佐川急便は、2026年10月1日集荷分から2027年2月5日集荷分までの期間、同社の「飛脚国際宅配便」を対象に繁忙期追加金(ピークサーチャージ)を導入する。
日本発の貨物を対象として仕向け地別に重量1kg当たり20円から150円が通常運賃へ加算される。
飛脚国際宅配便における繁忙期追加金の適用条件と運賃改定の推移
佐川急便が導入する「Demand Surcharge(繁忙期追加金)」は、年末年始や世界的なホリデーシーズンに伴う航空貨物需要の急増期において、国際輸送スペースの確保とサービス品質を維持することを目的としている。
国際宅配便サービス約款に基づき、日本発・世界220以上の国・地域向け貨物に適用される。
追加金の設定内容と算定ルール
繁忙期追加金は仕向け地を区分したエリアごとに設定されており、通常運賃に上乗せして請求される。運賃計算の実務においては、請求重量0.5kgごとにキロ単価の半額が加算される仕組みとなっている。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 対象サービス | 飛脚国際宅配便(日本発) |
| 適用期間 | 2026年10月1日集荷分〜2027年2月5日集荷分 |
| 追加金額 | 仕向け地別に1kg当たり20円〜150円 |
| 加算単位 | 請求重量0.5kgごとにキロ単価の半額を加算 |
| 燃料サーチャージの扱い | 通常運賃と追加金を合算した金額に対して18%を算出 |
実務上で特に注意を要するのが、燃料サーチャージとの関係性である。佐川急便の飛脚国際宅配便では、燃料サーチャージ(改定後18%)の算出基準が「運賃+繁忙期追加金」の合算値に設定されている。
追加金そのものに対しても18%の燃料サーチャージが課されるため、荷主企業の実質的なコスト増は追加金の額面以上となる。
参考記事: フレート(運賃)の仕組みと計算方法を解説|サーチャージやコスト最適化のポイント
繁忙期追加金および運賃体系の時系列推移
佐川急便における飛脚国際宅配便の運賃およびサーチャージ体系は、段階的な改定を経て現在の水準に至っている。
| 年月 | 改定・発表内容 | 主な改定数値・適用期間 |
|---|---|---|
| 2023年10月 | 届出運賃の改定発表(2024年4月1日施行) | 飛脚国際宅配便を平均約6%値上げ |
| 2024年8月 | 繁忙期追加金の初導入および燃料サーチャージ改定 | 追加金適用(2024年9月15日〜2025年1月31日)/燃料S/Cを10%から18%へ引き上げ |
| 2025年9月 | 2025年度繁忙期追加金の導入発表 | 追加金適用(2025年10月1日〜2026年2月16日)/1kg当たり20円〜230円 |
| 2026年9月 | 2026年度繁忙期追加金の導入発表 | 追加金適用(2026年10月1日〜2027年2月5日)/1kg当たり20円〜150円 |
前年(2025年度)の設定では上限単価が230円/kgであったのに対し、2026年度は上限が150円/kgへと引き下げられた。
適用期間は約4か月強に設定されており、DHLなどの大手グローバルインテグレーターが設定しているDemand Surchargeの適用期間(2026年10月1日〜2027年2月5日)と完全に一致している。
荷主企業と運送事業者に生じるコスト構造の変動
約4か月間にわたる追加金の適用は、国際物流を利用する荷主企業および関連事業者のコスト構造に直接影響する。
越境EC事業者:ホリデー商戦期の利益圧縮と出荷前倒し
北米や欧州向けに越境ECを展開する事業者は、年間最大の商戦期であるブラックフライデー、サイバーマンデー、クリスマス商戦が追加金の適用期間と重なる。
仮に北米向けに重量5kgの商品を発送する場合、150円/kgの追加金が適用されると、1件当たり750円の追加金が発生する。さらにこの750円に対して18%の燃料サーチャージ(135円)が上乗せされるため、合計885円の直接的なコスト増となる。
販売価格や送料設定を事前に固定している越境EC事業者の場合、このコスト増を自社で吸収せざるを得ず、利益率を直接圧迫する。
参考記事: 越境ECとは?市場規模の最新動向から物流・決済の課題解決策まで徹底解説
運送事業者・フォワーダー:航空スペース調達コストの価格転嫁
国際宅配便や航空フォワーディングを手掛ける事業者にとって、秋から冬にかけての期間は旅客便の減便や貨物需要の集中により、航空会社のロードファクター(積載率)が極限まで高まる時期である。
航空会社各社が設定するピークサーチャージを自社の運賃表に転嫁できなければ、運送事業者は逆ざやに陥る。
佐川急便による追加金導入は、大手インテグレーターと同様に航空スペースの買い付けコスト上昇分を利用者側へ正当に転嫁し、輸送枠を確保し続けるための実務的な措置といえる。
参考記事: 佐川急便が宅配に燃油サーチャージ検討!EC業界に起こる3つの衝撃と防衛策
製造業者・メーカー:緊急出荷と小口混載便の採算管理
海外の組み立て工場や取引先向けに補修部品や試作品を緊急輸送する製造業者は、1回当たりの出荷重量が数十キロから数百キロに及ぶケースがある。
100kgの緊急資材を150円/kgのエリアへ飛脚国際宅配便で輸送した場合、追加金は1万5,000円、燃料サーチャージ分を含めると1万7,700円の負担増となる。
定常的な海上コンテナ輸送から、工期の遅れを挽回するために航空輸送へ切り替えるスポット出荷では、追加金によるコスト上振れが製造原価に直接反映される。
航空宅配の固定運賃モデル終焉とダイナミックプライシング
佐川急便の「飛脚国際宅配便」における繁忙期追加金は、2024年の初導入から3年連続の運用となり、完全に定例化している。
航空貨物市場では、航空機のキャパシティという物理的制約が存在するため、需要が集中するホリデーシーズンに運賃を引き上げる需給連動型価格設定(ダイナミックプライシング)が標準となっている。
かつての国際宅配便市場では、年間契約に基づく固定運賃(オールインレート)が主流であったが、燃料サーチャージの改定(18%)と繁忙期追加金の定常化により、国際物流コストは「市況と季節に応じて変動するコスト」へと完全に変化した。
荷主企業は、運送会社が提示する基本運賃の比較だけでなく、繁忙期追加金と燃料サーチャージの複合計算式を理解した調達管理へ移行する必要がある。
明日から意識すべきこと
荷主企業および物流担当者が明日から着手すべき具体的な対応は以下の通りである。
- 仕向け地別コストシミュレーションの更新
10月1日集荷分からの出荷データに対し、仕向け地別の追加金(20〜150円/kg)と燃料サーチャージ18%を反映した実質運賃単価を算出し、1件当たりの出荷原価を再計算する。
- ホリデー商戦期の出荷スケジュール前倒し
越境ECや海外向け定期出荷において、9月末までの前倒し出荷が可能な在庫については集荷依頼を早期に完了させ、追加金適用の影響を最小限に抑える。
- 海外販売価格および送料ポリシーの改定
追加金が適用される2027年2月5日までの期間、越境ECサイト上の設定送料や送料無料基準の引き上げ、あるいは商品価格へのサーチャージ転嫁を実務システムへ反映する。
出典: 物流ニュース LNEWS
出典: 佐川急便株式会社 お知らせ
出典: ECのミカタ



