サントリーロジスティクスは2026年10月7日、オプティマインドが開発した自動配車システム「Loogia」を埼玉支店と南大阪支店に順次導入すると発表した。対象となる東西の主要2拠点において、日々の受注を車両条件に合わせて分割・再編成する「配車分割」業務にデータ連携機能「Loogiaコネクト」を組み込み、熟練者が培ってきた判断基準をシステム上で再現する。
サントリーロジスティクスが挑む「配車分割」の標準化と導入の全容
サントリーロジスティクスとオプティマインドによる今回のシステム導入は、輸配送現場で長年ブラックボックス化していた「配車分割」と呼ばれる工程を対象にしています。一般的なルート巡回計算とは異なり、配車分割は重量制限、パレット積載数、届け先の荷受け時間や進入制限、さらには出荷元となる複数倉庫の在庫配置など、相互に干渉し合う制約条件をクリアしながら荷物を車両ごとに割り振る作業を指します。
従来、この組み合わせ最適化はベテラン配車担当者の頭脳に頼る運用が続いており、汎用的な配車計算ロジックのみでは現場の細かな例外条件を処理しきれない実態がありました。両社は現場で積み上げられてきた制約条件や担当者の思考手順を整理・構造化し、経験年数の浅い配車担当者でも熟練者と同等の割り振りができるようアルゴリズムをチューニングしています。
また、配車業務の基盤として、基幹システム側が持つ受注データや各種マスタデータを自動変換・検証して取り込むデータ連携機能「Loogiaコネクト」を実装しました。これにより、システム間のデータ二重入力を防ぎ、受注確定から配車組みまでのリードタイムを圧縮しています。
| 項目 | 埼玉支店・南大阪支店への導入概要 |
|---|---|
| 発表主体 | サントリーロジスティクス株式会社、株式会社オプティマインド |
| 発表日・導入時期 | 2026年10月7日発表、2026年10月より順次導入 |
| 対象拠点 | 埼玉支店(埼玉県さいたま市)、南大阪支店(大阪府堺市) |
| 導入システム | 自動配車システム「Loogia」、データ連携基盤「Loogiaコネクト」 |
| 対象業務 | 配車分割(受注荷物の車両積載条件に合わせた分割・再編成) |
| 主な解決課題 | 属人的な配車判断の解消、経験知の構造化、基幹データ連携の自動化 |
経済産業省・国土交通省・農林水産省が公表した「令和7年度物流効率化に向けた荷主・物流事業者の取組状況の調査結果」によると、積載効率向上等の取り組みとして「配車計画・運行経路の最適化」を実施している荷主・連鎖化事業者の割合は44%にとどまっています。配車現場では、属人的なノウハウを形式知化できず、システム選定やマスタ整備の段階で頓挫するケースが少なくありません。
サントリーロジスティクス取締役経営企画部長の野原浩敬氏は、今回の取り組みにあたり「今までの知見やノウハウを属人化せず、事業の継続性をより確実なものとし、サントリーグループ唯一の物流機能会社として、また社会インフラとしての物流を担う企業として、より一層社会に貢献してまいります」とコメントを寄せています。
参考記事: 配車計画とは?効率化の仕組みやシステム選定・改善ステップを解説
輸配送領域のプレイヤーに及ぼす波及効果
倉庫事業者・3PLへの影響
配車業務の中核である「配車分割」が標準化されることは、3PLおよび倉庫事業者の人員配置戦略に直結します。これまで配車業務は、地域特性や荷主固有の荷役ルールを熟知したベテラン配車マンの個人的スキルに支えられており、担当者の病欠や退職が運行計画の停止や配送品質の低下を引き起こす要因となっていました。
今回の事例のように、荷役条件や倉庫配置をアルゴリズムのパラメータとして定義できれば、経験の浅い若手スタッフへの実務移管や、他拠点間での配車センター集約が可能になります。配車専任者の属人性を排除することで、拠点ごとの過剰な予備人員を抱えるコストが削減され、事業継続計画(BCP)の実行力も向上します。
参考記事: 配車係とは?運行管理者との違いから実務のコツ・DX効率化まで解説
SaaS・テクノロジーベンダーへの影響
物流SaaSおよび最適化エンジンを開発するベンダーにとっては、大手荷主系3PLへの導入要件が「ルート探索」から「前段の荷物分割・基幹連携」へと移行している実態を裏付ける動きとなります。累計200社以上の導入実績を持つ「Loogia」が、単純な配送順序の最適化にとどまらず、基幹システムとのデータ中継基盤である「Loogiaコネクト」を武器にエンタープライズ領域へ踏み込んだ点は、競合ベンダーの開発方針にも影響を与えます。
単に地図上で最適な走行ルートを描くだけのツールはコモディティ化が進んでおり、出荷元倉庫の荷受け制限や契約形態といったERP・WMS側の複雑なビジネスロジックを吸収できるベンダーでなければ、大手物流機能会社のシステムリプレイス案件を獲得することが難しくなっています。
参考記事: 配車エンジンとは?仕組み・計算ロジックから導入手順までわかりやすく解説
LogiShiftの視点:制度対応と現場制約のアルゴリズム化がもたらす構造変化
改正された物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)第71条では、荷主や物流事業者に対して積載効率の向上や運行計画の最適化などの努力義務が課され、取り組み状況の調査・公表が進められています。積載率の引き上げと拘束時間の短縮を両立させるには、運行直前の付け焼き刃な手配ではなく、受注確定時点で車両枠と荷物量をミリ単位・キログラム単位で計算し尽くす「精緻な配車分割」が不可欠です。
飲料物流のように、重量物かつ荷姿(パレットやケース)が混在し、出荷拠点がエリア内に分散する環境下では、一般的な配送計画システムをそのまま適用しても現場の配車マンによる修正作業が頻発します。今回のサントリーロジスティクスの取り組みが示す本質は、自動配車システムを単なる効率化ツールとして導入したことではなく、ベテラン配車マンの「思考順序」を分解し、制約条件の優先順位をアルゴリズムとして整理し直した点にあります。
長年「職人芸」として聖域化されてきた配車計画の現場判断をデータ構造へ落とし込むノウハウが確立されたことで、荷主企業が物流子会社や委託先3PLに求める要件定義のハードルは一段上がります。勘と経験による運行管理を放置する事業者は、荷主から客観的な運行データの提示を求められた際に説明責任を果たせなくなるリスクを抱えることになります。
参考記事: AI配車とは?仕組みや従来の自動配車との違い、導入のメリットを解説
明日から現場と経営が意識すべきアクション
配車業務のシステム化を現実的なオペレーションへ落とし込むため、以下の実務手順を順次進める必要があります。
- 配車担当者が持つ「割り振りルール」の棚卸し
納品先ごとの進入可能車型、荷受時間枠、パレット積みか手積みかといった条件に加え、「どの順番で荷物を仕分け、どの組み合わせを避けているか」という配車担当者の思考ルールをドキュメント化して整理する。
- 基幹システム(ERP/WMS)側のマスタデータの精度検証
自動配車エンジンにデータを流し込む前提として、商品ごとの重量・容積データや納品先の荷受条件マスタに欠損や実態との乖離がないかを精査し、データ連携基盤でエラーが出ない形式へ整備する。
- 配車修正ログの蓄積とアルゴリズムへのフィードバック体制の構築
システムが出力した配車計画を現場が手動修正した場合、その理由(「急なバース混雑の回避」「特定の荷役制約」など)を記録し、パラメータへ再反映させる運用フローをあらかじめ定めておく。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: PR TIMES
出典: 経済産業省「令和7年度物流効率化に向けた荷主・物流事業者の取組状況の調査結果」



