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Home > 輸配送・TMS> PubteX、異業種混載で書籍追加配送を10月開始|年2000億円の損失抑制へ
輸配送・TMS 2026年9月15日

PubteX、異業種混載で書籍追加配送を10月開始|年2000億円の損失抑制へ

PubteX、異業種混載で書籍追加配送を10月開始|年2000億円の損失抑制へ

丸紅および講談社など出版大手が出資するPubteXは、2026年9月15日、異業種トラックへの書籍混載を活用した新たな「注文流通ソリューション」を開始すると発表した。講談社、集英社、小学館の出版3社と書店チェーン6法人が先行参画し、2026年10月よりオフィス用品配送網などを活用した追加注文分の物流実務を稼働させる。

返品率31.9%の出版サプライチェーンと異業種混載への転換

出版流通は長年、書店が売れ残った書籍を出版社へ返品できる「委託販売制度」を基盤に運用されてきた。しかし出版科学研究所の調査によると、2025年における書籍の返品率は31.9%に達している。丸紅の試算では、売れ残った本の返本に伴う廃棄ロスや運送費などの経済的損失は業界全体で年間2,000億円以上にのぼる。

従来の出版流通は、取次会社を経由して全国の書店へ新刊を大量に送り込み、売れ残りを回収する「書籍専用の物流網」に依存してきた。読者の活字離れに伴って輸送物量が減少した結果、トラックの荷台を満載にできない積載効率の低下が進み、運送費の高騰が収益を圧迫している。

さらに、2025年6月に成立した貨物自動車運送事業法の改正(トラック新法)が2028年までに完全施行される見通しとなっており、適正原価を下回る運賃での取引規制が進む。日本出版取次協会の近藤敏貴会長は、トラック新法の施行により出版配送運賃が現状の約2倍へ跳ね上がる可能性に言及しており、専用物流を前提としたサプライチェーンの維持は限界に直面している。

PubteX新事業の枠組みと関係各社の役割分担

PubteX(パブテックス)は2022年3月、丸紅グループ(丸紅34.8%、丸紅フォレストリンクス16.3%)と出版大手3社(講談社、集英社、小学館が各16.3%)の計5社による共同出資で設立された。同社はAIを用いた発行部数・配本最適化やRFID(ICタグ)事業を手掛けてきたが、今回発表された「注文流通ソリューション」により、追加注文の物流実行領域へ踏み込む。

新事業における業務範囲と関係事業者の役割分担は以下の通りである。

区分 担当主体 担当業務・対象範囲 従来の流通モデルとの変更点
注文流通ソリューション PubteX・丸紅 書店の追加注文データの集約、および異業種混載による配送実務の手配 書籍専用便ではなく、オフィス用品等の異業種トラックへ相乗り配送
書籍発行・データ提供 講談社、集英社、小学館 追加重版・在庫データの連携、注文流通システムへの書籍供給 初期配本数を抑え、実需データに基づく追加出荷を前提とした運用へ移行
商流・基本インフラ 日本出版販売、トーハン等の取次各社 新刊の初回配本、店頭からの返品回収、売買代金の決済管理 追加注文配送の物流実務のみを外部連携し、商流・決済機能は維持
店頭販売・発注 先行参画する書店チェーン6法人 店頭POS・RFID等による実需把握と適時適量の追加発注 品切れ発生時の取り寄せリードタイム短縮による機会損失の回避

新事業でPubteXが担うのは、書店からの「追加注文」に伴う情報流と送品物流に特化している。新刊の初回配本や売れ残り書籍の返品、商流決済については、従来の取次ネットワークと連携して維持する方針を取る。

すでに書店へオフィス用品などを納品している既存トラックの空きスペースに書籍を混載することで、丸紅が持つ全国物流ノウハウを適用し、地域ごとの配送ルートを最適化する。

参考記事: 共同配送とは?仕組みと混載便との違い・導入メリットをわかりやすく解説

PubteX設立から物流実務開始に至る経緯

出版流通の効率化に向けたPubteXの取り組みは、データ基盤の整備から段階的に進められてきた。これまでの主な経緯と今後のスケジュールは以下の通りである。

  • 2022年3月11日:丸紅グループ2社と出版大手3社の出資により株式会社PubteXを設立。AIによる発行・配本最適化およびRFIDソリューションの提供を開始
  • 2025年1月5日:渡辺順氏がPubteX代表取締役社長に就任
  • 2025年1月末:PubteXのRFIDシステムが本格稼働し、大垣書店など6社10店舗に先行導入
  • 2026年4月1日:改正物流効率化法が全面施行。特定荷主に対する物流統括管理者(CLO)選任や積載率向上計画の策定が義務化
  • 2026年7月16日:日本出版取次協会がトラック新法対応を見据えた9項目の「出版流通合理化案」を発表
  • 2026年9月15日:PubteXが「注文流通ソリューション」の始動を発表。出版3社・書店6法人が先行参画
  • 2026年10月:異業種トラックへの混載を活用した追加注文分の物流配送を開始予定

参考記事: RFIDとは?仕組みやバーコードとの違い・物流現場での活用事例を解説

出版流通のステークホルダーに及ぶ実務変化

今回の取り組みは、単なる配送会社の切り替えにとどまらず、メーカー(出版社)、小売(書店)、運送事業者の実務オペレーションに構造的な変化をもたらす。

出版社:見込み印刷・大量配本から「実需連動型」サプライチェーンへの転換

出版社にとっては、初回配本で市場に在庫をあふれさせる従来の供給モデルを見直し、実需連動型への移行が求められる。30%を超える返品率を前提とした製造・物流計画は、原価高騰と運賃上昇の中で利益を圧迫する主要因であった。

追加注文のリードタイムが短縮され、少量でも確実に店舗へ届く仕組みが整えば、初版の部数を慎重に見極め、需要動向を追認しながら小刻みに重版・出荷する運用が可能になる。これに伴い、出版社の物流管理部門や製作部門は、PubteX等のデータプラットフォームと基幹システムを連携させ、リアルタイムな在庫引き当てと出荷指示を行える体制の整備が必要となる。

書店:欠品による販売機会損失の防止と売場面積あたりの収益最大化

全国の書店では、店頭に並べたい売れ筋書籍が取次経由で届くまでに数日〜1週間以上のリードタイムを要し、顧客がECサイトへ流出する「品切れによる機会損失」が常態化していた。

注文流通ソリューションにより、オフィス用品などの高頻度配送網を相乗り利用できれば、書店側は発注から店頭到着までの期間を短縮できる。限られた売り場に過剰な店頭在庫を積むことなく、回転率を高めながら実売数を伸ばす店舗オペレーションが実現する。また、店頭でのRFID読み取りと連携すれば、検品や棚卸の工数が削減され、限られた店舗スタッフを接客や売場作りに集中させることが可能になる。

運送事業者:専用便の維持限界に伴う「異業種アセット共有」への移行

出版専門の運送を担ってきたトラック事業者にとっては、出版物単独での積載率低下を補うため、他産業の配送ネットワークとの協調が不可欠となる。オフィス用品を扱う企業の配送トラック側にとっても、日中の定期ルート便に書籍という高密度な小口荷物を混載することで、積載率と容積効率を同時に引き上げ、1運行あたりの採算性を向上させられる。

商材ごとに閉じていた専用物流網を開放し、荷台スペースや配送拠点を異業種間で融通し合うアセットシェアリングの運行管理が、運送実務における標準手法として定着していく。

参考記事: 卸大手9社が共同配送へ!効率20%増を実現する異業種連携と3つの影響

LogiShiftの視点|「商物流分離」による出版流通プラットフォームの再定義

今回のPubteXの取り組みにおいて最も注目すべき点は、長年強固に結合していた出版業界の「商流」と「物流」を機能的に切り離したことにある。

新刊配本や代金決済、返品処理という商流インフラは既存の取次各社に残しつつ、最も非効率が発生していた「追加注文の配送実務」のみを切り出し、丸紅の広域物流ネットワークと異業種配送網へ接続した。これは、既存の業界慣行を全否定して摩擦を生むのではなく、物流危機によって機能不全に陥った物理層(フィジカル層)の運航だけを外部インフラへ委託する現実的な解といえる。

これまで出版業界は「再販制度」と「委託販売制度」に守られ、他産業との物流統合が進みにくい特異な市場環境にあった。しかし、2025年6月に成立したトラック新法による運賃2倍化リスクを前に、産業単独での物流維持は物理的に破綻しつつある。

PubteXの渡辺順社長が「書店流通の効率化のための原資を生み出したい」と述べている通り、今後はオフィス用品にとどまらず、日用品や医薬品といった他の定期ルート配送網との相乗りが進む可能性が高い。単一業界の閉じた最適化から、オープンな異業種物流網へのデータ接続を進められるかどうかが、出版サプライチェーンの持続性を決定づける分岐点となる。

まとめ:明日から意識すべきアクション

PubteXによる異業種混載の注文流通は、出版業界にとどまらず、物量減少と運賃上昇に直面するすべての荷主企業にとって「自前物流の限界」を示す事例である。サプライチェーンを維持するために、各実務者は以下のステップを検討する必要がある。

  1. 自社専用物流の積載率と固定費リスクの棚卸し

自社専属便や業界専用便の積載率が損益分岐点を下回っていないかを検証し、トラック新法の施行を見据えた運賃上昇時の収支シミュレーションを行う。

  1. 配送先が重複する異業種プレイヤーの洗い出し

納品先(ドラッグストア、オフィス、量販店など)が重なる他産業の流通網をリストアップし、自社荷姿との混載可能性を技術的・運用的に評価する。

  1. 商流と物理配送を分離したデータ連携基盤の検討

契約関係や決済といった商流構造は維持したまま、受発注データと配送指示データのみを柔軟に外部連携できるシステムインターフェースを整備する。

出典: 朝日新聞
出典: 新文化オンライン
出典: 読売新聞
出典: 丸紅

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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