株式会社Hacobuは2026年10月29日、改正物流効率化法の全面施行から半年時点における特定荷主企業のCLO選任および改革進捗の実態調査結果を公表しました。同法が義務付ける物流統括管理者(CLO)を「選任済み」とした企業は67.3%に達し、2026年2月時点の30.7%から倍増しています。
改正物流効率化法下の特定荷主におけるCLO設置と現場指標の進捗データ
2026年4月1日に全面施行された改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)では、年間取扱貨物重量が9万トン以上の荷主企業を「特定荷主」に指定し、役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任届出と中長期計画の策定・提出を義務付けました。制度施行から約半年が経過した2026年10月2日から16日にかけて、Hacobuが特定荷主企業の勤務者101名を対象に実施した調査では、組織体制の整備状況と現場オペレーションの改善度合いに明確な差が生じています。
CLO選任状況と役職属性の内訳
CLOの選任状況は「選任済み」が67.3%(68名)、「選任予定」が9.9%(10名)、「未選任」が6.9%(7名)、「分からない」が15.8%(16名)となりました。2026年2月調査時の「選任済み」30.7%・「選任予定」45.5%と比較すると、予定から実際の選任への移行が着実に進んでいます。
選任されたCLOの出身部門・役職属性では、従来の物流部門出身者が最多を占める一方、全社横断部門や事業部門トップの登用も確認されています。
| 出身部門・役職区分 | 構成比(n=68) | 組織上の主な役割と位置づけ |
|---|---|---|
| 従来の物流部門トップ | 45.6% | 現場オペレーションの知見を活かした実務統括 |
| 経営企画など全社横断部門の役員 | 22.1% | 経営戦略と直結したサプライチェーン再設計 |
| 主力事業のトップ(事業本部長等) | 20.6% | 営業・製造部門の取引条件改定を伴う改革主導 |
| 社長・副社長 | 5.9% | トップマネジメント直轄による全社指示体制 |
| その他・不明 | 5.8% | 各社独自のガバナンス設計に基づく配置 |
参考記事: 改正物流効率化法で2000人超のCLO誕生|特定荷主の選任義務と罰則
現場3指標の改善実感と物流コストの推移
2026年4月以降における現場指標の変化では、拠点単位で管理可能な項目と、取引先が関与する項目とで進捗の乖離が浮き彫りになりました。トラックの荷待ち時間は56.4%(「改善した」13.9%、「やや改善した」42.6%)、荷役時間は49.5%(「改善した」9.9%、「やや改善した」39.6%)が改善を実感しています。
これに対し、積載効率の改善実感は38.6%(「改善した」6.9%、「やや改善した」31.7%)にとどまり、「変わらない」が42.6%を占めました。
| 評価指標 | 改善・やや改善 | 変わらない | 悪化・やや悪化 | 測定なし・判断不可 |
|---|---|---|---|---|
| 荷待ち時間 | 56.4% | 28.7% | 0.0% | 14.9% |
| 荷役時間 | 49.5% | 34.7% | 0.0% | 15.8% |
| 積載効率 | 38.6% | 42.6% | 2.0% | 16.8% |
| 物流コスト | 13.9%(低下) | 22.8% | 48.5%(上昇) | 14.9% |
物流コストについては「上昇した」(18.8%)と「やや上昇した」(29.7%)の合計が48.5%に達しており、運賃改定や燃料費高騰の影響を荷主企業が吸収している実態がうかがえます。
参考記事: 荷待ち時間とは?発生原因と法的リスク・DXによる削減手法を徹底解説
物流改革の進捗段階と今後半年間の注力領域
物流改革全体の進捗状況では、準備段階にある企業が全体の約7割を占めています。「法令対応を中心に推進」が26.7%、「現状把握・データ収集を推進」が21.8%、「課題整理と戦略・ロードマップ策定」が20.8%となっており、合計69.3%が実行前段階にとどまります。
定量成果を確認できている企業は11.9%(全社的:5.9%、一部拠点:5.0%、複数拠点・部門:1.0%)に限定されており、「施策を実行しているが定量成果は未確認」が5.0%、「具体的に未着手」が8.9%でした。
今後半年間で注力する改革領域の設問では、以下の順位となっています。
- 法令への確実な対応: 28.7%
- データ・IT・AI基盤の整備と活用: 14.9%
- データに基づいた物流の現状把握: 12.9%
- 物流コストの最適化: 11.9%
- 現場オペレーションの生産性向上: 10.9%
データ関連領域の合計は27.7%に達しており、初年度の中長期計画提出を契機として、客観的な数値集計体制の構築へリソースを投じる動きが顕著です。
参考記事: 改正物流効率化法、10月末の計画提出迫る!特定3826者の罰則回避策
サプライチェーン関係者への具体的な影響
特定荷主企業におけるCLO設置の進展と、現場指標の改善状況の二極化は、製造業、SaaSベンダー、運送事業者の実務に異なる影響をもたらしています。
製造業者・メーカー:商慣行見直しと発注ロットの再設計
CLOの選任が完了した製造業各社では、組織体制の整備から施策実行への移行が進んでいます。荷待ち時間の改善を実感した割合が56.4%に達した背景には、自社工場や物流センターにおけるバース予約システムの導入など、自社敷地内で完結する受入プロセスの見直しが進んだ点があります。
一方で、積載効率の改善実感は38.6%にとどまり、42.6%が「変わらない」と回答しています。積載効率の向上には、営業部門が顧客と取り決めている納品リードタイム、最少発注単位(MOQ)、納品頻度などの商慣行へ踏み込む必要があります。
今後は、経営企画や主力事業トップから就任したCLO(選任済みCLOの計42.7%)を中心として、営業部門に対する出荷条件の改定指示や、調達・生産計画の見直しをトップダウンで実行する体制構築が求められます。
参考記事: 改正物流効率化法で年9万トン荷主にCLO義務化|営業ルールの改定権限を付与
SaaS・テクノロジーベンダー:現状把握からデータ統合基盤への需要シフト
特定荷主の注力領域として「データ・IT・AI基盤の整備と活用」(14.9%)および「データに基づいた物流の現状把握」(12.9%)が上位に入ったことは、テクノロジーベンダーにとって提案領域の転換を意味します。単一拠点のトラック待機時間を記録するポイントソリューションから、複数拠点の入出荷実績や輸配送データを全社統合するプラットフォームへの関心が高まっています。
改正物流効率化法では、毎年度の定期報告において荷待ち・荷役時間の実績や積載効率の推移を行政へ報告しなければなりません。手作業集計に依存している荷主企業では管理工数が膨らむため、入退場ログの自動集計機能や、TMS(輸配送管理システム)と連携したダッシュボード機能の導入が進んでいます。
ベンダー各社には、法定帳票の出力にとどまらず、集積した運行データから積載率の低下要因や配送ルートの非効率を可視化する分析機能の提供が求められています。
参考記事: ハコベル、9万トン基準の特定荷主向けCLOダッシュボードを9月提供
運送事業者:待機削減の実績を踏まえた積載率向上の協議
運行ルート上で荷待ち時間の短縮が進み始めた運送事業者にとっては、乗務員の拘束時間管理において一定の改善効果が生じています。バース予約による入退場時間の平準化は、改善基準告示で定められた拘束時間上限の遵守を支援する要因となっています。
一方で、積載効率の改善が足踏みしている現状は、実車運行時の収益性向上を妨げる要因です。運送会社が1運行あたりの採算性を確保するためには、荷主側の中長期計画に踏み込み、共同配送のルート設定や帰り便の活用、パレット規格の標準化を荷主のCLOへ直接提案する動きが重要になります。
待機時間の実績データが荷主側で蓄積され始めたことで、運行ログを根拠とした待機料金の収受や附帯作業費用の書面化交渉は、従前よりも成立しやすい環境が整いつつあります。
参考記事: 明星食品がトラック簿導入で荷待ち集計を月数秒に短縮|特定荷主対応を効率化
LogiShiftの視点(独自考察)
Hacobuの調査結果が示す最大の構造変化は、物流効率化法への対応が「役職の任命・計画書の提出」という形式的な準備段階から、「データ基盤を活用した現場オペレーション改革と商慣行の見直し」という実効フェーズへ移行した点にあります。CLO選任率が67.3%まで高まった一方で、定量成果の確認が11.9%にとどまっている事実は、体制を整えた後の実行段階において各社がデータ収集と部門間調整の壁に直面している実態を示しています。
自社拠点で完結する荷待ち・荷役時間の削減(改善実感約5割)に比べ、取引先との契約改定を要する積載効率の改善(38.6%)が遅れている構造は、従来の物流部門出身CLO(45.6%)単独での交渉力に限界があることを物語っています。商慣行の是正には、営業部門が握る納品条件の変更や、取引先着荷主に対する発注ロット引き上げの合意形成が不可欠です。
改正物流効率化法が全面施行された2026年4月から半年を経て、特定荷主の現場では荷待ち改善(56.4%)に代表される拠点単位の効率化が進む一方、積載効率の改善停滞(38.6%)が課題として顕在化しました。今後は選任されたCLOのもとでデータ・IT基盤(注力意向計27.7%)を整備し、客観的な運行実績を根拠に出荷ロットや納品頻度といった取引条件の改定を実務に落とし込めるかが各社の分水嶺となります。
出典: LOGI-BIZ online(ロジビズ・オンライン)
出典: hacobu.jp
出典: proguide.co.jp



