福山通運はいすゞ自動車の普通免許対応小型トラック「エルフミオ」36台を導入し、2026年9月14日に東京主管支店で納車式を実施しました。同社が進める「トライ・トラック・プロジェクト」の一環であり、採用したインドネシア人ドライバー30人などの外国人材や女性を対象に、集配現場への早期実戦投入を進めます。
普通免許トラック導入の全容と福山通運の採用戦略
福山通運が今回導入した「エルフミオ」は、2024年7月にいすゞ自動車が発売した普通自動車免許(AT限定含む)で運転可能な小型ディーゼルトラックです。導入された36台のうち、30台が首都圏の集配拠点である東京主管支店に集中配備され、残り6台が中部や大阪などの主要拠点へ配置されました。
導入車両の仕様と運行体制
同社が導入した車両は、普通免許規格の上限に合わせた積載・容積設計が施されています。
| 項目 | 仕様・配備内容 |
|---|---|
| 型式 | いすゞ「エルフミオ」(3DF-NHR87AF-EC4LAY-P) |
| パワートレイン | 1.9Lディーゼルエンジン/6速AT(マニュアルモード付) |
| 車両総重量 / 最大積載量 | 3.5トン未満(普通免許対応) / 1.1トン |
| 架装仕様 | 日本フルハーフ製専用バン(荷室容積11.9立方メートル) |
| 主な配備先 | 東京主管支店(30台)、中部・大阪地区等(6台) |
特筆すべきは、日本フルハーフと共同開発した専用架装によって、標準仕様(9.3立方メートル)から荷室容積を11.9立方メートルへと約28%拡大している点です。特大貨物ではなく、アパレルや日用品など軽量でかさばる荷物のラストワンマイル集配に特化させることで、最大積載量1.1トンという普通免許規格の制限下でも積載効率を最大化する構成をとっています。
制度改正と採用のタイムライン
今回の車両導入は、運転免許制度の改正と特定技能制度の拡大に直結しています。
2017年3月12日施行の改正道路交通法により「準中型免許」が新設され、同日以降に普通免許を取得したドライバーが運転できる車両総重量は「5.0トン未満」から「3.5トン未満(最大積載量2.0トン未満)」へと引き下げられました。この法改正以降、運送事業者が集配業務の主力としてきた2トントラック(車両総重量5トン前後)を運転するためには準中型以上の免許が必要となり、若年層や外国籍の求職者にとって参入の壁となっていました。
福山通運はこの免許区分の制約に対し、車両仕様を普通免許規格へ適合させる戦略をとりました。
- 2017年3月: 改正道路交通法の施行により、普通免許の運転可能範囲が総重量3.5トン未満へ縮小
- 2024年3月: 政府が在留資格「特定技能1号」の対象分野に「自動車運送業」を追加閣議決定
- 2024年7月: いすゞ自動車が普通免許対応の小型ディーゼルトラック「エルフミオ」を発売
- 2026年3月: 福山通運が特定技能制度を活用したインドネシア人ドライバー30人の採用(内定)を発表
- 2026年9月: エルフミオ36台を納車。外免切替や社内教育を終えた人材から順次実務へ投入
福山通運では、特定技能1号を活用して採用したインドネシア人30名に対し、日本の普通免許への切り替え(外免切替)や安全教育を実施しており、2026年10月頃よりエルフミオの配備拠点にて順次乗務を開始する予定です。並行して福山本社(広島県福山市)ではベトナム人10人を大型トラック乗務に向けて育成するなど、免許要件に応じた段階的な人材育成を進めています。
参考記事: ナカノ商会、特定技能でベトナム人ドライバー採用|人材確保の新たな一手
運送オペレーションと雇用環境に与える具体的な影響
車両仕様を普通免許規格へシフトさせた今回の施策は、運送事業者、ドライバー、システム支援企業の各層に業務運用の変化をもたらします。
運送事業者:準中型取得コストの圧縮と戦力化期間の短縮
運送事業者にとって、採用時の育成コストと実稼働までの待機期間が大きく圧縮されます。
従来、2017年3月以降に普通免許を取得した若年層や来日した外国人材を採用した場合、集配用2トントラックに乗務させるためには準中型免許の取得が前提でした。さらに外国人材の場合、教習所での学科教習や筆記試験における日本語対応のハードルが加わり、免許取得の遅れや不合格リスクが事業者のコスト負担となっていました。
車両スペック側を3.5トン未満に抑えた車両をフリートに組み込むことで、保有する普通免許(または外免切替による普通免許)のまま即座に乗務訓練へ移行できます。初期投資を抑えつつ、採用から稼働までのリードタイムを数週間単位で短縮することが可能になります。
ドライバー:普通免許・AT限定のまま運送業界へ参入可能
求職者側においては、資格取得にかかる金銭的・時間的負担を負うことなく、運送実務への就労が可能になります。
特に外国籍のドライバーにとっては、自国の運転免許から日本の免許へ切り替える「外免切替」において、普通免許への切り替えが準中型や大型に比べて手続きと技能確認のハードルが低く設定されています。AT限定普通免許に対応したエルフミオのような車両が配備されている営業所であれば、入社初期の段階で高度な上位免許を要求されることがなく、日本国内での配送実務の経験を早期に蓄積できます。
参考記事: 運送業の外国人雇用実態、ドライバー平均給与は月34.6万円|現場の46%が日本語に課題
SaaS・テクノロジーベンダー:多言語UIと配送ルート最適化の需要拡大
未経験者や外国人ドライバーが即座に乗務する現場が増加することにより、運行管理や動態管理を提供するテクノロジーベンダーのシステム要件にも変化が生じます。
業務経験が浅いドライバーや日本語の読み書きに不慣れな外国人ドライバーが1.1トン車でラストワンマイル集配を行う場合、従来の「土地勘」や「紙の伝票指示」に依存した運行は機能しません。スマートフォンや車載端末上で、多言語によるナビゲーション、配送先の荷受条件のアイコン表示、積み付け順の自動計算などを直感的に提示するシステムの需要が拡大します。
参考記事: 外国人ドライバー100人の現実と物流の5年後|人手不足解決への導入戦略
LogiShiftの視点:車両ダウンサイジングが迫る配送網の再設計
福山通運によるエルフミオ36台の導入は、ドライバー不足という労働力側の制約に対し、「教育で免許区分を引き上げる」のではなく「車両規格を労働者の保有資格へ適合させる」という逆算のアプローチをとった具体的な実例です。
ただし、普通免許規格の小型トラックを主力業務に組み込む運用は、輸送効率と採算性の面でトレードオフを内包しています。最大積載量1.1トンの車両は、従来の2トン積載クラスのトラックと比較して積載重量が約半分にとどまります。今回同社が日本フルハーフ製の専用架装によって容積を11.9立方メートルまで拡張したように、運ぶ貨物の特性を「重量物」から「容積物(かさ高品)」に限定しなければ、車両1台あたりの積載原単位が低下し、配送コストが増加するリスクを抱えます。
この課題を克服するためには、配送ルートの見直しと集配拠点の役割分担の再定義が不可欠です。幹線輸送やターミナル間連絡には大型・中型車を維持しつつ、営業所からエンドユーザーまでのラストワンマイルにおいて、重量物配送と軽量物配送を仕分ける配車組みが求められます。単に「普通免許で乗れるトラックを買う」ことにとどまらず、貨物の重量特性に応じた配車ロジックを再構築できる事業者のみが、外国人材や未経験者の戦力化と配送採算性の維持を両立できます。
明日から意識すべきこと
- 自社の集配フリートが運んでいる荷物の「平均実積載重量」と「平均容積」を計測し、2トントラックで運行している運行系統の中に普通免許規格(総重量3.5トン未満)へ置き換え可能なルートが存在するかを精査する。
- 2017年3月以降取得の普通免許保持者や外国人材を採用候補とする場合、準中型免許取得の費用補助を行うモデルと、普通免許対応小型トラックを調達して即時稼働させるモデルの総コストと立ち上がり期間を比較算出する。
- 外国人ドライバーや未経験者をラストワンマイル集配へ配置する前提として、配送先特記事項や納品ルールをテキスト依存からピクトグラムや多言語対応の端末画面へ置き換える準備を進める。
出典: 日本農業新聞公式ウェブサイト
出典: トラックマガジン『フルロード』
出典: 輸送経済新聞
出典: いすゞ自動車 プレスリリース
出典: LOGISTICS TODAY



