配車係とは?運行管理者との違いから実務効率化・DX推進のステップまで解説とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:配車係とは、荷主から受けた配送依頼に対し、最適なトラックやドライバーを割り振って配送計画を立てる職種です。安全運行を管理する「運行管理者」とは異なり、積載効率やルートを最適化して運送事業の売上や利益率を高める役割を担っています。
  • 実務への関わり:配車係は運送会社の収益のコントロールタワーであり、配車計画の質によって売上や利益率が10〜20%以上も変動します。現場ではドライバーの労務管理や荷主との調整を行い、空車回送を減らすための帰り荷の確保など、泥臭くも極めて重要な実務を日々こなします。
  • トレンド/将来予測:従来のExcelやホワイトボードを用いた配車管理は、業務の属人化や長時間労働の原因となっていました。今後は2024年問題をはじめとする労働規制をクリアするため、AI等を活用した自動配車システムや労務管理システムとの連携による、配車業務のデジタル化(DX)とチーム制への移行が加速すると予測されます。

トラック1台を1日走らせることで発生する売上や利益率は、配車の組み方ひとつで10〜20%以上変動します。荷主から受けた配送依頼を、車両の積載能力やドライバーの労務状況に合わせて最適に割り振る「配車係」は、運送事業における収益のコントロールタワーです。本稿では、配車係の具体的な仕事内容から運行管理者との違い、実務効率化のノウハウまでを専門的な視点で解説します。

目次

配車係とは?「運行管理者」との決定的な違いと具体的な仕事内容

配車係とは、荷主から依頼された貨物を、自社または協力会社のトラックとドライバーへ最適に割り当て、効率的な配送計画を立てる職種です。物流企業における「司令塔」とも呼ばれ、日々の売上や利益率を直接左右する役割を担っています。

「運行管理者」と「配車係」の役割・資格・責任の明確な違い

実務において「運行管理者」と「配車係」は混同されがちですが、その法的な立ち位置や責任範囲には決定的な違いがあります。国家資格の有無や責任を負う対象を整理した比較は以下の通りです。

比較項目 運行管理者 配車係
主な目的 輸送の安全確保と法令遵守(コンプライアンス) 輸送効率の最大化と利益(売上)の確保
必要資格 運行管理者資格(国家資格)が必須 必須の国家資格はなし(実務経験や各種免許が推奨)
具体的な業務 点呼の実施、乗務記録の管理、過労運転の防止指導 受注、配車計画の作成、配車指示、実車率の管理
責任の対象 公安委員会および運輸局(行政処分に対する責任) 社内経営陣および荷主(事業の収益性に対する責任)

運行管理者が安全を担保する「ブレーキ」であるのに対し、配車係は事業成長と収益化を推進する「アクセル」の位置づけです。小規模な運送会社などでは同一人物が兼務するケースもありますが、本来は異なる目的を持つ役割であることを整理しておくことが、現場の意思決定における衝突を防ぐ土台となります。

受注から進捗管理まで:配車係がこなす1日の業務フローと管理指標

配車係の1日は、秒単位で変化する状況に対応するプロセスの連続です。一般的には「受注」「計画」「指示」「進捗管理」の4つのフェーズで業務が進行します。

  • 1. 受注(案件の回収と整理): 午前中から正午にかけて、荷主からFAX、メール、EDI(電子データ交換)を通じて翌日以降の出荷依頼を収集します。荷物の重量、容積、納品指定時間、附帯作業の有無を精査します。
  • 2. 計画(配車計画の策定): 午後、収集した案件に対して、稼働可能な自社車両とドライバー、さらには協力会社の車両を割り振ります。最も効率的な走行ルートや帰り荷の確保方法を組み立てます。
  • 3. 指示(ドライバーへの配車指示): 夕方、決定した配車計画に基づき、各ドライバーへ翌日の積地、卸地、運行スケジュールを記載した指示書(運行指示書やスマホアプリなど)を交付します。
  • 4. 進捗管理(当日の運行フォロー): 翌日、運行中のドライバーの現在地や納品状況をGPSや電話で確認します。事故や渋滞、荷待ち時間などのトラブルが発生した場合は、速やかに迂回ルートの指示や荷主への連絡を臨機応変に行います。

配車業務は担当者の頭の中にのみ知見が蓄積される「ブラックボックス化」が起こりやすい傾向にあります。組織として一定のパフォーマンスを維持するためには、以下の2つの主要指標を定量的に管理することが有効です。

第一の指標は「積載率」です。これは、トラックの最大積載量に対して、実際に積載した貨物量の割合を指します。例えば、最大積載量10トンの車両に6トンの荷物を積んで運行した場合、積載率は60%となります。積載率の向上は、1回の運行における収益性を最大化するために不可欠です。

第二の指標は「実車率」です。これは、トラックの総走行距離のうち、実際に貨物を積んで走行した距離の割合を示します。例えば、往路で100km(実車)、復路で100km(空車)を走行した場合、実車率は50%にとどまります。実車率を高めるためには、目的地付近で別の荷主からの「帰り荷」を確保する交渉力が重要です。ドライバーの労働時間規制が厳格化する中、実車率を高めて無駄な空車回送を減らすアプローチが、企業の生存を左右します。

配車係の平均年収レンジと実務で評価される親和性の高い資格

配車係の平均年収は、一般的に300万円〜500万円のレンジに収まるケースが多く見られます。ただし、保有する資格や、扱う車両規模(地場配送メインか、長距離大型トラックメインか)、管理する車両台数によって変動します。月間50台以上の車両を1人でコントロールし、協力会社との傭車(ようしゃ)交渉を的確に行えるベテラン層の中には、年収600万円を超える事例も存在します。

配車係としての専門性を高め、社内評価やキャリアアップを図る際、以下の3つの資格を保有していると実務上強力な武器となります。

  • 運行管理者(貨物): 安全管理や労務管理に関する法的知識を備えることで、ドライバーに対して無理のない、かつ法令を遵守した運行計画を提示できるようになり、配車計画の説得力が大幅に増します。
  • 大型自動車免許: 自身が実際に大型トラックを運転できるスキルや知識を持つことで、「大型車が進入できない狭い道路」「死角や車両重量による速度変化」など、ドライバー目線に立った破綻のない運行計画を立てられます。
  • フォークリフト運転技能講習: 倉庫内での積み込み時間や荷下ろしにかかる時間の目安を肌感覚で把握できるようになり、実態に即した荷待ち時間を見込んだスケジュール作成が可能になります。

配車係が「きつい」「ストレスが溜まる」と言われる3大要因と向いている人の特徴

物流業界を支える配車業務ですが、現場では常に高いプレッシャーにさらされ、後継者不足が課題となっています。この職種が精神的・肉体的な負荷が大きいとされる要因と、適性を判定する指標を解説します。

ドライバーと荷主の「板挟み」や突発トラブルによる心理的ストレス

配車係のストレスが急増する要因は、利害関係が対立する「荷主」と「ドライバー」の間に立つ、調整役としてのポジションにあります。

荷主からは「急な物量増加への当日対応」や「厳格な指定時間遵守」といった厳しい要求が届きます。その一方で、現場のドライバーからは「その運行ルートは拘束時間が長すぎる」「これ以上の荷役作業は対応できない」といった不満が直接ぶつけられます。例えば、保有車両30台規模の運送企業において、当日午前に発生した「荷主からの急な時間指定の変更」をドライバーに伝える際、双方の言い分を収めるための交渉を繰り返すことで、担当者の精神は摩耗していきます。

また、この精神的負荷を助長するのが、運行管理者と配車係という職務目的の違いにあります。安全運行や法令遵守を最優先する運行管理者に対し、配車係は「車両の稼働率向上」や「売上の最大化」を求められます。安全基準を優先したい運行管理者側と、1件でも多くの配送を詰め込みたい営業(配車)側の目的が相反するため、社内での意見対立も心理的な負荷となります。

さらに、朝の渋滞や悪天候による通行止め、急な車両故障といった突発トラブルが発生した際、すべての運行ルートの遅れを瞬時に再計算し、荷主への謝罪と代替ルートの指示を並行して行う緊迫感も負荷に拍車をかけます。

配車計画が「複雑なパズル」となりブラックボックス化する構造的背景

配車業務の難易度を高めているのは、計画作成プロセスが周囲から見えなくなる「ブラックボックス化」に起因しています。

配車を組む際、担当者は車両と荷物を紐付けるだけでなく、複数の制限条件を同時に処理しなければなりません。具体的には、前述した積載率や実車率を最大化しつつ、往路だけでなく復路における帰り荷をいかに確保し、無駄な空車回送を減らして1運行あたりの採算を合わせるかという複雑な計算が求められます。

これらを解くために、配車係は「どのドライバーがどのルートを得意としているか」「配送先の駐車スペースは大型車が入れるか」「荷卸しの待ち時間はどれくらいか」といった、デジタル化されていない無数の「暗黙知」に依存しています。この脳内の経験則に頼りすぎることで、計画作成プロセスが第三者には理解できないブラックボックスとなってしまいます。

例えば、ドライバー1人あたりの年間時間外労働が厳しく制限される中、これまでの「ドライバーの長時間労働に依存した配車」は通用しません。限られた労働時間内で積載率を維持しながら配送を回すという、難易度を増したパズルをベテランの脳内だけで解き続ける状況が、配車業務の効率化を阻む構造的な壁となっています。

配車業務に向いている人・向いていない人の適性チェックリスト

配車業務は、誰もが努力だけで乗り切れるほど単純な仕事ではありません。業務に必要なスキルや適性を以下の比較表に整理しました。

評価項目 配車係に向いている人の特徴 向いていない人の特徴
感情のコントロール力 ドライバーからの不満や荷主からの要求を「仕事」と割り切り、感情を引きずらない。 他人の感情に振り回されやすく、厳しい言葉を真に受けて深く悩んでしまう。
記憶力と空間認識力 数十台のトラックの位置情報や、個々の運行規制時間、荷役特性を瞬時に把握できる。 視覚的な配置や数字の管理が苦手で、情報が増えるとパニックを起こしやすい。
臨機応変な意思決定力 渋滞や車両トラブルが発生した際、優先順位を素早く判断し、即座に次の指示を出せる。 想定外の事態が起きるとフリーズしてしまい、決断を下すまでに時間がかかる。
交渉力と会話術 無理な要求に対して、相手のメリットを提示しながら、現実的な妥協点を引き出せる。 自分の主張を通すことだけに固執するか、逆に相手の言いなりになって過度な負荷を抱え込む。

配車業務におけるミスマッチは、担当者のメンタル不調だけでなく、配送遅延による信用失墜や、過酷な労働環境に嫌気がさしたドライバーの離職に直結します。上記の適性を客観的に評価した上での適正配置が、安定運行体制の第一歩となります。

ベテランが実践する「配車をスムーズに組むコツ」と実務テクニック

配車業務を円滑に進め、車両の稼働効率を高めるためには、個人の勘や経験だけに頼らないロジカルなルール作りが必要です。配車業務の効率化は、頭の中にある配車プロセスを可視化し、標準的なパターンとして落とし込むことにあります。

配送エリアのグループ化とルート・順序のパターン化ルール

配車を組む際、最も時間と労力がかかるのが、配送先の組み合わせとルート選定です。ベテランの配車係は、すべての配送先を毎回ゼロから組み立てるのではなく、あらかじめ「配送エリアのグループ化」と「運行順序のパターン化」を行うことで、配車計画の難易度を下げています。

具体的な手法として、まず配送エリアを幹線道路や高速道路のインターチェンジなどを基準に、3〜4つのブロックに固定化(エリア管理)します。例えば、1日あたり50件の配送を処理する拠点の場合、以下のような「エリアグループ化マトリクス」を作成し、事務所のホワイトボードや共有のスプレッドシートに掲示します。

エリア名 基準となる境界線・主要幹線 想定される主な納品先タイプ 最大対応車両数
東部ブロック 国道16号線の東側、川崎臨海部 大型商業施設のバックヤード 4t車:5台、2t車:2台
西部ブロック 国道246号線の南側、横浜市南部 現場配送、一般店舗 2t車:6台(小回り重視)
北部ブロック 東名高速・横浜町田IC以北 工業団地内のメーカー倉庫 10t車:3台、4t車:2台

このようにエリアをグループ化することで、新規の配送依頼が発生した際にも、どのルートに組み込むべきかが瞬時に判断でき、計画の属人化を防げます。さらに、配送の順序については、最も納品指定時間が厳しい「時間指定便」を起点とした「一筆書き」のルートを基本パターンとして登録しておきます。このルート設計時に、無駄な往復走行(バックトラック)を確実に排除することが、積載率の向上に直結します。

ここで重要なのは、運行管理者と配車係の役割分担を明確に意識した計画立案です。安全運行の管理や労務管理を法的に担保する運行管理者に対し、配車係は積載率や実車率といった収益性を追求します。計画段階でこの両者の役割が混同し、安全基準を満たさない無理なルートを組んでしまうと、現場の混乱と担当者のストレス増大を招きます。ルート選定においては、あらかじめ「1日の拘束時間は最大11時間まで、移動距離は200km以内」といった運行管理上の境界条件を配車ルールに組み込んでおく必要があります。こうした論理的なパズルを解くように複雑な条件を整理し、ドライバーの安全と収益性を両立できる人が、配車係として高い適性を備えていると言えます。

空車回送を減らし利益を最大化する「帰り荷」の効率的な確保術

どれほど往路の積載率を高めても、復路が空車のままでは車両の稼働効率は向上しません。ドライバーの労働時間管理が厳格化する中、限られた拘束時間内でいかに実車率を引き上げるかが、運送企業の利益を大きく左右します。そのためには、計画段階から「帰り荷」を効率的に組み込む技術が求められます。

ベテランの配車係は、空車回送を減らすために以下のような帰り荷確保のルールを実践しています。

  • 1. 近隣の同業者とのシャトルネットワークの構築
    自社だけで片道運行を埋めるのが難しい場合、特定の曜日に逆方向の荷物を持つ近隣の運送会社と協定を結びます。お互いの空車情報をあらかじめ共有しておくことで、突発的な求荷求車サイト頼みにならず、実車率を安定して80%以上に維持することが可能になります。
  • 2. 求荷求車プラットフォームへの事前登録と「車両スペック即答表」の整備
    求荷求車サービスを活用する際、荷降ろしの直前に帰り荷を探すのは非効率であり、価格交渉でも不利になります。ベテランは「運行日の前々日の午前中」までに、自車の空き予定(荷降ろし場所、時間、車種)をプラットフォームに登録します。さらに、自社車両の内寸、最大積載量、パワーゲートの有無などをまとめた一覧表を手元に置いておくことで、成約までのスピードが劇的に向上します。
  • 3. 帰り荷の「アプローチ限界ルール」の厳格化
    帰り荷を確保したいがために、往路の荷降ろし先から遠く離れた場所まで空車回送をしては、燃料費と労働時間を浪費するだけで本末転倒です。「帰り荷の積み地は、往路の荷降ろし先から半径30km以内、かつ移動時間1時間以内」という明確な境界線を設けることが、無理な配車による配送遅延やドライバーへの過度な負担を防ぐ有効な手立てとなります。

このように、配送エリアのルール化と、帰り荷を確保するための具体的な仕組み作りを行うことで、経験の浅い新人であっても迷わずに最適な配車を組むことが可能となり、組織全体の配車業務の効率化につながります。

属人化と長時間労働を解消する「配車業務の効率化」とDX推進ステップ

Excel・ホワイトボード管理が限界を迎える理由と配車システムのメリット

多くの物流現場、例えば保有車両30台から50台規模の一般貨物自動車運送事業者では、今なおホワイトボードやExcelを用いたアナログな配車管理が主流です。しかし、この手法は配車計画のブラックボックス化を招き、特定のベテラン担当者に業務が集中する温床となります。担当者が不在の際に配車状況が全く分からなくなるリスクや、急な集荷依頼への対応遅れは、すべてアナログ管理の限界から生じています。

また、安全管理を重視する運行管理者と、収益性を追求する配車係の役割分担を明確にすることも必要です。この境界線が曖昧なままアナログ管理を続けると、配車係は安全管理のサポートから車両のやり繰りまで多角的な業務に追われ、精神的な負荷が蓄積し、離職や長時間労働の常態化につながります。

配車システムを導入することで、これらの課題は以下のように解決されます。

管理項目 アナログ管理(Excel・ホワイトボード) デジタル管理(配車システム導入後)
情報の共有性 担当者の頭の中や手書きボードに依存し、ブラックボックス化しやすい クラウド上で配車状況が可視化され、誰でもリアルタイムに確認可能
配車計画の作成時間 ベテランの経験と勘に頼り、作成に毎日2〜3時間以上を要する 自動計算により、制約条件(荷受時間や車高制限など)を加味した計画が数分で完了
実車率・積載率の管理 運行ごとの数値を集計できず、感覚的な配車になりがち データを自動集計し、効率的な帰り荷の組み合わせを自動でシミュレーション

デジタルへの移行は、単なる作業時間の削減にとどまらず、配車業務自体の属人化を解消し、誰でも標準的な精度で配車を組める環境を整えるための必須ステップです。

現場の反発を防ぎ配車業務をデジタル化する「標準化3ステップ」

配車システムの導入にあたり、最も大きな障害となるのが現場からの反発です。「長年の勘と経験に基づく配車のほうが融通が利く」「システムが提案するルートは実態に合っていない」といった抵抗に遭い、導入後にシステムが形骸化するケースは少なくありません。

配車業務を円滑にデジタル化し、組織全体で配車業務の効率化を達成するためには、以下の「標準化3ステップ」に沿って進めることが実務上極めて有効です。

ステップ1:暗黙知(配車ルール)の棚卸し

まずは、ベテラン配車係が頭の中で処理している「配車の条件」をすべて書き出し、言語化します。例えば、「A工場の搬入口は4トントラックまでしか進入できない」「B荷主の荷物は水濡れ厳禁のためウイング車を優先する」といった、システムが自動計算する上で前提となる制約条件を漏れなく洗い出します。この棚卸しを行うことで、ベテランが無意識に行っていた配車ノウハウが組織の共有データへと変わります。

ステップ2:特定のルート・車両群でのスモールスタート

一斉にすべての配車をシステムに移行するのではなく、まずは限定的な範囲から運用を開始します。例えば、毎日同じルートを走る「定期便の5台」だけを対象とし、2週間から1ヶ月程度テスト運用を行います。この期間中に、現場から「実際の走行ルートと異なる」「荷待ち時間が考慮されていない」といったフィードバックを吸い上げ、システムのパラメータを微調整します。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の不信感を取り除きます。

ステップ3:現場(ドライバー・配車係)への教育と役割の再定義

システムが実用的な計画を出せるようになった段階で、操作教育を行います。配車係に対しては「システムが提示した計画を微調整する役割」であることを説明し、すべてを一から手作業で組む必要がないことを理解させます。また、配車に適性のある人材が持つ「交渉力」や「トラブル対応力」といった、人間ならではの強みを活かす業務へとシフトさせます。ドライバーに対しては、スマートフォンを支給し、デジタル化された運行指示書を即座に確認・受領できる体制を構築します。

労働時間規制をクリアするための労務管理システム連携

物流業界における最大の懸念である2024年問題(トラックドライバーの時間外労働年間960時間上限規制)をクリアし、さらに今後進むであろう厳格な労働環境規制に対応するためには、配車計画と実労働時間のデータをリアルタイムに連動させる仕組みが不可欠です。

どれだけ配車係が効率的なルートを組んでも、実際の運行で長時間の荷待ちが発生し、ドライバーの拘束時間が上限を超えてしまっては法令違反となります。これを防ぐためには、配車システムとデジタルタコグラフ(デジタコ)や労務管理システムを連携させる必要があります。

  • 拘束時間のシミュレーション連携:配車係が翌日の配車計画を確定した時点で、各ドライバーの「計画上の想定拘束時間」が算出され、労務管理システムに送られます。累計労働時間と照らし合わせ、上限時間を超過するリスクがあるドライバーには、システム上で警告が表示されます。
  • リアルタイムの運行実績の突合:運行中、デジタコから送信される現在位置や作業ステータス(走行、荷役、待機など)を監視します。予定より荷待ち時間が1時間を超えた場合、配車係の画面に警告が表示され、遅延の連絡や、別車両でのフォローといったリカバリー措置を迅速に行えます。
  • 実績データのフィードバックによる計画精度の向上:日々蓄積される実車率や各荷主先での平均待機時間データを分析し、次月の配車計画の基礎データとして反映させます。これにより、実態に即した無理のない配車計画が自動的に作成されるようになり、労務環境を健全に保ちながら稼働率を維持することができます。

配車業務のデジタル化は、単なる作業の省力化にとどまらず、法令を遵守しながら企業の収益性を最大化するための、強固な経営基盤を構築するプロセスそのものです。

配車係の労働環境を抜本的に改善するために「企業が取るべき組織的アクション」

デジタルツールを活用した効率化や配車ノウハウは、現場の運用力があって初めて機能します。配車業務が個人に依存し、実務がブラックボックス化した状態のままでは、どれほど優れたシステムを導入しても、配車係の心理的負担を根本から取り除くことはできません。労働時間の制約に対応し、持続可能な輸送体制を築くためには、経営層が主導する組織的な改革が必要です。

「1人担当制」を脱却し、負荷と情報を分散する「チーム制配車」の構築

多くの物流現場では、配車業務が特定のベテラン社員に一任されています。法律上の安全運行や労務管理を担う運行管理者に対し、配車係は荷主との調整や車両手配、帰り荷の確保といった実務と利益創出を担います。この異なる役割を定義し、属人的な配車業務をチーム制へ移行するためのロードマップを以下に示します。

フェーズ 具体的な実施内容 期待される効果
1. 業務プロセスの可視化 配車判断の基準(荷主ごとの優先度、ルート設定ルールなど)を言語化し、デジタル上で共有します。 「担当者しか状況がわからない」というブラックボックス化を解消します。
2. 役割の分担と標準化 配車計画の策定、突発的な依頼への対応、運行中のトラブル調整といったタスクを分解し、複数人で分担できる体制を整えます。 1人の配車係にかかる精神的・時間的な負担を分散し、過度な労働を防ぎます。
3. 相互バックアップ体制の運用 定期的な担当ルートのローテーションを設定し、誰かが欠勤しても別のメンバーがカバーできる体制を確立します。 休日対応や夜間対応の偏りが減少し、配車係の心理的安全性が向上します。

デジタルデータを共通言語にした配車係とドライバーの信頼関係構築

配車業務を円滑に進める上で、適性の高い配車係の特徴として「高いコミュニケーション能力」が挙げられます。しかし、個人の性格や人当たりの良さに依存する交渉は、現場に不要なストレスを与えがちです。感情論による対立を防ぎ、帰り荷の確保や実車率向上の協力を得るためには、客観的なデジタルデータを共通言語としたガイドラインの策定が求められます。

  • 指示と報告はテキストデータで一元化する: 口頭での「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、運行指示や変更事項はシステム上で記録し、ドライバーの端末へ直接送信する運用を徹底します。
  • 積載率と帰り荷の獲得状況を共有する: 帰路の空車回送を減らすための帰り荷の獲得や、積載率のデータを可視化し、なぜそのルートや案件を依頼しているのかという理由をデータとともに説明します。
  • 運行実態を把握し、無理のない計画を担保する: GPSによる位置情報や到着時間を記録・確認し、運行計画と実態のズレを定量的に評価します。遅延の原因が道路混雑や荷待ち時間にあることを配車係が把握できれば、ドライバーを責めることなく、荷主への改善交渉にデータを活用できます。

システムが提示する数字と客観的事実に基づいて配車判断を下す体制を作ることで、配車係とドライバーの間に強固な信頼関係が生まれます。まずは自社の配車体制を点検し、業務プロセスの可視化から着手することが、持続可能な運送事業の確立につながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 「配車係」と「運行管理者」の違いは何ですか?

A. 配車係は、荷物と車両・ドライバーを最適に組み合わせて利益を最大化する役割を担います。一方、運行管理者は国家資格を保有し、ドライバーの安全確保や法令遵守などの安全運行を監督する責任者です。つまり、配車係は企業の収益をコントロールし、運行管理者は安全や労働環境を守るという、役割や資格、責任における明確な違いがあります。

Q. 配車係の仕事が「きつい」「ストレスが溜まる」と言われる理由は何ですか?

A. 主な要因は、荷主からの要望とドライバーの労務状況の間で「板挟み」になる精神的ストレスや、事故や渋滞などの突発トラブルへの即座な対応が必要となる点です。また、積載量やルートを考慮した配車計画は複雑なパズルのようであり、業務がベテランのノウハウに依存してブラックボックス化しやすいことも負担を大きくしています。

Q. 配車業務をスムーズに進め、効率化するためのコツは何ですか?

A. まずは配送エリアのグループ化やルートのパターン化を行い、空車回送を減らす「帰り荷」の確保を徹底することです。さらに実務を効率化するには、Excelやホワイトボードによる管理から配車システムへと移行し、配車業務をデジタル化・標準化することが有効です。これにより属人化が解消され、法規制をクリアする労務管理も可能になります。