- キーワードの概要:スキッドパレットとは、荷物を載せる上の板(天板)と脚だけで作られ、下の板(底板)がないパレットのことです。一般的なパレットと比べて構造がシンプルで軽く、コストを抑えられる特徴があります。
- 実務への関わり:底板がないため、ハンドリフトを差し込みやすく、狭い場所でも作業がスムーズになります。また、重ねて収納できるため保管スペースの節約や、輸出用の梱包としても大いに役立ちます。ただし、段積みがしにくい点には注意が必要です。
- トレンド/将来予測:トラックドライバー不足が懸念される2026年問題に向けて、積載効率を上げるための重要アイテムとして注目されています。今後は自動倉庫や無人搬送車(AGV)などの最新設備と組み合わせた、物流のデジタル化(DX)での活躍が期待されています。
物流現場の生産性向上やコスト削減を設計する際、最適な資材の選定は極めて重要な経営課題です。多種多様な物流資材の中でも、「スキッドパレット」の導入可否については、その特殊な構造ゆえに慎重な判断が求められます。単なる一種類のパレットとして安易に導入すると、現場のオペレーションに深刻な混乱や想定外の作業事故を招くリスクが潜んでいるからです。
本記事では、物流用語としての「スキッド」の正確な定義と力学的な特性から始まり、一般的な平パレットとの構造的な違い、実務上のメリット・デメリットの深掘り、輸出業務における「スキッド梱包」のコンプライアンス(国際基準)について網羅的に解説します。さらに、深刻化するトラックドライバー不足(2026年問題)や、自動倉庫・AGV導入といった物流DXを見据えた戦略的活用法に至るまで、日本最高峰の詳細な粒度で紐解きます。現場の作業効率を最大化し、サプライチェーンのレジリエンスを高めるための実践的な専門知識としてご活用ください。
- スキッドパレットとは?一般的なパレット(平パレット)との構造的な違い
- 物流用語「スキッド」の定義と構造的特徴(底板の有無と力学)
- 現場で頻発する「呼称の違い」によるコミュニケーションエラー
- 【比較表】平パレットとの違い(構造・コスト・強度・安定性)
- スキッドパレットを導入する4つのメリットと重要KPI
- 製造・調達コストの削減とLCA(ライフサイクル)評価
- ネスティングによる保管スペースの最適化と返送物流の効率化
- 底板がない構造による洗浄の容易さとHACCP(衛生面)の対応
- ハンドリフトの取り回し向上と作業者のエルゴノミクス(人間工学)
- 物流現場で注意すべきスキッドパレットのデメリットと実務的対策
- 段積み(多段積み)の制限とトラック内での混載トラブル
- ハンドリフト使用時の車輪干渉・機材不適合のメカニズム
- 荷重分散の難しさと「点荷重」による積載物・天板の破損リスク
- システム(WMS)とアナログ運用によるフェイルセーフの構築
- 「スキッド梱包」とは?貿易・輸出実務における重要性と落とし穴
- パレット梱包とスキッド梱包の明確な違いとハンドリング
- 重量物・大型機械の重心制御と強制的な段積み防止効果
- 国際基準(ISPM No.15)に基づく燻蒸・熱処理と通関トラブル事例
- 【材質・用途別】スキッドパレットの選び方と導入判断のROI
- 材質別(木・プラスチック・金属)の特性とリアルな現場課題
- ワンウェイ(輸出用・使い捨て)運用でのコスト削減シミュレーション
- 自社の物流現場にスキッドを採用すべきかの厳格な判断基準
- 物流DX・2026年問題を見据えたスキッドパレットの戦略的活用
- 積載効率の最大化と実車率向上による輸送リソース不足対策
- 自動倉庫(AS/RS)・AGV・AMRとの相性と設備側の調整事項
- DX推進時の組織的課題とレジリエンスを備えたサプライチェーンの構築
スキッドパレットとは?一般的なパレット(平パレット)との構造的な違い
物流用語「スキッド」の定義と構造的特徴(底板の有無と力学)
物流用語における「スキッド(Skid)」とは、荷物を積載するための上部デッキボード(天板)と、それを支える脚部(ブロックやストリンガー・桁)のみで構成され、床面に接する側の底板(下デッキボード)が完全に省略された荷役台を指します。一般的な平パレットとの構造上の最大の違いは、この「底板の有無」に尽きます。
この違いは、単なる材料の削減にとどまらず、物理的な力学(荷重のかかり方)を根底から変容させます。底板を持つ平パレットは、積載物の重量を底板を通じて床面に対して「面荷重」として均等に分散させます。一方、スキッドパレットは底板がないため、全重量が桁やブロックといった脚部のみに集中し、床面に対して「点荷重」または「線荷重」として作用します。この力学的な特性を理解していないと、後の章で述べる深刻な荷崩れや保管トラブルを引き起こす原因となります。
現場で頻発する「呼称の違い」によるコミュニケーションエラー
物流実務において、スキッドパレットと「片面使用型パレット」が混同して呼ばれるケースが散見されます。片面使用型パレットも裏返して荷物を載せることはできませんが、床面側にはハンドリフトの車輪が通る隙間(窓)を設けた「田の字」や「日」の字型の底板が存在します。スキッドパレットには、この「田の字」の底板すら一切存在しません。
現場の作業員や資材調達担当者の間でこの定義が曖昧なまま、「片面パレットを100枚発注して」といった指示が飛ぶと、納品されたのが底板のないスキッドであり、自動倉庫のコンベアラインに載せられずにラインが停止する、といったコミュニケーションエラーによる重大なトラブルが頻発します。社内の標準作業手順書(SOP)において、パレットの形状と呼称を明確に定義し、共通認識を持たせることが実務上の第一歩となります。
【比較表】平パレットとの違い(構造・コスト・強度・安定性)
WMS(倉庫管理システム)の改修やマテハン機器の入れ替えに伴い、スキッドパレットと平パレットの仕様差異を正しく把握することは、物流設計の要です。運用上の差異を以下の比較表にまとめました。
| 比較項目 | スキッドパレット(底板なし) | 一般的な平パレット(底板あり) |
|---|---|---|
| 荷重の伝わり方 | 点荷重・線荷重(脚部のみで接地) | 面荷重(底板により広く分散) |
| 段積みの可否 | × 原則不可(下の荷に荷重が集中し陥没の危険大) | ○ 安定した多段積みが可能 |
| 保管スペース(空パレ時) | ◎ 脚を入れ込むネスティングにより大幅に容積圧縮が可能 | △ ネスティング不可。積み上げた分だけ高さを占有 |
| コストと主な用途 | 安価。ワンウェイ輸出やラック専用保管向け | 比較的高い。長期保管や自動倉庫、循環型運用向け |
このように、スキッドパレットは「機動力」と「空パレット保管時の省スペース性」において圧倒的な強みを持ちますが、荷重分散の弱さというトレードオフを抱えています。次章からは、この特性が生み出す具体的なメリットと、効果を測定するための重要KPIについて深掘りします。
スキッドパレットを導入する4つのメリットと重要KPI
製造・調達コストの削減とLCA(ライフサイクル)評価
スキッドパレット最大の導入メリットは、底板(下デッキボード)を省略したことによる圧倒的なコスト競争力です。使用される木材やプラスチック樹脂の材料費がダイレクトに削減され、一般的な平パレットと比較して調達コストを約20%〜30%程度抑えることが可能です。調達部門におけるKPIとして、「パレット1枚あたりの単価(CPA: Cost Per Asset)」の大幅な改善が見込めます。
さらに、近年注目されているLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点からも優位性があります。製造時に必要な原材料が少ないため、カーボンフットプリント(CO2排出量)の削減に直結します。特にプラスチック製スキッドパレットの場合、樹脂の射出成形時の消費電力が抑えられるため、企業のスコープ3(サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量)削減目標の達成に向けた有効な一手として評価されています。
ネスティングによる保管スペースの最適化と返送物流の効率化
物流センターにおいて「空パレットの保管スペース」は収益を生まないデッドスペースです。プラスチック製スキッドパレットの多くは、脚部を互い違いに入れ込む「ネスティング(入れ子状の積み重ね)」が可能な設計となっており、驚異的な省スペース化を実現します。
一般的な平パレットを10枚重ねた場合、約1,500mmの高さになりますが、ネスティング対応のスキッドパレットであれば約500〜600mm程度に圧縮されます。これにより、倉庫内の「保管面積に対するパレット収容率」というKPIが劇的に向上します。また、空パレットを拠点間ループで返送する際、1台のトラックに積載できる枚数が約2.5倍〜3倍に跳ね上がります。これはチャーター便の運行回数を激減させ、輸送費(実質的なパレット回収コスト)の大幅な削減と、トラックからのCO2排出量削減という二重のメリットをもたらします。
底板がない構造による洗浄の容易さとHACCP(衛生面)の対応
食品、医薬品、化粧品など、クリーンルームを併設する製造業の現場において、パレットの衛生管理はHACCP対応を含めた死活問題です。平パレットは上板と底板の間に「内部空間」が存在し、そこにホコリや泥水、虫の死骸などが滞留しやすく、高圧洗浄機をかけても完全に汚れを落としきれず、乾燥にも多大な時間を要します。
一方、底板がないスキッドパレットは死角となる内部空間が存在しません。下から一気に洗浄水を吹き飛ばすことができ、水捌けが非常に良いため、乾燥設備を通した際や自然乾燥時のリードタイムが劇的に短縮されます。これにより、パレット内部でのカビの発生や、木製パレットにおける害虫の繁殖リスクを物理的に排除できます。日常的に洗浄・消毒を繰り返す現場において、「洗浄サイクルタイム」というKPIを大幅に短縮し、作業員の労働環境を改善します。
ハンドリフトの取り回し向上と作業者のエルゴノミクス(人間工学)
現場の庫内作業における機動力の観点でも、スキッドパレットは優れた特性を発揮します。通常の片面使用型パレットをハンドリフトで搬送する際、爪を差し込んだ後に前輪が底板を「ガコン」と乗り越える必要があります。この衝撃が積載物の荷崩れを引き起こしたり、乗り越えの負荷が作業員の腰に負担をかけたりします。
スキッドパレットには底板がないため、ハンドリフトの車輪が一切の障害物なくスムーズに奥まで進入できます。車輪の乗り越えによる振動が発生しないため、飲料や精密機器といったシビアな商材の搬送に最適です。また、エルゴノミクス(人間工学)の視点からも、パレットを引き出す際の初動負荷(引き力)が軽減され、女性や高齢の作業員でも扱いやすくなり、労災(腰痛など)の防止という安全衛生面の重要KPIの改善に直結します。
物流現場で注意すべきスキッドパレットのデメリットと実務的対策
段積み(多段積み)の制限とトラック内での混載トラブル
スキッドパレットの最大の弱点は、段積み(多段積み)が著しく制限される点です。荷重が点や線に集中するため、スキッドパレットの下に直接段ボール箱などを置いて段積みをすると、上部パレットの脚部が下の荷物を容赦なく押し潰し、大規模な荷崩れや商品破損(圧座)を引き起こします。
実務上の落とし穴として頻発するのが「トラック内での混載トラブル」です。路線便(特積み)のトラックにスキッドパレットで出荷した場合、ドライバーは荷台の空間(高さ)を有効活用するため、パレットの上に別の荷物を載せようとします。しかし、スキッドパレット自体の天板強度が低かったり、上に積まれた荷物によって自社製品が押し潰されるリスクが高まります。これを防ぐための対策として、トラック輸送時は「上に積載厳禁」のコーンを配置する、あるいは庫内保管時には「ネステナー」や「パレットサポート」といった鉄製の専用保管ラックを併用し、パレット同士が直接触れ合わない環境を構築することが必須です。
ハンドリフト使用時の車輪干渉・機材不適合のメカニズム
前章で「ハンドリフトの取り回しが良い」と解説しましたが、それはあくまで「適合する機材を使用した場合」に限られます。底板がないためフォークの差し込み自体は容易に見えますが、いざリフトアップしようとした際、ハンドリフトの前輪(ロードホイール)がパレットの桁(脚部)の真下に位置してしまうと、ジャッキアップ時に桁を突き上げて破壊してしまう「ハンドリフト干渉」が発生します。
一般的なハンドリフトの爪の長さ(例:1,070mm)と、ロードホイールのドロップポイント(車輪が接地する位置)、そしてスキッドパレットの桁の間隔(ピッチ)がミリ単位で適合しているかを事前に実測しなければなりません。適合しない場合、無理に引き抜こうとして木くずやプラスチック片が飛散し、製品への異物混入(コンタミ)クレームに繋がるため、導入前の機材適合テストは絶対条件となります。
荷重分散の難しさと「点荷重」による積載物・天板の破損リスク
平パレットと比較して、スキッドパレットはデッキボードの隙間が広く取られていたり、底面構造が貧弱であったりするため、偏荷重や点荷重に極めて弱いです。例えば、ドラム缶や小型の金型、キャスター付きの台車など、接地面が特殊で重い貨物を直接載せると、パレットの天板がたわみ、最悪の場合は折損します。
このような重量物をスキッドで扱う場合の現場の対策として、積載物の直下に厚さ15mm以上のベニヤ合板や強化段ボール(トリプルウォールなど)の当て板を敷き、疑似的な「面」を作り出して荷重を均等に分散させる手法が取られます。資材コストを削減するためにスキッドを導入したにもかかわらず、当て板の運用コストや手間が上回ってしまっては本末転倒であるため、積載物の特性(底面のフラットさ、重量バランス)を見極めることが重要です。
システム(WMS)とアナログ運用によるフェイルセーフの構築
スキッドパレットを安全に運用するためには、システムと現場ルールの両面からフェイルセーフ(誤操作をしても安全側に働く仕組み)を構築する必要があります。
まずWMS(倉庫管理システム)において、パレット種類ごとの荷姿マスタを厳格に登録し、スキッドパレットで入荷したロケーションには「段積み不可」「平置き専用」または「ラック格納必須」のフラグを強制的に立てます。これにより、フォークリフトの車載端末に誤った多段積みの指示が出ないようシステムでブロックします。
さらに、システム障害(WMSダウン)が発生した際のバックアップ体制(BCP)も欠かせません。停電やネットワーク障害でハンディターミナルが使えなくなった際、現場の作業員が目視で「これは段積みしてはいけないパレットだ」と直感的に判別できるよう、現品票に赤色の警告シールを貼付する、あるいはスキッドパレット自体を特定の色(赤や黄色など)に統一するといった、アナログな視覚統制が危機管理の要となります。
「スキッド梱包」とは?貿易・輸出実務における重要性と落とし穴
パレット梱包とスキッド梱包の明確な違いとハンドリング
視点を変え、貿易・輸出実務における梱包手法としての「スキッド梱包」について解説します。一般的な「パレット梱包」が、上板・桁・底板で構成される平パレットの上に製品を載せてバンドやフィルムで固定するのに対し、「スキッド梱包」は製品自体を直接、角材などの桁(腰下)にボルトで強固に打ち付けて一体化させる手法を指します。つまり、底板がないだけでなく、製品そのものが梱包の強度を担う構造体の一部となるのが特徴です。
この手法は現場のハンドリングにおいて、クレーンでの玉掛け(ワイヤー掛け)が容易になるというメリットがあります。密閉された木箱(密閉箱)とは異なり、製品の吊り上げポイント(アイボルトなど)がむき出しになっているため、現地の港湾で不慣れな作業員が荷役を行う際でも、重心を見誤って落下させるリスクを低減できます。
重量物・大型機械の重心制御と強制的な段積み防止効果
スキッド梱包が、大型工作機械やプラント設備といった超重量物のワンウェイ(使い捨て)輸出で圧倒的なシェアを誇る理由は、「重心の極小化」にあります。平パレットの上に不定形の機械を載せると重心が高くなり、海上輸送中のピッチング(縦揺れ)やローリング(横揺れ)によって致命的な荷崩れを引き起こします。スキッド梱包では、製品の重量バランスに合わせて強固な木材の桁を自在に配置し、重心を極限まで低く保つことができます。
さらに、ベテランの貿易実務者がスキッド梱包を選ぶ戦略的な理由に「強制的な段積み防止効果」があります。製品がむき出しで上部が平らでないスキッド梱包貨物は、物理的・心理的に上に別の貨物を載せることが困難です。混載船(LCL)内や海外の保税倉庫において、上に重い貨物を乱暴に段積みされて自社の精密機械が圧壊するという最悪の事態を、防波堤として未然に防ぐ役割を果たすのです。
国際基準(ISPM No.15)に基づく燻蒸・熱処理と通関トラブル事例
輸出実務において、木製のスキッドを使用する際に絶対に避けて通れないのが「国際基準(ISPM No.15)」に基づく検疫措置です。未加工の無垢木材を使用したパレットや梱包材は、マツノザイセンチュウなどの病害虫の越境を防ぐため、厳格な熱処理(HT)または臭化メチルによる燻蒸処理(MB)が義務付けられています。
貿易担当者が最も恐れるのが、この「処理証明のスタンプ(IPPCマーク)不備による通関ストップ」です。現地の税関でスタンプがかすれて読み取れなかったり、指定された位置に押印されていなかったりした場合、貨物は即座に差し止められます。これは単なる出荷遅延では済まされず、最悪の場合は相手国での全量焼却処分、あるいは日本への積み戻し(返送)を命じられ、数千万円規模の損害賠償やプラント建設の工期遅延といった重大なコンプライアンス違反に直結します。資材調達時は、処理不要の合板やLVL(単板積層材)、スチール製への代替を検討するか、出荷前にIPPCマークの鮮明さを写真付きのエビデンスとして記録する厳格な運用フローが求められます。
【材質・用途別】スキッドパレットの選び方と導入判断のROI
材質別(木・プラスチック・金属)の特性とリアルな現場課題
スキッドパレットは材質によって、現場での取り扱いやすさや耐用年数、LCAに大きな差が出ます。現場が直面するリアルな課題をベースに材質別の特性を整理します。
- 木製スキッド:初期導入コストが最も安く、表面の摩擦抵抗が大きいため積載物が滑りにくいのが特徴です。現場での釘打ち補修も容易です。しかし、木くずやササクレの発生による異物混入リスクがあり、食品・医薬品業界では敬遠されます。また前述の通り、輸出時にはISPM15に準拠した消毒処理コストが上乗せされます。
- プラスチック(樹脂)製スキッド:軽量で衛生的であり、ネスティング保管が可能なため、国内の循環型物流やクリーン環境に最適です。素材としてPE(ポリエチレン)は耐寒性に優れ、PP(ポリプロピレン)は剛性が高いという違いがあります。弱点として、結露した床面やフォークリフトの金属爪に対して非常に滑りやすく、急ブレーキ時の荷崩れ対策(ストレッチフィルムの多重巻きや滑り止めゴムの装着)が必要です。
- 金属(スチール・アルミ)製スキッド:圧倒的な耐荷重と耐久性を誇り、超重量物のスキッド梱包や、自動倉庫の専用パレットとして使用されます。ただし自重が重く人力でのハンドリングは実質不可能であり、防錆対策(メッキや粉体塗装)を怠ると急速に劣化します。
ワンウェイ(輸出用・使い捨て)運用でのコスト削減シミュレーション
スキッドパレットが投資対効果(ROI)を最大化するのは、回収を前提としないワンウェイ(使い捨て)での運用です。輸出コンテナのバンニング(積み込み)において、積載効率の最大化は海上運賃の削減に直結します。
一般的な平パレットは底板の厚みが約20〜30mmありますが、スキッドパレットにはこれがありません。例えば、40フィートのハイキューブコンテナに段ボール箱を隙間なく積み込む際、この「パレット下部の3センチの余裕」が、コンテナ全体で段数をもう1段増やせるかどうかの決定打となるケースが多々あります。1段増えることでコンテナ1本あたりの積載量が5%向上すれば、年間100本のコンテナを輸出する企業にとって、コンテナ5本分の莫大な輸送運賃の削減という明確なROIを叩き出します。
自社の物流現場にスキッドを採用すべきかの厳格な判断基準
「単価が安くて省スペースだから」という理由だけでスキッドパレットを導入すると、現場は機能不全に陥ります。以下のチェックリストを用いて、自社の運用に適合するかを厳格に審査してください。
- 「段積み」保管の必要性: 倉庫の天井高を活かして直接パレットを重ねる段積みが必須の現場では、スキッドの採用は見送るべきです。パレットラック(重量ラック)やネステナーへの格納を基本ルールとできる十分な保管設備と動線があるかを確認してください。
- マテハン機器群との互換性検証: 稼働しているすべてのフォークリフト(リーチ式・カウンター式)、ハンドリフト、電動パレットトラックの爪の長さ・幅・最低位寸法をリストアップし、スキッドの桁間隔と完全に干渉しないことを実機でテストしてください。
- イレギュラー対応力(組織的成熟度): ロケーションエラーやシステムダウンが発生した際、現場の作業員が「スキッドは段積み厳禁」という基本原則を遵守できる組織風土・教育体制が整っているかが、重大事故を防ぐ最後の砦となります。
物流DX・2026年問題を見据えたスキッドパレットの戦略的活用
積載効率の最大化と実車率向上による輸送リソース不足対策
2024年問題を経て、トラックドライバー不足がさらに深刻なフェーズへと突入する「2026年問題」。運ぶ車がない、運ぶ人がいないという未曾有の輸送リソース不足において、パレットの選定は単なる資材調達から「経営戦略」へとパラダイムシフトを起こしています。
トラック1台あたりの積載量を極限まで引き上げる上で、底板を持たないスキッドパレットは強力な武器となります。全高が数センチ低くなることによるトラック庫内の空間最大化はもちろん、特筆すべきは空パレット回収時のネスティング効果です。返送時の容積を通常の平パレットの半分以下に圧縮できるため、空車回送(荷物を載せずに走る無駄な運行)を最小限に抑え、実車率を大幅に向上させます。これにより、限られたトラック台数とドライバーの拘束時間の中で、より多くの製品を運ぶ強靭な輸配送ネットワークの維持に貢献します。
自動倉庫(AS/RS)・AGV・AMRとの相性と設備側の調整事項
物流DXの中核を担う自動倉庫(AS/RS)や無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)を導入する際、パレットの構造はロボットのパフォーマンスを左右する最大の要因となります。システムインテグレーター(SIer)任せにして現場が最も痛い目を見るのが、この機器とパレットの「アンマッチ」です。
スキッドパレットは底板がないため、低床から潜り込んで持ち上げるタイプのAGVとは物理的な干渉を起こしにくく、非常に相性が良いというメリットがあります。しかし、自動倉庫のコンベアラインでは深刻な課題が発生します。設備に搭載された光電センサーはパレットの底面を基準に位置を認識しますが、底板がないスキッドはセンサーの光が空間を透過してしまい、「パレット無し」や「姿勢異常」という誤検知エラーを頻発させ、ラインを停止させます。これを解決するためには、スキッドパレット側にセンサー検知用のダミー板(リフレクター)を取り付けるか、設備側のセンサーの取り付け角度・感度をシビアにチューニングする高度な調整作業が不可欠です。
DX推進時の組織的課題とレジリエンスを備えたサプライチェーンの構築
新しいパレット規格の導入や物流DXの推進にあたっては、必ずと言っていいほど「現場の抵抗感」という組織的課題に直面します。長年、平パレットの扱いに慣れきった現場作業員からすれば、段積みが制限され、ハンドリフトの差し込みに気を使うスキッドパレットは「作業効率を落とす厄介者」と映るからです。
この組織的課題を克服するためには、経営層や物流企画部門が「なぜ今、スキッドパレットを採用するのか」という全体最適のビジョン(輸送コストの削減、自動化機器への適合、CO2排出量の削減など)を現場に丁寧に提示し、KPIを共有する必要があります。貿易実務から庫内オペレーションに至るまで、スキッドパレットの正確な力学的特性を理解し、そのメリット(軽量・省スペース・低コスト)を最大限に引き出しつつ、デメリット(段積み不可・センサー誤検知)をシステムとルールでカバーする。これこそが、2026年問題という物流危機を乗り越え、コスト競争力と回復力(レジリエンス)を備えた強靭なサプライチェーンを構築するための重要な鍵となるのです。
よくある質問(FAQ)
Q. スキッドパレットとは何ですか?
A. スキッドパレットとは、一般的なパレットにある「底板」が存在しない特殊な構造を持った物流資材のことです。底板がないため製造コストを抑えられ、空パレットを重ねて保管(ネスティング)できる特徴があります。ただし、特殊な構造ゆえに安易に導入すると現場の混乱や事故を招くリスクがあるため、慎重な選定が求められます。
Q. スキッドパレットと平パレットの違いは何ですか?
A. 最大の違いは「底板の有無」です。一般的な平パレットには上下両方に板がありますが、スキッドパレットには底板がありません。この構造的な違いにより、スキッドパレットはハンドリフトの差し込みが容易で作業性が高い反面、荷重が分散しにくいため、平パレットのように安定した段積み(多段積み)ができないという力学的な特徴があります。
Q. スキッドパレットのメリット・デメリットは何ですか?
A. メリットは、製造・調達コストの削減、重ねて保管・返送できるスペース効率の良さ、底板がないことによる洗浄の容易さです。一方で、多段積みが制限される点や、機材によってはハンドリフトの車輪が干渉するトラブルが起きやすい点がデメリットです。トラック内での混載トラブルも起こり得るため、運用環境に応じた実務的対策が不可欠です。