改正物流効率化法に基づく中長期計画の策定において、他社の削減目標値や投資規模、物流統括管理者(CLO)の権限範囲が分からず、記載内容の妥当性を判断できない事態が生じています。LOGISTICS TODAYと船井総研サプライチェーンコンサルティングが実施する特定荷主100社規模の緊急実態調査は、荷待ち・荷役削減目標やDX投資額の相場を可視化し、自社計画の客観的なベンチマークを提供します。
改正物流効率化法における中長期計画と100社調査の基礎知識
2026年4月に本格施行された改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)では、一定規模以上の荷主企業に対して物流統括管理者(CLO)の選任と「中長期計画」の策定・提出が義務付けられました。本調査は、特定荷主が直面する計画策定の実態と数値水準を明らかにすることを目的としています。
特定荷主の指定基準と法定義務の概要
改正物流効率化法において、前年度の取扱貨物重量(トラック輸送分)が年間9万トン以上となる荷主は「特定荷主」として指定されます。自社製品を出荷する「第一種特定荷主(発荷主)」と原材料や商品を仕入れる「第二種特定荷主(着荷主)」の双方が対象となり、全国で約3,200社(事業者実数で約2,100社)が該当します。これは国内トラック輸送貨物量の約5割を占める規模です。
指定を受けた特定荷主には、以下の法的義務が課されます。
| 区分 | 指定要件 | 主な法的義務 | 義務違反時のペナルティ |
|---|---|---|---|
| 第一種特定荷主 | 年間取扱貨物量9万トン以上の発荷主 | 役員級CLOの選任、中長期計画の提出、年次定期報告 | 勧告・是正命令。命令違反は100万円以下の罰金および社名公表 |
| 第二種特定荷主 | 年間取扱貨物量9万トン以上の着荷主 | 役員級CLOの選任、中長期計画の提出、年次定期報告 | 勧告・是正命令。命令違反は100万円以下の罰金および社名公表 |
| 特定連鎖化事業者 | チェーン全体の取扱貨物量9万トン以上 | 役員級CLOの選任、中長期計画の提出、年次定期報告 | 勧告・是正命令。命令違反は100万円以下の罰金および社名公表 |
参考記事: 特定荷主とは?改正物効法・省エネ法の違いと2026年施行に向けた実務対応策
中長期計画に盛り込むべき必須記載項目
特定荷主が提出する中長期計画書は、単なるスローガンではなく、定量的な改善目標とそれを達成するための具体的な施策、年次スケジュール、投資計画を網羅した実行計画書です。
主務官庁へ提出する計画書には、以下の項目の記載が求められます。
- 荷待ち時間・荷役時間の削減目標: トラック1運行あたりの待機時間および荷役作業時間を原則2時間以内(将来的には1時間以内)に短縮するための段階的目標値。
- 積載効率の向上施策: 車両の容積・重量に対する積載率の目標設定、発注ロットの適正化や異業種・同業他社との共同輸送の導入計画。
- 商慣習の是正と取引条件の改定: 納品リードタイムの延長、出荷締め時間の前倒し、検品作業の簡素化や付帯作業の費用負担見直し。
- ハード・ソフト両面の設備投資計画: バース予約受付システム、WMS(倉庫管理システム)、パレタイズ設備、自動仕分け機などの導入費用と導入スケジュール。
- CLOの統括体制と組織連携: CLO直下のサプライチェーン協議会の設置、調達・製造・営業部門への指示権限の範囲と運用規程。
参考記事: 物流総括管理者設置義務とは?2026年施行に向けた選任基準と企業が備えるべき実務対策
LOGISTICS TODAYと船井総研SCによる緊急共同調査の概要
各社が中長期計画の作成を進める中で、目標とする数値水準や投資規模、他社の組織設計に関する客観的データが不足しています。この課題に対応するため、物流専門メディアのLOGISTICS TODAYと船井総研サプライチェーンコンサルティングは、特定荷主100社規模を対象とした緊急共同実態調査を実施しました。
本調査の骨子および公表イベントの詳細は以下の通りです。
| 項目 | 内容・仕様 |
|---|---|
| 調査対象 | 改正物流効率化法に基づく特定荷主企業(約100社) |
| 主催・共同調査 | LOGISTICS TODAY、船井総研サプライチェーンコンサルティング |
| 発表イベント名 | 【緊急共同調査 結果速報】特定荷主100社調査で暴く中長期計画の実態 |
| 開催日時・形式 | 2026年11月26日(木)14:00〜16:20/ハイブリッド形式(ベルサール新宿グランド・YouTubeライブ配信) |
| 主な登壇者 | 日清食品 専務取締役CLO 深井雅裕氏、船井総研SC 執行役員MD 渡邉庸介氏、LOGISTICS TODAY 代表 赤澤裕介氏 |
| 参加者特典 | 自社数値を書き込み他社との立ち位置を判定する「自社計画ベンチマークシート」 |
本調査は、特定荷主各社が策定した削減数値や投資額の分布、CLOへ移譲された決裁権限の境界線を定量化し、自社計画の実効性を客観的に評価する基準を提供します。
中長期計画の客観的指標が今求められる背景
特定荷主制度の本格施行を受け、各企業は主務官庁への計画書提出を迫られています。しかし、提出形式を整えることと、サプライチェーンの運用を実際に改革することの間には乖離が存在します。
制度施行の時系列と各社が直面する日程
改正物流効率化法の公布から計画提出に至るプロセスは、以下のタイムラインで進行しています。
| 年月 | 制度上の動きと荷主企業の義務 |
|---|---|
| 2024年5月 | 改正物流効率化法および関連法が公布 |
| 2024年11月 | 国交省・経産省・農水省が基本方針を策定、取扱貨物量年間9万トンの基準を公表 |
| 2025年4月 | 全ての荷主・物流事業者に対し荷待ち短縮や積載率向上の努力義務が施行 |
| 2026年4月 | 改正法が本格施行。年間9万トン以上の特定荷主に対して役員級CLOの選任が義務化 |
| 2026年9月 | LOGISTICS TODAYと船井総研SCが特定荷主100社を対象とした共同実態調査を開始 |
| 2026年10月末 | 指定を受けた特定荷主約3,200社による中長期計画書の初回到達・電子申請期限 |
| 2026年11月 | 共同実態調査の速報データがセミナーにて初公開 |
2026年10月末の計画提出期限を通過した後、企業は記載した年次計画を即座に実行へ移す必要があります。提出した数値が実態と乖離していた場合、次年度以降の年次報告において進捗未達が露呈し、行政指導の対象となるリスクを抱えています。
参考記事: 改正物流効率化法で2000人超のCLO誕生|特定荷主の選任義務と罰則
業界調査が示す「計画準備未完了」の実態
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が2026年6月に公表した「物流2024年問題の影響と現状に係る実態調査」(回答企業数157〜299社)によると、特定荷主・特定連鎖化事業者のうちCLOを選任し中長期計画策定に向けた準備が整っている企業は31.2%にとどまりました。残る約7割の企業は、計画策定の準備が遅延しているか未着手の状態でした。
同調査におけるCLOの職位構成は以下の通りです。
- 役員級(兼務): 47.4%
- 役員級(専任): 6.2%
- 部長級以下: 17.1%
- その他・検討中: 29.3%
部長級以下を起用している、あるいは起用予定の企業群では、35.4%が中長期計画の策定準備にすら着手できていませんでした。全社的な権限を持たない担当部署が個社努力のみで計画をまとめようとした結果、営業部門や製造部門との調整が進まず、計画書が形式的な数字の羅列にとどまる傾向が確認されています。
日清食品CLOが指摘する「形骸化」の懸念
本調査セミナーに登壇する日清食品の専務取締役CLO・深井雅裕氏は、LOGISTICS TODAYのインタビューにおいて、「形式的なCLOが3,200人並んでも意味がない」と指摘しています。法律の要請に応じて役員をCLOに任命し、前年踏襲の目標値を書類に記入して提出するだけでは、トラックドライバーの拘束時間削減や実質的な積載効率向上には直結しません。
CLOは単なる役職名ではなく、調達、製造、営業、物流の各部門を結びつける組織機能です。他社が実際にどの程度の荷待ち削減を約束し、何億円規模のバース管理システムやマテハン投資を織り込み、営業ルールをどこまで改定しているのかという業界標準の数値がなければ、経営陣に対して実効性のある予算配分や組織改編を迫ることができません。
参考記事: CLO必見!2026年10月末の計画提出へ向けた日清食品の実践策
100社ベンチマーク指標を活用する実務上のメリット
特定荷主100社の生データに基づくベンチマーク指標と「自社計画ベンチマークシート」を活用することで、計画の形骸化を防ぎ、経営投資としての物流改革へシフトさせることが可能になります。
自社計画の立ち位置と妥当性の客観判定
中長期計画を策定する現場において、「荷待ち時間を3年間で何%削減すれば行政基準を満たすのか」「共同輸送やパレット標準化にどれだけの投資予算を計上するのが一般的なのか」という判断基準はこれまで存在しませんでした。
100社調査の速報データと自社数値を照らし合わせることで、以下の判定が可能になります。
- 削減目標値の乖離確認: 自社の荷待ち・荷役時間削減目標(例:年間15%減)が、同業種・同規模企業の平均値(例:上位25%水準は年間25%減)と比較して消極的すぎないかを検証。
- 投資水準の妥当性評価: バース予約受付システムの導入費用、WMS更新費用、自動化機器投資の相場を把握し、自社の予算措置が過小投資になっていないかを判定。
- CLO権限の適用範囲の確認: 他社CLOが持つ「営業納品条件の変更権限」や「生産出荷計画の調整権限」の付与割合を把握し、自社のガバナンス体制の不足を補正。
行政監査・定期報告への耐性強化
主務官庁(国交省・経産省・農水省)は、提出された中長期計画書の数値と、毎年度提出される定期報告書の乖離を厳格に照合します。
| 評価項目 | 形式的な提出計画のリスク | ベンチマーク活用計画の有効性 |
|---|---|---|
| 目標設定根拠 | 「前年比1%削減」などの根拠薄弱な目標は是正指導の対象 | 業界標準データに基づき、拠点別・工程別のボトルネックを数値化して設定 |
| 投資の裏付け | 予算措置のない計画は未達時の改善命令リスクが高い | ソフトウェア導入やハード設備投資の相場を織り込み、予算承認を取得 |
| 組織体制の記載 | 物流部門単体の記載では営業起因の課題解決を疑われる | CLOが営業・製造部門を指揮する権限規程を明記し、全社的な実効性を担保 |
他社水準を把握した上で合理的な根拠を伴う計画を作成していれば、年次報告での進捗管理が容易になり、行政指導や社名公表のリスクを回避できます。
荷主選定競争(選ばれる荷主)における優位性確立
トラック運送事業者の労働時間規制が強化された環境下では、待機時間が長く附帯作業を強いる荷主は運送委託を拒絶される傾向にあります。
他社水準以上の荷待ち削減(2時間ルールの確実な達成)や、荷役内製化、パレタイズ化を中長期計画に明記して実行することで、運送事業者に対する輸送枠の確保が容易になります。運送事業者との運賃交渉や運行枠確保において、計画の実効性が競争優位の源泉となります。
参考記事: [改正物流効率化法で年9万トン荷主にCLO義務化|営業ルールの改定権限を付与](https://logishift.net/2026/10/15/post-9725/)
調査結果を自社計画と現場改善へ落とし込む5つのステップ
100社調査から得られるベンチマークデータを自社のオペレーションと経営計画へ反映させるには、以下の段階的な手順を踏む必要があります。
ステップ1:現状の拘束時間と荷役作業の全数把握
中長期計画の数値目標を確定させる前提として、自社拠点の入退場時刻、荷待ち時間、荷役時間を正確に測定します。
手書きの日報管理ではなく、バース予約受付システムの入退場ログやトラックドライバーへのヒアリングシートを活用し、以下のデータを拠点別に算出します。
- 車両待機時間(受付からバース着車までの時間)
- 荷役作業時間(積み込み・積み降ろしにかかる実作業時間)
- 附帯作業時間(検品、仕分け、ラベル貼り、段ボールの積み替えなど)
合計時間が「2時間」を超過している拠点を特定し、超過原因が発注ロットにあるのか、検品プロセスの遅延にあるのかを分類します。
ステップ2:他社データとのギャップ分析とベンチマークシート照合
100社調査の結果をもとに配布される「自社計画ベンチマークシート」を用い、自社の現状値および目標値を業界標準と比較します。
【ベンチマーク照合によるギャップ分析の構造】
┌───────────────────────────────────────────┐
│ 100社調査の速報データ(業界中央値・上位基準) │
│ ・平均荷待ち時間削減率: 年率 ○○% │
│ ・DX・マテハン投資予算額: 売上比 ○○% / ○○千万円 │
│ ・CLOの権限範囲: 営業ルールの変更指示権(付与率 ○○%) │
└─────────────────────┬─────────────────────┘
│ 照合・ギャップ判定
▼
┌───────────────────────────────────────────┐
│ 自社の策定計画値 │
│ ・目標値が業界平均を下回っていないか │
│ ・投資予算がツールの実勢価格を満たしているか │
│ ・CLOが営業条件改定を命じられる権限規程があるか │
└───────────────────────────────────────────┘
ギャップが著しい項目については、計画の修正案を作成します。
ステップ3:CLOへの権限集約と社内規程の改定
中長期計画を実行に移すため、CLOの職責を組織規程に明文化します。CLOが物流部門長にとどまっている企業では、取締役会決議を経て以下の権限をCLOに付与します。
- 取引条件改定権: 納品リードタイム(発注から納品までの日数)の翌日配送から中1日・中2日配送への変更、発注締め時間変更の決定権。
- 生産・出荷指示権: 工場の出荷計画平準化、曜日別の出荷ピークカットに向けた在庫配置変更の指示権。
- 調達ロット指定権: 購買部門に対する原材料のパレット納品指定および入荷スロット分散の指示権。
CLOの下に調達、製造、営業、IT、物流の各部門長で構成される「サプライチェーン推進会議」を月次で設置し、計画の進捗を管理します。
ステップ4:優先投資領域の選定と費用対効果の算出
中長期計画に記載する投資計画について、削減効果と投資回収期間を精査します。
| 投資対象 | 導入効果 | 解決される課題 | 主な費用項目 |
|---|---|---|---|
| バース予約受付システム | 入場待機時間の平準化、待機時間50%削減 | 特定時間帯のトラック集中、路上待機 | クラウド月額利用料、現場タブレット端末代 |
| パレット化・ASNデータ連携 | 荷役時間の大幅短縮、検品作業のレス化 | 手積み・手降ろし作業、ドライバーの身体的負荷 | パレットレンタル費用、EDI/ASN改修費 |
| 自動仕分け・搬送機器 | 倉庫内荷揃え作業の短縮、出荷スピード向上 | 出荷前バース滞留、作業員不足 | マテハン機器リース料、据付工事費 |
100社調査の相場データを参照し、自社の物流規模に応じた過不足のない投資額を算出します。
ステップ5:年次進捗報告体制とPDCAサイクルの構築
中長期計画の提出後は、毎年度の進捗実績を主務官庁へ報告する義務が生じます。
計画達成に向けて、四半期ごとに主要拠点の荷待ち時間・積載率の実績値を集計し、CLOへ報告する運用を定着させます。未達の拠点に対しては、CLOが直接、営業部門の納品条件見直しや物流事業者の配車見直しを指示する是正フローを確立します。
中長期計画を実効性ある戦略へ進化させるための次のアクション
特定荷主100社を対象とした実態調査は、法改正に伴う書類作成にとどまっていた中長期計画を、企業の持続性を高めるサプライチェーン改革へと発展させるための客観データを提供します。計画の提出期限を通過した企業においても、自社の数値目標や投資水準が他社と比べて適切であったかの事後検証は不可欠です。
自社の計画が「単なる書類提出」で終わっている懸念がある場合、まずは自社拠点の荷待ち・荷役時間の実績ログを再集計し、CLOの権限範囲が社内規程上で明確化されているかを確認してください。その上で、公開される業界標準データを照合し、必要に応じて取締役会での投資計画の再審議や、年次報告に向けた施策の追加修正を進めることが求められます。



