ラピュタロボティクスは2026年10月28日、日本通運の静岡支店・沼津物流センターにおいて協働型ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」の稼働を開始したと発表した。荷主企業の新製品生産開始に伴って新設された門前倉庫において、先行拠点で蓄積した運用ノウハウを転用し、対象エリアの一部から段階的に稼働範囲を広げている。
沼津物流センターにおけるPA-AMR導入の背景と運用設計
沼津物流センターにおけるPA-AMR導入は、製造工場の近隣に新設された門前倉庫の立ち上げに伴う入出荷オペレーションの最適化を目的としている。工場直結型の門前倉庫では、生産ラインの稼働スケジュールに応じたジャストインタイムでの部品供給や製品受入が求められ、作業遅延が工場側のライン稼働に直接波及する。同拠点では、新製品の生産立ち上げに伴う出荷波動を吸収しつつ、限られた作業人員で安定した出荷能力を担保することが求められていた。
今回導入された「ラピュタPA-AMR」は、作業員とロボットが同一通路内で協働しながらピッキングを行う自律走行搬送ロボットである。同センターでは初期立ち上げのリスクを最小化するため、全エリア一括導入ではなく特定エリアから運用を開始し、現場環境の整備進捗に合わせて適用範囲を順次拡大する段階的導入スキームを採用した。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表主体 | ラピュタロボティクス株式会社 |
| 導入拠点 | 日本通運株式会社 静岡支店・沼津物流センター |
| 稼働発表日 | 2026年10月28日 |
| 導入設備 | 協働型ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」 |
| 対象施設区分 | 製造荷主向け門前倉庫(新製品生産開始に伴う新設拠点) |
| 運用展開方式 | 対象エリアの一部から開始し、段階的に適用範囲を拡大 |
| 現場改善体制 | ラピュタロボティクスCSチームとの定期定例会による継続調整 |
日本通運とラピュタロボティクスによる自動化展開の歩み
日本通運は、庫内作業の生産性向上を目的にラピュタロボティクスとの協業を継続的に推進してきた。2020年7月にラピュタPA-AMRを10台導入したことを皮切りに、愛知県の「NX小牧流通センター」など複数拠点で協働型ロボットの現場運用を重ね、2025年10月には出荷生産性を約2.5倍に引き上げる成果を上げている。さらに2026年10月21日には、国内2拠点において自在型自動倉庫「ラピュタASRS」の本格稼働を発表するなど、搬送にとどまらない立体保管の自動化領域でも連携を深めていた。
| 時期 | 導入・運用の進捗 |
|---|---|
| 2018年10月〜2019年7月 | 日本通運の物流拠点で協働型ピッキングロボットの実証実験を実施 |
| 2020年7月 | 日本通運にラピュタPA-AMRを10台商用導入 |
| 2025年10月 | 日本通運「NX小牧流通センター」へ本格導入、出荷生産性約2.5倍を達成 |
| 2026年10月21日 | 日本通運の国内2拠点において自在型自動倉庫「ラピュタASRS」本格稼働 |
| 2026年10月28日 | 日本通運 静岡支店・沼津物流センターで「ラピュタPA-AMR」稼働開始 |
沼津物流センターでの導入は、こうした大都市圏の大型ハブ拠点で検証・確立されたAMRのオペレーションノウハウを、地方の個別荷主向けサテライト拠点へ水平展開する試みである。先行拠点で得られた走行アルゴリズムや作業動線の標準パターンを初期設定に反映することで、新設拠点の立ち上げ工期短縮を図っている。
定例会を通じた走行パラメータ調整と付帯作業の効率化
AMRの現場定着において同センターが導入した仕組みが、ラピュタロボティクスのカスタマーサクセス(CS)チームとの定期定例会である。ロボット単体を納入して運用を現場任せにするのではなく、日々の実稼働データに基づき、ソフトウェア側のパラメータ調整と物理的な作業環境の改善を両輪で進めている。
具体的には、現場の通行量や通路幅に合わせた走行マップの更新、機体の加減速や旋回速度などのパラメータチューニングを実施している。加えて、PA-AMRの上段トレーを有効活用することで、ピッキング作業に伴う検品や仕分けといった付帯作業を移動工程の中で同時に処理するオペレーションを構築した。これにより、定点での仕分け作業時間を削減し、総作業工数の圧縮につなげている。
参考記事: 日本通運がラピュタ自動倉庫を2拠点で稼働|既存WMS連携で改修費を抑制
参考記事: ピッキングロボットの仕組みと主要タイプ解説|荷姿別の選び方から導入手順まで
物流サプライチェーン各層への具体的な影響
大手総合物流企業が地方の門前倉庫にAMRを標準配備し始めた動きは、倉庫オペレーター、ロボティクスベンダー、庫内作業員のそれぞれに直接的な実務変化をもたらす。
倉庫事業者・3PL:地方拠点における立ち上げ初期費用の変動費化
3PL事業者にとって、地方都市や工場隣接地に構える専用物流センターの立ち上げは、大都市圏以上にパート・アルバイトの採用難易度が高い。募集費用の高騰や採用充足率の低さが、新拠点の立ち上げ遅延や残業代の膨大化を招く要因となっていた。
先行拠点で運用実績のある協働型AMRをパッケージとして横展開できれば、新設倉庫の初期稼働時から最少人員でのオペレーションラインを設計できる。固定的なマテハン設備と異なり、AMRは荷主の生産計画や物量増減に合わせて機体数を柔軟に増減できるため、新規拠点の立ち上げリスクを抑えながら契約期間に合致した投資回収計画を組み立てられる。
参考記事: AMR(自律走行搬送ロボット)入門|AGVとの違いから選定基準・導入ステップまで解説
SaaS・テクノロジーベンダー:伴走型カスタマーサクセスがリピート導入の必須要件へ
物流ロボティクスベンダー側のビジネスモデルにおいても、単なるハードウェアの売り切り型アプローチは通用しなくなりつつある。AMRのハードスペック自体は平準化が進んでおり、他社との差別化要因は「導入後のスループット向上をいかに伴走支援できるか」に移っている。
ラピュタロボティクスが沼津物流センターで実施しているように、走行マップのリアルタイム補正や現場動線に合わせたパラメータチューニングを定例会形式で提供するサポート体制は、顧客内での複数拠点への横展開を後押しする必須要件である。ベンダーにとっては、導入後の継続的なデータ解析と改善提案の質が、解約抑止とグループ内展開の受注確度を左右する。
参考記事: 【徹底比較】物流倉庫の省人化を実現するAMR(自律走行搬送ロボット)メーカー5選【2026年04月版】
倉庫内作業員:移動負荷の半減と定位置仕分け業務への特化
庫内作業員にとって、広大な倉庫内を重量台車を押しながら歩き回るピッキング業務は身体的負荷が極めて大きい。従来の人手ピッキングでは、総作業時間の50〜60%を移動歩行が占めており、作業効率の低下と疲労によるピッキング精度の低下が避けられなかった。
AMRが作業員の間を自律移動して荷物をリレー搬送することで、作業員は指定された棚エリア内でのピック作業と上段トレーへの投入作業に集中できる。1日あたり10kmを超えていた歩行距離が大幅に圧縮され、シニア層や未経験の短時間労働者であっても初日から一定の生産性を発揮できる環境が整う。
参考記事: 物流ロボティクス入門|AGV・AMRの違いと導入手順・費用対効果を徹底解説
LogiShiftの視点:実証実験から「標準化パッケージの水平展開」への移行
沼津物流センターでのPA-AMR稼働は、国内の物流ロボティクスが「一部の大規模旗艦拠点における実証実験」から、「蓄積ノウハウを用いた地方サテライト拠点への標準化展開」という実践フェーズに突入したことを裏付けている。
デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査によると、ラピュタPA-AMRは2025年度のAI×サービスロボット市場における「搬送・AMR」用途市場で売上高シェア55.6%を獲得し、累計導入数は1,000台・80拠点を突破している。日本通運においても、小牧流通センターでの生産性2.5倍化の実績を経て、2026年10月にはASRSの2拠点稼働、そして今回の沼津物流センターでのAMR稼働と、グループ内でのロボット実装が連続している。
荷主企業の工場に直結する門前倉庫は、物量規模が大都市のEC物流センターほど大きくないケースが多い。そうした中規模拠点であっても、他拠点で確立されたパラメータ設定や運用プロトコルを転用することで、SI(システムインテグレーション)コストと立ち上げ検証期間を抑えたロボット化が成立する。今後は、自社内で先行導入したロボティクスの「標準運用マニュアル」をいかにアセット化し、全国の支店や地方倉庫へ迅速にコピーできるかが、3PL事業者の拠点展開スピードを左右する競争優位となる。
参考記事: [物流自動化とは?導入メリットや主要設備・失敗しない進め方を徹底解説](https://logishift.net/glossary/logistics-automation/
明日から意識すべきこと
- 自社拠点の運用パラメータを共通アセットとして標準化する
ロボット導入を単一拠点の局所改善で終わらせず、走行設定や作業手順の改善ログを他拠点へ展開可能な形式で文書化・データ化する。 - 新規立ち上げ拠点の初期設計にスケーラブルな搬送機器を組み込む
固定ラックの撤去や床面工事を伴わないAMRを前提とすることで、荷主の初期物量に合わせたスモールスタートと段階拡張が可能な建屋レイアウトを策定する。 - ベンダー選定時に納入後のカスタマーサクセス体制を精査する
機体性能だけでなく、稼働後の走行データ解析やパラメータ調整を伴走支援する定例会スキームが契約条件に含まれているかを確認する。
出典: 毎日新聞
出典: PR TIMES
出典: ラピュタロボティクス株式会社
出典: 内閣官房 デジタル田園都市国家構想



