株式会社ミライロとヤマト運輸株式会社は2026年8月17日、デジタル障害者手帳「ミライロID」と会員制サービス「クロネコメンバーズ」のシステム連携を開始しました。受取時の配慮事項をセールスドライバーの携帯端末へ自動連携することで、属人的な対応に依存していたラストワンマイルの顧客対応を標準化し、すれ違い不在の抑止と配送品質の向上を同時に実現する狙いがあります。
ミライロIDとクロネコメンバーズのシステム連携概要
今回のシステム連携は、障害のある受取人が宅配便を利用する際の物理的・心理的ハードルを取り除くために設計されました。これまで、インターホンが鳴ってから玄関へ移動するまでに時間がかかり不在票が投函されてしまう事態や、車椅子利用時に宅配ボックスの高い位置に荷物が納品されて取り出せないといったトラブルがラストワンマイル現場で生じていました。
利用者が「ミライロID」と「クロネコメンバーズ」のアカウントを連携させると、荷物配達時に必要な個別対応を事前に登録できます。登録された情報は、ヤマト運輸のセールスドライバーが携帯するポータブル端末へ配達予定データとともにリアルタイムで表示され、現場での確実な個別対応を支援します。
事前登録できる全8項目の配慮要望
登録可能な配慮要望は、インターホン応答時の待機時間から宅配ボックスの段数指定まで、多岐にわたる8つの項目が用意されています。
| カテゴリ | 具体的な登録要望 | 現場での対応と効果 |
|---|---|---|
| インターホン・応答 | 呼出し・応答後の待機時間を指定(30秒、1分、1分30秒、2分) | 移動に時間を要する受取人のすれ違い不在を抑止 |
| インターホン・応答 | 間をあけて2〜3回鳴らす | 聞き逃しを防ぎ、確実な応答機会を確保 |
| コミュニケーション | ゆっくり、はっきりと話す | 聴覚障害や高齢者とのスムーズな意思疎通 |
| コミュニケーション | 荷物情報(送り主・品名・サイズ・重さ・温度帯・着払い種別)を伝える | 視覚障害のある受取人に対する安心感の提供 |
| 受取・受領 | 荷物受け取り時の押印を不要にする | 手指が不自由な受取人の物理的負担を軽減 |
| 不在時・宅配ボックス | 不在時は宅配ボックスに入れず持ち戻る | 自力で取り出しが困難な場合のトラブル防止 |
| 不在時・宅配ボックス | 宅配ボックスの下から【1〜4】段目以上に納品 | かがむ動作が困難な受取人の負担軽減 |
| 不在時・宅配ボックス | 宅配ボックスの下から【1〜4】段目以下に納品 | 車椅子利用者が手の届く範囲での受取を確保 |
両社の連携経緯とユニバーサルデザイン推進の歩み
ミライロとヤマト運輸は、突発的なシステム開発ではなく、2019年から段階的にユニバーサルデザインの取り組みを継続してきました。
| 年月 | 取り組みの経緯と内容 |
|---|---|
| 2019年 | ユニバーサルマナー検定の導入を開始。障害当事者調査や営業所のサイン監修を推進 |
| 2022年 | ユニバーサルデザインガイドラインを策定。集配業務に特化した独自検定を共同開発 |
| 2026年8月17日 | ミライロIDとクロネコメンバーズのシステム連携を開始。接遇研修からデジタル連携へ拡張 |
両社は接遇研修や営業所のバリアフリー化といったリアルな接点整備からスタートし、今回のID連携を通じてデジタル領域へ協働範囲を拡張させました。
参考記事: ラストワンマイルとは?物流現場の課題と効率化に向けた再構築ステップ
配送サプライチェーンへの具体的な影響
受取人の個別ニーズがデジタルデータとして標準化されることは、運送事業者、配送ドライバー、消費者およびEC事業者のそれぞれに明確なメリットをもたらします。
運送事業者:すれ違い不在の抑止による再配達コストの削減
宅配現場における再配達の要因には、受取人が在宅しているにもかかわらず玄関先への移動が間に合わずに不在扱いとなる「すれ違い不在」が存在します。
事前に「1分待機」や「宅配ボックスの段数指定」といった情報がドライバー端末に通知されることで、不要な持ち戻りや不在票の再投函を未然に防ぐことが可能です。再配達の削減は、走行距離の短縮に伴う燃料費削減や二酸化炭素(CO2)排出量の抑制に直結し、運行効率の改善につながります。また、個別対応の要件がシステムから指示されるため、現場のサービス品質が個々のドライバーの経験値に左右されず平準化されます。
参考記事: 再配達削減とは?物流の2024年問題を克服する具体策と導入メリットを解説
配送ドライバー:判断の迷い解消とコミュニケーション負荷の軽減
配送ドライバーは過密な配送スケジュールの中で集配業務を行っています。受取人の個別事情が事前に把握できていない場合、「応答がないが不在票を切るべきか」「荷物の手渡し方法に問題はないか」といった現場判断に迷いが生じ、精神的な負担となっていました。
今回の仕組みにより、荷物のスキャン時や配送先到着時にポータブル端末上で注意事項が明確に表示されます。これにより、現場での対応方針に迷うことなく的確なコミュニケーションが取れるようになり、ドライバーのストレス軽減と業務の確実性が両立します。
参考記事: 時間指定配送とは?主要3社の違いや再配達削減に向けた実務対応を解説
消費者・EC事業者:安心・確実な受け取り環境の構築と顧客体験の向上
障害のある受取人にとって、宅配便の受け取り時に毎回自身の事情を説明したり、手が届かない宅配ボックスから荷物を取り出せなくなったりする不安は、EC利用をためらわせる障壁となっていました。
事前登録によって自身の状況に応じた配送が自動的に適用されることで、荷物の受け取りに対する心理的負担が大幅に軽減されます。また、EC事業者にとっても、配送ラストワンマイルのアクセシビリティが向上することは、顧客満足度やブランドロイヤリティの向上に寄与します。
LogiShiftの視点:ラストワンマイルは「画一的配送」から「個客最適化DX」へ
本連携の真の意義は、物流のラストワンマイルが「均一な荷物を画一的な手順で届けるインフラ」から、受取人の属性データをセキュアに活用した「個客最適化されたアクセシビリティ・サービス」へとシフトした点にあります。
従来の宅配システムは、伝票に書かれた「住所・氏名・品名」という静的データのみで動いており、受取人の身体的制約や住居設備の制約は現場ドライバーの記憶や善意といった属人性に委ねられていました。「ミライロID」という外部の認証基盤と「クロネコメンバーズ」の顧客基盤がAPI等で統合されたことで、受取要件のプロファイル化が実現し、担当ドライバーが交代しても変わらない配送品質を担保できるようになりました。
今後は、この受取要件データが宅配ボックスメーカーやスマートロック、住宅インターホンなどのハードウェアとも連動し、受取人に合わせた設備の自動制御など、フィジカルとデジタルが高度に融合したユニバーサル物流基盤へと進化していくことが期待されます。
まとめ:明日から意識すべき3つのアクション
ヤマト運輸とミライロによるシステム連携を踏まえ、物流・EC関係者が明日から意識すべきアクションは以下の3点です。
-
自社の配送・受託現場における「すれ違い不在」の実態を把握する
配送現場での再配達ログを分析し、時間指定の不一致だけでなく、応答遅れや受取方法の不適合に起因する不在がどの程度発生しているかを可視化することが重要です。 -
受取人の個別ニーズを汲み取るUI・システム設計を検討する
EC事業者や物流事業者は、注文画面やマイページにおいて、受取時の配慮事項や置き配位置の細かな指定を受け付けるデータ連携の枠組みを検討すべきです。 -
外部デジタルID基盤との連携による物流共創を視野に入れる
単独企業でのシステム構築に留まらず、オープンなデジタルID基盤と自社インフラを接続し、配送効率化とアクセシビリティ向上を同時に達成するモデルを研究することが求められます。
出典: みんなの広報宣伝部
出典: ヤマトホールディングス
出典: LOGI-TODAY



