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物流DX・トレンド 2026年9月24日

Hacobu佐々木代表、シェア57.2%基盤から説くCLOのAI移行手順

Hacobu佐々木代表、シェア57.2%基盤から説くCLOのAI移行手順

バース管理システムで国内シェア57.2%を占める株式会社Hacobuの佐々木太郎代表は、勘と経験に依存した物流管理から脱却し、一次データとAIを直結させる「AIドリブン・ロジスティクス(ADL)」への転換を提示しています。法改正により役員級の物流統括管理者(CLO)配置が義務付けられるなか、本対談で示された経営マインドとテクノロジーの融合モデルは、現場の停滞した改善活動を実効的なサプライチェーン改革へと直結させます。

CLOに求められるテクノロジーと「志」の基礎知識

物流統括管理者(CLO)は、従来の物流部長のように運賃交渉や倉庫管理といった現場オペレーションの部分最適を担う役職ではありません。調達、製造、営業、配送までのサプライチェーン全体を俯瞰し、経営戦略として物流インフラを再構築する最高責任者です。

従来の「KKD」から「DDL」、そして「ADL」への進化

物流DXの現場では、長い間「KKD(勘・経験・度胸)」に基づく属人的な管理が続いてきました。2020年代前半には、トラック予約受付サービスや動態管理システムによって現場データを可視化し、数値に基づいて判断する「データドリブン・ロジスティクス(DDL)」が推進されました。

現在、LLM(大規模言語モデル)や生成AIの実装により、物流DXは「AIドリブン・ロジスティクス(ADL)」へと段階を進めています。

発展段階 管理手法・判断基準 主な特徴と業務実態 限界・課題
第1段階(KKD) 勘・経験・度胸 属人的な配車・荷役指示。紙や電話によるやり取り 暗黙知のブラックボックス化、改善の再現性欠如
第2段階(DDL) データドリブン バース予約や動態管理による稼働データ・待機時間の可視化 データの集計・分析や施策立案に人手と時間を要する
第3段階(ADL) AIドリブン AIが非定型データを構造化し、改善オプションを複数提示 提示された選択肢の最終決定や対外交渉には人間が必須

ADL環境下において、AIは定型業務だけでなく、請求書の突合や契約書の読み込みといった非定型業務を自動で構造化データへと変換します。さらにCLOに対し、「積載率を優先する案」「納品時間を前倒しする案」など複数の最適化シナリオを自動提示する役割を担います。

テクノロジーを動かす原動力としての「志」と「大義」

高度なアルゴリズムやダッシュボードを導入しても、それを社内や取引先に適用するリーダーに明確な意思がなければ機能しません。Hacobuの佐々木代表が自著『Logistics Shift なぜ、成長企業は物流を変えるのか』で強調しているのが、経営者やCLOが持つべき「大義(志)」の存在です。

物流改革は、社内の営業部門による無理な納品条件の是正や、製造部門の過剰在庫の削減など、他部門の痛みを伴う調整を必然的に生じさせます。単なるコスト削減目標だけでは部門間の反発を抑えられません。「過酷な配送現場の労働環境をなくし、持続可能な産業インフラを次世代に残す」という倫理的な大義をCLOが掲げることで、初めてステークホルダーを巻き込んだ構造改革が推進されます。

参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策

なぜ今、データ直視とAIドリブンへの移行が不可欠なのか

特定荷主に対する法定義務の履行期日と現場の実態把握の遅れが、CLOの意思決定スピードに直接的な影響を及ぼしています。

改正物流効率化法が課す法的責任と時系列

改正物流効率化法の全面施行に伴い、荷主企業には行政への具体的な報告義務と罰則が設けられています。

年月 制度・政策の動き 特定荷主への具体的な要求事項 法的・経営的リスク
2024年4月 ドライバー労働時間上限規制適用 年間時間外労働960時間規制の開始 輸送能力不足による運賃上昇・配車難
2025年4月 改正物流効率化法の努力義務施行 荷待ち・荷役時間短縮に向けた体制整備 取組不十分な事業者への改善指導
2026年4月 規制的措置の全面施行 年間9万トン以上の荷主へ役員級CLO選任義務化 選任違反に対する最大100万円の罰則
2026年10月末 中長期計画の初回提出期限 荷待ち2時間以内、積載率向上等のKPI申請 虚偽報告・計画不提出に対する罰則・社名公表

中長期計画の策定にあたっては、自社倉庫や委託先拠点の荷待ち時間、荷役時間、車両積載率の実態数値を客観的に把握していなければ、行政が求める水準の計画書を提出できません。

「パンドラの箱」を開けて一次データに向き合う必要性

多くの企業では、現場マネジメント層からの報告において不都合な真実が薄められる傾向があります。現場リーダーが「大きな問題は起きていない」と報告していても、実際にはトラックが路上で1時間以上待機していたり、附帯作業を手作業で無償代行していたりするケースが珍しくありません。

佐々木代表はこの状態を「パンドラの箱」と表現し、CLO自らが現場の一次データを取りに行く姿勢の重要性を指摘します。主観や忖度を排除したデジタルデータを集積し、不都合な非効率を白日の下に晒すことなしに、実行力のある改善シナリオを描くことは不可能です。

参考記事: 船井総研SCコンサル新刊、特定荷主3200社が直面するCLO改革の要諦

ADL導入と一次情報重視がもたらす定量的・定性的効果

デジタルツールによる業務自動化と客観的なデータ共有は、オペレーションとガバナンスの双方に明確な変革をもたらします。

非定型業務の自動化による時間創出効果

現場管理者が日々追われている帳票入力、請求書の照合作業、契約書の確認業務をLLMベースのAIエージェントに代替させることで、定型作業にかかる工数を削減できます。

Hacobuが提供する「MOVO Berth」の稼働実績では、全国3万7,000超の拠点において月間300万件超のトランザクションが処理されています。蓄積された運行・入退場ログをAIが自動集計することで、これまで数週間を要していた中長期計画のボトルネック分析が短時間で完了します。現場担当者は書類作成の作業から解放され、ドライバーの受入環境改善や荷役手順の標準化といった判断業務に専念できます。

取引先との対等な条件交渉と待機時間削減

客観的な運行エビデンスを保有することは、運送事業者や着荷主との交渉において決定的な役割を果たします。

改善項目 旧来の交渉(KKD環境) ADL環境でのアプローチ 定量的・定性的な改善効果
荷待ち時間の是正 「いつも待たされる」という感覚論 入退場タイムスタンプによる待機時間の実証 平均待機時間を2時間以内へ短縮、待機料発生を抑止
積載効率の向上 配車担当の経験による勘積載 出荷データと容積換算AIによる最適積載プラン 車両台数を削減し、CO2排出量および輸送費を圧縮
附帯作業の適正化 契約外荷役が暗黙の了解で常態化 作業開始・終了時刻のログによる実態証明 不合理な無償荷役を廃止し、ドライバー拘束時間を短縮

データに基づき責任分解点を明示することで、着荷主に対して納品時間帯の分散やリードタイム延長を論理的に要請できるようになります。

参考記事: 株式会社Hacobuが10月末期限の計画策定をAI支援、特定荷主の法対応に直結

CLOが実践すべき変革のステップと注意点

テクノロジーの導入と現場の巻き込みを両立させるためには、段階を踏んだアプローチが必要です。

ステップ1:客観的データの収集と現場の五感観察

まずはバース予約システムや動態管理システムを用い、正確なタイムスタンプを取得する仕組みを整備します。

ただし、ダッシュボードの数字を見るだけで施策を決定してはなりません。佐々木代表が語るように、「データ上は問題なくても現場の作業員が疲弊している」といった空気感は、画面上の数値には表れません。CLO自身が現場へ足を運び、五感を使って現場の負荷や動線を直接確認することで、データの背景にある真のボトルネックを特定できます。

ステップ2:AIによるシナリオ生成とCLOによる意思決定

データが蓄積された段階で、AIを活用して改善オプションを導き出します。「輸送コストを最優先して便を統合する案」「リードタイムを維持しつつ異業種混載を行う案」など、AIが提示した複数シナリオの中から、企業の経営方針に合致する選択肢を人間が判断します。

AIは合理的な計算を行いますが、社内政治の力学や協力会社との長年の信頼関係までは考慮できません。緊急時のリスクテイクや利害調整において「どのリスクを自社が引き受けるか」を決断する行為は、人間にしか担えない領域です。

ステップ3:企業の垣根を越えた「共創」ネットワークの構築

物流改革は自社単独では完結しません。2030年代後半に向けて自律型ロボット(フィジカルAI)や自動運転トラックの実装が進むなか、個別企業ごとの部分最適では莫大な投資コストを回収できなくなります。

CLOは、同業他社や異業種の荷主、物流事業者と協調領域を設定し、共同配送やパレット標準化を推進する「外交官」として機能する必要があります。

[従来の個別最適]
自社倉庫 ──(自社便・低積載)──> 納品先A
他社倉庫 ──(他社便・低積載)──> 納品先A
※トラック待機の多発、空車回送の増加

[ADL×企業間共創]
自社データ ┐
            ├─> [共通データ基盤/AI解析] ─> 共同運行・混載ルート提示
他社データ ┘                                      │
                                                  ▼
共同物流拠点 ──(共同配車・高積載)──> 納品先A
※待機時間短縮、運行台数削減、環境負荷低減

参考記事: フィジカルインターネットセンターが示す2026年4月CLO義務化への必須対応

物流を経営アセットへ変革する次のアクション

法規制への形式的な対応で終わらせず、物流を企業の競争優位性へと転換するために、各企業は直ちに以下の手順で社内検討を進める必要があります。

  1. 自社サプライチェーンにおける一次データの取得状況を棚卸しする

自社の物流拠点や委託先倉庫において、トラックの待機時間、荷役時間、積載率がデジタルデータとして分単位で取得できているか確認する。手書き台帳やExcel管理が残っている場合は、バース予約システム等の導入によるデータ自動収集基盤の構築を優先する。

  1. CLOに他部門への改善命令権を付与する社内規程を整備する

CLOが調達、製造、営業部門に対して配送条件の見直しや発注ロット適正化を指示できるよう、職務権限規程を改定する。経営陣直下のガバナンス体制を敷き、部門間のトレードオフを解消できる意思決定ルートを確立する。

  1. 業界横断の協調領域を定め共同物流の枠組みを検討する

自社努力のみでの積載率向上に限界がある領域を洗い出し、近隣拠点や同方向への納品ルートを持つ他社とのデータ連携を模索する。フィジカルインターネットの理念に基づき、オープンな輸送ネットワークへの参画を中長期計画に盛り込む。

参考記事: ブレインパッドらCLO向けIT拡大|2026年4月義務化でデータ経営が加速

出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: 株式会社Hacobu

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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