関東運輸局が2030年安全施策を公表、軽貨物の目標を新設
関東運輸局は2026年9月18日、事業用自動車による交通事故削減に向けた今後5年間の指針となる「関東地域事業用自動車安全施策2030」を取りまとめました。
計画期間は2026年から2030年までで、管内における事業用自動車全体の2030年目標として、死者数55人以下、重傷者数595人以下、人身事故件数6,340件以下、飲酒運転ゼロを掲げています。近年の電子商取引(EC)市場拡大に伴う輸送需要の増加を踏まえ、今回から軽貨物運送の事故削減目標を一般トラックと分けて新設したほか、運行中も含めた運行管理の高度化や健康起因事故の防止などを重点施策に設定しました。
策定の背景と管内の事故発生状況
国土交通省が2026年3月に策定した全国計画「事業用自動車総合安全プラン2030」を受け、関東運輸局管内の事故発生状況を踏まえて策定された地域計画です。
管内ではコロナ禍以降のEC需要拡大に伴う輸送量の増加や、運転者の高齢化・人手不足の深刻化など、事業用自動車を取り巻く環境が変化しています。2025年末時点の管内実績では、事業用自動車による死者数が86人、重傷者数が808人、人身事故件数が9,587件、飲酒運転が16件発生しており、前計画の目標水準から乖離している状況にありました。こうした実態を踏まえ、業界団体等と連携した実効性のある事故削減の推進が求められていました。
2030年までの削減目標と6つの重点施策
本施策では、2030年までに達成すべき削減目標と、それを実現するための6つの重点施策が示されています。
- 管内全体の事故削減目標(2030年末まで)
- 24時間死者数:55人以下(2025年実績:86人)
- 重傷者数:595人以下(2025年実績:808人)
- 人身事故件数:6,340件以下(2025年実績:9,587件)
- 飲酒運転:ゼロ(2025年実績:16件)
- 業態別の個別目標(貨物関連の抜粋)
- トラック(一般貨物)
- 24時間死者数:45人以下(2025年実績:55人)
- 重傷者数:260人以下(2025年実績:296人)
- 人身事故件数:1,940件以下(2025年実績:3,003件)
- 追突事故件数:760件以下(2025年実績:1,255件)
- 飲酒運転:ゼロ(2025年実績:2件)
- 軽貨物(今回新設)
- 24時間死者数:5人以下(2025年実績:14人)
- 重傷者数:120人以下(2025年実績:172人)
- 人身事故件数:1,420件以下(2025年実績:2,313件)
- 追突事故件数:375件以下(2025年実績:628件)
- 飲酒運転:ゼロ(2025年実績:11件)
- トラック(一般貨物)
- 目標達成に向けた6つの重点施策
- 1. 自動車運送に係る全ての者における行動変容の推進
- 運行管理者・運転者等の行動変容、利用者等の行動変容の促進。
- 2. 運行管理未実施、飲酒運転等悪質な法令違反の根絶
- 悪質違反・重大事故の再発防止に向けた啓発、貨物軽自動車運送事業者に対する安全対策の確実な履行、監査体制等の強化。
- 3. ICT、先進安全自動車、自動運転等新技術の開発・普及推進
- 運行中も含めた運行管理の高度化、先進安全技術の性能向上および普及促進、自動運転車を用いた自動車運送事業における安全対策の検討。
- 4. 少子高齢社会における事故の防止対策の推進
- 高齢運転者事故への対応、健康起因事故対策の推進、経験が未熟な運転者への安全対策の徹底。
- 5. 原因分析に基づく事故防止対策の立案と安全体質の継続的強化
- 業態特性に応じた事故分析・対策(トラックの追突事故、バスの死傷事故、タクシーの出会い頭衝突事故)、ビッグデータを用いた対策検討、運輸安全マネジメント制度を通じた安全体質の強化、監査のあり方の見直し。
- 6. 道路交通環境の整備
- 安全に資する道路交通環境の整備およびその他課題への対応。
- 1. 自動車運送に係る全ての者における行動変容の推進
対象となる運送事業者と関係業界
- 関東運輸局管内(1都7県:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)の一般貨物自動車運送事業者
- 関東運輸局管内の貨物軽自動車運送事業者(軽貨物運送)
- 管内の旅客自動車運送事業者(乗合バス・貸切バス、ハイヤー・タクシー)
- 先進安全自動車(ASV)や運行管理システム(ICT・テレマティクス等)を提供する関連機器メーカー
トラック・軽貨物事業者の実務への影響
- 一般貨物自動車運送事業者(トラック)
- 追突事故件数の削減(2025年実績1,255件から760件以下へ)が個別重点目標に据えられたことで、先進安全技術(衝突被害軽減ブレーキ等)の普及推進や、ビッグデータを活用した事故分析に基づく指導の強化が進む見通しです。
- 「運行中も含めた運行管理の高度化」が重点施策に盛り込まれており、従来の乗務前後の点呼・労務管理に加え、走行中の動態把握や安全支援技術の活用方針が示されています。
- 貨物軽自動車運送事業者(軽貨物)
- 今回の計画からトラックと分離して単独の数値目標(死者5人以下、追突事故375件以下等)が設定され、安全対策の履行確保や監査体制の強化が明記されました。行政による安全啓発や履行確認の動きが管内全体で強まる可能性があります。
今後の見通しとフォローアップの工程
- 計画期間:2026年度から2030年度までの5年間です。
- 毎年度の進捗確認:関東運輸局では例年8月下旬から9月頃に関係団体を集めた安全対策会議を開催しており、前年の事故発生状況や目標に対する進捗を検証した上で、次年度の施策見直し(PDCAサイクル)を進める運用がとられています(関東運輸局の過去の公表資料によれば)。
今後の注目点と具体化が待たれる論点
- 運行中運行管理の具体的な要件:「運行中も含めた運行管理の高度化」について、どのような通信機器やテレマティクスデータの取得・活用が推奨されるのか、具体的なガイドライン等の提示が今後の焦点となります。
- 軽貨物事業者への指導・監査の実務:個人事業主が多く参入している軽貨物分野において、安全対策の履行確認や監査体制の強化がどのような手法で実施されるかは現時点で示されていません。
- 新技術導入支援の有無:先進安全自動車(ASV)の導入やデジタコ等の高度化にあたり、事業者向けの補助制度や支援施策がどのように連動して展開されるかが注視されます。
軽貨物の法改正と運行管理DXの関連動向
- 軽貨物に対する安全規制の強化:法改正に伴い、2025年4月1日より貨物軽自動車運送事業者に対しても安全管理者の選任・講習受講や事故記録の保存などが順次義務付けられており、今回の施策における軽貨物目標の独立設定はこの規制動向に連動した動きといえます。
- 運行管理のデジタル化動向:国土交通省では遠隔点呼や自動点呼の制度化を進めており、全国版「事業用自動車総合安全プラン2030」においても運行中管理の高度化が盛り込まれるなど、ICTを活用した安全管理の枠組み拡大が進んでいます。
よくある質問
Q. 「関東地域事業用自動車安全施策2030」の対象地域と対象期間はいつですか?
A. 関東運輸局管内(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県の1都7県)を対象とし、計画期間は2026年から2030年までの5年間です。
Q. 軽貨物の事故削減目標が新設されたのはなぜですか?
A. コロナ禍以降の電子商取引(EC)市場拡大に伴い軽貨物の輸送需要が増加し、近年事故が増加傾向にあることから、一般トラックとは別に個別目標が新設されました。
Q. トラック(一般貨物)と軽貨物にはどのような2030年削減目標が設定されていますか?
A. トラックは24時間死者数45人以下(2025年実績55人)、人身事故1,940件以下、追突事故760件以下、飲酒運転ゼロが設定されています。軽貨物は死者数5人以下(2025年実績14人)、人身事故1,420件以下、追突事故375件以下、飲酒運転ゼロが掲げられています。
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出典
- 発表主体: 関東運輸局 / 発表日: 2026-09-18
- 「関東地域事業用自動車安全施策2030」を策定しました(PDF)
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