日本郵便グループとセイノーグループは2026年11月5日、2024年5月に締結した業務提携の進捗状況を公表し、特定技能制度を活用した外国人ドライバーの採用・育成分野における協業深化を発表した。両社はこれまでに計2万6,371便の共同運行を実施しており、積載効率向上にとどまらず、セイノースタッフサービスを通じた人材供給や教育ノウハウの共有へ連携領域を拡大する。
幹線共配2.6万便の運用実績と人材採用への領域拡張
日本郵便、日本郵便輸送、JPロジスティクスからなる日本郵便グループと、セイノーホールディングス、西濃運輸を中心とするセイノーグループは、長距離幹線輸送の効率化と輸送網の維持を目的に協業を推進してきた。2026年11月5日の共同記者会見では、提携合意から2026年9月までの約2年4カ月におよぶ運行実績とともに、拠点集約や自動運転、外国人労働力の確保に関する新たな工程が明かされた。
2年4カ月で積み上げた運行実績と定量的削減効果
両社グループが実施した共同運行は、物量が少なく積載率が低下しやすいルートや時間帯を相互に補完する形で進められた。日本郵便のBtoC貨物と西濃運輸のBtoB特別積合せ貨物を同一車両に混載することで、定期便の減便や積載率の引き上げを図っている。
2024年5月の基本合意から2026年9月までに実施された共同運行の実績および効果の概要は以下の通りである。
| 連携区分 | 具体的な運用内容 | 実施規模(2024年5月〜2026年9月) | 創出効果・計画値 |
|---|---|---|---|
| 幹線輸送共同運行 | 東京〜大阪間などの長距離便における相互混載 | 累計1万49便 | 年間CO2約550t削減、年間数億円規模のコスト削減 |
| 同一エリア内共同集配 | 同一地域における集荷および配達業務の統合 | 累計1万6,322便 | 車両稼働数の削減、末端集配の積載率向上 |
| 次世代技術の商用運行 | T2のレベル2自動運転トラックを用いた共同運行 | 神奈川〜大阪間(高速道路上) | 実商流での長距離運行省人化の検証 |
| 地方拠点の共有 | JPロジスティクス日向支店を九州西濃延岡営業所へ移転 | 2026年3月に「延岡支店」として同居開始 | 施設維持コストの圧縮、配達業務の共同化 |
| 外国人材の採用・育成 | セイノースタッフサービスを通じた教育・採用連携 | 西濃側先行採用、日本郵便は2027年春採用計画 | 運転免許切替支援、生活支援基盤の共同運用 |
西濃運輸の試算によると、一連の運行集約によって年間約550トンのCO2排出量削減と、年間数億円規模の運行コスト効率化が達成される見通しである。日本郵便の古閑圭一執行役員は会見において、幹線の共同運行が両社の低積載ルートを対象に選定されている点に触れ、積み上げた便数に比例して積載効率が確実に向上している実績を強調した。
参考記事: 日本郵便とセイノーグループの幹線共配1万便突破|年550t削減見込む
西濃運輸の先行受入と日本郵便への採用支援スキーム
業務提携の新たな柱として位置付けられたのが、在留資格「特定技能1号」を活用した外国人ドライバーの確保と育成である。政府は2024年3月29日に自動車運送業分野を特定技能の対象に追加することを閣議決定し、2024年12月より評価試験を開始した。これを受け、西濃運輸は2025年11月頃から海外現地での採用活動に着手している。
西濃運輸ではベトナムとインドから11人の採用を決定しており、まずは小型・中型トラックの乗務から開始し、段階的に大型トラック乗務へと育成する計画を進めている。今回の協業深化では、グループ会社のセイノースタッフサービスが蓄積した外国人ドライバーの採用ルートや教育訓練の知見を日本郵便グループへ展開する。
日本郵便の行木司常務執行役員は、セイノーグループからの支援を受け、2027年春を目途に外国人ドライバーを採用する方針を示した。日本の運転免許への切り替え手続きや安全教育、住居・生活支援体制の整備を共同で検証しながら、グループ各社で数人規模の実務乗務を開始する予定である。
参考記事: セイノースタッフサービスが倉庫特定技能で17人内定|免許不要枠を早期確保
拠点共有とレベル2自動運転による物理インフラの統合
両グループの提携は、車両運行や人材確保だけでなく、地上拠点の物理的な統合と自動運転技術の商用実装にも及んでいる。
インフラ共有の具体例として、2026年3月には宮崎県においてJPロジスティクス日向支店が九州西濃運輸延岡営業所の敷地内へ移転し、JPロジスティクス延岡支店として営業を開始した。同一ターミナルからの集配業務も共同化されており、過疎地域における個別拠点の維持管理コストや建て替え負担を軽減するモデルケースとなっている。
自動運転領域では、株式会社T2が開発した自動運転トラックを活用し、2025年7月から神奈川〜大阪間で商用運行を継続している。高速道路区間においてドライバーが運転席に待機する「レベル2」の自動運転システムを用い、往路では西濃運輸とJPロジスティクスの荷物を混載し、復路では西濃運輸と日本郵便の荷物を混載して運行することで、省人化運行の実務データを蓄積している。
参考記事: 鴻池運輸が印で年30人の運転手育成|外免切替停滞を回避し配属短縮
物流サプライチェーンの各層に及ぶ実務インパクト
特別積合せ運送の最大手の一角である西濃運輸と、全国の配送網を持つ日本郵便が輸送・拠点・人材の各レイヤーで協業を深める動きは、運送市場、現場のドライバー、規制当局の各方面に具体的な影響を与えている。
運送事業者:単独運行からアライアンス型リソース共有への転換
大手運送事業者が競合関係の枠組みを超えて幹線輸送や拠点を共有した実績は、中堅・中小の運送会社に対しても自前主義の再考を促す要因となる。長距離幹線便における実車率低下や燃料費高騰が続く環境下で、自社の路線網単独で採算を合わせるビジネスモデルは固定費負担が大きい。
年間数億円規模のコスト削減という数値が示されたことで、荷物の積み合わせや運行枠の共同利用は、資本提携を伴わないアライアンスによって実利を得る手段として定着しつつある。特に地方部における営業所の統廃合やターミナルの共同利用は、物量減少地域でのインフラ撤退を防ぐ現実的な選択肢として検討が進んでいる。
ドライバー:教育体制の刷新と運行プロセスの多国籍化
特定技能外国人の受入拡大とレベル2自動運転の導入は、運行現場における乗務割や管理手法の変更を伴う。2025年10月1日に施行された道路交通法施行規則の改正により、外国運転免許から日本の運転免許への切替(外免切替)審査が厳格化された。知識確認の文章試験化などによって合格率が低下する中、入国から実務乗務までのリードタイムをどう短縮するかが各社の課題となっている。
外国人ドライバーが配属される営業所では、点呼記録や運行指示書、納品先ルールの多言語化やピクトグラムの活用が不可欠となる。また、高速道路での自動運転トラック混載運行と地場配送の有人運行が切り離されることで、ドライバーの役割が長距離運行の運転専任から、拠点間の中継荷役や末端配送の品質管理へとシフトする動きも見られる。
行政・規制当局:共同物流と特定技能活用の政策検証モデル
国土交通省および出入国在留管理庁にとって、大手2社による共同物流の進展と特定技能外国人材の受入スキームは、改正物流効率化法に基づく連携指針の実効性を測る指標となる。自動車運送業分野の特定技能在留者数は制度創設以降の伸びが鈍化していたが、大手グループが自社主導で海外採用から免許切替、乗務開始までの受入ルートを整備することは、制度運用のボトルネック解消に向けた検証材料を提供する。
また、災害発生時における物資輸送拠点としての営業所活用や、被災自治体への復旧・復興支援での相互連携についても協議が進められており、民間の輸送インフラ共有が公的な防災機能の補完策として位置付けられる可能性も生じている。
LogiShiftの視点(独自考察)
日本郵便とセイノーグループによる提携の進展は、従来の運賃競争を前提とした「自社完結型オペレーション」から、競合他社とアセットを相互利用する「オープンな共同物流インフラ」への構造転換を示している。
特筆すべきは、共同運行の便数実績(2万6,371便)という運行レイヤーの協業にとどまらず、宮崎県延岡市での営業所同居に見られる「拠点インフラの共有」、さらには特定技能外国人の調達・育成という「労務供給機能の共有」へ踏み込んだ点にある。外免切替の厳格化によって外国人ドライバーの単独受入コストが跳ね上がる中、セイノースタッフサービスという既存の派遣・紹介機能を他社グループへ開放する手法は、間接コストの按分という意味で極めて合理的である。
今後は、2024年の基本合意時に示された枠組みを越え、日本郵便グループのJPトナミをはじめとする第三のネットワークがこの基盤へ合流できるかが焦点となる。単独企業での積載率向上には輸送網の構造上限界があり、幹線ダイヤ、遊休拠点、外国人材の教育ラインを水平分業で融通し合う体制を構築できるかどうかが、実務における輸送能力維持の分水嶺となる。
出典: LOGI-BIZ online
出典: ECのミカタ
出典: 西濃運輸(プレスリリースPDF)
出典: LOGI-TODAY
出典: Lnews


