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マテハン・ロボット 2026年10月9日

DHLサプライチェーンが柏に自動倉庫導入|ロボ60台で5年分の物量増に対応

DHLサプライチェーンが柏に自動倉庫導入|ロボ60台で5年分の物量増に対応

DHLサプライチェーンジャパンは2026年10月8日、アパレル大手ベイクルーズの物流を担う柏沼南ロジスティクスセンター(千葉県柏市)へASRS(自動倉庫)を導入したと発表した。約60台の搬送ロボットが約1万800個の専用ビンを自律搬送する体制を整え、拠点を増やすことなく今後約5年間の事業拡大に対応可能な処理能力を確保した。

柏沼南ロジスティクスセンターにおける自動化推進の軌跡と導入スペック

ベイクルーズとDHLサプライチェーンジャパンは、店舗販売とECの双方を支える物流基盤の高度化を段階的に進めてきた。今回のASRS導入は、既存拠点の保管効率と作業スループットをさらに引き上げるための設備投資である。

10年におよぶ物流集約と自動化投資のタイムライン

両社は2016年に首都圏に分散していた複数拠点を柏沼南へ集約して以降、デジタル技術とマテハン機器を段階的に導入してきた。

年月 実施内容 オペレーションへの影響と目的
2016年7月 首都圏4拠点を柏沼南へ集約 店舗向け3拠点とEC向け1拠点を統合し一元管理を実現
2020年12月 RFID技術の本格導入 入出荷データのリアルタイム取得による棚卸効率化と検品ミス撲滅
2024年1月 自動梱包ラインの導入 物量急増に対応するためEC出荷プロセスの機械化と省人化を推進
2026年10月 ASRS(自動倉庫)の本格稼働 GTP型ピッキング体制を構築し保管効率の向上と定点作業化を達成

2016年以前は、店舗向けオペレーションが東京辰巳・埼玉戸田・神奈川高津の3拠点に分かれ、EC向けは東京新砂に置かれていた。これらを野村不動産が開発した「Landport柏沼南Ⅰ」へ集約したことで、店舗とECの在庫を一括管理するオムニチャネル基盤の土台を築いた経緯がある。

導入されたASRSの設備仕様とGTPオペレーション

今回稼働したASRSは、商品の入った専用ビンを作業者の手元まで自動搬送する「Goods-to-Person(GTP)」方式を採用している。

項目 詳細仕様
対象施設 柏沼南ロジスティクスセンター(千葉県柏市)
保管容器 専用ビン 約10,800個
搬送ロボット 自律型ロボット 約60台
対象業務 店舗向け(BtoB)およびEC向け(BtoC)の入出庫・保管・仕分け
改善前後の構造 従来の中量棚(空間ロス大)から立体高密度保管ラックへ移行

入庫作業では、作業エリアに届いた空ビンへ商品を投入すると、ロボットが保管エリアの高層ラックへ自動格納する。出荷時には、オーダー情報に基づいて必要な商品が入ったビンを作業ステーションへ搬送し、作業員はその場から動かずに商品の取り出しと仕分けを完了させる。

従来の中量棚を用いた運用では、天井付近の上部空間を保管スペースとして使い切れない制約があった。ASRSの導入により、垂直方向のデッドスペースを解消し、同一フロア面積あたりの保管容量を大幅に引き上げた。

荷主と3PL双方が示す中長期方針

今回の設備稼働に際し、双方の責任者は物流インフラの拡張方針について以下のように述べている。

DHLサプライチェーンジャパン株式会社 代表取締役社長 ジェローム・ジレ 氏:

当社では、お客様のビジネス成長を支えるため、お客様とともに生産性とサービス品質の向上につながる革新的ソリューションの導入を継続的に進めています。今回のASRS導入は、ベイクルーズ様との長年のパートナーシップとイノベーションへの強い想いにより実現したものであり、ベイクルーズ様の物流基盤を一層強化することで、今後の事業成長に貢献するものと考えています。

株式会社ベイクルーズ:

私たちは、小売りを生業とする上で物流は生命線であると考えています。ベイクルーズでは、事業成長に合わせて倉庫拠点を増やすのではなく、「最小のスペースで最大の能力を発揮できる物流センター」の実現を目指してきました。現時点の事業規模においてもBtoB・BtoC両方の物流機能を1拠点で運営できる能力をもった物流センターは業界内でも稀有な存在です。しかし、今回のASRS導入により、保管効率と生産性をさらに向上させるとともに、拠点を増設することなく事業成長に応じて柔軟に能力を拡張できる物流基盤を構築しました。その結果、現在から約5年後の成長にも対応可能な体制の実現に目途が立ちました。また、労働力不足という社会課題への対応と持続可能な物流運営の実現にも大きく前進しています。今後もDHLとの強固なパートナーシップのもと、物流の進化にとどまらず、「無駄にモノを作らない、持たない、運ばない」サプライチェーンの実現を目指し、お客様への提供価値向上に取り組んでまいります。

参考記事: 自動倉庫の仕組みと種類を解説|導入メリットや失敗しない選定基準まで

参考記事: アパレル物流とは?一般物流との違いや多SKU・季節変動を乗り切る実務ノウハウ

アパレル流通と倉庫現場に生じる具体的な影響

柏沼南での自動倉庫稼働は、3PL事業者、小売荷主、現場作業員の3者に対して業務構造の変化をもたらす。

3PL事業者:中長期ロードマップを共有した継続的投資モデルへの転換

従来の3PL契約では、2〜3年の短期契約を前提に、既存設備と人手を中心とした運用設計を行うケースが一般的であった。契約更新の不確実性が高い状況では、数億円規模の自動化投資に対する減価償却リスクを事業者が負いきれないためである。

今回の事例は、2016年の集約から2020年のRFID、2024年の自動梱包ライン、2026年のASRSと、荷主と3PLが中長期の課題解決スケジュールを共有したうえで段階的な投資を実行している。3PL事業者にとっては、荷主の成長予測に合わせた設備改修を継続的に受託することで、長期的な取引継続と受託単価の安定化を両立させる契機となる。

参考記事: 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは?導入メリットと失敗しない選定ポイントを解説

小売事業者:拠点増設を回避した固定費抑制とオムニチャネル運用の効率化

多ブランド・多SKUを展開するアパレル企業が物量増に直面した際、新たな倉庫拠点を賃貸して床面積を広げる手法を取ると、拠点間輸送費、多重在庫、各拠点の敷金・賃料といった固定費が膨らむ課題が生じる。

ベイクルーズのように「最小スペースで最大能力を発揮する」方針を採り、既存拠点の垂直方向への保管密度向上とGTPによる出荷能力増強を図ることで、向こう5年間の拠点増設を回避できる。BtoBとBtoCの在庫を1拠点で一元管理し続ける体制は、オムニチャネルにおける在庫の引き当て効率を高め、欠品による販売機会損失の低減に直結する。

参考記事: アンドエスティ・ロジスティクスが出荷生産性196%達成で示す現場刷新の鍵

倉庫内作業員:庫内歩行の廃止と定点オペレーションへの移行

従来のPerson-to-Goods型ピッキングでは、作業員が伝票やハンディターミナルを持ち、広大な保管エリアを歩き回って商品をピックしていた。アパレルの大規模倉庫では1日あたりの歩行距離が10キロメートルを超えることもあり、身体的負荷の高さが作業員の定着率に悪影響を与えていた。

約60台の搬送ロボットが作業エリアへビンを運ぶGTP体制へ移行したことで、作業員の歩行工数はゼロになる。作業員は空調管理されたステーション内で画面指示に従ってピックと仕分けを行う定点作業に特化できるため、身体疲労が軽減され、習熟期間の長さに依存しない作業精度の均一化が進む。

LogiShiftの視点:空間密度の垂直統合が物流拠点の寿命を延ばす

物流現場の拡張戦略において、従来の主流であった「床面積の拡大(水平展開)」から「自動化による空間・作業密度の極大化(垂直統合)」へのシフトが鮮明になっている。

一般的に物流センターの設計キャパシティは稼働開始から数年で逼迫し、荷主企業は追加の倉庫探しと移転費用に追われやすい。しかし、柏沼南ロジスティクスセンターの取り組みは、初期設計の段階で拠点を広げるのではなく、業務プロセスごとのボトルネックを特定し、RFID、自動梱包、ASRSを順次導入することで同一建屋の処理能力を延命させている。

約10,800個のビンを60台のロボットで制御するASRSは、床面積を変えずに高さを活かした高密度保管を実現する。荷主が成長するたびに拠点を分散させるのではなく、3PLと協調して単位面積あたりの処理密度を高める手法は、地価と建設コストが高止まりする首都圏において、最も賃料効率の高いサプライチェーン防衛策といえる。

まとめ

物流拠点の処理能力増強を検討する企業が、明日から自社のオペレーションで見直すべき着眼点は以下の3点である。

  1. 保管空間における垂直方向のデッドスペースの棚卸し

現在使用している棚の上部空間や通路スペースの容積率を測定し、水平方向の拡張(坪数の追加)を検討する前に、マテハン導入による高密度保管の余地を定量化すること。

  1. ピッキング工程における歩行時間比率の算出

作業員の総作業時間のうち、実ピック時間と移動(歩行)時間が占める割合を計測し、GTP型自動倉庫や搬送ロボットの導入によって削減可能な工数を可視化すること。

  1. 3PLプロバイダーとの中長期投資ロードマップの策定

単年の委託契約にとどまらず、今後3〜5年の事業成長予測に基づき、設備投資の減価償却と生産性向上効果を荷主・事業者の双方が享受できる契約形態を協議すること。


出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: DHLサプライチェーン プレスリリース
出典: LOGISTICS TODAY

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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