つがる弘前農業協同組合、日本通運、日本貨物鉄道、T2の4社は、2026年10月13日より青森県弘前市から大阪府大阪市までの約1,200kmにおいて、自動運転トラックと貨物鉄道を連携させた青森県産りんごの輸送実証を開始する。本取り組みは青果物輸送として国内初となり、東青森駅から隅田川駅間を貨物列車、隅田川駅から百済貨物ターミナル駅間をレベル2自動運転トラックで中継する。
青森・大阪間1200kmを結ぶ青果物モーダルコンビネーションの運行設計
青森県産のりんごは全国の生産・収穫量において約6割を占め、国内消費の半数以上を供給する重要産品である。一方、産地から大消費地である関西圏への出荷は1,000kmを超える長距離幹線輸送に依存しており、トラックドライバー不足や自然災害による幹線寸断がサプライチェーン上のリスクとなっている。
本実証では、JR貨物とT2が共同開発した列車・トラック直載対応の「31フィート共用コンテナ(U51D)」を投入し、トラック輸送と貨物鉄道を有機的に結合する「モーダルコンビネーション」を採用した。
輸送ルートと各事業者の役割分担
青森県弘前市から大阪府大阪市までの約1,200kmに及ぶ行程は、初端・幹線・終端の4区間に分割され、有人トラック・鉄道・自動運転トラックを組み合わせてリレー輸送を行う。
| 行程 | 輸送区間 | 輸送モード | 担当事業者・運用内容 |
|---|---|---|---|
| 第1区間 | JAつがる弘前 → 東青森駅 | 通常トラック(有人) | 日本通運が集荷・駅搬入を担当 |
| 第2区間 | 東青森駅 → 隅田川駅(東京) | 貨物鉄道 | JR貨物が定時幹線輸送を担当 |
| 第3区間 | 隅田川駅 → 百済(タ)(大阪) | レベル2自動運転トラック | T2が高速道路主体で自動運行 |
| 第4区間 | 百済(タ) → 大阪市内納品先 | 通常トラック(有人) | 日本通運が最終ラストワンマイル納品 |
第3区間の幹線道路輸送においては、システムが加減速および操舵を制御し、セーフティドライバーが監視および緊急時の手動介入を行う「レベル2自動運転」を実施する。青果物は振動や衝撃による荷傷み、温度変化による品質劣化が生じやすいため、鉄道輸送および自動運転トラック走行が実商流の青果物品質に与える影響を多角的に検証する。
モーダルコンビネーション実証の進展経緯
JR貨物とT2は、鉄道ネットワークと自動運転技術を融合した幹線輸送モデルの構築を進めてきた。2024年の資本提携を契機に、加工食品や日用品での検証を経て、今回の青果物輸送へと対象範囲を拡大している。
| 年月 | 取り組み内容 | 主な対象品目・区間 |
|---|---|---|
| 2024年2月 | JR貨物がT2へ出資 | 幹線輸送プラットフォームの検討開始 |
| 2024年11月 | 5社による共同検討の合意 | 日本通運・全国通運・JR貨物・T2等 |
| 2025年6月 | モーダルコンビネーション第1弾実証 | 北海道〜大阪(雪印メグミルク製品) |
| 2025年7月 | 往復運行実証 | 関東〜九州(東罐ロジテック・全国通運等) |
| 2026年7月 | 長距離実証の展開 | 九州〜関東(アイリスオーヤマ製品等) |
| 2026年10月 | 青果物初の幹線実証(本件) | 青森〜大阪(JAつがる弘前産りんご) |
| 2027年度以降 | レベル4完全無人トラック商用運行 | 高速道路での定期幹線輸送サービス開始予定 |
参考記事: エスビー食品ら4社、850kmの自動運転×鉄道実証で長距離輸送の省人化へ
参考記事: アイリスオーヤマが1100km輸送で自動運転と鉄道を融合し長距離物流の省人化が加速
サプライチェーンを構成する3領域への具体的影響
本実証の実施は、農産物荷主、運送事業者、物流システムベンダーの3者に対して、業務プロセスや輸送戦略の再設計を促す要因となる。
農業・青果荷主:出荷リードタイム維持と幹線輸送能力の確保
生鮮青果物の出荷団体や農業協同組合は、長距離ドライバーの拘束時間規制に伴う長距離チャーター便の調達難に直面している。従来のトラック直行輸送に依存した体制では、繁忙期の車両確保難や運賃上昇が出荷能力の頭打ちにつながる懸念があった。
鉄道幹線と自動運転トラックを接続する複線化ルートを確保することにより、特定モードの運休や運送事業者の稼働制約による出荷停止リスクを分散できる。荷主側には、鉄道コンテナ積載に適したパレット荷姿の統一や、駅・ターミナルの発着枠に連動した出荷スケジュールの管理が求められる。
参考記事: 九州農政局・農林水産省|農産物物流の生産性向上推進に向けた長距離輸送の生存戦略|
運送事業者:超長距離運行の圧縮と地域集配への経営資源再配置
運送事業者は、青森から関西までの1,200kmを往復する過酷な連続乗務からドライバーを解放し、自社アセットを集配業務へ集中させる運行モデルへ再編できる。
本実証のように、日本通運が産地集荷と大消費地のラストワンマイルを担い、長距離の幹線輸送を貨物鉄道と自動運転トラックへ委譲する分業体制が確立されれば、自社ドライバーの運行範囲を日帰り可能な半径50〜100km圏内にとどめることが可能となる。これにより、拘束時間短縮による法令遵守と、乗務員不足の緩和が同時に図られる。
参考記事: NLP協同組合、T2らと1100km実証完了|幹線輸送の中継拠点を運用
SaaS・テクノロジーベンダー:異種モード間を跨ぐ統合動態管理システムの需要拡大
鉄道と自動運転トラックがリレーする運行体系では、モード結節点における受け渡し遅延が輸送全体のリードタイムを左右する。
列車運行情報のAPI連携、自動運転トラックの到着予測時間(ETA)の算出、貨物駅コンテナヤードでの荷役ステータスを単一のダッシュボードで一元管理する運行管理・動態管理SaaSへの需要が顕在化する。貨物の追跡だけでなく、青果物の品質を担保するためのコンテナ内温湿度データや振動データのリアルタイム監視機能も求められる。
参考記事: 株式会社T2が国交省自動運転支援事業に採択|2027年度の幹線レベル4実装が加速
LogiShiftの視点
本実証の意義は、青果物という「鮮度劣化リスクが高く、荷扱いがデリケートな商材」においてモーダルコンビネーションの適用領域を拡張した点にある。
2026年4月に全面施行された改正物流効率化法に基づき、年間取扱物量が一定規模を超える特定荷主には、物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の策定が義務付けられている。初年度計画の提出期限となる2026年10月末を前に、多くの荷主企業が積載率の向上や長距離運行の是正策を明示する必要に迫られている。
野村総合研究所の推計によれば、2030年度には全国で約36%のトラック輸送能力が不足すると試算されている。特に青森県産りんごのように、生産地が極限まで偏在し消費地が全国に分散するサプライチェーンでは、トラック単一モードに依存した輸送構造の維持は成り立たない。
今回の取り組みで用いられた「31フィート共用コンテナ(U51D)」は、鉄道貨車の緊締規格とトラックのスワップボディ規格を両立させた機材であり、コンテナからトラックへの積み替え工程を省力化する。ハードウェアと運行オペレーションの標準化が進めば、2027年度以降に計画されているレベル4(完全無人)自動運転トラックへの移行時にも、そのまま運行枠をスライド適用できる先行メリットがある。
参考記事: コーナン商事が約520kmの自動運転定期輸送を開始|荷主の輸送力確保に直結
参考記事: 鉄道輸送とは?仕組みやメリット・コンテナ規格から導入手順まで徹底解説
明日から意識すべきこと
長距離幹線輸送の構造転換に対応するため、荷主および物流事業者は以下の手順で自社オペレーションの適合性を確認されたい。
- 自社幹線貨物における「鉄道・自動運転コンテナ規格」適合性の検証
自社が長距離輸送している貨物のパレット寸法や許容積載重量を、JR貨物およびT2の31フィート共用コンテナの容積・荷重制限と照合する。手積み手降ろしの運用が残っている場合は、コンテナ積み替えに対応できるようパレット積載への切り替えを優先する。
- 結節点オペレーションを考慮したリードタイム設計の再計算
トラック直行便を前提とした納品リードタイムを見直し、貨物駅やインターチェンジ近隣の中継拠点における載せ替え時間を織り込んだ着荷猶予枠を荷受側と協議する。
- 動態管理データの連携基盤の整備
自社TMS(輸配送管理システム)が、鉄道の遅延情報や自動運転運行プラットフォームからのAPIデータを受信できる仕様になっているか確認し、運行監視の自動化に向けたシステム改修を検討する。
出典: PR TIMES
出典: 株式会社T2 公式リリース
出典: NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社 ニュースリリース



