速に進んでいます。しかし、現場では「全長25mの車両が進入できるバースや旋回スペースがない」というハード面の問題が導入の壁となっていました。
「Marq東名厚木」は、計画段階からダブル連結トラック専用の駐車・待機場を確保しており、長距離幹線輸送の途中でドライバーが交代する「中継輸送」の拠点や、トレーラーの脱着を行う「切り離しハブ」として機能します。東名・新東名・圏央道が交差する厚木エリアの地理的強みと合わさることで、ドライバーの日帰り運行シフトを支援し、拘束時間の遵守と運送効率向上を両立させます。
参考記事: 中継輸送とは?2024年問題に対応する3つの方式と導入メリットを解説
参考記事: ダブル連結トラック普及へ日野自動車など11社が7月23日新組織設立、共配が加速
LogiShiftの視点:汎用マルチから「課題解決型ハードウェア」への変貌
物流ジャーナリストの視点から本ニュースを読み解くと、最大の本質は「物流不動産の評価軸が、単なる広さや坪単価といった『面積の提供』から、荷主の事業課題を解決する『ソリューション(ハード構造)の提供』へと完全にシフトした」点にあります。
物流施設の二極化と「荷姿適合型」の優位性
長年、賃貸物流施設市場では「どんな荷主にも貸せる汎用性(コモディティ化されたスペック)」が投資効率の面から好まれてきました。しかし、空室率の上昇や建築坪単価の高騰が続く昨今の物流不動産市場において、画一的な汎用マルチテナント施設は価格競争に巻き込まれるリスクを抱えています。
これに対し「Marq東名厚木」は、厚木周辺の産業集積(内陸工業団地や建設資材需要)を徹底的にリサーチし、建材・重量物という明確なターゲットを設定して低床バースや高荷重床を設計に反映しました。その結果、高い市場評価を得ています。今後の物流不動産開発においては、建設予定地の周辺物流特性に合わせた「荷姿適合型」の設計思想が成功の必須条件となるでしょう。
2028年新東名全線開通を見据えた「広域メガハブ」の未来像
2028年度に予定されている新東名高速道路の全線開通(海老名南JCT〜御殿場JCT間の未開通区間開通)は、日本の物流物流網における最大のボトルネック解消を意味します。開通後は、東名・新東名のダブルネットワークが完全に機能し、首都圏と中京・関西圏を結ぶ幹線輸送の信頼性が格段に高まります。
「Marq東名厚木」が提示する「4時間で日本人口の47%(5,800万人)をカバーする」という数値は、首都圏のローカル配送拠点という枠組みを超え、東日本と西日本を繋ぐ「日本の中央広域ハブ」として機能することを物語っています。ダブル連結トラック対応や充実したトラック待機場といった設計は、2028年以降の広域物流パターンの変化を先取りした非常に合理的な戦略と言えます。
参考記事: 物流2026年問題とは?2024年問題との違いや法改正、実務で必要な対策を徹底解説
参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策
持続可能な物流拠点を構築するために明日から取り組むべき3つのアクション
「Marq東名厚木」の竣工と活用事例を踏まえ、荷主企業および物流事業者の経営層・現場リーダーが明日から取り組むべき具体策を提示します。
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自社取扱荷物の「荷姿・荷役特性」の再分析と拠点要件の見直し
自社が扱う主要商品の「重量」「形状(長尺・標準)」「荷役方式(フォークリフト・手降ろし・クレーン)」を洗い出してください。高床式バースでの積み下ろしが作業の滞留や安全上のリスクを生んでいないかを数値化し、次回拠点更新時には自社の荷姿に最適化したバース仕様(低床式や高床+スロープ等)を条件として明記することが重要です。 -
分散拠点の集約(マージ)による「横持ちコスト」と「管理工数」の削減シミュレーション
神奈川内陸エリアなど特定の地域に複数点在している分散拠点について、管理費・横持ち輸送費・在庫重複コストの集計を行ってください。ホームエコ・ロジスティクスの事例のように、先進的物流施設の一画へ統合した際の間接コスト削減額と配送効率化効果を具体的に比較算定しましょう。 -
ダブル連結トラックおよび中継輸送を活用した幹線ルートの再設計
2028年の新東名全線開通を見据え、自社の主要幹線ルート(例:関東〜関西間)においてダブル連結トラックの導入や中継輸送の導入可能性を検討してください。自社の既存拠点や委託先倉庫がダブル連結トラック(全長25m)の進入・待機・ドッキングに対応しているかを点検し、未対応の場合は「Marq東名厚木」のような対応型中継拠点の活用を選択肢に組み込むことが求められます。
まとめ
日本GLPが発表した「Marq東名厚木」は、単なるブランド刷新の第一号物件という枠にとどまらず、建築資材や重量物といった従来の先進的倉庫では対応が難しかったオペレーション領域に対し、低床バースや高荷重床、ダブル連結トラック対応といった「ハードウェアの進化」で応えた画期的な事例です。
入居を決めた真栄運輸、日本エマソン、ホームエコ・ロジスティクスの事例が示す通り、自社の荷物特性やビジネスモデル(ショールーム・拠点集約)に適合した物流拠点の選択は、2024年問題・2026年問題に伴う労働力不足を跳ね返し、サプライチェーン全体の強靭性を高める鍵となります。拠点戦略を単なる「不動産の賃貸契約」から「経営課題を解決するためのプラットフォーム選定」へとアップデートすることが、これからの時代を勝ち抜く必須条件です。
出典: LNEWS
出典: LOGI-TODAY
出典: 日本GLP株式会社 公式プレスリリース
出典: LOGI-BIZ online
出典: Manifold Path
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