- キーワードの概要:車上渡しとは、トラックの荷台の上で荷物の引き渡しを行う契約条件のことです。荷台から荷物を降ろす作業はすべて受け取る側の責任と負担で行う必要があり、ドライバーは原則として荷降ろしを手伝いません。
- 実務への関わり:配送コストを抑えられるメリットがある一方で、荷受人が人員やフォークリフトなどの設備を手配しなければなりません。破損事故時の責任所在が明確になるため、現場でのトラブルを防ぐには事前の準備と運送会社との確認が不可欠です。
- トレンド/将来予測:2024年問題による労働時間規制の厳格化に伴い、ドライバーの負担軽減が急務となっています。昔ながらの曖昧な慣習は排除され、今後はシステムを活用して配送条件や責任範囲を厳密に可視化・管理する物流DXが主流となります。
B2B物流や大型機器の輸送において、最も頻繁に用いられながら、最も現場でのトラブルが絶えない契約条件が「車上渡し(しゃじょうわたし)」です。納品当日に「ドライバーが手伝ってくれない」「降ろすための重機がない」といった事態が全国で多発している背景には、荷主・運送会社・受取人それぞれの間で「責任境界」に対する認識のズレが生じていることが挙げられます。労働時間規制が厳格化された2024年問題以降、物流業界では曖昧な現場の慣習が一切通用しなくなりました。本記事では、物流専門のプロフェッショナルな視点から、車上渡しの絶対的な定義や責任範囲の切り替わり、他の引渡条件との違い、さらに実務におけるトラブル防止策から物流DX推進時の組織的課題まで、日本一詳しく徹底的に解説します。
- 車上渡しとは?正しい定義と「荷降ろし」の責任範囲
- 車上渡しの基本定義(トラック荷台での引き渡し)
- 誰がやる?「車上渡し 荷降ろし」における受取人の義務とドライバーの役割
- 荷降ろし中の破損事故における責任の所在と保険の適用
- 【比較表】車上渡しと軒先渡し・館内配送などの違い
- 一覧でわかる!配送条件・渡し方の比較表
- 最も間違えやすい「車上渡し」と「軒先渡し」の違い
- 館内配送(階上渡し)・検収渡し・着工渡しとの使い分け
- 車上渡しのメリット・デメリットと運送会社が指定する背景
- 受取側・荷主側のメリット(配送コストの削減)
- 受取側・荷主側のデメリット(人員・設備手配の負担)
- 【物流業界のリアル】運送会社が車上渡しを条件にする理由
- 現場トラブルを防ぐ!車上渡しで必要な準備と「フォークリフトなし」の対処法
- 受取人が事前に準備すべき人員と安全装備
- 「車上渡し フォークリフトなし」の場合の現実的な対応策
- パワーゲート車・ユニック車の指定と運送会社との事前確認チェックリスト
- 責任境界を明確にする契約管理と物流DXの重要性
- 見積書・契約書における責任範囲の正しい明記方法
- 納品先の設備情報(重機・人員)を事前把握する仕組み作り
- TMS活用による配送条件の可視化と属人化を防ぐ物流DX
車上渡しとは?正しい定義と「荷降ろし」の責任範囲
B2B物流や大型機器の配送見積もりにおいて、最も頻繁に目にする契約条件が「車上渡し」です。しかし、この言葉の正確な法務的意味と実務上のリスクを深く理解していないために、現場での深刻なトラブルが絶えません。本セクションでは、物流と法務のクロスオーバー視点から、車上渡しの絶対的なルールと、現場で最も揉めやすい「誰が作業し、どこで責任が切り替わるのか」という大原則について徹底的に解説します。
車上渡しの基本定義(トラック荷台での引き渡し)
車上渡しとは、運送会社が指定された納品先へ到着し、「トラックの荷台の上」で荷物を受取人(買主・荷受人)に引き渡す納品条件のことです。実務において最も重要視すべきは、この荷台の上が民法および商法における「危険負担(商品滅失リスク)」および「所有権」の明確な移転境界線となる点です。
つまり、トラックが敷地内に停車し、ドライバーがウイング(荷台の側面)を開放、あるいは平ボディ車の煽り(あおり)を倒してラッシングベルト(荷締め機)を外した瞬間、その荷物の法的な管理責任は運送会社から受取人へと完全に移行します。近年では物流DXの推進により、配車や契約条件がTMS(輸配送管理システム)上で厳密にデータ管理されています。「昔はドライバーがサービスで降ろしてくれた」といった曖昧な現場の慣習は、システム化とコンプライアンスが重視される現在の物流網では一切通用しません。
誰がやる?「車上渡し 荷降ろし」における受取人の義務とドライバーの役割
結論から言えば、「車上渡し 荷降ろし」の作業は、100%受取人の義務です。ドライバーの業務はあくまで「安全に指定場所まで運転すること」と「荷台の開閉・固縛の解除を行うこと」までであり、荷降ろし作業には原則として一切関与しません。
物流業界では2024年問題に伴う労働時間規制の厳格化により、ドライバーの過労を防ぐため、運送契約外の荷役作業(付帯作業)を行うことが国交省のガイドラインでも厳重に監視されています。実務上の落とし穴として非常に多いのが、「見かねたドライバーが親切心で荷降ろしを手伝ってしまうケース」です。これが後述する重大な賠償トラブルの引き金となります。
現場で最も悲惨なケースは、重量物やパレット積みの商品であるにもかかわらず、車上渡し フォークリフトなしの状態で納品当日を迎えてしまうことです。この場合、受取人側で十分な人手を確保して人力で降ろすか、それが不可能であれば荷物はそのまま営業所へ「持ち戻り(再配達扱い)」となり、高額な返送料や倉庫保管料が請求されます。こうしたトラブルを防ぐためには、事前に役割分担を明確化しておくことが必須です。
| 作業プロセス | 運送会社(ドライバー)の役割 | 受取人(荷受人)の役割 |
|---|---|---|
| 納品先への車両進入・停車 | 運転・安全確認の上、指定位置に停車 | 進入経路の確保、駐車位置の指示 |
| 荷台の開放・荷締め解除 | ウイング開閉、ロープやベルトの解除 | 作業スペースの安全確保(立ち入り禁止等) |
| 荷台からの荷降ろし作業 | 原則何もしない(運転席や傍で待機) | 人員手配、フォークリフト等での荷降ろし |
| 検品・受領印の押印 | 受領書の提示 | 外装確認後、受領書へのサイン |
荷降ろし中の破損事故における責任の所在と保険の適用
現場実務で最もシビアな問題となるのが、車上渡し 責任範囲と、万が一の破損時の保険適用です。前述の通り、所有権と責任は「荷台の上」で移転します。これを物理的な動作に置き換えると、「受取人のフォークリフトの爪がパレットに刺さり、荷台から数ミリでも荷物が浮いた瞬間」に、運送会社の責任は完全に終了します。
例えば、受取人がフォークリフトで荷降ろしをしている最中に、バランスを崩して商品をアスファルトに落下させ、大破させてしまったとします。この場合、運送会社が加入している貨物運送保険は「一切適用されません」。なぜなら、事故が起きた時点ですでに引き渡しが完了しており、荷降ろし作業という受取人の責任領域内で発生した過失だからです。被害をカバーするには受取人企業の自社設備保険や動産総合保険に頼るしかなく、数千万円規模の損害を自社で被るリスクが存在します。
こうした事態を未然に防ぐための「超・現場視点の鉄則」は、荷物を持ち上げる前(荷台の上にある状態)で、必ず外装の目視検品を行うことです。もし段ボールの大きな凹みやラップの破れを発見した場合は、決して触らず、その場でドライバーと一緒に確認し、写真を多角的に撮影して受領書に「外装異常あり」と特記してサインします。現場の成功KPIとして「到着から15分以内に車上での外装検品を完了させる」というルールを設ける企業も増えています。
また、納品先の倉庫で荷受け用のWMS(倉庫管理システム)が通信障害などで止まっている場合、ハンディターミナルでの検品ができず荷降ろしが滞るケースがあります。しかし、ドライバーの待機時間(荷待ち)には限界があるため、「WMSがダウンした際は、紙の納品書を用いたアナログ検品と外装確認のみで速やかに車上から降ろす」というBCP(事業継続計画)を現場の運用フローに組み込んでおくことが不可欠です。
【比較表】車上渡しと軒先渡し・館内配送などの違い
B2B物流の実務において、荷送人(売主)と受取人(買主)、そして運送会社の間で最もトラブルの火種となりやすいのが「物理的にどこで荷物を引き渡すのか」という条件の認識ズレです。本セクションでは、基準となる「車上渡し」と、その他の渡し方の違いを物理的・空間的な視点と付帯作業の有無から整理します。
一覧でわかる!配送条件・渡し方の比較表
まずは、現場で日常的に運用されている代表的な配送条件の違いを比較表で確認しましょう。運送会社の配車担当者は、これらの条件をTMSに正確に登録し、ドライバーへ的確な指示を出すことが求められます。
| 配送条件 | 引渡場所(物理的境界) | 荷降ろし責任 | 付帯作業・追加コストの目安 |
|---|---|---|---|
| 車上渡し | トラックの荷台上 | 受取人(購入者) | なし(基本運賃のみ・最も安価) |
| 軒先渡し | 建物の1階入口・玄関先 | ドライバー(運送会社) | あり(荷降ろし料・台車移動・中程度の追加費用) |
| 館内配送(階上渡し) | 建物内の指定された部屋・階層 | ドライバー(運送会社) | 多(館内移動、エレベーター養生、高額な追加費用) |
| 着工渡し・検収渡し | 設置場所(工場・店舗内など) | 専門業者・指定ドライバー | 極めて多(開梱、廃材回収、据付・セッティング、別建て見積もり) |
最も間違えやすい「車上渡し」と「軒先渡し」の違い
物流現場で最も頻発するクレームが、「車上渡し 軒先渡し 違い」の認識不足によるトラブルです。この2つは「荷物を下ろすのは誰か」という実務上の決定的な違いがあります。
車上渡しの引渡場所はあくまで「トラックの荷台上」です。対して軒先渡しは、ドライバーがトラックから荷物を降ろし、台車等で移動させ、建物の玄関先に「無事に着地させる」まで運送会社が責任を負います。ここで実務上の落とし穴となるのが、「敷地内の物理的障害」です。軒先渡しであっても、トラックの駐車位置から玄関先までの間に「台車が通れない段差」「急なスロープ」「未舗装の砂利道」がある場合、ドライバー1人での搬入は不可能となり、結果として納品不可(持ち戻り)となるケースが多発します。
また、事前の契約が「車上渡し」であったにも関わらず、現場にフォークリフトがないため、ドライバーに手作業(バラ降ろし)を強要し、無理やり軒先渡しに変更させようとする行為は厳禁です。現代のコンプライアンス基準では、ドライバーは作業を拒否する権利を持っています。
館内配送(階上渡し)・検収渡し・着工渡しとの使い分け
軒先渡しからさらに物理的なハードルが上がるのが「館内配送(階上渡し)」です。指定されたテナントのオフィス内や、2階以上の部屋まで荷物を運び込む条件です。
この条件を採用する際、物流担当者が現場で最も苦労するのが「施設の物理的制約」と「管理ルールのクリア」です。高層オフィスビルや大型商業施設では、搬入用(人荷用)エレベーターの事前予約が必須であり、台車を使用するための床・壁のプラダン養生が義務付けられていることがほとんどです。さらに、搬入用セキュリティゲートの事前申請(車両ナンバーや作業員名簿の提出)が漏れていると、トラックが到着しても敷地内にすら入れません。
さらに高度な条件として、設備機器などの導入で使われる「着工渡し(指定場所での組み立て・据付まで行う)」や、「検収渡し(開梱して数量や傷の有無を確認した時点で引き渡し完了)」が存在します。
これらは単なる「輸送」の枠を超え、開梱作業や梱包資材(廃材)の持ち帰りといった重厚な付帯作業を伴います。自社に荷降ろしの人員や重機がなく、組み立てやゴミの処理までプロに任せたい場合は、車上渡しではなくこれらの高度な配送条件を適切に使い分け、専門のツーマン配送業者(作業員2名体制)や引越業者などを手配する必要があります。
車上渡しのメリット・デメリットと運送会社が指定する背景
前のセクションで整理した作業範囲を前提に、ここでは受取側・荷主側双方における実務上のメリットとデメリットを深掘りします。なぜ現代の物流において「車上渡し」という条件が標準化しつつあるのか、その裏にある物流業界の逼迫した事情もあわせて紐解いていきましょう。
受取側・荷主側のメリット(配送コストの削減)
荷主および受取企業にとって最大のメリットは、配送コストの大幅な削減に尽きます。運送会社に荷降ろしや搬入作業を委託しないことで、付帯作業費や人員追加コストを根本からカットできるからです。
例えば、重量1トンの産業用機械や大量の建材を配送する場合、荷降ろしまでを運送会社に依頼すると「ツーマン運行(運転手+荷役作業員)」や、ユニック車・パワーゲート車などの特殊車両による専用チャーターが必須となり、運賃が通常の2倍〜3倍に跳ね上がるケースも珍しくありません。しかし、「車上渡し」を前提とすれば、標準的な平ボディ車やウイング車によるワンマン運行が可能となります。
さらに、車上渡しであれば「特別積合せ貨物運送(路線便・混載便)」のネットワークに乗せやすくなります。自社の荷物だけを運ぶチャーター便ではなく、他社の荷物と混載してターミナル間を輸送する路線便を活用できれば、トンキロ(重量×距離)当たりの輸送単価を劇的に抑えることが可能です。受取側で荷降ろしの体制さえ担保できれば、驚くほどの物流費ダウンを実現できるのが実務上の最大の強みです。
受取側・荷主側のデメリット(人員・設備手配の負担)
一方で、車上渡し 荷降ろしの全作業を受取人側で完遂しなければならないという強烈なプレッシャーと実務負担が最大のデメリットとなります。
最も現場が悲鳴を上げるのが、手配ミスにより車上渡し フォークリフトなしという状況に陥った場合です。自社に重機がない場合、急遽リース会社からフォークリフトを短期レンタルするか、複数人の作業員を確保して人力(ハンドリフト等)で降ろすしかありません。しかし、重量物の手降ろしは労働災害(怪我や腰痛)の温床であり、現場の安全管理上、極めてハイリスクな選択です。
また、実務的なコストとして見落とされがちなのが「人員の待機ロス」です。交通事情や天候によりトラックの到着時間が読めない中、フォークリフトの有資格者や複数の荷役担当者を現場に留め置くことは、目に見えない人件費の無駄を生み出します。到着時間のブレ(KPIとしての定時到着率の低下)をどう吸収するかが、受取側の大きな課題となります。
【物流業界のリアル】運送会社が車上渡しを条件にする理由
現在、運送会社が見積もりの段階で車上渡しを強硬に指定(または必須化)する背景には、物流業界が直面している構造的な危機、すなわち2024年問題が深く関わっています。労働基準法の改正による時間外労働の上限規制が厳格化された今、運送会社にとって「ドライバーの拘束時間削減」は事業継続の死活問題なのです。
2017年に国土交通省が告示した「標準貨物自動車運送約款」の改正により、運賃(輸送の対価)と料金(荷役や待機などの付帯作業の対価)を明確に分離して収受することがルール化されました。従来の慣習であった「ドライバーが自らパレットを崩して手積み手降ろし(バラ降ろし)を行う」「長距離を台車で運ぶ」といった無償の荷役作業は、バース(荷降ろし場)での深刻な待機渋滞を生み出す諸悪の根源とされ、徹底的な排除が進んでいます。
さらに追い打ちをかけるように、2024年2月よりテールゲートリフター(パワーゲート車)の操作において特別教育の受講が法令で義務化されました。資格を持たないドライバーには物理的にも法規的にも荷降ろしを任せられないという厳しい実情があります。今後はトラック予約受付システムと連動し、「車上渡しを速やかに受け入れ、荷待ち時間を30分以内に収められる設備と人員を持つ荷主・受取人」でなければ、トラックの配車すらしてもらえない「輸送拒否」の時代に突入していると認識すべきです。
現場トラブルを防ぐ!車上渡しで必要な準備と「フォークリフトなし」の対処法
実務において車上渡しを選択した場合、受取人側がその厳密な定義とリスクを理解していないがゆえに、最悪の場合は荷物の落下事故による責任の押し付け合いに発展します。ここでは、前項で触れた「手配負担」をいかに乗り越え、安全かつスムーズに荷受けを行うか、その具体的かつ実務的な解決策を深掘りします。
受取人が事前に準備すべき人員と安全装備
荷降ろしにおける人員配置の甘い見積もりは禁物です。ドライバーによる荷降ろしの手伝いは「契約外の付帯作業」とみなされ、コンプライアンス違反に直結します。受取人側は、荷物の重量と容積に応じた十分な人数の作業員を自社で手配しなければなりません。
また、労働安全衛生法の観点から、現場でのリスクアセスメント(KYT:危険予知トレーニング)を実施し、以下の安全装備を徹底することは必須です。
- 安全靴(芯入り)とヘルメット: 荷台からの落下や足への重量物落下リスクに備える最低限の装備。
- 滑り止め付きの重作業用手袋: 軍手は滑りやすいため、グリップ力のある専用の作業用手袋を使用する。
- 墜落制止用器具(フルハーネス): 法令改正により、高さ2メートル以上の箇所(大型トラックの荷台上など)で作業を行う場合、フルハーネス型墜落制止用器具の着用が原則として義務付けられています。受取側の作業員が荷台に登る際は、この法令違反とならないよう十分な注意が必要です。
「車上渡し フォークリフトなし」の場合の現実的な対応策
物流現場で最も深刻なパニックを引き起こすのが、「車上渡し フォークリフトなし」という状況です。例えば、1パレット500kgの機械設備が到着したにもかかわらず現場に重機が存在しない場合、人力での荷降ろしは物理的に不可能であり、重大な労災事故に直結します。
第一に、「手作業(バラ降ろし)の限界基準」を社内で明確にすることです。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づき、人力で持ち上げられる重量の目安は「体重の40%以下(成人男性でおおむね20kg〜25kgが上限)」と規定されており、これを超える重量物の人力荷降ろしは絶対に許可してはいけません。
どうしてもフォークリフトが用意できない場合の現実的な回避策(ウルトラC)として、以下の選択肢を検討します。
- 運送会社の営業所止め(支店止め)への変更: 納品先への直送を諦め、運送会社の最寄りターミナルで荷物を一時保管(営業所止め)してもらいます。その後、受取人が自社の軽トラックや平ボディ車を持ち込み、運送会社のターミナル内にあるフォークリフトを使って積み替えてもらい、自社でゆっくり持ち帰る手法です。
- 近隣の倉庫会社(3PL)を経由するクロスドックの活用: 納品先の近くにある設備が整った営業倉庫に一時納品し、そこでパレットを解体して小分け(バラ)にした上で、軽バン等で納品先へピッキング配送させる手法です。追加の物流費はかかりますが、納品先でのトラブルを完全にゼロにできます。
パワーゲート車・ユニック車の指定と運送会社との事前確認チェックリスト
フォークリフトがない現場へ直送を強行する場合、運送会社に「パワーゲート車」や「ユニック車」を指定することになります。これらは車両台数が限られているため事前のチャーター予約や特殊車両割増運賃が発生します。手配漏れや現場でのミスマッチを防ぐため、事前にすり合わせるべき項目を以下の表にまとめました。
| 確認カテゴリー | 具体的な確認項目と現場監督レベルの実務注意点 |
|---|---|
| 車両要件の確定 | パワーゲートの昇降能力(最大積載量:通常600kg〜1,000kg)は荷物の総重量を上回っているか。パレットを地上で動かすためのハンドリフト(台車)はドライバーが持参するか、受取人が用意するか。 |
| ユニック車の作業環境 | 上空に電線や木の枝、建物の庇(ひさし)などの障害物はないか。クレーン使用時に車体を安定させるアウトリガー(転倒防止の脚)を最大に張り出せる十分な道幅があるか。地盤が軟弱な場合は鉄板敷きが必要か。 |
| 納品日時の指定 | 特殊車両の手配にはリードタイムが必要。納品日時のピンポイント指定による待機料金の発生条件と、交通渋滞による遅延時の連絡フロー(緊急連絡網)は整備されているか。 |
| 責任範囲と特約事項 | ゲート降ろし・クレーン操作は「ドライバー」が行うが、荷物が地上に接した瞬間に所有権が移転する旨の合意。地上に降ろした後の横持ち(指定場所への移動)は別途料金になることの確認。 |
自社の設備(フォークリフトの有無)や人員リソースを冷静に分析し、対応が難しい場合は無理をせず、追加コストを支払ってでも車両指定や搬入オプションを利用することが、結果的に事故やトラブルによる目に見えない莫大な損害コストを最小化する最適解となります。
責任境界を明確にする契約管理と物流DXの重要性
「車上渡し」の条件でB2B取引を行う際、管理・経営レイヤーが主体となり、契約書への明記からシステムによる情報共有までの一貫した体制を構築することが不可欠です。現場の努力だけでは防ぎきれない組織的課題にどうアプローチするべきか解説します。
見積書・契約書における責任範囲の正しい明記方法
物流トラブルを根絶するための第一歩は、「車上渡し 責任範囲」と「所有権の移転」のタイミングを契約書や見積書に一言一句違わず明記することです。しかし、単に備考欄へ「本件は車上渡しとなります」と記載するだけでは不十分です。実務においては、以下のような具体的な特記事項を盛り込む必要があります。
- 荷降ろし責任の所在:「荷降ろし作業は買主(荷受人)の責任と費用負担にて行うものとし、作業中の落下・破損事故について売主および配送業者は一切の賠償責任を負わない」
- 付帯作業の拒否:「ドライバーによる荷台から降ろす作業、指定場所への横持ち移動は契約外とする。ドライバーへ作業を要求した場合は、直ちに作業を中止し持ち戻りとするか、別途荷役料および待機料を実費請求する」
このように責任境界を明確にすることで、万が一の事故時にも自社の保険適用範囲が明確化され、迅速なリスクヘッジが可能となります。
納品先の設備情報(重機・人員)を事前把握する仕組み作り
企業において非常に多い組織的課題(落とし穴)が、「営業部門と物流部門のサイロ化(縦割り)」です。営業担当者が契約を取ることを優先するあまり、納品先の設備環境を確認せずに「ドライバーがやってくれますよ」と安請け合いしてしまうケースが後を絶ちません。これが現場を大混乱に陥れる最大の原因です。
これを防ぐため、受注段階で納品先の設備・人員環境を営業担当者がヒアリング(または現調:現場調査)する仕組みを社内ルール化しなければなりません。
| 確認カテゴリー | 実務上のチェックポイント(現場視点) |
|---|---|
| 荷降ろし人員 | 手降ろしの場合、適切な人数の作業員が確保できるか。ドライバーに手伝いを要求する前提になっていないか。 |
| 重機(フォークリフト) | リフトの有無だけでなく、「最大荷重(1.5tか2.5tか)」「爪の長さ(延長用のサヤフォークの有無)」「免許保持者の常駐状況」まで確認する。 |
| 荷役設備と車両指定 | プラットホーム(トラックの荷台と同じ高さの荷降ろし用ステージ)の有無。プラットホームや重機がない場合は、昇降機付きのパワーゲート車を指定し、付帯料金を買主が負担する旨を合意する。 |
TMS活用による配送条件の可視化と属人化を防ぐ物流DX
納品先の詳細な設備状況や荷役条件は、これまで特定のベテラン配車担当者の頭の中にのみ蓄積される「暗黙知」でした。「A社はリフトがないから必ずパワーゲート車を回す」「B社の納品口は4t車しか入れない」といった属人的な配車管理は、労働力不足がさらに深刻化する2026年問題を見据えた場合、早急に排除すべき経営リスクです。
ここで必須となるのが、TMS(輸配送管理システム)を活用した物流DXの実装です。具体的には、納品先の顧客マスターデータに対して「車上渡しの可否」「フォークリフトの有無」「車両制限」などのフラグを持たせ、受注データ(API連携等)を取り込んだ瞬間に自動で最適な車両タイプを割り当てるアルゴリズムを構築します。これにより、新人配車マンや提携先の運送会社でも、配送条件のズレなく手配を行うことが可能になります。
車上渡しは一見シンプルでコストメリットの大きい配送条件ですが、その裏には高度な法的責任の理解と、現場を支える緻密な情報共有インフラが存在します。契約の適正化と物流DXの推進を両輪で回すことこそが、これからの時代に求められる強靭なサプライチェーン構築の要となるのです。
よくある質問(FAQ)
Q. 車上渡しとは何ですか?
A. トラックの荷台に乗った状態で荷物を引き渡す契約条件のことです。荷降ろし作業は受取人の責任と負担で行う必要があり、ドライバーは原則として作業を手伝いません。大型機器やB2B物流でよく用いられますが、荷降ろしのための人員や重機の事前手配が必須となります。
Q. 車上渡しと軒先渡しの違いは何ですか?
A. 荷物を引き渡す「場所」と「荷降ろしの責任」が異なります。車上渡しはトラックの荷台上で引き渡すため、受取人自身が荷降ろしを行います。一方、軒先渡しは建物の入り口(1階の軒先)までドライバーが荷物を降ろして運んでくれます。そのため、軒先渡しでは受取人の負担が軽減されます。
Q. 車上渡しでフォークリフトがない場合はどうすればいいですか?
A. 受取人側で人力による荷降ろしが可能な十分な人員を事前に確保する必要があります。ドライバーは荷降ろしを手伝わないため、人員確保が難しい場合は、事前に運送会社へ「パワーゲート車」の手配を相談するか、軒先渡しなどへの契約変更を検討することがトラブル防止に繋がります。