株式会社ギークプラスは2026年11月4日、日通NECロジスティクス株式会社の東東京支店へ棚搬送型ロボット「EVE」を導入したと発表した。電機機器メーカーのBtoC向け出荷拡大に伴う作業負荷に対し、商品を保管棚ごと作業ステーションへ運ぶGTP方式へ転換したことで、従来と同等の出荷量を従来の50%の人員で処理できる体制を整えた。
東東京支店におけるEVE導入の経緯と賃貸倉庫での選定基準
日通NECロジスティクス東東京支店(東京都品川区)では、電機機器メーカーのBtoBおよびBtoC向け商品の入出荷業務を受託している。荷主企業のBtoC向け出荷量が増加する中、出荷期限(SLA)を遵守するため、現場では作業スタッフの増員や休日対応を含む稼働時間の延長で対応していた。しかし、慢性的な人手不足の中で人員増強のみに頼る運用には限界があり、処理能力の向上を目的に現場主導で自動化の検討が開始された。
導入プロジェクトの概要と運用体制
設備の選定から運用定着に向けては、現場担当者とDX部門が連携チームを組織した。ギークプラスが検討段階の情報提供と立ち上げ支援を担当し、作業手順の策定や教育マニュアルの整備を推進した。
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年11月4日 |
| 導入拠点 | 日通NECロジスティクス 東東京支店(東京都品川区) |
| 対象業務 | 電機機器メーカーのBtoB・BtoC向け商品入出荷 |
| 導入設備 | ギークプラス製 棚搬送型ロボット(AGV/AMR)「EVE」 |
| 自動化方式 | GTP(Goods to Person:棚搬送型定点ピッキング) |
| 導入成果 | ピッキング作業人員を従来比50%に削減・作業の標準化 |
東東京支店は自社所有ではない賃貸倉庫であるため、建物の大規模な改修工事を伴う固定式マテハンの設置は困難であった。そのため、床面アンカー固定工事を必要とせず、将来的な荷量変動や契約期間満了に伴う拠点移転・増設にも対応できる柔軟性を備えたEVEが選定された。
固定棚ピッキングからGTP方式への移行による作業変化
従来の固定棚運用では、ピッキング作業員がリストやハンディターミナルを持ち、広大な倉庫内を歩き回って目的の保管場所を探し出していた。作業効率はスタッフのロケーション記憶や歩行速度に左右され、繁忙期の増員時にも習熟までに時間を要していた。
EVEの導入後は、ロボットが保管棚の下に入り込み、棚ごと作業ステーションまで持ち上げて搬送するGTP(Goods to Person)方式へ変更された。作業員はステーションの定位置で、画面の指示に従って棚から商品を取り出し、バーコードを読み取るだけで作業が完了する。
| 運用項目 | 従来の固定棚運用 | EVE導入後のGTP運用 |
|---|---|---|
| 移動形態 | 作業員が棚間を長距離歩行 | ロボットが棚を作業者へ自動搬送 |
| 作業場所 | 倉庫内全域(分散型) | 作業ステーション(定点型) |
| 属人性の度合い | ロケーション記憶・経験に依存 | 画面指示とバーコード検品で均一化 |
| 応援要員の習熟 | 手順習得・配置に教育工数が発生 | 操作がシンプルで初日から稼働可能 |
操作手順が標準化されたことで、異動者や協力会社の応援スタッフに対しても短時間のレクチャーで業務を割り当てられるようになり、急な物量変動に対する人員調整が容易になった。
参考記事: Geek+とは?AI搭載AMR(自律走行搬送ロボット)の機能・特徴・作業効率化のメリットを解説
物流サプライチェーン各層に生じる実務上の影響
賃貸倉庫という物理的制約の中でピッキング要員を半減させた事例は、荷主企業、受託事業者、設備ベンダーのそれぞれに運用面・投資面での判断材料を提供する。
倉庫事業者・3PLへの影響
拠点契約に期限がある賃貸倉庫を運営する3PL事業者にとって、原状回復義務や建物改修の制限は自動化投資の障壁となってきた。自動倉庫(AS/RS)や固定コンベアなどの据え置き型マテハンは、撤去・移設のコストが過大であり、荷主との契約期間内に減価償却を終えられないリスクがある。
床面への大規模施工を伴わず、設置や撤去が比較的容易な棚搬送型ロボットの有効性が実証されたことで、数年単位の受託契約であっても自動化設備の投資回収計画を組み立てやすくなる。特にBtoC特有のピースピッキング需要を抱える拠点において、延床面積や天井高の改修を伴わない設備更新の選択肢となる。
倉庫内作業員と現場管理への影響
庫内オペレーションにおいては、作業員の歩行時間と棚番の探索時間が削ぎ落とされたことで、身体的負荷の偏りが解消された。従来はベテラン作業員がロケーションの配置を把握し、ピッキング効率を牽引する構造が存在していたが、定点ピッキングへの移行により個人の習熟度差が埋められた。
現場リーダーにとっては、物量ピーク時に短期アルバイトや応援要員を投入した際、教育工数を最小限に抑えつつ誤ピッキングの発生率を抑制できる。業務の標準化によって、日ごとの出荷計画に対する必要人員の計算がブレにくくなり、シフト管理の精度向上につながる。
SaaS・テクノロジーベンダーへの影響
ロボットの単体販売やハードウェアの稼働率提示だけでは、受託物流の現場での採用獲得が難しくなっている。日通NECロジスティクスの事例では、現場とDX部門の連携に対し、ギークプラスが初期検討の情報提供から作業手順策定、教育方法の整備まで伴走したことが運用の定着要因として挙げられている。
ベンダー側には、既存WMS(倉庫管理システム)とのAPI接続といったシステム要件のクリアに加え、マニュアル作成や例外処理フローの構築など、現場実装を直接支援するエンジニアリング体制の有無が評価基準となる。
参考記事: ピッキングロボットの仕組みと主要タイプ解説|荷姿別の選び方から導入手順まで
LogiShiftの視点:固定マテハンから可変型自動化への設備投資シフト
日通NECロジスティクス東東京支店の事例は、倉庫自動化の選択基準が「最大処理能力を追求する固定式設備」から「契約や荷量に応じて可変できる自律型ロボット」へ明確にシフトしている実態を示している。
かつての物流センター投資では、マテハンメーカー主導のもと、建屋の建設段階からラックやソーターを組み込む大規模な設備設計が一般的であった。しかし、EC市場の拡大に伴って荷主の事業方針転換や配送スキームの変更サイクルが短縮化しており、5〜10年の長期契約を前提とした固定投資は受託側の財務リスクを高める要因となっている。賃貸倉庫での撤去・移設を前提とした設備設計は、3PL事業者が荷主の流動性に耐えうる収益基盤を作るための必須要件である。
また、日通NECロジスティクスが今後の展開として掲げている「商品の重量や寸法に応じた保管方法の見直し」は、GTP導入後の実効スループットを最大化する上で避けて通れない工程である。棚搬送型ロボットは平面的に棚を運ぶ特性上、取り扱うSKUの寸法・重量と棚間口の容積率が合致していなければ、搬送回数ばかりが増えて保管効率が低下する。ピッキング要員を50%削減した東東京支店が、次にどのサイズ区分まで搬送対象を拡張し、保管密度を維持できるかが、GTP方式の採算ラインを測る指標となる。
日通NECロジスティクス東東京支店におけるEVE導入は、賃貸倉庫の制約下でも現場とDX部門の主導により、ピッキング人員を半減させた上でBtoC出荷のSLAを維持できることを証明した。物流企業の現場リーダーや経営層は、自社拠点が自社物件か賃貸物件かにかかわらず、原状回復リスクを抑えながら人員配置を半減できる自律搬送技術の実装へ舵を切る段階に来ている。
参考記事: 物流自動化とは?導入メリットや主要設備・失敗しない進め方を徹底解説
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: prtimes.jp



