株式会社Hacobuは2026年9月17日、イオンネクストデリバリー株式会社が配車管理サービス「MOVO Vista」を導入し、幹線輸送の発着転記を月約60時間削減した事例を公開した。ネット専用スーパー「Green Beans」の拠点間運行において、ドライバーがアプリから直接実績を入力する体制へ刷新し、1日約100件の手作業による転記を解消している。
イオンネクストデリバリーにおける幹線輸送の課題と刷新の経緯
イオンネクスト株式会社は、イオン株式会社の100%子会社として設立され、2023年7月よりネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」を本格展開している。その配送部門を担う子会社として2022年2月に設立されたイオンネクストデリバリー株式会社には、SBSホールディングス株式会社が出資しており、ラストワンマイル配送および拠点間輸送の体制構築を進めてきた。
同社の輸送課では、顧客フルフィルメントセンター(CFC)から各地に点在する配送拠点(スポーク)へ商品を運ぶ幹線輸送の手配を行っている。ネットスーパー事業では、注文受付から配送までのリードタイムが受注可能なキャパシティを左右するため、配送拠点ごとのトラック発着時間は事業運営の判断に直結する。
しかし従来の運用では、発着情報が「ドライバー→協力会社の担当者→イオンネクストデリバリーの管理者」と人づてに伝達されていた。連絡手段としていたチャットツールでは投稿が次々と流れてしまうため、管理者は画面を常時注視し、通知があるたびに作業を中断して1日約100件の発着時刻を手作業で転記していた。365日稼働の現場において、この転記作業だけで1日約2時間、月換算で約60時間の工数が発生していた。さらに、増便や配送ルート変更が発生した際には運賃に差異が生じるため、協力会社と1件ずつ突き合わせる確認作業に月約10時間を要していた。
こうした背景から、ドライバーがスマートフォンアプリ経由で発着実績を直接入力し、配送依頼から請求までを1システムで完結できる「MOVO Vista」の導入に至った。
| 時期 | 出来事 | 詳細 |
|---|---|---|
| 2019年12月 | イオンネクスト準備設立 | イオン株式会社がデジタル推進の戦略子会社を設立 |
| 2022年2月 | イオンネクストデリバリー設立 | 次世代型オンラインスーパーの配送を担う子会社として発足 |
| 2022年3月 | SBSホールディングスが出資 | 配送オペレーションや中継拠点整備の協業を発表 |
| 2023年7月 | Green Beans本格開業 | 顧客フルフィルメントセンターを起点としたネットスーパー事業開始 |
| 2026年9月 | MOVO Vista導入事例公開 | 発着転記の月60時間削減および請求突合の効率化を発表 |
参考記事: 幹線輸送とは?地場配送との違いや導入メリット、課題解決の最新動向を解説
運行管理のデジタル化がもたらした業務工数の変化
「MOVO Vista」の導入により、ドライバーがアプリ上で出発・到着のステータスを送信すると、管理画面の実績データが即座に更新されるフローが確立された。これにより、管理者がチャット画面を注視して手作業で転記する作業そのものが不要になった。
また、案件ごとの配送依頼データと運行実績がプラットフォーム上に集約されたことで、運賃の算出根拠が自動的に明確化され、月次の請求突き合わせ業務も大幅に短縮された。
| 業務項目 | 導入前の運用と課題 | 導入後の改善効果 |
|---|---|---|
| 発着時間の取得 | 電話やチャットを介した人づての伝達 | ドライバーがアプリから直接入力 |
| 運行データの転記 | 1日約100件を手作業で転記(月約60時間) | 自動蓄積により転記工数がゼロに |
| 運賃・請求突合 | 増便・ルート変更時に月約10時間の照合 | システム上の一元管理で突合工数を削減 |
| 運行状況の把握 | チャットの見落としリスクと確認遅延 | リアルタイムな動態・発着状況の可視化 |
参考記事: MOVO Vistaとは?トラックの位置情報・到着予測を一元管理する輸配送可視化ツールの機能や導入メリットを解説
サプライチェーン構成プレイヤーに及ぼす影響
今回の事例に見られる拠点間輸送のデジタル連携は、荷主である小売業者、実運送を担う運送事業者、そして高頻度配送を運用するEC事業者のそれぞれに波及する。
小売業者:拠点間輸送の精度向上が配送枠の拡大に直結する
大型物流センターから中継デポへの幹線輸送が遅延した場合、デポで待機するラストワンマイルの配送車への積み替えが滞り、最終的な顧客への配送枠を制限せざるを得なくなる。トラックの発着時刻がリアルタイムに確定する環境が整うことで、拠点間のバッファ時間を最小限に設定でき、リードタイムの短縮と受注枠の最大化が可能になる。
運送事業者:管理者の連絡代行が排除され請求トラブルが減少する
従来、協力会社の運行管理者は「ドライバーから連絡を受け、荷主へチャットや電話で再伝達する」という連絡代行業務に追われていた。ドライバーが直接荷主のシステムへステータスを送信する形式に変わることで、運送会社の中間管理工数が削減される。また、システム上の確定データに基づいて運賃計算が行われるため、月末の請求突合における齟齬や確認の手間が大幅に減少し、事務負担の軽減につながる。
EC事業者:ラストワンマイルを支える幹線ネットワークの標準化が進む
即日・翌日配送を提供するEC事業では、ラストワンマイル配送の効率化ばかりが注目されがちだが、その前提となる大型拠点からの幹線輸送がブラックボックス化していては全体のリードタイムを安定させられない。ハブ&スポーク型の配送網を持つEC事業者にとって、多重下請けや外部委託が介在する幹線便のステータスを直結データとして収集することは、サプライチェーン全体の稼働率向上に寄与する。
参考記事: ラストワンマイルとは?物流現場の課題と効率化に向けた再構築ステップ
LogiShiftの視点:中間伝達を排した「直接連携型」運行管理への移行
本件の核心は、単なる転記作業の削減にとどまらず、「ドライバー→協力会社担当者→荷主」という多層の連絡伝言ゲームを排し、荷主のシステム基盤にドライバーが直接データを流し込む「直接連携型」の運行管理へ移行した点にある。
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法では、荷主に対して実運送体制の把握や荷待ち・荷役時間の管理が義務付けられている。しかし、多重委託構造の幹線輸送において、元請けや下請けの管理者を介した情報伝達を継続している限り、現場の実態データを正確かつリアルタイムに集約することは困難である。
イオンネクストデリバリーが月約60時間の転記作業を解消し、月約10時間要していた請求突合を削減できた理由は、協力会社を挟んだ報告系統を解体し、アプリという標準インターフェースを末端の運行現場へ直接配備したことにある。外部パートナーを組み込んだ拠点間配送網を抱える企業にとって、個別の連絡手段(電話・FAX・個別チャット)を放置したままの運行管理は、すでに維持不可能なコスト要因となっている。
参考記事: ネスレ日本が約7000人のドライバーと直接連携し物流持続可能性を強化
明日から意識すべきこと
拠点間の幹線輸送や外部委託の輸配送を抱える物流部門は、直ちに以下の点を確認されたい。
- 自社の運行ステータス取得において、協力会社の担当者が間に入った「人づての伝達」が発生していないか洗い出す
- 拠点間輸送の到着遅延が、ラストワンマイルの配送計画や庫内作業の待機時間にどれだけの損失を与えているかを数値化する
- 増便やルート変更に伴う運賃の月次突合業務に、何時間のバックオフィス工数が費やされているかを算定する
運行情報の取得を人手によるチャット転記に頼る構造を改め、システムを介して実運送の現場から直接データを回収する体制を整備することが、業務工数の削減と輸送網の安定化を実現する前提条件となる。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 株式会社Hacobu プレスリリース
出典: イオン株式会社・SBSホールディングス株式会社 共同リリース



