株式会社Hacobuは2026年10月29日、従業員数1000人以上の特定荷主企業に勤務する101人を対象とした物流統括管理者(CLO)の選任状況と物流改革の実態調査結果を公表しました。CLOを「選任済み」とした企業は67.3%に達し、2026年2月調査時の30.7%から倍増したものの、定量的成果を確認できている企業は11.9%にとどまっています。
特定荷主におけるCLO選任と物流改革進捗の実態
2024年5月に公布された改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)は、2026年4月1日に全面施行され、年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主に対して役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の策定・提出を義務付けました。2026年10月末に初回の選任届出および計画提出期限を迎える中、現場の推進状況には制度対応と成果創出の間で大きな乖離が生じています。
調査概要と母集団の属性
今回の調査は、全国の特定荷主企業に所属する担当者・管理職を対象に実施されました。比較対象として設定された2026年2月調査(2026年1月27日〜2月6日実施)と同一条件で抽出されています。
| 調査項目 | 内容・仕様 |
|---|---|
| 調査主体 | 株式会社Hacobu |
| 調査期間 | 2026年10月2日〜10月16日 |
| 調査対象 | 従業員1000人以上の特定荷主企業勤務者(自社が特定荷主と回答) |
| 有効回答数 | 101人(抽出母集団357人中) |
| 比較対象 | 2026年2月調査(有効回答数101人、同一抽出条件) |
CLO選任率は67.3%へ急伸、役職属性は物流部門トップが最多
CLOの選任状況については、「選任済み」が67.3%、「選任予定」が9.9%となりました。「選任済み」と「選任予定」を合わせた割合は77.2%となり、2026年2月調査時の76.2%(選任済み30.7%、選任予定45.5%)とほぼ同水準を維持しながら、予定から実任への移行が急速に進展したことが分かります。
一方で、選任されたCLOの社内属性(選任済み企業n=68)を見ると、全社横断の権限を持つ役員よりも、従来の物流担当部門からの登用が最多を占めています。
| 選任されたCLOの属性 | 構成比 |
|---|---|
| 従来の物流部門のトップ | 45.6% |
| 経営企画などの全社横断部門の役員クラス | 22.1% |
| 主力事業のトップ | 20.6% |
| 社長、副社長 | 5.9% |
| その他・不明 | 5.8% |
CLOの選任手続き自体は過半数の企業で完了しているものの、物流部門トップがそのままスライド就任したケースが45.6%に上り、営業や製造といった他部門との利害調整をトップダウンで断行できる体制が整っているかは企業ごとに差が生じています。
参考記事: 改正物流効率化法で2000人超のCLO誕生|特定荷主の選任義務と罰則
物流改革の約7割が準備段階、定量成果の創出は11.9%にとどまる
物流改革全体の進捗度合いを尋ねた設問では、中長期計画の策定やデータ収集などの準備段階にある企業が約7割を占めました。
| 物流改革全体の進捗フェーズ | 構成比 |
|---|---|
| 法令対応(選任・中長期計画の作成・提出) | 26.7% |
| 現状把握・データ収集 | 21.8% |
| 改革戦略・ロードマップ策定 | 20.8% |
| 定量成果を確認できている段階 | 11.9% |
| 具体的に着手していない | 8.9% |
| その他・未回答 | 9.9% |
法令対応(26.7%)、データ収集(21.8%)、ロードマップ策定(20.8%)を合算した「準備段階」は69.3%に達しています。2026年4月の法制化以降、各社は書類作成や実態把握に追われており、実際の輸送効率化やコスト削減といった定量的な成果創出に至っている企業は11.9%に過ぎません。
現場指標の改善格差:「荷待ち」56.4%改善に対し「積載効率」は38.6%
2026年4月以降に確認できた現場指標の変化では、自社拠点のオペレーション見直しで対応できる項目と、取引先との調整を伴う項目との間で改善進捗に明確な差が表れました。
| 指標項目 | 改善・低下(合計) | 変わらない | 上昇(合計) | 測定していない・判断できない |
|---|---|---|---|---|
| 荷待ち時間 | 56.4% | ― | ― | 14.9%~16.8% |
| 荷役時間 | 49.5% | ― | ― | 14.9%~16.8% |
| 積載効率 | 38.6% | 42.6% | ― | 14.9%~16.8% |
| 物流コスト | 13.9% | 22.8% | 48.5% | 14.9% |
荷待ち時間は「改善した」(13.9%)と「やや改善した」(42.6%)を合わせて56.4%が短縮を実感しています。トラック予約受付システムの導入や受付オペレーションの変更など、自社拠点内の運用の見直しによって早期に効果が出やすいためです。
対照的に、トラックの積載効率は「改善した」が6.9%、「やや改善した」が31.7%の計38.6%にとどまり、「変わらない」が42.6%で最多となりました。積載率の向上には、発注単位(出荷ロット)の拡大、納品頻度の見直し、パレット規格の統一など、調達先や販売先との取引条件そのものを変更する必要があるため、改善が進んでいません。
物流コストに関しては、「上昇した」(18.8%)と「やや上昇した」(29.7%)の合計が48.5%に達し、運賃改定や燃料費高騰の影響を荷主側が直接受けている実態が浮き彫りになりました。
次の半年の注力領域は「法令対応」と「データ基盤」が二大巨頭
今後半年(2026年11月〜2027年4月)で注力する領域については、法令対応の完了と、それに付随するデータ取得体制の構築が上位を占めました。
| 注力領域(主要項目) | 構成比 |
|---|---|
| 法令への確実な対応 | 28.7% |
| データ・IT・AI基盤の整備と活用 | 14.9% |
| データに基づいた物流の現状把握 | 12.9% |
| 物流コストの最適化 | 11.9% |
| 現場オペレーションの生産性向上 | 10.9% |
「データ・IT・AI基盤の整備と活用」(14.9%)と「データに基づいた物流の現状把握」(12.9%)を合わせたデータ関連領域は27.7%となり、法令対応(28.7%)に匹敵する優先順位となっています。中長期計画の毎年度の進捗確認や国への定期報告には客観的数値のエビデンスが不可欠であり、基盤整備を急ぐ実態が反映されています。
参考記事: 改正物流効率化法、10月末の計画提出迫る!特定3826者の罰則回避策
義務化後のフェーズ移行が主要プレイヤーに与える影響
CLOの選任が一段落し、次なる焦点が「計画の実行」と「定量数値の達成」へ移る中、サプライチェーンに関係する各事業者には異なる実務課題が課されています。
製造業者・メーカー:営業部門と商慣行を巻き込む事業構造改革への着手
特定荷主に指定された製造業者では、物流部門単独の効率化が限界を迎えています。調査結果が示す通り、拠点内の荷待ち時間短縮(56.4%改善)までは進んだものの、積載効率の向上(38.6%改善にとどまる)で足踏みしている原因は、販売・調達部門の契約条件にあります。
小ロット多頻度納品や短納期指定、翌日配送の維持といった営業慣行を変更しない限り、積載率の抜本的な引き上げは不可能です。CLOに就任した物流トップや役員クラスには、営業部門に対してリードタイムの延長交渉を命じ、生産・需給管理部門に対して製造ロットと出荷ロットの同期を義務付けるといった、全社ガバナンスの発揮が求められます。
参考記事: 改正物流効率化法で年9万トン荷主にCLO義務化|営業ルールの改定権限を付与
SaaS・テクノロジーベンダー:荷待ち管理から全社サプライチェーン可視化基盤への需要シフト
荷主企業の27.7%がデータ・IT・AI基盤の整備と現状把握を注力領域に挙げている点は、ソリューションベンダーにとって提案領域の転換を意味します。
これまでは単一拠点におけるトラック予約受付システムやバース管理システムの導入が中心でしたが、今後は各拠点・委託先運送事業者のデータを統合し、中長期計画の進捗をモニタリングできる統合プラットフォームが求められます。国への年次定期報告に対応したエビデンス集計機能や、拠点横断での車両積載率の自動算出など、全社の物流KPIを経営陣へ可視化するツールの引き合いが強まります。
参考記事: トラックバース予約管理システムとは?荷待ち時間の可視化やWMS連携でバース割り当てを効率化する機能を解説
運送事業者:荷待ち削減の実績をテコにした運行効率化と運賃適正化
運送事業者にとっては、荷主拠点での荷待ち時間短縮(56.4%改善)を、自社の実車率向上とドライバー労務時間の適正化に直結させる局面に入りました。
荷待ちが短縮された拠点を特定できれば、同日内の2回転運行や中継輸送のスケジュールを組みやすくなります。一方で、積載効率が「変わらない」(42.6%)と停滞している荷主に対しては、実運行データを提示した上で、共同配送の提案や、小ロット輸送に対する割増運賃の適用、出荷単位の見直しを要請する交渉材料となります。
参考記事: 待機時間ゼロへ!導入初年度ROI160%超を実現。配車と入出荷を一気通貫で改革。 | 株式会社Hacobuの活用手順
LogiShiftの視点:CLOの権限行使が「設置」から「商慣行の解体」へ試される
改正物流効率化法に基づく特定荷主の体制整備は、CLOの「設置フェーズ」を完了し、計画を遂行する「実行と定量的成果創出フェーズ」へ移行しました。
本調査で最も注目すべきデータは、CLO選任済み企業において「従来の物流部門のトップ」が45.6%を占めている点です。法制化の趣旨は、営業や事業部門と対等以上に渡り合える役員級を配置し、物流に負荷をかける販売・取引条件を是正することにありました。しかし、実務経験を重視して物流部長クラスが横滑りでCLOに就任した場合、社内力学において営業部門や事業本部長に対して発注ロット拡大やリードタイム延長を指示できない「権限の形骸化」に陥るリスクを孕んでいます。
積載効率の改善実感が38.6%にとどまり、コスト上昇が48.5%に達している事実は、現場努力によるバース予約や荷役改善だけでは運賃上昇を吸収しきれなくなっている構造的限界を示しています。積載効率を現状の約30〜40%台から国の掲げる目標(50%水準)へ引き上げるには、自社単独の努力ではなく、調達・販売先との納品リードタイム延長や、同一方面に向かう同業他社との共同輸送が不可欠です。
CLOが経営陣として果たすべき役割は、ツールの選定や報告書の作成にとどまりません。蓄積された運行・積載データを基に、営業部門のKPIに「積載率」や「出荷平準化率」を組み込み、商慣行の解体に直接踏み込めるかが、今後半年間の成果創出を左右します。
明日から意識すべきこと
CLOの選任届出を終えた特定荷主企業が、形式的な法令対応から実質的な成果創出へ転換するために着手すべき具体策を整理します。
- 積載効率が停滞している航路と取引先の特定
自社拠点ごとの荷待ちデータだけでなく、便ごとの積載率データを抽出し、低積載が常態化している出荷先リストを作成する。
- CLO主導による営業部門との協議体立ち上げ
物流部門単独ではなく、営業担当役員とCLOが同席する定期会議を設置し、発注ロットの引き上げや翌日納品から中2日納品への変更交渉を営業戦略に組み込む。
- デジタルデータに基づく年次報告の集計プロセスの自動化
2027年度以降に迫る国への定期報告に向け、手書き日報やExcel転記を排除し、バース管理や動態管理システムから自動で実績値を抽出するデータ基盤を確定させる。
CLOの設置は改革の前提条件に過ぎず、全社の取引条件とサプライチェーン構造にメスを入れられるかどうかが、持続可能な輸送力の確保に直結します。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: hacobu.jp


人・まち・モビリティ_hero.jpg)
