日本パレットレンタル(JPR)は2026年11月5日、企業間をまたいでリレー利用されたレンタルパレットの稼働実績が、2025年に延べ約2億3700万枚に到達したと発表しました。改正物流効率化法に基づく特定荷主の中長期計画提出期限が2026年10月30日に到来したことを受けた開示であり、企業間を巡るパレットの移動頻度は2022年比で約14%増加しています。
企業間を循環するレンタルパレットの利用推移と運用基盤の全貌
トラックドライバーの荷待ち・荷役時間の削減を目指す動きが広がる中、製品出荷時に荷物を載せたまま輸送先へ引き渡す「輸送型」パレットの稼働が急速に定着しています。日本パレットレンタルが公表したデータによると、2025年における企業間のリレー回数は延べ約2億3700万枚を記録し、計算上は1秒間に約7.5枚のパレットが荷主や物流拠点の間を移動している計算になります。
JPRが公表したパレット循環データの実績値
同社は国内の標準規格であるJIS規格T11型(1100mm×1100mm)を中心にアセットを構築しており、単一企業内での保管にとどまらないサプライチェーン横断の共同回収ネットワークを展開しています。公表された運用規模および循環の実態は以下の通りです。
| 項目 | 実績数値・指標 | 備考・前年比較 |
|---|---|---|
| パレット総保有枚数 | 約1,313万枚 | T11型パレットが中心 |
| 年間供給枚数 | 約5,436万枚 | 全国拠点への出荷総数 |
| 年間循環回数 | 約4回/枚 | 1枚あたりの年間稼働回転数 |
| 企業間リレー総数(2025年) | 延べ約2億3,700万枚 | 2022年比で約14%増加 |
| 共同回収拠点向けリレー | 2022年比 1.20倍 | 全体の供給伸び率を上回る推移 |
| 年間総車両運行回数 | 約39万回 | パレット輸送・回収の総運行数 |
| 回収・偏在調整の運行回数 | 約29万回 | 車両運行全体の約74%を占有 |
JPRが提供する共同回収拠点向けに引き渡されたパレット数は2022年比で1.20倍となり、パレット全体の供給枚数の伸びを上回るペースで拡大しました。この傾向は中長期計画の提出期限を控えた2026年1〜9月の運用実績においても継続しています。
「保管型」から出荷用の「輸送型」へのシフトを促した制度的背景
工場や倉庫の敷地内にとどまる従来の「保管型」パレットに対し、製品を積載したまま納品先へ輸送し、空になったパレットを回収ネットワークへ戻す運用が「輸送型」パレットです。手積み・手降ろし(バラ積み)作業を排除して荷役時間を短縮するため、荷主各社が輸送型への切り替えを進めています。
この運用転換を加速させた主な要因は、国による法規制と政策方針の具体化です。
- 改正物流効率化法による特定荷主規制の施行: 2026年4月に全面施行された同法により、年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主に対して物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画の策定・提出が義務付けられました。中長期計画の初回提出期限となった2026年10月30日に向け、各社が「荷役時間の短縮」を満たす直接的な手段として一貫パレチゼーションの導入を計画へ組み込みました。
- 総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)の策定: 2026年3月に閣議決定された大綱において、サプライチェーンのユニットロード化を促す「標準仕様パレット(T11型)」の普及が明記され、2030年度までにT11型の生産比率50%以上、データ連携実施率50%以上の達成がKPIとして掲げられました。
パレット偏在解消に向けたデポ自動化と回収運行の効率化
企業間リレーの総量が延べ2億枚規模に達したことで、パレットデポにおける運用効率も変化しています。JPRは千葉白井デポをはじめとする主要拠点において選別や検品の機械化設備を導入し、取り扱い規模の拡大を設備投資の原資とする運用体制を整えています。
一方で、パレットの回収と需給バランスの調整には膨大な輸送力が必要です。同社が運行する年間約39万回の車両運行のうち、使用済み空パレットの回収と地域間の在庫偏在を是正するための運行が約29万回を占めています。同社は荷主や物流企業と連携し、納品便の復路を活用した共同回収の定着や輸送頻度の見直しを進めることで、偏在調整に伴う運行回数の抑制を図っています。
参考記事: パレット標準化とは?物流2024年問題を解決するメリットと導入のステップ
サプライチェーン各層におけるオペレーションへの影響
共同利用型パレットのリレー回数が年間2億3700万枚に達した事実は、製造業、運送会社、倉庫会社の各実務に対して異なる実質的影響を及ぼしています。
製造業者・荷主企業:自社回収スキームの放棄と中長期計画の整合
自社便や専属便でパレットを回収する従来の手法は、届け先が増えるほど回収漏れによる紛失損失や戻り便の積載ロスを生じさせていました。特定荷主として中長期計画を策定した製造業者にとって、回収業務を自社で抱え込まずに納品先近隣のデポへ返却できるレンタルスキームの利用は、運行ごとの拘束時間管理と固定資産リスクを切り離す選択肢となっています。
自社独自の木製・プラスチック製パレットからT11型レンタルパレットへ移行する過程では、製品段ボールの包装モジュール変更や、パレタイザーの積載パターンの再設定作業が発生します。しかし、着荷主側でのフォークリフト荷役を前提とした受入体制が整うことで、工場出荷バースでのドライバー待機を削減し、配車要請に対する運送会社の受諾率を維持する効果が確認されています。
参考記事: 国土交通省など3省が特定荷主の中長期計画作成要点を公開|10月末提出に対応
トラック運送事業者:手作業荷役の解消と回転率の改善
10t車1台の手積み・手降ろし作業には往復で3〜4時間を要していましたが、T11型パレットを用いたフォークリフト荷役に置き換わることで、積み込み・荷降ろし作業は各15〜30分程度で完了します。拘束時間が直接的に圧縮されるため、時間外労働上限規制(年960時間)の枠内での運行管理が成立しやすくなります。
附帯作業として無償化されがちだった手作業の荷役負担から解放されることで、長距離便のドライバー雇用維持や、地場配送における1日あたりの運行回転数の向上が可能になります。一方で、荷役をフォークリフト作業へ完全移行するためには、着荷主側のバース環境やフォークリフト免許保持者の配置状況を事前に確認する運行管理手順の標準化が不可欠です。
倉庫事業者・3PL:入出庫バースの回転率向上とマテハン自動化
倉庫現場では、持ち込まれるパレット規格がバラバラである場合、自動倉庫のラックや垂直搬送機、無人搬送車(AGV)などの自動化ラインに荷物を直接投入できず、入庫時の積み替え作業が発生していました。サプライチェーンを通じてT11型パレットがそのまま流れてくることで、荷降ろし後の積み替え工程を省き、自動倉庫や保管ラックへ直結させるオペレーションが成立します。
入庫検品にかかる時間が短縮されることで、トラックのバース占有時間が減少し、限られた接車スペースで処理できる日当たり車両数が増加します。国交省の補助金制度などを活用してパレタイザーやRFID連携ゲートを整備した3PL拠点では、荷姿の統一を起点とした省人化の効果が顕在化しています。
参考記事: 国交省、上限1000万円の標準パレット補助金4次公募を開始し荷役を省力化
LogiShiftの視点:アセット共有からデータ基盤連携への転換点
日本パレットレンタルが公表した企業間リレー2億3700万枚というデータは、パレットが「個別企業が資産として囲い込む資材」から「業界全体で共有する輸送インフラ」へ不可逆的に移行した実態を示しています。
パレットの標準化が促す物流DXの基盤整備
パレットの物理仕様がJIS規格T11型へ収束することは、単なる荷役時間の短縮にとどまりません。パレットに貼付されたRFIDタグや二次元コードを通じて、個体識別番号と積載製品の出荷情報(ASNデータ)を紐付けるデジタル管理の前提条件が整うことを意味します。
パレットの循環数が年間2億回を超える規模に達した現在、各拠点でのパレット通過実績データは、そのまま全国の物流量や滞留時間を把握するための実働ログとなります。個社ごとに分断されていたWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)のデータをパレットの個体番号をキーとして接続できれば、納品先での検品レス化やバース予約システムの自動チェックインなど、高精度な物流DXの実装が可能になります。
中長期計画提出後の実務:追跡データに基づく定期報告への備え
特定荷主による中長期計画の初回提出期限であった2026年10月30日が通過したことにより、荷主企業のフェーズは計画の策定から「施策の定着と進捗データの測定」へと移行しました。法律上、特定荷主には毎年度の定期報告書の提出が義務付けられており、計画に盛り込んだ荷役時間短縮の実績を行政へ報告しなければなりません。
自社出荷における一貫パレチゼーションの適用率、納品先ごとのパレット返却実績、バース滞在時間の短縮数値を客観的に把握する体制が求められます。JPRをはじめとするパレットレンタル事業者の共同回収網を活用しつつ、入出荷実績データを自社の運行管理や行政報告と連動させる仕組みを早期に確立することが、法規制下におけるサプライチェーン維持の基準となります。
出典: 物流(ロジスティクス)ニュース LNEWS
出典: prtimes.jp
出典: isz.co.jp



