株式会社ひとまいる、株式会社東京流通センター、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社、株式会社マクニカ、株式会社Hacobuの5社が推進する施設内横持ち自動化の取り組みが、国土交通省の公募事業に採択されました。本事業では敷地面積15万㎡の物流施設構内を対象に、自動運転レベル4車両とバース管理システムを連動させた無人搬送の検証が行われます。
15万㎡の大規模拠点が挑む構内横持ち自動化の概要と技術基盤
物流施設や工業団地の敷地内において、倉庫棟間やバース間で荷物を移動させる「横持ち」作業は、これまでフォークリフトや有人トラックの運行に全面的に依存してきました。公道走行を伴わない構内輸送でありながら、不定期な運行頻度や複雑な構内動線、他の有人車両との交差が障壁となり、自動化が進みにくい空白地帯として残されていました。
国土交通省の令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業」に採択された本実証事業は、この定型的な構内横持ち作業を自動運転車両によって代替・最適化することを目的に立ち上げられました。
実証事業の基本仕様と採択枠組み
本実証は、実証フィールドを提供する株式会社東京流通センター(TRC)の構内において、飲料空容器の棟間搬送を自動運転レベル4車両によって代替する取り組みです。事業の骨子および基本仕様は以下の通り整理されます。
| 項目 | 実証事業の仕様 |
|---|---|
| 事業名 | 自動運転車両を用いた物流施設内の横持輸送実証事業 |
| 採択制度 | 国土交通省 令和8年度「デジタル技術を活用した荷主・物流事業者の行動変容促進事業費補助金」 |
| 実施場所 | 東京流通センター(TRC)構内(東京都大田区平和島6-1-1) |
| 対象ルート | 南東京センター(A棟)〜 平和島センター(B棟)間 |
| 対象貨物 | 株式会社ひとまいるが取り扱う飲料の空容器 |
| 車両仕様 | 特定条件下における完全自動運転(レベル4)対応車両 |
実証ルートとなるA棟からB棟の間は、日常的に配送トラックや作業員、フォークリフトが往来する実稼働環境です。閉鎖されたテストコースではなく、日々の物流業務が稼働している実施設内でレベル4自動運転を実施する点に、本事業の実践的な特徴があります。
参考記事: 東京流通センター、15万㎡構内でレベル4自動運転とバース連携実証
参考記事: 横持ちとは?物流・建設現場で発生するコスト増加を防ぐ削減ノウハウ
参画5社による役割分担とシステム連携構造
本事業の技術的な核心は、自律走行するハードウェア車両単独の実証にとどまらず、構内のデジタルインフラや予約管理システムと密接に連携する「システム協調型」のアーキテクチャを採用している点にあります。参画する5社の体制と役割分担は以下の通りです。
| 参画企業名 | 本事業における主たる役割 | 投入システム・提供リソース |
|---|---|---|
| 株式会社ひとまいる | 実証対象貨物の提供、現場オペレーション適合性の検証 | 飲料空容器の荷役運用、実業務データの提供 |
| 株式会社東京流通センター | 実証フィールド提供、施設管理インフラの連動調整 | 敷地面積15万㎡の施設空間、構内運用ルールの策定 |
| ダイナミックマッププラットフォーム株式会社 | 空間情報基盤の提供、動的経路生成 | 高精度3次元地図データ、インフラ協調型モビリティ基盤 |
| 株式会社マクニカ | 自動運転車両の配備、遠隔監視・運行管理 | レベル4自動運転車両、運行管理システム「everfleet」 |
| 株式会社Hacobu | バース満空情報の取得・提供、入出庫制御連携 | トラック予約受付サービス「MOVO Berth」 |
システム間の連携手順は、現場のリアルタイムデータに基づいて自律的に処理されます。
まず、株式会社Hacobuが提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth」から、各バースのリアルタイムな予約状況および満空情報が抽出されます。このデータを受け取ったダイナミックマッププラットフォーム株式会社の「インフラ協調型モビリティ基盤」が、TRC構内の高精度3次元地図データと満空情報を掛け合わせ、車両が向かうべき空きバースと最適な構内走行ルートを動的に演算します。
算出された運行指示は、株式会社マクニカの遠隔運行管理システム「everfleet」へと伝送され、自動運転車両へ走行コマンドとして送信されます。この一連のデジタル制御により、現場作業員が無線や電話でバース状況を確認して配車指示を出すことなく、車両が自律的に指定バースへ接車し、棟間を横持ち搬送するフローが成立します。
参考記事: トラックバース予約管理システムとは?荷待ち時間の可視化やWMS連携でバース割り当てを効率化する機能を解説
参考記事: MOVO BerthにAI搭載!トラック自動誘導で荷待ち時間を削る3つの影響
実証採択に至るまでの協議会活動と開発の時系列
今回の国土交通省事業への採択は、突発的に立ち上がった計画ではなく、TRCを中心とした地域産官学連携プラットフォーム「平和島自動運転協議会」での実証準備を経て実現したものです。発足から採択に至る推移は以下の通りです。
| 時期 | 主な出来事・取り組みの進展 |
|---|---|
| 2025年5月 | TRC構内を実証フィールドとする「平和島自動運転協議会」が発足 |
| 2025年7月 | 株式会社カクヤスグループが「株式会社ひとまいる」へ商号変更 |
| 2026年4月 | 国土交通省が令和8年度「行動変容促進事業」の公募を開始 |
| 2026年5月 | TRC構内全域の高精度3次元地図データ(Lanelet2形式)の整備完了を発表 |
| 2026年9月4日 | 国土交通省事業への正式採択および構内自動運転横持ち実証計画を発表 |
2026年5月時点で、TRC構内全域をカバーする高精度3次元地図データがすでに構築されていたことが、今回のスムーズな実証採択と早期の走行検証開始を可能にしています。
参考記事: 搬送システムの基礎知識と選び方|AGV・コンベヤ等の種類からWMS連携まで徹底解説
敷地内横持ち自動化が物流産業各層に及ぼす影響
施設内横持ちの自動化は、単なる1拠点内の省人化にとどまらず、倉庫運営会社、テクノロジー開発企業、不動産デベロッパーの事業環境に直接波及します。
倉庫事業者・3PLへの影響
倉庫事業者や3PL企業にとって、敷地内における棟間やバース間の横持ち業務は、慢性的な人手不足を悪化させる重い要因でした。特に広大な敷地を有するマルチテナント型倉庫や複数の別棟を抱える物流拠点では、トラックドライバーや専任の構内作業員が短距離のシャトル運行のために拘束され、本質的な保管・荷役業務の効率を低下させていました。
横持ち業務がレベル4の自動運転車両によって無人化されれば、これまで車両運転に充てていた貴重な人員を、ピッキングや検品、流通加工といった庫内の付加価値作業へ再配置することが可能になります。また、飲料空容器などの定型的な循環輸送が24時間体制で自律運行できるようになれば、夜間や早朝の限られた時間帯に荷物を滞留させることなく棟間移動が完了し、翌朝の出荷オペレーションのスループットが大幅に改善されます。
さらに、トラックドライバーが構内の横持ち作業や空きバース待ちに巻き込まれる時間を排除できるため、外部から出入りする幹線ドライバーの滞留時間短縮にも寄与し、拠点全体の荷待ちリスク低減に直結します。
SaaS・テクノロジーベンダーへの影響
ソフトウェア開発企業や物流DXプラットフォーマーにとっては、ハードウェア単体の売り切りビジネスから、複数システムを束ねる統合制御プラットフォームへの需要転換が明確になります。
これまで物流DX領域では、動態管理、バース予約受付、倉庫管理システム(WMS)といった各機能が個別のツールとして導入される傾向がありました。しかし、構内自動運転を実現するためには、Hacobuの「MOVO Berth」のように、施設の満空情報をミリ秒単位の精度で外部の運行管理システム(FMS)や高精度地図基盤へ受け渡すAPI連携が不可欠となります。
ハードウェア(自動運転車両)とソフトウェア(動態・バース管理)を結ぶ通信プロトコルやデータ仕様の標準化が進むことで、単機能のSaaSから「構内オーケストレーション基盤」へとシステムの提供価値が一段引き上げられます。車両メーカーやセンサー開発企業とのアライアンスを構築できるベンダーが、今後の物流自動化市場における主導権を握る構造が強まります。
参考記事: 構内物流の完全自動化へ!イブオートノミー新製品発表が示す物流DXの未来
物流施設デベロッパーへの影響
物流不動産を開発・運営するデベロッパーにとっては、施設のハードウェア設計およびデジタルインフラの差別化基準が根本から変化します。
従来の物流施設開発では、床荷重、梁下有効高、ランプウェイの車路勾配といった建築仕様がテナント誘致の主要な評価軸でした。しかし、構内自動運転車両の常時稼働が現実化する今後は、施設構内の高精度3次元地図データの整備状況、構内通信環境(ローカル5Gや高密度Wi-Fi)、自動運転車両用の待機・充電スペース、そしてバース管理システムと連動するスマートゲートの有無が、施設の競争力を左右する標準要件となります。
東京流通センターが「平和島自動運転協議会」を通じて構内地図の整備を先行させたように、自動搬送を前提としたデジタルインフラをあらかじめ組み込んだ施設を提供できるデベロッパーは、人手不足に悩む荷主や3PL企業に対する訴求力を一段と高めることになります。
参考記事: サントリーロジと豊田自動織機、28年実稼働へ爪切替AGFで荷役自動化
LogiShiftの視点:点と線を結ぶ「構内インフラ協調」の産業標準化
これまで物流自動化への投資は、倉庫建屋内の「点」を自動化するマテハン機器(AGV・AMR、自動倉庫)と、都市間輸送の「線」を効率化する幹線輸送の共同化や自動運転トラック開発へと二極化していました。しかし、その結節点である「敷地内ヤード・棟間」は、公道交通法の規制対象外でありながら、有人車両や歩行者が不規則に行き交う空間設計の難しさから、長らく個別最適のエアポケットとなっていました。
米国の物流拠点では、Outrider社などに代表されるヤード自動化(Yard Automation)が急速に商用化され、敷地内トレーラー移動の完全無人化が投資対効果の高い領域として定着しています。今回のHacobuやTRCなど5社による国交省事業の採択は、日本国内においても物流自動化の主戦場が「建屋の外・敷地の中」へと拡張したことを如実に示しています。
本実証の最大の分岐点は、車両側のセンサー性能のみに依存する「自律完結型」ではなく、バース予約状況や高精度地図データを外部からリアルタイムに供給する「インフラ協調型」を選択している点です。国土交通省の『令和6年版 交通政策白書』の試算に基づけば、追加対策を講じない場合、2030年度には営業用トラックの輸送能力が約34%不足する見通しです。この供給危機下において、1台数千万円クラスの高額な自律走行車両を大量導入できる企業は限られます。
しかし、施設側のバース管理データ(MOVO Berth)と安価な構内低速モビリティをソフトウェア側で協調制御するアーキテクチャが標準化されれば、導入コストを大幅に抑制しながら中小規模の倉庫群や工業団地へも横展開が可能になります。今回の取り組みは、単なる1拠点の技術実証を超え、官民協調による「閉鎖空間型・自動運行規格」のデファクトスタンダード形成に向けた試金石として評価できます。
参考記事: ティアフォーの台湾スタートアップ出資に学ぶ!米中最新動向と物流DXの未来
明日から意識すべきこと
敷地内横持ち自動化の実装フェーズ突入を受け、物流部門のリーダーや拠点責任者が直ちに着手すべき実務対応を整理します。
- 構内横持ち工数と待機ロスの定量把握
まず着手すべきは、自社拠点や出入り倉庫において「棟間・バース間の移動」にどれだけの人員と時間が費やされているかの可視化です。日報や点呼記録から横持ち専任者の拘束時間、有人トラックの構内待機時間を抽出し、自動化による投資回収シミュレーションの母数を特定する必要があります。
- バース満空データのデジタル化と外部連携の確認
自動運転車両の導入以前に、バース予約受付システム等を用いて「どのバースが・いつ・何分間空いているか」をリアルタイムデータとして取得できる環境を整えます。将来的な無人搬送車や外部システムとのAPI連携を見据え、既存のWMSや入退門管理システムが外部データ連携に対応可能かベンダーへ確認を入れておくことが求められます。
- 敷地内レイアウトと構内走行ルールの標準化
無人搬送を成立させる前提条件として、構内の段差解消、路面標示の整備、フォークリフトや歩行者との動線分離といった物理環境の整理が不可欠です。施設内ルールを属人化させず、外部車両や将来の自動運転モビリティが安全に進入できる構内運行規程の策定を進めることが重要です。
構内自動化はハードウェアの選定から始まるのではなく、現場データのデジタル化と運行ルールの標準化から始まります。
出典: Daily Cargo電子版
出典: PR TIMES
出典: 国土交通省
出典: 株式会社Hacobu



