- キーワードの概要:SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを経由してソフトウェアを利用する仕組みです。PCに直接インストールする従来の方法とは異なり、ネット環境さえあれば場所を問わずWebブラウザなどから手軽にシステムを利用できます。
- 実務への関わり:初期費用を抑えて迅速に導入できるため、現場のデジタル化や法改正へのスピーディーな対応が可能です。さらに、システム会社が自動でアップデートを行うため、自社で保守・管理をする負担を大幅に削減できます。
- トレンド/将来予測:労働力不足やDX推進を背景に、SaaSの市場規模は急拡大しています。今後は、配送ルート最適化や在庫管理など、サプライチェーンの特定の課題を解決する「業界特化型SaaS」の導入がさらに進むと予測されます。
SaaS(Software as a Service)の国内市場規模は、2020年度の約8,000億円から2026年度には約1.7兆円へと急拡大することが見込まれています(スマート・ワーク・フォーラム調査)。本記事では、SaaSの基礎知識から、PaaS・IaaSとの技術的な違い、実務におけるメリット・デメリット、具体的な導入選定手順まで、物流専門メディア「LogiShift」の視点で実務に直結する情報を整理・解説します。
- 【基礎知識】SaaS(サース)とは?クラウドサービスの種類と仕組み
- SaaSの基本的な仕組みとクラウドサービスにおける位置づけ
- 歴史的背景から見る「ASP」とSaaSの違い
- 【決定的な違い】SaaS・PaaS・IaaSの管理範囲と目的別の選び方
- システム構築における「責任分界点」の明確な違い
- ITリソースとエンジニアの有無による目的別の選び方
- 【実務評価】SaaS導入のメリット・デメリットと自社適合性の見極め方
- 初期費用抑制と「場所を選ばない働き方」がもたらす導入メリット
- ベンダー依存のリスクと「既存システムとのデータ連携・移行」における課題
- 【実務直結】DXと法改正対応を加速するSaaSの代表的なサービス例
- 経理・人事等のバックオフィスを自動化する「法対応」推進サービス
- サプライチェーンのボトルネックを解消する業界特化型SaaS
- 【失敗を防ぐ】セキュリティリスクを抑えて最適なSaaSを選定する4つの手順
- 企業の安全を守るセキュリティ基準とサービス品質保証(SLA)の確認手順
- 現場の形骸化を防ぐ「UI/UXの操作性評価」と「サポート体制」の見極め方
【基礎知識】SaaS(サース)とは?クラウドサービスの種類と仕組み
SaaSとは「Software as a Service」の略称であり、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。従来のように、パソコンや自社サーバーにCD-ROMなどのメディアからインストールして使用していた「パッケージソフト」とは異なり、インターネットなどのネットワーク経由で必要な機能を利用する提供形態を指します。
SaaSの基本的な仕組みとクラウドサービスにおける位置づけ
インターネット上で提供されるクラウドサービスは、大きく分けて「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分類されます。SaaSは、このクラウドサービスの中で最もエンドユーザー(実際に業務を行う現場の担当者)に近い、アプリケーションそのものを提供する階層に位置します。
従来のパッケージソフトとSaaSの最大の違いは、データとプログラムが配置されている場所にあります。パッケージソフトでは、個々のパソコン本体にデータを保存し、処理もデバイスの性能に依存するため、端末の破損によるデータ消失リスクや、オフィスの外からアクセスできないという課題がありました。
一方、SaaSはすべてのデータとプログラムがインターネット上のサーバー(クラウド)側に配置されています。ユーザーはWebブラウザ(Google ChromeやMicrosoft Edgeなど)や専用のアプリからそのサーバーにアクセスして操作を行います。
このSaaSの仕組みを支えているのが、1つのシステム(サーバー、データベース、プログラム)を複数の企業で共同利用する「マルチテナント」というシステム構造です。分譲マンションのように、1つの大きな建物の中に、個別に区切られた部屋(各企業の利用領域)を用意し、多くの世帯が共同で暮らしている状態を指します。
マルチテナントを採用することで、サービス提供企業はシステムの維持管理やアップデートを中央のサーバーで1回行うだけで、利用しているすべてのユーザーに最新の機能を同時に適用できます。例えば、税制改正に伴う消費税率の変更や、インボイス制度への対応といった法改正に伴うシステム改修も、ユーザー側での再インストール作業を必要とせず、クラウド側で自動的に完了します。
歴史的背景から見る「ASP」とSaaSの違い
インターネット経由でソフトウェアを利用する仕組みは、SaaSが最初ではありません。1990年代後半から「ASP(Application Service Provider)」というサービスが存在していました。同様のものとして混同されがちですが、これらは技術的なシステム構造において明確に異なります。
| 比較項目 | ASP(アプリケーションサービスプロバイダ) | SaaS(Software as a Service) |
|---|---|---|
| システム構造 | シングルテナント (顧客ごとにシステムを個別に構築) |
マルチテナント (1つのシステムを複数顧客で共同利用) |
| データの保存先 | 顧客ごとに完全に独立したデータベース | 同一のデータベース(論理的に領域を分割) |
| アップデート対応 | 顧客ごとに個別のメンテナンスやパッチ適用が必要 | 提供元が一括でアップデート(全ユーザーに即時反映) |
| コスト構造 | 初期構築費用や保守運用コストが高くなりやすい | 初期費用が抑えられ、月額利用料のみで利用可能 |
ASPの多くは、顧客ごとに専用のシステム環境を個別に用意して提供する「シングルテナント」構造を採用していました。
例えば、月間1,000件の出荷業務を行う3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者が、自社の独自運用に合わせてカスタマイズされた倉庫管理システム(WMS)をASPで導入する場合、その事業者専用のサーバーやデータベースが個別に用意されます。個別カスタマイズが容易であるという点では有利ですが、バージョンアップを行う際には、個々の環境ごとに手作業で修正プログラムを適用する必要があり、多大な時間と追加費用が発生していました。
これに対して、SaaSは「マルチテナント」構造を前提として設計されています。
すべてのユーザーが共通のシステムを利用するため、個別のコードカスタマイズは原則行えません。代わりに、管理画面の設定変更によって機能のオン・オフや画面レイアウトの選択などを行います。これにより、サービス開発企業は一度のアップデート作業で、全ユーザーに同時に新機能やセキュリティ修正を適用できるようになりました。
この効率的なマルチテナント構造の確立により、SaaSは「初期コストを極限まで抑え、月額定額制(サブスクリプション)で、常に最新のシステムを利用できる」という独自の強みを獲得しました。これが、ASPからSaaSへと進化した本質的な違いです。
【決定的な違い】SaaS・PaaS・IaaSの管理範囲と目的別の選び方
クラウド型システムの導入を検討する際、SaaS、PaaS、IaaSの3つは、自社が管理する範囲とシステム構築の自由度において決定的な違いがあります。
システム構築における「責任分界点」の明確な違い
これら3つの仕組みを理解する上で最も重要な概念が、どちらがどの階層を管理・保守するかを示す「責任分界点」です。システムは一般的に「ハードウェア(物理サーバー・回線)」「OS」「ミドルウェア/データベース」「アプリケーション」の階層で構成されており、どの階層までをサービス提供事業者が担保するかがサービスごとに分かれています。
| クラウドサービスの種類 | 事業者が提供・管理する範囲 | ユーザーが管理・開発する範囲 | カスタマイズの自由度 | 導入までの期間 |
|---|---|---|---|---|
| SaaS(Software as a Service) | ハードウェア、OS、データベース、アプリケーションすべて | ユーザーのアカウント、データのみ | 低い(既製品の機能範囲内) | 即日〜数週間 |
| PaaS(Platform as a Service) | ハードウェア、OS、データベース、開発プラットフォーム | アプリケーション、配置するデータ | 中(自社専用のアプリを開発可能) | 数ヶ月 |
| IaaS(Infrastructure as a Service) | ハードウェア、仮想化基盤、ネットワークインフラ | OS、ミドルウェア、アプリケーション、データすべて | 高い(自由なインフラ構成が可能) | 数ヶ月〜半年以上 |
SaaS(Software as a Service)では、事業者がアプリケーションから物理サーバーまですべての階層を保守するため、ユーザー側でのインフラ管理は一切発生しません。Webブラウザとインターネット環境があれば、契約後すぐに利用できます。
一方、PaaS(Platform as a Service)はアプリケーションを実行するためのプラットフォームを、IaaS(Infrastructure as a Service)は仮想サーバーなどのインフラそのものを提供するサービスです。下位のレイヤーになるほど、自社で構築・保守しなければならない範囲が増える代わりに、業務に合わせた自由なシステム設計が可能になります。
ITリソースとエンジニアの有無による目的別の選び方
これら3つのモデルから最適なものを選択する基準は、自社が保有するエンジニアのリソースと、システムに求める個別要件の複雑さにあります。システム選定を行う際は、以下の判断基準を用います。
1. 社内に開発エンジニアがおらず、定型業務を素早く効率化したい場合:SaaSを選択
自社でコードを書くエンジニアを抱えておらず、一般的なバックオフィス業務や顧客管理を効率化したい場合は、SaaSの利用が適しています。セキュリティアップデートや法改正への対応が自動で行われる点が強みです。ただし、独自の業務フローに合わせてシステムを変更することは難しいため、業務プロセス自体をSaaSの仕様に合わせて標準化(Fit to Standard)する判断が必要になります。
- 具体的なサービス例:
- 労務・人事管理:SmartHR
- 顧客管理(CRM):Salesforce
- 物流・倉庫管理(WMS):ロジレス(LOGILESS)などのクラウド型システム
2. 社内にアプリ開発者がおり、自社専用の業務アプリを構築したい場合:PaaSを選択
例えば、月間3,000件以上の出荷を伴うEC事業者が、自社独自の梱包要件や検品フローに完全に合致した独自システムを開発したいケースです。サーバーの設定やOSのセキュリティパッチ適用といったインフラ保守を外部に任せつつ、自社のエンジニアは独自業務ロジックのコーディングだけに集中できます。
- 具体的なサービス例:Heroku、AWS Elastic Beanstalk、Google App Engineなど。
3. インフラの専門家がおり、既存の社内システムをそのままクラウドへ移行したい場合:IaaSを選択
自社の基幹システム(ERP)や、複雑な独自アルゴリズムを用いた配送ルート最適化システムなどを、ハードウェアの保守期限(EOSL)を機に移行するようなケースです。OSのバージョンやミドルウェアの細かな設定変更が必要になるため、最も自由度の高いIaaSが必要になります。自社でバックアップやファイアウォール設定などを運用できる専任のインフラエンジニアの存在が必須条件です。
- 具体的なサービス例:Amazon Web Services(AWS)のEC2、Microsoft Azure、Google Cloud(GCP)など。
自社のIT人材のスキルセットと、開発・運用に充てられる予算を明確にした上で、既製品(SaaS)に業務を合わせるのか、あるいは独自にシステムを構築(PaaS/IaaS)するのかを決定することが、DX推進における最初の分岐点となります。
【実務評価】SaaS導入のメリット・デメリットと自社適合性の見極め方
SaaSの導入検討を成功に導くためには、実務における運用の変化と、中長期の費用対効果を客観的に評価することが求められます。ここでは、オンプレミス(自社導入型)や他のクラウド形態と比較した際の、具体的なメリットとデメリットを掘り下げます。
初期費用抑制と「場所を選ばない働き方」がもたらす導入メリット
SaaSの構造的な特徴は、初期投資の抑制と業務効率の向上に直結します。
メリットの第一は、初期費用の圧倒的な低さです。自社でサーバー機器を購入し、パッケージソフトをカスタマイズして導入する場合、初期投資に数百万円から数千万円のキャッシュアウトが発生し、稼働までに3ヶ月〜1年以上の期間を要します。一方、SaaSであれば、アカウント登録とマスタデータの設定のみで即日〜数週間で利用を開始できます。例えば、拠点数が5カ所、同時アクセスユーザー数が30名の物流企業が在庫管理システムを導入する場合、オンプレミス型ではサーバー構築とライセンス購入で初期費用500万円以上かかるケースが一般的ですが、SaaS型であれば初期設定費用として数十万円、月額利用料のみでスモールスタートが可能です。
第二に、マルチデバイス対応と場所を選ばない働き方の実現です。PCだけでなく、タブレットやスマートフォン、ハンディターミナルからWebブラウザ経由でシステムにアクセスできるため、以下のような運用変化をもたらします。
- 倉庫と事務所のシームレスな情報同期:入出荷作業者がタブレットから実績を入力した瞬間に、事務所のPCや営業担当者のスマートフォンにデータが反映されるため、伝票の持ち歩きや二重入力の手間が省けます。
- リモートワークへの対応:インターネット接続環境と多要素認証などのセキュリティがあれば、自宅やサテライトオフィスからでも社内と同様に基幹システムを操作できます。災害時でも、受注処理や配送手配業務を即座に在宅勤務へ移行できる事業継続性(BCP)の向上に繋がります。
- 自動アップデートによるメンテナンスフリー:法改正やセキュリティパッチの適用は、ベンダー側で自動的に実施されます。自社のIT担当者が夜間にシステムを停止させて更新作業を行う必要がなく、常に最新かつ安全なシステムを利用できます。
ベンダー依存のリスクと「既存システムとのデータ連携・移行」における課題
一方で、SaaSの導入には特有のデメリットや実務上の制約が存在します。これらを見落とし、手軽さだけで導入すると、後に多額の追加開発コストが発生したり、業務フローが破綻したりする原因になります。
最大の課題は、既存のオンプレミスシステムや他社システムとのデータ連携(EAI/EDI)です。SaaSは仕様が規格化されているため、個別開発のように自社のデータベースを自由に改変することができません。例えば、既存の基幹システム(レガシーERP)からSaaS型の配送計画システムへ自動で出荷指示データを送る場合、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)の有無や仕様が合わなければ、データ連携が不可能になります。この結果、毎日夕方に基幹システムからCSVファイルを出力し、手動でSaaS側へインポートし直すという、アナログな二重作業が恒常化するリスクがあります。導入前に双方のAPI仕様を確認し、連携に必要な開発費を見積もっておく必要があります。
また、長期的な利用における累積コストの上昇にも注意が必要です。SaaSはサブスクリプション方式であるため、利用期間が長くなるほど、またユーザー数が増えるほどコストが積み上がります。
| 評価項目 | SaaS(サブスクリプション) | オンプレミス(自社保有・パッケージ) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 極めて低い(数十万円程度) | 高い(数千万円以上のライセンス・機器代) |
| 5年間の累計費用 | 利用規模(アカウント数)に比例して増加 | 減価償却後は保守運用費のみとなり平準化 |
| システムの変更自由度 | 低い(ベンダーの標準機能に合わせる必要あり) | 極めて高い(個別カスタマイズが可能) |
| データ連携の難易度 | API接続が前提。非対応システムとは手動連携 | データベース直接連携など個別開発で柔軟に対応可能 |
| インフラ障害時の対応 | ベンダーの復旧を待つのみ(自社で制御不可) | 自社または委託保守業者のエンジニアで即時対応 |
例えば、月額1ユーザーあたり5,000円のSaaSを100ユーザーで利用する場合、月額50万円、年間で600万円となり、5年間での支払総額は3,000万円に達します。これはインフラを利用して自社開発した場合や、パッケージ製品をオンプレミスで導入した場合の「5年間の総保有コスト(TCO)」と比較して、必ずしも安価とは言えないケースがあります。
さらに、サービスベンダーに依存するシステム停止リスクも軽視できません。数年に1度発生する大規模なクラウド障害や回線トラブルが起きた際、自社に専門のエンジニアがいても、サービス提供元が復旧を完了するまでは業務が全面的にストップします。稼働率(SLA)99.9%と謳われていても、年間で約9時間の停止が発生する可能性があることを考慮し、24時間365日止めてはならない出荷ラインなどの業務特性と照らし合わせて適合性を見極める必要があります。
【実務直結】DXと法改正対応を加速するSaaSの代表的なサービス例
経理・人事等のバックオフィスを自動化する「法対応」推進サービス
経理や人事・労務のバックオフィス業務において、SaaSは今や不可欠な基盤です。その最大の理由は、電子帳簿保存法やインボイス制度に代表される頻繁な法改正へ、追加費用なしで自動アップデート対応する性質にあります。自社でシステムを改修する手間を一切かけずに、常に法令に準拠した運用を維持できます。
実務で広く活用されている主要なサービスを、以下の通りカテゴリ別に整理します。
| 業務カテゴリ | 代表的なSaaSサービス例 | 主な機能・特徴 | この業務にSaaSが適している理由(因果関係) |
|---|---|---|---|
| 経理・財務 | マネーフォワード クラウド会計、freee会計 |
|
転記や手入力の余地を排除することでミスを低減し、かつ突発的な税制改正に対しても追加コスト不要で即座に業務プロセスを適応させることができるため。 |
| 人事・労務 | SmartHR、freee人事労務 |
|
従業員が自らデータを直接入力するため、人事担当者の仲介や二重入力の業務プロセスを丸ごとカットし、手続きの遅延を防ぐことができるため。 |
| フロント・営業管理 | Salesforce、HubSpot |
|
外出先やリモートワーク環境からでもリアルタイムで顧客情報や商談進捗が確認・共有でき、営業活動の属人化を防いで組織的なアプローチを可能にするため。 |
法制度への準拠が最優先され、業務手順の標準化が容易なバックオフィスや一般的な営業プロセスにおいては、SaaSが最も効率的かつ安全な選択肢となります。
サプライチェーンのボトルネックを解消する業界特化型SaaS
物流をはじめとするサプライチェーンの現場でも、現場DXの核として業界特化型のSaaS導入が進んでいます。これまでの物流現場では、拠点ごとにローカル環境で動作するオンプレミスのWMS(倉庫管理システム)やExcelが個別運用され、サプライチェーン全体でデータの分断が発生していました。
このボトルネックに対し、SaaSが極めて有効な理由は、Webブラウザや専用のモバイルアプリを介して、自社拠点だけでなく外部の3PL事業者、協力運送会社、ドライバー、さらには出荷先・荷主といった複数のステークホルダーが、同じクラウド上で同一のリアルタイムデータを瞬時に相互共有できる設計になっているためです。
物流現場における主なサービス例と、その活用効果は以下の通りです。
- 倉庫管理(WMS):ロジザードZERO
複数倉庫の在庫状況をリアルタイムで一元管理し、ECカートシステムや受注管理システムとAPIを介して自動連携。在庫のズレをなくし、出荷リードタイムを大幅に短縮します。 - 配送最適化・動態管理:Cariot(キャリオット)
車両のGPS情報を用いて運行状況をリアルタイムに可視化。荷主や配送先からの到着時間に関する問い合わせ対応を自動化し、電話対応の業務負荷を軽減します。
これらの特化型SaaSの導入は、物流業界における「2024年問題」の解決に向けた大きな推進力となります。ドライバーの労働時間制限を遵守しつつ配送効率を維持するためには、実務におけるムダを排除する具体的な仕組みが不可欠です。
例えば、車両を20台保有する中堅の運送会社において配送最適化SaaSを導入した場合、従来は配車担当者が前日の夕方に2時間以上をかけて行っていた複雑なルート編成業務が、AIによる一括ルート算出によりわずか10分に短縮されます。これにより、熟練者のノウハウに頼ることなく、走行距離を平均12%削減する最適な配送計画が作成可能です。
さらに、動態管理SaaSを活用してトラックの正確な位置情報と到着予想時間を倉庫側と共有することで、倉庫での荷待ち・荷役時間を1運行あたり平均1時間から30分へと削減する実務改善が実現します。個別システムでは解決できなかったステークホルダー間の情報共有をSaaSが実現することで、サプライチェーン全体の生産性向上につながります。
【失敗を防ぐ】セキュリティリスクを抑えて最適なSaaSを選定する4つの手順
SaaSはインターネット経由で外部のサーバーにデータを預ける特性上、適切な選定基準を持たなければ、情報漏洩や現場でのシステム形骸化といった重大なリスクを招きます。自社に最適なシステムを安全に導入するために実行すべき4つの実務手順を解説します。
- 手順1:自社のセキュリティ基本方針・業務要件の整理(シャドーIT防止策の策定)
- 手順2:第三者認証の取得状況とサービス品質保証(SLA)の確認
- 手順3:実務を想定した現場での「操作性(UI/UX)」評価
- 手順4:定着化に向けた「ベンダーサポート体制」の見極め
企業の安全を守るセキュリティ基準とサービス品質保証(SLA)の確認手順
SaaSは複数の顧客でシステム構造を共有するマルチテナント方式が一般的です。そのため、1つの脆弱性が他のユーザーに影響を及ぼすリスクを排除しきれません。導入にあたっては、ベンダー側のセキュリティ対策レベルを以下の3つの基準に沿って確認します。
1. 第三者認証の取得状況の確認
ベンダーが以下の信頼性の高いセキュリティ認証を取得しているか、公式サイトや開示資料(セキュリティチェックシートへの回答書など)から確認します。
- ISMS(ISO/IEC 27001): 情報セキュリティマネジメントシステムが国際規格に準拠しているか。
- プライバシーマーク(Pマーク): 個人情報の取り扱いが適切に行われているか。
- SOC2レポート: 受託業務に関するセキュリティや可用性等の内部統制の有効性を評価した、独立した公認会計士による保証報告書があるか。
2. サービス品質保証(SLA)のチェック
SLA(Service Level Agreement)は、ベンダーが提供するサービスの稼働率や障害発生時の対応時間を保証する合意書です。「稼働率99.9%」などの数値を満たさなかった場合、月額料金の減額などの返金規定(クレジット適用)が明記されているかを確認します。例えば、月間3,000件の請求処理をオンライン上で行うバックオフィス部門の場合、システムが1時間停止するだけで取引先への支払遅延が発生します。こうした実務上の損失を防ぐため、ダウンタイムの補償範囲の事前確認が必要です。
3. シャドーITの防止策の確認
企業のIT管理者が把握していない「シャドーIT」の発生を防ぐため、アクセス制御機能が備わっているかを確認します。自社のセキュリティポリシーに合わせて、以下の機能が利用できるサービスを選定します。
- SAML認証(シングルサインオン / SSO)に対応し、社内の統合ID管理システムからのみログインを許可できるか。
- IPアドレス制限や多要素認証(MFA)を設定でき、社外からの不正アクセスを防止できるか。
現場の形骸化を防ぐ「UI/UXの操作性評価」と「サポート体制」の見極め方
システム選定において、機能要件を満たしていること以上に重要なのが「現場の担当者が毎日迷せず使えるか」という操作性(UI/UX)です。高機能であっても、操作が難解であれば業務スピードが低下し、最終的には使い慣れた手作業に先祖返りする形で形骸化します。SaaSは定期的なアップデートによって画面や機能が進化していくからこそ、マニュアルを読み込まなくても直感的に使えるデザインが継続して求められます。
現場への定着を確実にするため、無料トライアル期間を用いて現場実務に即したテストを実施し、以下のチェックリストに沿って評価します。
| 評価項目 | 確認すべき具体的な基準 | 確認方法・テスト内容 |
|---|---|---|
| 画面遷移と視認性 | マニュアルなしで基本操作(データ入力・検索)が直感的に行えるか。 | 実際に現場で毎日業務を行う担当者3名以上に、解説なしで入力作業を依頼する。 |
| データ連携の容易さ | 既存のCSVデータや基幹システムとの連携がスムーズか。 | 自社の本番データに近いダミーCSV(1,000件規模)を取り込み、エラー時の修正負荷を計測する。 |
| ヘルプデスクの応答速度 | トラブル発生時の問い合わせ窓口のチャネルと対応時間。 | トライアル期間中に、技術的な質問をメールまたはチャットで送り、24時間以内に的確な回答が来るか検証する。 |
| 定着支援(オンボーディング) | ベンダーによる勉強会や個別説明会の有無。 | 初期導入費用に含まれるサポート範囲(マニュアル作成代行、操作レクチャー等)を契約書面で確認する。 |
例えば、倉庫内の在庫データをリアルタイムで管理するクラウド型WMSを導入する場合、ピッキングを行う現場の作業員がスマートフォンやハンディターミナルで直感的に操作できる画面設計でなければ、誤出荷の発生源となります。
ベンダー側のサポート体制を見極める際は、「問い合わせ窓口がメールのみか、電話・チャットも可能か」という連絡手段の確認に加え、「バージョンアップが強制的に行われる際の事前通知期間(通常は数週間前〜1ヶ月前)」が十分に確保されているかも注視します。アップデートによる画面仕様の急な変更は、現場の作業混乱に直結するため、猶予期間の有無が円滑な運用の鍵となります。
セキュリティの担保と、現場が使いこなせる操作性の確認。この両輪のバランスを選定手順に組み込むことが、SaaS導入による業務の効率化と迅速なDXを実現するための要諦です。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaS(サース)とは何ですか?
A. SaaSとは「Software as a Service」の略で、インターネット経由で必要な時に必要なだけソフトウェア機能を利用できるクラウドサービスです。従来のパッケージソフトのようにPCにインストールする必要がなく、ネット環境があれば場所を問わず、複数人で同時にアクセス・共同作業ができる点が特徴です。
Q. SaaS、PaaS、IaaSの違いは何ですか?
A. 最大の違いはベンダーが管理する範囲(責任分界点)です。SaaSはアプリまで提供されるのに対し、PaaSはシステム開発に必要な「プラットフォーム(OSなど)」、IaaSは「ITインフラ(サーバーなど)」のみを提供します。自社のエンジニアの有無や開発目的に応じて最適なサービスを選択します。
Q. SaaS導入のメリットとデメリットは何ですか?
A. メリットは、初期費用を抑えて迅速に導入でき、自動アップデートにより法改正や最新機能に常に対応できる点です。デメリットは、自社業務に合わせた独自のカスタマイズが難しくベンダーへ依存する点や、既存の社内システムとのデータ連携・移行に制約が生じる可能性がある点です。