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物流DX・トレンド 2026年10月27日

伊藤ハム米久ホールディングスが27年秋に可視化基盤稼働|共同輸配送を具体化

伊藤ハム米久ホールディングスが27年秋に可視化基盤稼働|共同輸配送を具体化

伊藤ハム米久ホールディングスとフューチャーアーキテクトは2026年10月27日、輸配送データの可視化と分析基盤の構築を通じて輸配送効率化と共同輸配送を目指す「物流変革プロジェクト」の推進を発表しました。本プロジェクトでは2026年9月に構築を開始した輸配送可視化基盤を2027年秋に本稼働させ、積載率の向上や荷待ち・荷役時間の短縮に取り組みます。

伊藤ハム米久HDが推進する輸配送可視化基盤の概要と中長期計画

伊藤ハム米久ホールディングス(HD)とフューチャーアーキテクトが着手した「物流変革プロジェクト」は、改正物流効率化法への対応とサプライチェーン全体の輸配送最適化を目的とした取り組みです。

プロジェクト発足の経緯とタイムライン

伊藤ハム米久HDとフューチャーアーキテクトは、2025年から中長期的な物流戦略の共同検討を開始していました。これまでに生産から供給に至る物流ネットワークの実績データを分析し、積載率や物流コスト構造などの課題を抽出してきました。

2026年4月に改正物流効率化法が全面施行されたことを受け、同社は年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主として、積載効率向上や荷待ち・荷役時間の短縮に関する中長期計画を策定し、2026年10月に農林水産大臣へ提出しました。今回のプロジェクトは、提出した中長期計画を着実に実行するためのシステム基盤整備に位置付けられています。

年月 実施事項・制度上の動き
2024年4月 トラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)が適用開始
2024年10月 伊藤ハム米久HDなどチルド食品メーカー9社が「チルド物流研究会」を発足
2025年 伊藤ハム米久HDとフューチャーアーキテクトが物流戦略の共同検討を開始
2026年4月 改正物流効率化法が全面施行(特定荷主の指定、CLO選任義務化)
2026年9月 輸配送可視化基盤のシステム設計・構築作業に着手
2026年10月 改正物流効率化法に基づく中長期計画を農林水産大臣へ提出
2026年10月27日 両社が「物流変革プロジェクト」の本格始動を公表
2027年秋(予定) 輸配送可視化基盤の本稼働、業界関係者とのデータ連携・共同輸配送の本格化

参考記事: 国土交通省など3省が特定荷主の中長期計画作成要点を公開|10月末提出に対応

輸配送可視化基盤が管理する指標とシステム要件

プロジェクトの中心となる「輸配送可視化基盤」は、これまで拠点ごとや事業部門ごとに個別に集計されていたデータを統合管理するシステムです。2026年9月に構築を開始し、2027年秋の本稼働を予定しています。

本基盤で一元管理される主な要素は以下の通りです。

  • 車両ごとの積載率(重量・容積ベース)の実績推移
  • 運行ルートおよび拠点間輸送の運行実績
  • 運行ごとの荷待ち時間および荷役作業時間
  • 運送区間・温度帯ごとの物流コスト構造

これらのデータを集約してKPI管理を高度化することで、積載率の低い運行ルートの統合、配送頻度や納品スケジュールの見直し、荷待ち・荷役時間の削減といった改善施策の進捗を定量的に追跡します。伊藤ハム米久HDは、この基盤運用を通じて中期経営計画に掲げる「基礎収益力の底上げ」と「経営基盤の強化」を図る方針です。

参考記事: 改正物流効率化法の中長期計画、特定荷主100社調査で見えた削減目標と投資基準

チルド物流研究会を起点とする企業間連携の拡張

伊藤ハム米久HDは、2024年10月に発足した「チルド物流研究会」の主要メンバーとして活動してきました。同研究会には、伊藤ハム米久HDのほか日清食品チルド、日清ヨーク、日本ハム、プリマハム、丸大食品、明治、森永乳業、雪印メグミルクの計9社が参画し、温度管理が必要なチルド食品分野における持続可能な輸配送体制を検討しています。

今回の可視化基盤は、伊藤ハム米久HD単独の業務効率化にとどまらず、2027年秋の本稼働以降、外部企業との連携インフラとして活用される設計となっています。具体的には、以下の連携を視野に入れています。

  • 類似する配送ルートや温度帯、納品条件を持つ食品メーカー・卸売業との共同輸配送
  • 納品完了後の復路における余積スペースや帰り便を活用した荷物のマッチング
  • 小売業の物流センターに対する納品時間枠の共同調整と車両台数の削減

参考記事: 国交省の共同輸配送支援、上限4000万円補助で積載率改善へ

サプライチェーン各層への具体的な実務影響

伊藤ハム米久HDによる可視化基盤の整備と共同配送の具体化は、食品サプライチェーンに関わる各プレイヤーの実務に直接的な影響を与えます。

製造業者・メーカー:法規制対応から協調型インフラ活用へのシフト

年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主に指定された食品メーカーにとって、中長期計画の策定と年次報告への対応は共通の経営課題です。計画に盛り込んだ荷待ち・荷役時間の短縮や積載率向上を達成できなければ、是正勧告や企業名公表といった行政処分の対象となるリスクを抱えています。

伊藤ハム米久HDの取り組みは、法規制対応を単なる書類作成で終わらせず、自社の運行実績データを精緻に把握した上で他社との共同運行へ発展させるモデルケースとなります。同業他社や類似のチルド温度帯を扱う食品メーカーにとっては、個社で莫大な投資を行って配送網を維持するのではなく、データに基づいた共同輸配送網へ相乗りすることで、固定的な物流費を変動費化し、配送維持コストを抑制する選択肢が生まれます。

参考記事: 日本3PL協会「食品物流&3PL総合展 2026」9月開催|商流・物流再設計と法改正への対応策

運送事業者:実車率向上と付帯業務の可視化による収益構造の適正化

実運送を担う運送事業者にとっては、荷主主導によるデータ可視化と共同輸配送の進展により、運行効率の大幅な改善が見込まれます。日本の営業用トラックの平均積載率は約38%にとどまっており、片道運行後の空車回送が収益性を圧迫する主因となっていました。

伊藤ハム米久HDが余積や帰り便の活用を基盤上で推進することにより、運送事業者は復路の荷物を安定して確保しやすくなり、実車率の底上げが実現します。また、荷待ち時間や荷役作業時間が基盤上で客観的に記録されることで、長時間の待機に対する待機料の収受や、附帯作業の対価交渉がデータに基づいて行えるようになり、運行コストの適正化につながります。

SaaS・テクノロジーベンダー:企業間連携プラットフォーム需要の拡大

システムインテグレーターや物流SaaSベンダーにとって、本プロジェクトは単一企業内の基幹システム構築から「サプライチェーン横断のオープンプラットフォーム」へと開発需要がシフトしている実態を示しています。

フューチャーアーキテクトが手掛ける可視化基盤のように、TMS(輸配送管理システム)のデータと各事業者の動態管理データを統合し、複数社間で荷物と車両のスペックをマッチングさせるアーキテクチャが求められます。特にチルド帯などの温度管理要件、パレット規格、納品リードタイムなどの制約条件を組み込んだデータ連携インターフェース(API)の標準化が、今後の物流ITソリューションにおける競争軸となります。

LogiShiftの視点:特定荷主の中長期計画が生んだ「データ主導型共創」

改正物流効率化法により特定荷主へのCLO(物流統括管理者)選任と中長期計画提出が義務化されたことで、荷主企業は自社の物流実態を定量的に把握しなければならない状況に置かれました。伊藤ハム米久HDの動きは、この法規制対応を「コストセンターの管理業務」として処理せず、ITコンサルティング企業と組んで自社の配送データを統合し、他社を巻き込むプラットフォームへと昇華させた点に本質があります。

特に注目すべきは、2024年10月に発足したチルド物流研究会の存在です。同研究会に参画する9社は競合関係にありますが、チルド温度帯の輸送力不足という共通課題を抱えています。伊藤ハム米久HDが構築する2027年秋稼働の可視化基盤は、研究会参画企業や卸・小売との間で、積載率や空車情報を突き合わせる実務インフラとして機能する蓋然性が極めて高いといえます。

自社単独での積載率向上には物理的な限界があります。特定荷主が提出した中長期計画の実効性を担保するためには、運行ごとのデータを標準化し、同一エリア・同一温度帯を走る他社便との混載や帰り荷の相互融通をシステム的に成立させるしかありません。法規制対応を起点としたデータ基盤の整備が、結果として産業横断の共同輸配送プラットフォームを成立させる推進力となっています。

明日から意識すべきこと

食品メーカーや流通企業の物流担当者は、以下の対応を順次進める必要があります。

  1. 自社の輸配送データ(区間別積載率・荷待ち時間・実車率)が定量的に把握できているか点検する
  2. 2026年10月に提出した中長期計画のKPIと、日々の運行実績データを突合できるシステム環境を整理する
  3. 自社専用便に依存している配送ルートを洗い出し、同一温度帯・同一納品先を持つ同業・異業種との共同輸配送の可能性を検討する

自社単独での効率化から企業間でのデータ連携へと舵を切り、持続可能な配送体制を構築する準備が求められています。


出典: LOGI-BIZ online
出典: 伊藤ハム米久ホールディングス株式会社
出典: 日本ハム株式会社
出典: 農林水産省
出典: 国土交通省

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにてSCM(サプライチェーン・マネジメント)改善に従事。 その後、物流系スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してLogiShiftを立ち上げ。 現在は物流DXメディア「LogiShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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