特定の時間帯にトラックが集中して荷待ちが発生し、毎日の配車業務がベテランの勘や紙・FAX頼みで疲弊してしまう現場は少なくありません。大同特殊鋼株式会社が導入を進める株式会社Hacobuの「MOVO」シリーズは、配車からバース予約までを一気通貫でデジタル化し、荷主と物流パートナーが対等に改善を議論できるデータ基盤を構築することで、こうした根深い物流課題を解決へと導きます。
大同特殊鋼が推進する物流DXと「MOVO」シリーズの基礎知識
特殊鋼メーカーのリーディングカンパニーである大同特殊鋼は、持続可能なサプライチェーンの構築を目指し、物流DXを急速に加速させています。その中核を担うのが、株式会社Hacobuが提供する物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」シリーズの順次導入です。
大同特殊鋼の物流効率化プロジェクトの歩み
大同特殊鋼は、早くから物流環境の改善に取り組んできました。2019年9月に「ホワイト物流」推進運動への賛同を表明し、自主行動宣言を提出しています。2023年には荷待ち時間管理システムを導入し、出荷制度の見直しや設備の拡張に着手しました。
その結果、2024年度下期には主要事業場における製品出荷の平均荷待ち時間を、活動前と比べておよそ半減させる実績を達成しています。
さらに改善を加速させるため、2025年4月に「物流効率化プロジェクト」を発足させました。このプロジェクトは物流部門だけでなく、工場や営業部門、さらには物流パートナー企業が一体となって推進されています。
導入される3つの「MOVO」ソリューション
今回の取り組みで導入されるのは、トラック予約受付サービス「MOVO Berth」、配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」、そしてAI-OCRサービス「MOVO Adapter」の3製品です。
【大同特殊鋼におけるデータ連携の流れ】
[取引先からの発注書(紙・FAX)]
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[AI-OCR: MOVO Adapter](自動データ化)
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[配車管理: MOVO Vista](全21拠点で配車受発注・管理を一元化)
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[バース予約: MOVO Berth](工場・拠点の来場予約・荷待ち解消)
| 導入ツール | 主な機能・役割 | 大同特殊鋼での展開計画 |
|---|---|---|
| MOVO Berth | トラック予約受付サービス。来場予約による車両到着時間の平準化。 | 2026年6月より4拠点で順次稼働開始。 |
| MOVO Vista | 配車受発注・管理サービス。配車業務のクラウド化とステータス共有。 | 2026年度中に全21拠点へ展開予定。 |
| MOVO Adapter | AI-OCRサービス。紙やFAXの発注書を読み取り自動データ化。 | MOVO Vista導入業務を対象に順次展開。 |
プロジェクトのタイムライン
大同特殊鋼が描く物流改革のロードマップは、段階的な検証と全拠点への展開を組み合わせた現実的なステップを踏んでいます。
| 時期 | 実施内容・マイルストーン |
|---|---|
| 2019年9月 | 「ホワイト物流」推進運動に賛同、自主行動宣言を提出。 |
| 2023年 | 荷待ち時間管理システムを導入、出荷制度を見直し。 |
| 2024年度下期 | 主要事業場の製品出荷にかかる平均荷待ち時間を半減。 |
| 2025年4月 | 工場・営業・パートナー企業を巻き込んだ物流効率化プロジェクト始動。 |
| 2026年6月 | 4拠点にて「MOVO Berth」が順次稼働。 |
| 2026年度中 | 「MOVO Vista」を全21拠点へ展開、「MOVO Adapter」を連携。 |
参考記事: MOVO Berthとは?トラックの荷待ち削減とバース予約を効率化する機能や料金、導入時の注意点を解説
参考記事: MOVO Vistaとは?トラックの位置情報・到着予測を一元管理する輸配送可視化ツールの機能や導入メリットを解説
鉄鋼・素材産業において今なぜ物流DXが急務なのか
鉄鋼をはじめとする素材産業の物流は、他業界と比べても極めて重厚長大で複雑なオペレーションを伴います。長年続いてきた構造的課題と、近年の厳しい法規制が重なり、従来の運用方法は限界を迎えています。
鉄鋼・重量物輸送が抱える特有の課題
特殊鋼の輸送現場では、鋼材の形状や重量、納品先ごとの細かな荷降ろし条件など、多種多様な制約が存在します。
- 車両の集中と長時間待機: 工場の出荷バースにおいて、特定の日時や時間帯にトラックが集中し、入構待ちの車列や待機時間が常態化しやすい。
- 配車業務の高度な属人化: 「どの製品をどのトラックに何トン積載し、どのルートで運ぶか」という判断が、ベテラン担当者の頭の中に蓄積された暗黙知に依存している。
- 紙とFAXによる業務の分断: 取引先からの注文票や配車指示が紙やFAXで届くため、手入力や電話確認に忙殺され、積載効率の向上を検討する時間が奪われている。
改正物流効率化法による法定義務とCLOの役割
2024年5月に公布された「改正物流効率化法」により、2025年4月から荷待ち・荷役時間の把握が努力義務化されました。さらに2026年4月からは、年間貨物取扱重量9万トン以上の荷主企業を「特定荷主」に指定し、役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の提出が法的に義務付けられています。
| 規制項目 | 対象企業 | 求められる対応 |
|---|---|---|
| 特定荷主の指定 | 年間取扱量9万トン以上の荷主 | 中長期計画の策定、年1回の定期報告、CLO選任。 |
| 荷待ち時間の短縮 | すべての発荷主・着荷主 | 運行1回あたりの待機時間を原則2時間以内(努力目標1時間以内)へ削減。 |
| 違反時の罰則 | 是正命令に従わない特定事業者 | 最大100万円の罰金、および企業名の公表。 |
大同特殊鋼のように年間大量の重量物を扱う製造業にとって、荷待ち時間の削減と積載率の向上は、法令順守と事業継続に直結する最重要の経営課題となっています。
参考記事: 改正物流効率化法で特定荷主3000社超に2026年4月CLO選任が義務化へ
参考記事: 改正物流効率化法が2026年に義務化、9万トン超の荷主が取るべき必須対応|
MOVOシリーズ導入がもたらす3つの定量的・定性的メリット
大同特殊鋼の取り組みは、単なるツールの導入にとどまらず、荷主と運送事業者の関係性を根本から変革するアプローチです。現場には以下のような具体的なメリットがもたらされます。
1. 車両到着の平準化による荷待ち時間の削減
「MOVO Berth」を活用してトラックの来場時間を予約制にすることで、特定の時間帯に集中していたトラックの到着を分散させます。
- 入出庫作業の平準化: 倉庫・工場側はあらかじめ入構する車両と積荷を把握でき、クレーン作業やピッキングなどの事前準備を計画的に進められる。
- ドライバーの拘束時間削減: 工場周辺での路上待機や場内待機が解消され、ドライバーの計画的な運行と労働時間短縮を実現する。
- 滞在データの客観的な記録: 車両の入場から作業完了・退場までのタイムスタンプが自動保存され、法令順守のエビデンスとして活用できる。
2. 配車業務の標準化とアナログ作業の劇的削減
「MOVO Adapter」と「MOVO Vista」の連携により、これまで担当者を縛り付けていた手作業が大幅に効率化されます。
- 入力ミスの防止と工数削減: AI-OCRがFAXや紙の発注書を高精度で読み取り、配車管理システムへ直接データ連携するため、二重入力の手間が消える。
- 属人化の解消: 配車計画や空車情報がクラウド上で一元管理され、担当者ごとの業務負担の偏りや不在時のトラブルを防止できる。
- ステータスの可視化: 荷主と物流パートナーの双方が同じ画面上で配車状況を確認でき、電話やメールでの進捗確認が激減する。
3. 「データを共通言語」としたパートナーシップと積載効率向上
本プロジェクトの最大の強みは、デジタル化によって捻出した時間を「改善の議論」に充てる点にあります。
- 対等な議論の土台: 感覚論ではなく蓄積された実績データを共有することで、荷主と運送会社が対等な立場で改善策を話し合える。
- 積載率向上の推進: 車両ごとの積載状況や運行ルートをデータで分析し、混載や運行ダイヤの見直しを協力して進められる。
- 異業種との共同輸送への布石: 蓄積された物流データを活用し、将来的には他産業や近隣メーカーとの共同輸送といった高度な連携への発展が期待される。
【業務変革のBefore/After】
[従来(Before)]
・電話/FAXでのやり取りに忙殺 ──> 改善検討の時間が取れない
・経験と勘による属人的な配車 ──> 積載率の改善が進まない
・着いてみないと分からない待機 ──> ドライバーの長時間拘束
[導入後(After)]
・AI-OCRとクラウドで自動連携 ──> 創出された時間を改善議論に投資
・データに基づく配車の標準化 ──> 積載効率の最大化をパートナーと推進
・予約管理による到着平準化 ──> 荷待ち時間の大幅削減と法令順守
参考記事: 待機時間ゼロへ!導入初年度ROI160%超を実現。配車と入出荷を一気通貫で改革。 | 株式会社Hacobuの活用手順
参考記事: Hacobuトラックバース割当をAI自動化!現場負担を減らす3つの影響
製造業・荷主企業が物流DXを成功させるための実践ステップ
大同特殊鋼の事例から、多くの製造業や荷主企業が学べる実践的な導入手順と成功のポイントを解説します。
ステップ1:現状の業務フローとアナログ接点の洗い出し
まずは自社および外部委託先で発生している業務の滞留箇所を特定します。
- 取引先や運送会社と取り交わしている紙伝票やFAXの件数を集計する。
- 配車担当者が手作業や電話連絡に費やしている実働時間を計測する。
- 工場や倉庫のゲート前で発生している待機時間の実態を把握する。
ステップ2:複数拠点を巻き込む全社横断プロジェクトの組成
物流の変革を物流部門単独で進めては失敗します。
- 製造・工場部門、営業部門、情報システム部門を巻き込んだ横断プロジェクトを立ち上げる。
- 物流パートナー企業を「発注先」ではなく「共同改善のパートナー」としてキックオフ段階から巻き込む。
- 経営陣がCLOを中心として改善に対する明確なコミットメントを示す。
ステップ3:AI-OCRと配車システムの連携によるスモールスタート
最初からすべてを完璧にデジタル化しようとせず、現場の負担が大きい部分から順次移行します。
- 取引先の商習慣上どうしても残るFAXや紙の注文書に対してはAI-OCRを導入し、現場の入力負荷を即座に下げる。
- 中核となる主要拠点から「MOVO Berth」や「MOVO Vista」を試験導入し、運用ルールを確立した上で全拠点へ横展開する。
ステップ4:蓄積データを活用した継続的改善と共同輸配送の検討
システムが定着した後は、蓄積されたビッグデータを活用した高度化フェーズへと移行します。
- 拠点ごとの荷待ち時間や車両回転率をダッシュボードで定期モニタリングする。
- 物流パートナーと定期協議会を設け、積載率の向上に向けたロット調整や発注サイクルの見直しを行う。
- 同業他社や近隣の異業種企業とデータを突き合わせ、帰り便の利用や共同輸配送の実現性を検証する。
参考記事: 株式会社Hacobuが11万拠点連携へ、2026年4月CLO義務化への必須対応
データ基盤を武器に持続可能なサプライチェーンを築く
大同特殊鋼によるMOVOシリーズの全21拠点への展開は、荷主企業が主導して物流パートナーと共に持続可能な物流体制を築く先進モデルです。
単なる「作業の効率化」にとどまらず、AI-OCRや配車管理、バース予約を統合して「データを共通言語」とすることで、長年の課題であった荷待ち時間の削減と積載効率の向上を同時に実現できます。
法規制への対応が本格化する今こそ、現場の勘やアナログな慣行から脱却し、パートナー企業と共にデータドリブンな物流改革へ踏み出すことが求められています。
まずは自社の物流現場における待機時間や紙・FAX業務の実態を点検し、パートナー企業と目指すべき姿を共有することから始めてみてください。
出典: 物流の課題を解決するDXパートナー|株式会社Hacobu
出典: 大同特殊鋼株式会社 公式サイト
出典: 大同特殊鋼 サステナビリティ・調達情報
出典: 株式会社Hacobu プレスリリース
出典: 経済産業省 物流効率化


