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Home > 物流用語辞典 > 法規制・標準化> カーボンオフセット輸送

カーボンオフセット輸送とは?

この記事の要点
  • キーワードの概要:カーボンオフセット輸送とは、製品の調達や配送などの物流プロセスで排出されるCO2を把握し、削減努力を行っても削減しきれない排出量をJ-クレジットなどの排出権を購入・相殺することで、実質的なCO2排出ゼロを目指す輸配送の取り組みです。
  • 実務への関わり:荷主企業はサプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)を正確に算定し、オフセット証明書を取得することで、ESG開示要請や取引先からの環境基準に対応できます。また、グリーン物流事業者の選定や運送データ連携の実務に直結します。
  • トレンド/将来予測:国際的な脱炭素化の流れに伴い、企業のESG投資評価や環境規制への対応策として導入が進んでいます。今後はモーダルシフトやEVトラック導入などの直接削減施策と組み合わせた高精度なカーボンオフセット輸送が標準化すると予測されます。

サプライチェーン全体における温室効果ガス(GHG)排出量のうち、外部委託した輸配送に由来する割合は一般に荷主企業の総排出量の3〜5割を占めます。自社拠点だけでなく、調達から配送に至る物流領域(Scope3)の可視化と削減対応は、ESG投資への適合や取引先からの要請に対応する上で避けて通れないテーマです。本稿では、物流Scope3(カテゴリ4・9)の算出手法から、J-クレジット等を活用したオフセットの実務、パートナー選定基準、社内導入のロードマップまでを体系的に解説します。

目次
  • 物流Scope3(カテゴリ4・9)の排出量算定とカーボンオフセットの全体構造
  • Scope1・2・3の範囲整理と物流領域(カテゴリ4・9)のCO2排出量計算方法
  • 「直接削減」優先原則(SBTi基準)と「カーボンオフセット」を適用すべき残余排出量の見極め
  • J-クレジットを活用した物流カーボンオフセットの実務と証明書取得フロー
  • 物流領域で活用される主要クレジット(J-クレジット/JCM/非化石証書)の特徴と調達ルート
  • オフセット証明書の発行からESG開示(TCFD・SSBJ基準)への反映手順
  • グリーン物流・カーボンニュートラル配送を実現する導入形態の比較検討
  • 「自社(荷主)主導のクレジット調達」vs「物流事業者のCO2ゼロ配送サービス利用」の比較
  • グリーン物流パートナー(3PL・配送業者)選定時に確認すべき環境データの信頼性と運用基準
  • 荷主と物流事業者が連携して推進するScope3削減・相殺の5ステップロードマップ
  • 一次データ(燃料使用量・運送実績)獲得に向けた運送パートナーとのデータ連携手法
  • モーダルシフト・配送効率化による直接削減から残余排出相殺までの年次ロードマップ設計
  • 荷主企業向け「グリーン物流推進」導入チェックリストと投資対効果(ROI)試算モデル
  • CO2排出量相殺にかかる費用相場(tあたり単価)と予算シミュレーション
  • 環境規制・輸送制約に対応する荷主企業のグリーン物流社内推進チェックリスト

物流Scope3(カテゴリ4・9)の排出量算定とカーボンオフセットの全体構造

荷主企業が環境施策を進める上で、自社拠点でのエネルギー使用だけでなく、製品の調達から配送に至るサプライチェーン全体の排出量を把握・削減することが不可欠です。しかし、委託配送が中心となる物流領域ではデータの収集が難しく、削減に向けた優先順位の整理に苦慮するケースが多く見られます。

Scope1・2・3の範囲整理と物流領域(カテゴリ4・9)のCO2排出量計算方法

自社が所有するトラックで輸配送を行う場合はScope1(直接排出)に該当しますが、外部の物流事業者や3PLへ輸送を委託する場合はScope3(サプライチェーンでの間接排出)に整理されます。GHGプロトコルでは、物流に関わるScope3を「カテゴリ4(輸送・配送:上流)」と「カテゴリ9(輸送・配送:下流)」に区分しています。

区分 主な対象範囲 費用の負担主体
カテゴリ4(上流) 購入した原材料・資材の調達輸送、自社が手配・費用負担する出荷輸送および拠点間輸送 自社
カテゴリ9(下流) 自社が費用を負担しない販売後の製品輸送(買主・顧客負担の配送、卸・小売経由の配送など) 顧客・取引先等

物流分野におけるCO2排出量の算定方法は、収集可能なデータの精度に応じて以下の3つのアプローチから選択します。

  • 燃料法(最高精度):
    CO2排出量(t-CO2) = 燃料使用量(L) × 燃料別CO2排出原単位(t-CO2/L)
    ※委託先の物流事業者から具体的な燃料消費量のデータを入手できる場合に採用します。
  • 燃費法(中精度):
    CO2排出量(t-CO2) = [ 輸送距離(km) ÷ 燃費(km/L) ] × 燃料別CO2排出原単位(t-CO2/L)
    ※走行距離と使用車両の標準燃費が特定できる場合に適しています。
  • トンキロ法(標準・概算):
    トラック輸送の計算式:CO2排出量(t-CO2) = 輸送トンキロ(貨物重量t × 輸送距離km) × トンキロ法燃料使用原単位(L/トンキロ) × 排出原単位
    鉄道・船舶・航空の計算式:CO2排出量(t-CO2) = 輸送トンキロ × 輸送機関別排出原単位(t-CO2/トンキロ)

実務において委託先から燃料消費量の一次データを即座に回収できない初期段階では、自社が保有する出荷指示書や配車データから把握できる「貨物重量(t)」と「輸送距離(km)」をもとに、トンキロ法を用いて全体の排出量を推計するのが現実的です。例えば、月間1,000件の出荷指示データから全体の概算量を算出した上で、排出比率の大きい上位20%の主要幹線ルートに絞り、協力会社へ実燃料消費量のデータ提供を依頼して段階的に算定精度を高めていく手順をとります。

「直接削減」優先原則(SBTi基準)と「カーボンオフセット」を適用すべき残余排出量の見極め

排出量の算定・可視化が進んだ段階でオフセットの導入を検討しますが、国際的な気候目標基準であるSBTi(Science Based Targets initiative)のネットゼロ基準では、直接削減とオフセットの扱いを明確に区別しています。

SBTiの基準において、カーボンクレジットを用いた相殺は、企業が達成すべき直接削減目標(1.5℃目標に整合する直接削減率)の達成手段としてカウントすることは認められていません。まずは自社およびサプライチェーン内での直接的な削減努力を実行することが大前提となります。

具体的には、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を2050年までに90%以上直接削減した上で、既存の技術やインフラではどうしても削減しきれない残り10%以下の「残余排出量(Residual Emissions)」に対してのみ、クレジットを用いた除去・相殺(カーボンニュートラル配送の達成)が認められる構造になっています。

残余排出量を適切に見極め、オフセットを適用するための具体的な実務プロセスは以下の通りです。

  • 1. 排出構造の分析と削減限界の特定:算定データに基づき、輸送効率の低い路線やトラックの積載率・空車率を可視化し、自社努力で削減できる領域を洗い出します。
  • 2. グリーン物流の推進による直接削減の断行:モーダルシフト(鉄道・海運への転換)、共同配送の実施、EV・FCVといった次世代車両の導入、運行ルートの最適化を行い、直接排出量を削減します。
  • 3. 残余排出量に対するオフセットの適用:長距離輸送や重厚長大貨物など、現在の技術水準では化石燃料からの完全脱却が困難な輸送領域で発生する「残余排出量」に限り、J-クレジットをはじめとする信頼性の高い環境価値を割り当てます。

自社での直接削減施策を行わずにクレジット購入に頼る対応は、取引先や投資家から「グリーンウォッシング(見せかけの環境対応)」と判断されるリスクを高めます。自社の物理的な削減限界を数値で把握し、どうしても削減できない残余分に限ってオフセットを活用するという適切な優先順位の設定が求められます。

J-クレジットを活用した物流カーボンオフセットの実務と証明書取得フロー

自社努力(モーダルシフトや車両のEV化、配送ルートの最適化など)を行っても削減しきれない物流領域の残余排出量に対しては、信頼性の高い環境価値(クレジット・証書)を用いたオフセット手続きが必要になります。特に荷主企業がScope3物流(カテゴリ4:輸配送上流、カテゴリ9:輸配送下流)の削減目標を達成し、国内外のステークホルダーへ透明性を証明するためには、各種クレジットの明確な適性把握と正確な無効化処理が欠かせません。

物流領域で活用される主要クレジット(J-クレジット/JCM/非化石証書)の特徴と調達ルート

輸送活動で生じる残余排出量を相殺する手段として、国内では主に「J-クレジット」「JCM(二国間クレジット制度)」「非化石証書」の3種が検討されます。それぞれの特徴と物流領域での適性は下表の通りです。

制度分類 主な特徴と物流における適性 主な調達ルート 国際規格・ESG開示での扱い
J-クレジット(省エネ・再エネ等) 日本国内の省エネや再エネ導入により創出される国認証クレジット。トラック等の燃料消費に伴うScope3排出量の直接相殺に適しており、物流オフセットの手法として最も一般的。 J-クレジット登録簿システム経由の直接調達、東京証券取引所カーボン・クレジット市場、プロバイダー(仲介事業者)。 GHGプロトコル、CDP、SBT、SSBJ基準等において、残余排出量をオフセットする手段として広く認められる。
JCM(二国間クレジット) 途上国への脱炭素技術移転により日本政府とパートナー国が共同創出するクレジット。国際輸送や海外サプライチェーンを含む残余排出の相殺に向く。 国際協力機構(JICA)等の支援事業者、専門商社、政府主催のオークション等。 パリ協定第6条に準拠。国際的な標準スキームとして認められ、国境を越えた物流ネットワークの相殺に活用可能。
再エネ指定 非化石証書 日本の再エネ発電に伴う環境価値を証書化したもの。主に電力消費(Scope2)の排出係数をゼロ化する用途に限られ、燃料燃焼(Scope1/3)のオフセットには使えない。 日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引市場、または小売電気事業者からの購入。 Scope2(物流センターや倉庫の電気使用)のマーケット基準算定に適用可能。燃料消費に伴うScope3の直接オフセットには使用不可。

トラックや船舶、航空機などの輸送機器から発生する燃料由来の排出量を相殺する場合、非化石証書は適用対象外となります。したがって、輸送活動に伴うScope3排出量のオフセットには、省エネ・再エネ由来のJ-クレジットまたはJCMを取得するのが適切な実務選択となります。

オフセット証明書の発行からESG開示(TCFD・SSBJ基準)への反映手順

クレジットを購入・所有している状態のみでは、自社の排出量を減殺したと見なすことはできません。カーボンニュートラル配送を証明するためには、クレジットの所有権を放棄して二重使用を防ぐ「無効化(償却)」処理を実行し、公的な無効化証明書を取得した上でサステナビリティ開示へ反映させる必要があります。

  • ステップ1:J-クレジット登録簿システムでの無効化処理
    自社でJ-クレジット口座を保有している場合、J-クレジット登録簿システム上で対象クレジットを「無効化口座」へ移転申請します(仲介事業者を介す場合は代行申請)。無効化申請時の目的欄には、「2025年度 第3四半期 関東・関西間幹線輸送(Scope3 カテゴリ4)排出量のオフセット」のように、対象となる物流範囲・期間・計算根拠を明記します。無効化されたクレジットは市場から永久に離脱し、再転売や二重主張が防止されます。
  • ステップ2:公的証明書(無効化完了通知書・オフセット証明書)の取得
    無効化処理が完了すると、J-クレジット制度事務局より固有のシリアル番号が記載された「無効化完了通知書」が発行されます。また、環境省のガイドラインに準拠した第三者検証機関やプロバイダーを利用している場合は、相殺対象の物流事業名、無効化量(t-CO2)、シリアルIDが明記された「カーボン・オフセット証明書」を取得します。
  • ステップ3:SSBJ基準・TCFD等のサステナビリティ開示への反映
    サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の開示基準やTCFD等のフレームワークに準拠する場合、「総量排出量(絶対総量)」と「オフセット処理後の純量排出量」を分離して開示します。まずバリューチェーン全体の算定値として、オフセット前のScope3物流排出量(総量)を報告した上で、取得・無効化したJ-クレジットの数量や検証スキーム、シリアル番号を注記として記載し、目標に対する達成状況(純量)を補足説明します。
  • ステップ4:対外証明・監査資料としての保管
    取得した無効化完了通知書およびオフセット証明書は、統合報告書やサステナビリティレポートへの掲載だけでなく、取引先に対する環境貢献度の提示資料として活用できます。第三者検証やESG外部監査に備え、算定根拠データ(輸送トンキロ数・燃料消費量データ)および無効化完了通知書を、原則として5年間保存する管理体制を構築します。

グリーン物流・カーボンニュートラル配送を実現する導入形態の比較検討

自社努力(モーダルシフトや輸配送効率化)だけでは削減しきれない残留排出量を相殺してグリーン物流を実現するアプローチには、「荷主自らがクレジットを直接購入して処理する形態」と、「物流事業者が提供するオフセット機能付きサービスを利用する形態」の2種類が存在します。

「自社(荷主)主導のクレジット調達」vs「物流事業者のCO2ゼロ配送サービス利用」の比較

荷主企業が自社の物流体制(自社アセット中心か、複数事業者への外部委託中心か)に応じて適切な手法を選択できるよう、2つの導入形態の違いを比較・整理しました。

比較項目 自社直接調達型(荷主主導) サービス利用型(3PL・運送事業者主導) 選択の判断基準
クレジット調達・無効化の主体 荷主企業自身が調達し、J-クレジット制度口座等で無効化(償却)手続きを実施 3PL・配送業者が一括してクレジットを調達・無効化し、証明書を荷主へ提示 社内に環境価値取引や無効化手続きの実務体制が存在するか
対象とする物流範囲 複数委託先の輸送、調達・販売物流を含め、指定したすべての輸送区間を一括カバー可能 該当の3PL・配送業者が受託・輸配送する区間・荷物に限定される 委託先が単一の事業者に集約されているか、多数の運送会社に分散しているか
コスト構造と単価 J-クレジット等の市場価格・調達ルートに依存。大口調達によるボリュームディスカウントが働きやすい 配送単価に環境価値(グリーンプレミアム)が数円〜数百円上乗せされるサービス料金体系 年間輸送量の規模(大口輸送であれば直接調達の方がトータルコストを抑えやすい)
実務運用・算定負荷 荷主側で輸送実績データ(トンキロ数や燃料消費量)が集計・管理される 事業者が配送実績に基づく計算とオフセット処理を代行するため、荷主側の実務負荷は低い 物流部門・サステナビリティ推進部門におけるデータ管理リソースの有無

自社直接調達型は、月間5,000トンの貨物を10社以上の運送会社へ分散委託している場合などに適しています。荷主側で一元管理することで、運送会社ごとにオフセット対応の有無がばらつくリスクを防ぎ、一括してScope3(カテゴリ4)の排出量を相殺可能です。一方、サービス利用型は、特定の3PL事業者へ幹線輸送を全面的に委託している場合や、EC通販において大手宅配事業者のカーボンオフセット便を利用する場合に有効です。

グリーン物流パートナー(3PL・配送業者)選定時に確認すべき環境データの信頼性と運用基準

3PLや運送会社が提供する「CO2ゼロ配送サービス」を導入する際、将来的なグリーンウォッシングのリスクを回避するため、パートナー選定時には以下の3つの実務基準を満たしているか確認する必要があります。

  • CO2排出量計算方法の準拠性と精度: 「ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイドライン」に準拠しているかを確認します。車種一律の従来トンキロ法による概算値ではなく、実際の積載率や車両サイズを反映した「改良トンキロ法」、または「燃料法」を用いて精度高くデータが算出されているかが基準となります。
  • クレジットの品質と無効化証明のエビデンス: 配送業者が相殺に用いているクレジットが、国が認証する適格性の高い環境価値であるかを検証します。また、相殺処理が行われた際に、荷主企業ごとの識別番号や対象期間が明記された「無効化完了証明書」が発行される運用スキームになっているかの確認が必要です。
  • 二重主張(ダブルカウンティング)の防止体制: 物流事業者が購入した同一のクレジットが、他の荷主企業の相殺実績として二重に割り当てられていないかをチェックします。出荷指示データに対して何t-CO2のクレジットが割り当てられ無効化されたかを追跡できる透明性が求められます。

荷主と物流事業者が連携して推進するScope3削減・相殺の5ステップロードマップ

荷主企業が物流領域(Scope3 カテゴリ4・9)における温室効果ガス排出量を削減・相殺するためには、委託先の3PLや運送事業者と協調した段階的なアクションプランの構築が不可欠です。以下に実務プロセスを5つのステップで示します。

ステップ 名称 実施内容 到達目標
Step 1 データ可視化 支払金額や推計値(二次データ)による全体像の把握 排出量の多い輸送ルート・拠点の特定
Step 2 一次データへの転換 運送事業者の実燃料消費量・運行実績データの収集 自社の削減努力が反映される算定精度の確立
Step 3 直接削減の実行 モーダルシフト、積載率向上、車両電動化の推進 物理的なCO2排出量の直接削減
Step 4 残余排出の相殺 J-クレジット等を用いた削減困難領域の相殺処理 カーボンニュートラル配送の達成
Step 5 対外開示・協調 SSBJ/CDP基準での情報開示と取引先評価制度の構築 サプライチェーン全体のグリーン化推進

一次データ(燃料使用量・運送実績)獲得に向けた運送パートナーとのデータ連携手法

Scope3算定の精度を高める上で重要なのが、運送パートナーからの一次データ(実際の燃料使用量や走行実績)の取得です。初期段階(Step 1)で使われる統計データ(二次データ)に基づく計算では、荷主が梱包見直しや積み付け改善を行っても数値に反映されません。自社の削減努力を数値化するには、Step 2である「燃料法」または「燃費法」による一次データへの移行が必要となります。

データ共有に伴う運送会社の作業負荷を軽減し、スムーズな連携を図るための具体的なアプローチは以下の2点です。

  • データフォーマットの標準化とDXツール活用:配送管理システム(TMS)や標準物流コードのAPI連携を活用し、荷主側の発注データ(重量・納品先)と運送側の運行データ(給油記録・走行距離)を自動突合する仕組みを整えます。手動でのエクセル集計を廃止することで、双方の作業負担を削減できます。
  • データ提供に対する協調的インセンティブ設計:一次データの提供に応じた運送会社に対して、契約期間の長期化、バース予約システムにおける優先割り当て枠の設定、燃料サーチャージ交渉における協議機会の優先付与といった対価を用意します。

モーダルシフト・配送効率化による直接削減から残余排出相殺までの年次ロードマップ設計

データ基盤が整った後は、Step 3である物理的なCO2排出量の直接削減に取り組みます。幹線輸送においてはトラック輸送から鉄道や沿海フェリーへ切り替えるモーダルシフトを実施することで、輸送1トンキロあたりのCO2排出量を大幅に削減できます。また、パレット単位での受注標準化や混載便の活用によって積載率を引き上げる施策も即効性をもたらします。

直接削減を推進した上で、現在の技術では削減しきれない領域に対してStep 4の残余排出相殺(J-クレジット等の無効化)を適用します。そしてStep 5においてサステナビリティレポート等で透明性の高い開示を行います。

年次フェーズ 推進ステップ 主な施策と実行プロセス 到達基準(定量・定性目標)
1年目(基盤構築期) Step 1〜2 全輸送ルートの排出量可視化、主要運送パートナー(輸送量上位8割)との一次データ連携開始 Scope3 カテゴリ4の算定カバー率100%、一次データ取得比率30%達成
2〜3年目(直接削減期) Step 3 500km以上の長距離輸送でのモーダルシフト運用、共同配送および積載率向上施策の実施 輸送1トンキロあたりのCO2排出原単位15%削減、一次データ取得比率70%達成
4〜5年目(相殺・確立期) Step 4〜5 直接削減困難な残余排出へのJ-クレジット等の適用・無効化処理、SSBJ基準に準拠した開示の実施 対象物流ルートでのカーボンニュートラル配送達成、一次データ取得比率90%以上維持

荷主企業向け「グリーン物流推進」導入チェックリストと投資対効果(ROI)試算モデル

荷主企業がオフセット輸送を検討する際、経営層や財務部門に対して「投資対効果(ROI)」を論理的に説明することが求められます。環境貢献としての側面だけでなく、法令順守や顧客企業の選定基準クリア、サプライチェーン維持に伴うリスク回避といった事業上の定量的メリットとして整理することが予算確保の鍵となります。

CO2排出量相殺にかかる費用相場(tあたり単価)と予算シミュレーション

J-クレジット(省エネ・再エネ由来)の調達相場は、1t-CO2あたり4,500円〜5,500円前後(平均約5,000円/t-CO2)で推移しています。実際にオフセットを実施する際は、これに加えて仲介手数料や第三者認証による証明書発行費用(数万円〜15万円程度)が発生します。

大型トラックを用いて年間500万トンキロ(輸送貨物重量×輸送距離)の幹線輸送を行う荷主企業が、ディーゼル車の排出係数(0.000167 t-CO2/トンキロ)を適用して年間約835トンのCO2を算出・相殺する場合の試算モデルは以下の通りです。

試算項目 算出根拠・想定条件 年間費用(概算) 財務・経営層への提案ポイント
CO2排出量の算定 年間500万トンキロ×係数(年間835t-CO2) 社内運用(システム活用) 改正省エネ法・SBT基準に準拠した算定基盤の確立
J-クレジット調達費 5,000円/t-CO2 × 835t 約4,175,000円 J-クレジット調達により確実な排出相殺を証明
証明書発行・管理費 プロバイダー委託・第三者検証手数料 約150,000〜300,000円 顧客への提示や統合報告書に記載できる公的証拠の確保
合計導入コスト グリーン物流推進費用の総額 約4,325,000〜4,475,000円 出荷1tあたり数百円レベルのコスト調整で環境価値を付与

配送ルートの最適化や積載率向上による自社削減を進めることで、相殺に必要なクレジット調達量を直接圧縮できます。例えば自社努力で排出量を10%削減できれば、年間のクレジット購入費用を約41.7万円削減可能です。

環境規制・輸送制約に対応する荷主企業のグリーン物流社内推進チェックリスト

トラックドライバーの労働時間規制に伴う輸送能力の制約や、省エネ法・物流効率化法に基づく荷主企業への義務化に対応するため、社内関係部門が連携して推進するためのチェックリストを策定しました。

フェーズ 確認・実施事項 主導部署 定量的成果物・判定基準
1. 現状把握・算定 対象となる配送ラインの特定と輸送データの集計(トンキロ法・燃料法の選択) 物流管理部門 Scope3(カテゴリ4)における正確なCO2排出量の算出データ
2. 自家削減の実行 協力物流会社との協議(積載率改善、共同配送、配送頻度の見直し) 物流企画部門 自家削減目標の達成度(例:前年比排出量◯%削減)
3. オフセット設計 削減困難な残余排出量の見極めとJ-クレジット調達予算の確保 財務・環境推進部門 クレジット調達計画および社内決裁・予算承認
4. 対外開示・営業活用 証書発行に基づく顧客企業への提示、サステナビリティレポートへの記載 経営企画・営業部門 環境配慮型輸送の証明書、顧客からの環境評価スコア改善

物流現場で集計した運行データを財務・環境部門が精査し、直接削減分とオフセット必要分を切り分ける運用フローを構築することで、最適化された予算内で最大の環境効果と企業価値向上を実現できます。

よくある質問(FAQ)

Q. カーボンオフセット輸送とは何ですか?

A. 調達や配送などの物流領域(Scope3)で発生する温室効果ガス(GHG)排出量を算出し、自社の削減努力を行った上で、どうしても減らしきれない残余排出量をJ-クレジット等の調達によって相殺(オフセット)する輸配送のことです。これにより、サプライチェーン全体の排出量を実質ゼロに近づけることができます。

Q. 直接削減(モーダルシフト等)とカーボンオフセット輸送の違いは何ですか?

A. 直接削減はEVトラックの導入やモーダルシフト、配送効率化などにより、輸配送時のCO2排出量そのものを減らす取り組みです。一方、カーボンオフセット輸送は削減努力を経ても残る「残余排出量」に対し、外部のクレジットを購入して相殺する手法です。SBTi基準などでは、まず直接削減を優先することが原則とされています。

Q. 荷主企業がカーボンオフセット輸送を導入するメリットは何ですか?

A. 荷主企業の総排出量の3〜5割を占める物流(Scope3)のCO2を相殺・削減できるため、ESG投資の適合やTCFD・SSBJ基準におけるサステナビリティ開示の信頼性が大幅に向上します。さらに、取引先からの脱炭素要請に応えることで競争力を高められるメリットもあります。

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