- キーワードの概要:グリーン物流とは、商品の移動や保管、包装、さらには廃棄・回収に至るすべてのプロセスで、二酸化炭素などの温室効果ガス排出を減らし、環境に優しい物流を目指す取り組みです。単なるエコ活動にとどまらず、物流全体の無駄を省き、効率を高める構造改革でもあります。
- 実務への関わり:法改正(改正省エネ法や物流効率化法など)への対応が求められる中、荷主企業と物流事業者が協力して取り組みます。具体的なメリットとして、輸送ルートの最適化や共同配送による無駄な燃料費の削減、補助金制度の活用、さらに企業の社会的評価(ESG評価)の向上などが期待できます。
- トレンド/将来予測:今後は、AIやITシステムを活用したルートの自動最適化や、倉庫の配置見直しによる移動距離の短縮がさらに進みます。脱炭素(カーボンニュートラル)の流れは世界的な義務となっており、環境に配慮しない企業は取引から排除されるリスクがあるため、今後の必須戦略となります。
サプライチェーン全体から排出される温室効果ガス(GHG)のうち、輸送・保管部門が占める割合は、一般的な製造・流通業において全体の10%から20%に達します。グリーン物流とは、商品の調達から生産、流通、そして廃棄・回収を行う「リバース・ロジスティクス」に至る全行程において、この環境負荷を低減しつつ物流効率化を図る構造改革です。単なるトラックの排気ガス削減にとどまらず、持続可能な社会インフラとして物流網を機能させるための戦略的定義として位置づけられています。
- グリーン物流とは?荷主と事業者が今押さえるべき定義と法規制の背景
- 脱炭素・カーボンニュートラルと改正省エネ法・物流効率化法の関係性
- 荷主企業と物流事業者の「共同義務」として定義されるグリーン物流
- 経営課題を解決する:グリーン物流に取り組むべき3つの実務的メリット
- ESG経営の推進とグローバルなESG投資・企業評価への加点効果
- 輸送・配送プロセスの効率化がもたらす直接的なコスト削減効果
- 補助金獲得や表彰制度(グリーン物流パートナーシップ表彰)の活用メリット
- 環境負荷とコストを同時に下げるグリーン物流の3大手法
- トラックから鉄道・船舶へシフトする「モーダルシフト」の導入手順
- 競合他社とも手を取り合う「共同配送」による積載率の最大化
- 包装の簡素化・再利用と「リバース・ロジスティクス」の構築
- ITシステム(DX)が実現するグリーン物流の無駄排除プロセス
- 輸配送管理システム(TMS)によるルート最適化と空車走行の削減
- 倉庫管理システム(WMS)を起点とする拠点配置最適化と移動距離の極小化
- グリーン物流を自社で実装するロードマップと実務チェックリスト
- Scope 1, 2, 3に基づく自社のCO2排出量(GHG)可視化ロードマップ
- 荷主と物流事業者で合意すべき「グリーン物流推進チェックリスト」
グリーン物流とは?荷主と事業者が今押さえるべき定義と法規制の背景
日本における環境物流へのアプローチは、1990年代から2000年代にかけて施行された「自動車NOx・PM法」や「改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)」による排気ガス抑制やエネルギー効率の改善から始まりました。この流れは、地球温暖化対策である「カーボンニュートラル」の実現に向けた、温室効果ガス(GHG)排出量自体の削減義務へとシフトしています。このマクロな環境変化は、企業のESG経営における評価基準とも直結しており、法的な基準をクリアすることが市場での競争力を維持する要件となっています。
脱炭素・カーボンニュートラルと改正省エネ法・物流効率化法の関係性
日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けて、物流分野での法規制は急速に強化されています。その中核を成すのが「改正省エネ法」と「物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」の2つの法律です。
改正省エネ法では、年間輸送量が3,000万トンキロ以上となる荷主企業(特定荷主)に対して、省エネ計画の作成や、エネルギー消費原単位を年平均1%以上低減させるための定期報告が義務付けられています。これに加え、近年の法改正では非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画の策定も求められるようになりました。例えば、年間100万個以上の荷物を出荷するEC事業者や大規模製造業において、従来のディーゼル車依存から電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への代替、あるいは長距離輸送を鉄道や船舶へ切り替える「モーダルシフト」の導入計画の提出が具体的に求められます。
一方の物流効率化法は、複数の事業者が連携して行う「共同配送」や、TMS(輸配送管理システム)およびWMS(倉庫管理システム)を活用した積載効率の向上プロジェクトに対して、計画認定による税制優遇や資金面での支援を行う枠組みです。このように、省エネ法による「義務・規制」と、物流効率化法による「促進・支援」が一体となり、日本の脱炭素化を実務レベルで推進する構造が確立されています。
荷主企業と物流事業者の「共同義務」として定義されるグリーン物流
これまでの環境対策は、運送を担う物流事業者側の努力に委ねられる傾向が強くありました。しかし、これからの物流設計において環境負荷低減は、荷主企業(発荷主・着荷主)と物流事業者が「パートナーシップ」を組み、双方で取り組むべき「共同義務」と位置づけられます。
この背景には、国際的な温室効果ガス(GHG)排出量の算定基準である「GHGプロトコル」における「Scope 3(自社の活動に関連する他社の排出量)」の存在があります。荷主企業が自社工場での脱炭素を推進しても、輸送を委託しているトラックから排出されるCO2が削減されなければ、荷主企業自身のESG目標を達成できません。そのため、荷主側にはドライバーの荷待ち時間を削減するための倉庫側システムの刷新や、共同配送を円滑に行うための納品頻度・時間指定の緩和といった具体的な協力が求められます。
| 役割 | 具体的な取り組みとシステム活用 | 関連する法規制・基準 |
|---|---|---|
| 荷主企業(発・着荷主) | ・出荷リードタイムの緩和 ・納品先との共同配送調整 ・リバース・ロジスティクスの設計(梱包資材回収など) |
・改正省エネ法(特定荷主義務) ・GHGプロトコル(Scope 3対応) |
| 物流事業者 | ・TMSを活用した最適な配車・運行管理 ・モーダルシフトの受け皿確保 ・次世代エコタイヤや低燃費車両の導入 |
・物流効率化法(効率化計画の認定取得) ・自動車NOx・PM法 |
サプライチェーンの川上から川下までを統合的に管理し、パートナー同士が連携しなければ、規制基準のクリアや炭素税の負担回避は不可能です。グリーン物流とは、企業の法的リスクを回避し、持続可能な輸配送体制を維持するための合理的な共同戦略に他なりません。
経営課題を解決する:グリーン物流に取り組むべき3つの実務的メリット
物流分野における環境対応は、長年にわたり「コストを伴う慈善活動」と捉えられがちでした。しかし、現在のサプライチェーンにおいては、脱炭素への取り組みそのものが企業の財務体質を強化し、市場競争力を高める強力なレバーとなります。
ESG経営の推進とグローバルなESG投資・企業評価への加点効果
グローバル資本市場において、企業の持続可能性を測定する指標としてESG評価の重要性が高まっています。特に機関投資家や主要取引先は、サプライチェーン全体(Scope 3)における温室効果ガス(GHG)の排出量を厳しく評価するようになっています。
CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)やMSCIなどの国際的な評価機関から高いスコアを獲得することは、企業の資金調達コストに直接的な影響を及ぼします。自社で排出する直接排出(Scope 1・2)だけでなく、物流委託先が排出する間接排出(Scope 3のカテゴリ4:上流の輸送・配送、およびカテゴリ9:下流の輸送・配送)の可視化と削減を行うことで、ESG評価ランクの維持・向上が可能となります。
実際の取引基準として、温室効果ガス(GHG)削減計画の提出を必須とするグローバル企業が増加しており、これに対応できない企業はサプライチェーンから排除されるリスクがあります。グリーン物流の推進は、評価の加点に留まらず、主要な取引先との継続的なビジネス関係を維持・拡大するための必須条件となっています。
輸送・配送プロセスの効率化がモたらす直接的なコスト削減効果
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みは、輸送プロセスの無駄を徹底的に排除するプロセスと同義であり、直接的な物流コストの削減をもたらします。特に実車率や積載率の低さは、CO2排出量を増大させるだけでなく、配送コストを押し上げる主要因です。
これらを解決する手段として、共同配送の仕組み構築やモーダルシフト(長距離トラック輸送から鉄道や船舶への転換)、返品や廃棄に関わるリバース・ロジスティクスの最適化が有効です。デジタル技術を活用して積載率と運行効率を最大化することで、以下のコスト削減効果が生み出されます。
| 削減項目 | 従来運用(改善前) | グリーン物流導入後(改善後) | 実務上の効果と削減インパクト |
|---|---|---|---|
| 車両積載率の向上 | 平均積載率 40%(個別配送時) | 平均積載率 65%(共同配送・TMS活用) | 運行台数を約38%削減。これに伴う燃料費、高速道路料金、ドライバー人件費の比例的削減。 |
| 長距離輸送のモーダルシフト | 1,000km区間の10tトラック輸送 | JR貨物(鉄道コンテナ輸送)への転換 | 1トンキロあたりのCO2排出量を約10分の1に削減。燃料価格高騰リスクの回避による長距離運賃の安定化。 |
| 倉庫内・待機時間の削減 | 手書き伝票と目視による出入庫 | WMSとTMSの連携による予約受付システム化 | トラックの平均待機時間を2時間から30分に短縮。アイドリングストップによるCO2削減と、延滞料金(デマレージ)の解消。 |
輸送効率の向上は、燃料費削減にとどまらず、運行を委託するトラック台数そのものの削減につながります。例えば、月間1,000チャーター便を運行する荷主企業が、積載率の向上によって年間運行便数を約4,600便削減できた場合、燃料価格の変動リスクを最小化すると同時に、委託運賃のベースコストを年間で数千万円規模で引き下げる効果を発揮します。
補助金獲得や表彰制度(グリーン物流パートナーシップ表彰)の活用メリット
国や行政による公的な支援制度を戦略的に活用することで、グリーン物流の導入に必要な初期投資コストを大幅に抑制できます。
法的な裏付けとして、改正省エネ法では特定事業者に対して省エネ計画の作成とエネルギー使用量削減を義務付けています。これに伴い、物流効率化法に基づく認定を受けることで、モーダルシフトや共同配送の実施に必要な設備投資(コンテナ導入やパレット標準化など)に対して、政府系補助金や税制優遇措置(法人税の特別償却など)の適用が可能となります。
さらに、経済産業省や国土交通省などが推進する「グリーン物流パートナーシップ表彰」への申請・受賞は、企業の先進的な姿勢を対外的に示す機会です。優良事業者として表彰されることで、企業の社会的信用が向上し、サステナビリティに配慮した企業としてのブランド価値が確立されます。この認知向上は、優秀な若手人材の採用活動を有利に進めるなど、長期的な経営基盤の強化につながります。
環境負荷とコストを同時に下げるグリーン物流の3大手法
トラックから鉄道・船舶へシフトする「モーダルシフト」の導入手順
トラックによる長距離輸送を鉄道や船舶に切り替える「モーダルシフト」は、温室効果ガス(GHG)の排出量を大幅に削減する極めて有効なアプローチです。これは、企業のカーボンニュートラル実現やESG経営の推進、さらには荷主企業に課される改正省エネ法の省エネ義務達成に大きく寄与します。
しかし、実務上は「リードタイムが延びる」「天候による運行遅延への対応」といった課題が存在します。これらをクリアしながら導入を進める具体的な手順は以下の通りです。
- 対象ルートの選定:長距離(一般的に500km以上)かつ、納期に一定の猶予がある定期ルート(例:東京〜福岡間など)を抽出します。
- 輸送モードの検証とパートナーシップの確立:鉄道コンテナ(JR貨物)やフェリーの空き枠状況を確認し、通運事業者や船社との調整を行います。
- テスト輸送とTMSでの計画調整:一部の貨物でテスト輸送を実施し、運行管理システム(TMS)を用いて輸送工程の進捗確認とリードタイムのズレを調整します。
- 物流効率化法の認定申請:複数事業者による共同の取り組みとして、国から「物流効率化法」に基づく総合効率化計画の認定を受けることで、税制優遇や各種補助金などの支援を活用します。
| 輸送手段 | 温室効果ガス(GHG)排出量(トラック比) | 主なメリット | 主な課題と対策 |
|---|---|---|---|
| 鉄道輸送 | 約11分の1に削減 | 大量一括輸送が可能、運行スケジュールが正確 | 災害時の代替手段(トラック代替など)の確保が必要 |
| 船舶輸送(内航海運) | 約6分の1に削減 | 不整形・大重量貨物の輸送に適し、コストを低減可能 | リードタイムの長期化に対する事前在庫計画の調整 |
競合他社とも手を取り合う「共同配送」による積載率の最大化
個々の企業がそれぞれトラックを手配する従来の配送体制は、積載率の低下を招き、不要な温室効果ガス(GHG)を排出する要因となっています。この課題を解決するのが、複数の荷主企業が同一の車両や路線をシェアして配送する「共同配送」です。競合関係にある同業他社同士であっても、非競争領域である「物流」においてパートナーシップを結ぶことで、積載率を最大化し、配送コストの削減と脱炭素を同時に達成できます。
共同配送は車両台数の削減によるコストカットとGHG削減をもたらす一方、実務面では納品条件の調整やデータ連携がハードルとなります。これを乗り越えるためのアプローチは以下の3点です。
- 同一納品先エリアの抽出:同一のドラッグストアやGMS(総合スーパー)を納品先とする、メーカー数社による共同配送プロジェクトを立ち上げます。これにより、納品先での荷待ち時間の解消というメリットも生まれます。
- データプラットフォームの共通化:各社の運行管理システム(TMS)や倉庫管理システム(WMS)のデータを連携させ、在庫状況や出荷情報を共有・最適化します。
- 中立的な3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の起用:コーディネーターとなる物流事業者を挟むことで、運賃精算ルールの策定や配送品質の統一をスムーズに進めます。
例えば、競合関係にある日用品メーカー4社が共同配送を実施したケースでは、同一エリア内の小売店への配送車両を一本化しました。これにより、積載率が従来の50%から80%以上に向上し、輸送コストの20%削減と同時に二酸化炭素排出量の25%削減を達成しています。
包装の簡素化・再利用と「リバース・ロジスティクス」の構築
グリーン物流をさらに一歩進めるために、見落とせないのが梱包資材の削減と、回収を前提としたリバース・ロジスティクスの構築です。使い捨ての段ボールやプラスチック包装を削減し、繰り返し使える通い箱やプラスチックパレットの運用に切り替えることは、資材費削減と廃棄物削減の双方に直結します。
これを実現するには、製品の回収・返品、および包装資材の回収プロセスを、通常の販売物流とシームレスに連携させる必要があります。導入時の「回収コストの増大」や「資材の紛失管理」を防ぐための実践手法は以下の通りです。
- WMSとRFIDを用いた個体管理:倉庫管理システム(WMS)とRFIDタグを組み合わせることで、どの通い箱がどの納品先にあり、いつ戻るかをリアルタイムに管理します。これにより紛失率を抑え、資産としての回転率を高めます。
- 往路と復路のワンパッケージ設計(帰り便の活用):納品を終えたトラックの復路(帰り便)を利用して空の通い箱や使用済みパレットを回収するスキームを構築します。これにより、回収のためだけに別途トラックを仕立てるコストとGHGの発生を防ぎます。
包装の簡素化とリバース・ロジスティクスの統合は、企業のESG経営におけるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への貢献度を示す重要な指標となり、企業価値の向上にも寄与します。
ITシステム(DX)が実現するグリーン物流の無駄排除プロセス
ベテラン配車担当者の経験や手作業による運行計画など、属人的な管理体制だけでは、カーボンニュートラルや脱炭素に向けた緻密な温室効果ガス(GHG)排出量の削減、および限界レベルの無駄排除には対応できません。これらを実現するためには、デジタル技術を活用した客観的な数値化と、最適化プロセスの自動化が不可欠です。
輸配送管理システム(TMS)によるルート最適化と空車走行の削減
手作業での配車計画では、配車担当者の経験値や取引先との固定ルートに依存しやすいため、走行距離の重複や突発的な渋滞によるアイドルタイムの発生を防ぐことが困難です。これに対し、TMS(輸配送管理システム)は、各車両の現在地、配送先の指定時間、積載重量、道路の混雑予測といった多様なパラメーターを瞬時に計算し、最もGHG排出量が少なくなる「最短かつ最高効率のルート」を自動算出します。
具体的には、保有車両50台で日次300箇所へのルート配送を行う中堅物流事業者の場合、TMSの自動配車エンジンを適用することで、総走行距離を平均10〜15%削減することが可能です。この総走行距離の短縮は、燃料消費量の直接的な削減と直結し、改正省エネ法に定められた省エネ推進努力目標の達成や、ESG経営を推進する荷主企業への具体的な削減データ提供へとつながります。
倉庫管理システム(WMS)を起点とする拠点配置最適化と移動距離の極小化
倉庫内のオペレーションを管理するWMS(倉庫管理システム)は、単なる庫内作業の効率化ツールに留まらず、配送距離そのものを短縮するための拠点最適化の起点となります。WMSに蓄積された各拠点からの出荷実績、アイテム別の出荷頻度、配送先住所のデータを地理情報システム(GIS)などと連携して分析することで、配送先から最も近い最適な倉庫拠点へ在庫を最適配置する意思決定が可能になります。
例えば、全国に5か所の配送拠点を持ち、年間10万件の出荷を処理する小売企業の場合、WMSのデータを基に在庫配置の最適化(ロケーション再配分)を実行することで、1配送あたりの平均輸送距離を30km短縮することが可能になります。これにより長距離輸送の必要性が減少するため、トラックから他モードへ転換するモーダルシフトへの移行をさらに容易にします。
以下に、ITシステム(DX)の導入がグリーン物流の各プロセスにおいて、どのように環境負荷とコストの削減を両立させるかを整理します。
| プロセス項目 | 導入前(手作業・アナログ管理) | 導入後(TMS・WMSによるDX) | 環境・経営へのメリット |
|---|---|---|---|
| 配車・運行ルート作成 | 配車担当者の経験則に基づくため、積載率や走行ルートにバラつきが発生。 | TMSによる自動ルート最適化。渋滞情報を回避し、最短距離を常に算出。 | 燃料消費量および温室効果ガス(GHG)排出量の直接削減。 |
| 空車率の改善 | 往路のみ実車で帰路は空車。他社との調整は電話やFAXに依存。 | クラウド上で他社とリアルタイムにマッチングし、帰路での共同配送を成立。 | 実車率の向上による運賃コスト削減、および業界全体の脱炭素化。 |
| 在庫・拠点の配置 | 勘や経験則で特定拠点に在庫が偏り、遠方への長距離配送が常態化。 | WMSの出荷データを基にした最適拠点への分散配置と移動距離の極小化。 | 幹線輸送の削減によるCO2削減、改正省エネ法などの各種規制対応。 |
| 回収・循環型物流 | リバース・ロジスティクスの管理が不十分で、専用の回収便を別途配車。 | 納品完了後の戻り便に回収品を混載し、WMSで在庫・入荷を自動追跡。 | 追加の車両手配を抑制。ESG経営におけるサーキュラーエコノミーへの適応。 |
グリーン物流を自社で実装するロードマップと実務チェックリスト
グリーン物流の自社実装は、環境負荷の低減だけでなく、ESG経営の推進や改正省エネ法などの法規制対応、さらには物流コスト削減を同時に実現するための経営戦略です。実務担当者が着手できる具体的なロードマップと、実務で使えるチェックリストを提供します。
Scope 1, 2, 3に基づく自社のCO2排出量(GHG)可視化ロードマップ
脱炭素およびカーボンニュートラルを達成するためには、まず自社が排出する温室効果ガス(GHG)の正確な可視化が不可欠です。サプライチェーン全体の排出量を対象とするScope 1、Scope 2、そして輸送・配送に深く関わるScope 3の算定に向けた、4つのステップを解説します。
ステップ1:算定対象範囲(バウンダリ)の確定
まずは、自社が直接排出するScope 1(社用車や自社トラックの燃料燃焼)、他社から供給された電気などの使用に伴うScope 2(自社倉庫やオフィスの照明・空調など)、そして他社に委託した配送や原材料の調達段階を含むScope 3(特に輸送・配送に関わる「カテゴリ4:上流の輸送・配送」および「カテゴリ9:下流の輸送・配送」)の範囲を明確にします。自社がコントロールできる直接削減目標と、他社とのパートナーシップを通じて削減する共同目標を区別しなければ、実効性のある削減計画を策定できません。
ステップ2:活動量データの収集体制構築(TMS・WMSの活用)
正確な温室効果ガス(GHG)算出には、配送距離、積載率、燃費、貨物重量などの「活動量データ」を継続的に収集する仕組みが必要です。WMSから出荷重量データを抽出し、TMSが記録する配送ルートごとの走行距離と掛け合わせることで、各配送における正確な「トンキロ(輸送トン数×輸送距離)」を自動的に算出できます。改正省エネ法における「特定荷主」に該当する企業の場合、このシステム連携によるデータ収集体制を整えることで、年度末の定期報告書作成時の業務負荷を大幅に削減できます。
ステップ3:排出原単位の適用と排出量の算出
収集した活動量データに、環境省や経済産業省が公開している「排出原単位」を掛け合わせてCO2排出量を算出します。輸送部門においては、以下の2つの手法を使い分けます。
- 燃料法:自社車両の燃料消費量(軽油やガソリンのリットル数)が把握できる場合に使用。最も精度が高く、Scope 1の算定に適しています。
- 改良トンキロ法:委託輸送(Scope 3)において、輸送トン数と走行距離に加え、車種別の最大積載量や積載率を考慮して算出。実態に近い排出量を把握でき、削減施策の効果を反映しやすいため、国土交通省も推奨しています。
ステップ4:削減施策のシミュレーションと目標設定
可視化されたデータに基づき、具体的な削減施策の効果をシミュレーションします。自社倉庫から500km以上離れた地方拠点への長距離トラック輸送を、鉄道や船舶を利用したモーダルシフトへと切り替えることで、該当ルートのCO2排出量を最大で約8割削減できる試算が成り立ちます。これらのシミュレーション結果をもとに、2030年、2050年のカーボンニュートラルに向けたマイルストーンをESG経営の目標値として統合します。
荷主と物流事業者で合意すべき「グリーン物流推進チェックリスト」
持続可能な物流体制の構築は、荷主企業または物流事業者の単独行使では成立しません。トラック運転手の時間外労働の上限規制に伴う輸送力不足への対応や、物流効率化法の精神に基づき、双方が対等な関係で連携し、実務レベルで改善を推進するためのチェックリストを以下に示します。
| 領域 | チェック項目 | 具体的な改善手法・連携アクション | 関連する主な法律・基準 |
|---|---|---|---|
| 輸送の効率化 | 長距離(500km以上)の定時運行トラックが存在していないか? | 鉄道や内航海運を活用したモーダルシフトへの転換を検討し、リードタイムの調整を荷主・事業者間で合意する。 | 物流効率化法、改正省エネ法 |
| 積載率の向上 | トラックの平均積載率が50%を下回っていないか? | 同一エリアに向かう他社貨物との共同配送スキームの構築。または、パレットの規格統一による荷役時間の短縮。 | 物流効率化法 |
| 待機時間の削減 | 発着荷主の拠点での荷待ち・荷役時間が、1運行あたり合計2時間を超えていないか? | WMSや予約受付システムの導入。荷主側でのフォークリフト作業の分担や、予約時間枠の設定による待機の解消。 | 改善基準告示(労働時間規制) |
| 循環型物流の構築 | 使用済みの資材や梱包材、返品の回収ルートが非効率になっていないか? | 配送の復路(帰り便)を活用したリバース・ロジスティクスの体制構築。資材回収を共同で行う仕組みの整備。 | 資源有効利用促進法 |
| データ連携 | CO2排出量の算定に必要なデータが、月次で自動共有されているか? | TMSおよびWMSのAPI連携による、活動量データの自動抽出・共有プロセスの標準化。 | 改正省エネ法、GHGプロトコル(Scope 3) |
このチェックリストを四半期ごとに荷主・物流事業者間のパートナーシップ会議で突き合わせることで、一方的なコストカットや無理な納期設定を防ぐことができます。同時に、物流効率化の進捗に応じたCO2排出量削減という共通の成果を、お互いの企業のESG価値向上として分配できる循環を生み出すことが、真のグリーン物流の実装へとつながります。
よくある質問(FAQ)
Q. グリーン物流とは何ですか?
A. グリーン物流とは、商品の調達から生産、流通、そして廃棄・回収(リバース・ロジスティクス)に至る全行程において、環境負荷を低減しつつ物流効率化を図る構造改革です。単なる排気ガスの削減にとどまらず、改正省エネ法などの法規制を背景に、荷主企業と物流事業者が共同で取り組むべき持続可能な物流網の構築を目指します。
Q. グリーン物流に取り組む企業側のメリットは何ですか?
A. 主なメリットは3点あります。1点目はESG経営の推進による企業評価の向上やグローバルな投資の獲得です。2点目は配送ルート最適化などによる直接的なコスト削減、3点目は補助金の獲得や「グリーン物流パートナーシップ表彰」などの制度活用です。環境配慮と同時に、企業の競争力強化にも繋がります。
Q. グリーン物流を推進するための具体的な取り組みには何がありますか?
A. 代表的な取り組みとして、トラックから鉄道・船舶へ切り替える「モーダルシフト」や、他社と連携する「共同配送」による積載率の向上が挙げられます。さらに、回収を伴うリバース・ロジスティクスの構築や、ITシステム(TMS/WMS)を活用したルートや拠点配置の最適化により、無駄な配送距離や空車走行を削減します。