四国運輸局管内でタクシー事業者1社を行政処分、107日車の使用停止に
四国運輸局は2026年8月26日、管内のタクシー事業者に対する行政処分等の状況を公表しました。
今回の公表では、労働局と合同で実施された監査を端緒として、高知県高知市のタクシー事業者1社に対し、輸送施設の使用停止処分(延べ107日車)および文書警告が下されました。
監査の結果、運行管理者の解任未届や無資格補助者による点呼の実施、乗務員の健康状態の把握不備、運転者に対する指導監督および適性診断の未受診など、運行管理・安全管理体制全般にわたる計13件の法令違反が確認されています。
処分の内訳:車両使用停止及び文書警告が1件
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 輸送施設の使用停止(車両使用停止)及び文書警告 | 1 | 違反の規模に応じて一定期間、営業所の事業用自動車の使用が差し止められ稼働停止が生じる状態に加え、違反事実が文書により厳重注意され再発防止が求められる状態 |
処分の重さの読み方:107日車の車両停止と累積11点が事業運営に与える影響
輸送施設の使用停止処分における「日車(にっしゃ)」とは、事業用自動車の使用停止規模を示す単位であり、車両1台を1日間使用停止とすることを「1日車」として計算します。
違反点数は原則として使用停止10日車ごとに1点が付与される仕組みとなっており、同一運輸局管内で過去3年間にわたり累積されます。
累積点数が一定水準(51点〜80点等)に達すると事業停止処分、81点以上で事業許可取消処分に直結するため、日車数の大きい処分や点数の加算は事業継続に決定的な影響を及ぼします。
主な違反類型:無資格補助者の点呼や適性診断未受診など安全管理の不備が集中
点呼の実施不確実・記録不備および補助者の要件違反(旅客自動車運送事業運輸規則第24条第1項・第2項・第5項、第47条の9第3項)
旅客自動車運送事業運輸規則では、事業者は乗務前後の運転者に対して対面等により確実に点呼を実施し、酒気帯びの有無や健康状態、日常点検の実施結果等を確認して正確に記録・保存することを義務付けています。また、運行管理者の補助者を選任して点呼を行わせる場合は、運行管理者資格者証の保有者または基礎講習を修了した者でなければならず、営業所の総点呼回数のうち少なくとも3分の1以上は運行管理者本人が直接行わなければなりません。
今回の監査では、運転者に対する点呼が確実に行われていなかっただけでなく、点呼の実施結果の記録内容に不適切な不備が確認されました。さらに、法令上の要件を満たしていない無資格の者が補助者として点呼業務を行っていたという、安全管理の根幹を揺るがす重大な違反が発覚しています。
自社点検においては、点呼記録簿の形式的な記入にとどまらず、点呼執行者が有資格者または指定された要件適合者であるかを点呼台帳や選任記録と突き合わせて確認することが重要です。また、補助者による点呼が過半を占め「3分の1ルール」に抵触していないか、点呼の実施時間と運行日報の出入庫時刻に齟齬がないかを厳格に照合する必要があります。
乗務員等の健康状態把握不備(旅客自動車運送事業運輸規則第21条第5項)
事業者は、事業用自動車の乗務員の健康状態を常に把握し、疾病、疲労その他の理由により安全な運転ができないおそれがある者を運行に乗務させてはならないと定められています。
今回の事案では、乗務員等の健康状態の把握が確実になされていない実態が確認されました。健康状態の把握を怠ることは、健康起因による重大事故や過労運転を未然に防止する機能を麻痺させることにつながります。
自社点検では、定期健康診断の確実な受診と事後措置の状況を確認するだけでなく、日常の点呼時における問診や疲労・体調の確認手順が形骸化していないかを点検しなければなりません。異常が認められた場合に確実に乗務を見合わせる体制が確立されているか、把握した健康情報が適切に共有・保存されているかの検証が求められます。
運転者に対する指導監督および適性診断の未受診(旅客自動車運送事業運輸規則第38条第1項・第2項)
運送事業者は、事業用自動車の運行の安全を確保するため、運転者に対して国土交通省の指針に基づく適切な指導監督を実施しなければなりません。さらに、初任運転者や高齢運転者などの特定の運転者に対しては、遵守すべき事項についての特別な指導を実施し、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)等の認定機関で法定の適性診断を受診させることが義務付けられています。
今回の監査では、通常の運転者に対する安全確保のための指導監督が不適切であったことに加え、新たに雇い入れた運転者および高齢運転者に対する特別な指導が不適切に行われていました。さらに、初任運転者や高齢運転者に義務付けられている法定の適性診断を受診させていなかった事実も確認されています。
自社点検においては、年間教育計画に基づく一般的な指導教育が計画通り実施・記録されているかの確認が必要です。さらに、新任ドライバーの雇い入れ時や加齢に伴う受診対象者台帳を整備し、法定の適性診断(初任診断・適齢診断)が受診漏れなく行われているか、受診結果を踏まえた個別指導が実施されているかを厳格に点検することが不可欠です。
業務の記録の不確実・不適切(旅客自動車運送事業運輸規則第25条第3項・第4項)
運送事業者は、運転者の業務について運行の状況や労働時間、休憩時間等の法令で定められた事項を正確に記録させ、その記録を適正に保存・管理することが求められています。
今回の処分では、運転者等の業務について定められた事項の記録が確実に行われていなかったこと、および記録内容そのものが不適切であったことが確認されました。労務実態や運行実態の正確な把握を怠ることは、過労運転や長時間拘束の見逃しに直結します。
自社点検においては、運転日報や運行記録計(タコグラフ)のデータと点呼記録、出退勤簿を相互に照合し、業務の開始・終了時刻、休憩・待機時間等の法定必須項目が漏れなく適正に記録されているかを監査することが求められます。
その他の違反類型一覧
一覧中では、上記のほかにも以下の項目にわたる違反が確認されています。
- 運行管理者の解任未届(道路運送法第23条第3項)
- 乗務員等台帳の作成不確実および記載不適切(旅客自動車運送事業運輸規則第37条第1項)
- 運行管理者に対する法令講習の受講義務違反(旅客自動車運送事業運輸規則第48条の4第1項)
注目事例:労働局との合同監査で13件の違反が発覚した高知県のタクシー事業者
事例1: 労働局との合同監査で安全・運行管理全般の不備が発覚、107日車停止(有限会社旭タクシー / 高知県高知市)
- 監査の端緒: 令和8年(2026年)1月14日および同年1月26日に、労働局と合同で監査を実施。
- 違反の内容: 運行管理者の解任届出義務違反、乗務員等の健康状態把握不備、点呼の実施不確実および記録内容の不備、要件を満たさない無資格者による点呼補助業務の実施、運行管理者講習の未受講、運転者に対する指導監督不備、初任・高齢運転者への特別指導不備および適性診断の未受診、業務記録の不備・不適切、乗務員等台帳の作成不備・記載不適切など、合計13件の違反が確認されました。
- 処分結果: 輸送施設の使用停止(107日車)及び文書警告。付与された違反点数は営業所11点、事業者累積11点。
- 教訓: 労働局との合同監査によって運行管理体制だけでなく労務・安全管理全般の不備が徹底的に洗い出されています。特に運行管理者の無資格補助者による点呼代行や適性診断の未受診、健康状態の未把握など、基本的な法令遵守体制が崩壊している場合、一度の監査で100日車を超える大規模な車両停止処分と累積点数の加算を招くことになります。
実務チェックポイント:点呼体制・法定診断・労務記録の遵守点検
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 運行管理者等の選任・解任届出 | 道路運送法第23条第3項 | 運行管理者の退職や役職変更時に、運輸支局へ遅滞なく解任届出を行っているか台帳を確認する | 文書警告・車両使用停止 |
| 乗務員等の健康状態の把握 | 旅客自動車運送事業運輸規則第21条第5項 | 定期健康診断結果の保管状況および日常点呼時の問診・体調確認フローが機能しているか点検する | 車両使用停止(日車処分) |
| 乗務前後の点呼の確実な実施 | 旅客自動車運送事業運輸規則第24条第1項・第2項 | 運行管理者または補助者が運転者に対面等で確実に点呼を実施しているか運行記録と突き合わせる | 車両使用停止(日車処分) |
| 点呼記録簿の適正な記入と保存 | 旅客自動車運送事業運輸規則第24条第5項 | 点呼記録簿に酒気帯び・健康状態・日常点検結果等の必須事項が漏れなく正確に記載されているか精査する | 文書警告・車両使用停止 |
| 点呼補助者の選任要件の確認 | 旅客自動車運送事業運輸規則第47条の9第3項 | 点呼を実施する補助者が運行管理者資格または基礎講習修了要件を満たしているか受講証等で照合する | 車両使用停止(日車処分) |
| 点呼の運行管理者直接実施比率(3分の1ルール) | 旅客自動車運送事業運輸規則第24条等 | 営業所の総点呼回数のうち少なくとも3分の1以上を選任運行管理者が直接行っているか集計する | 車両使用停止(日車処分) |
| 業務の記録(運転日報等)の適正管理 | 旅客自動車運送事業運輸規則第25条第3項・第4項 | 運転日報の記載事項(出入庫時刻、拘束・休憩時間等)が漏れなく正確に記入されているか確認する | 文書警告・車両使用停止 |
| 乗務員等台帳の作成と適正記載 | 旅客自動車運送事業運輸規則第37条第1項 | 全乗務員について台帳が確実に作成され、雇入れ年月日や適性診断結果等の法定事項が更新されているか点検する | 文書警告・車両使用停止 |
| 一般運転者に対する日常的な指導監督 | 旅客自動車運送事業運輸規則第38条第1項 | 年間の安全教育計画に基づき適切な指導監督が実施され、その記録が保存されているか確認する | 文書警告・車両使用停止 |
| 初任・高齢運転者に対する特別な指導 | 旅客自動車運送事業運輸規則第38条第2項 | 新たに雇い入れた運転者や高齢運転者に対し、指針に定められた特別指導を実施し記録しているか精査する | 車両使用停止(日車処分) |
| 初任・高齢運転者の適性診断受診 | 旅客自動車運送事業運輸規則第38条第2項 | 初任者に対する初任診断、高齢者に対する適齢診断を期日内にNASVA等で受診させているか受診票を確認する | 車両使用停止(日車処分) |
| 運行管理者に対する定期講習の受講 | 旅客自動車運送事業運輸規則第48条の4第1項 | 選任されている運行管理者が指定された法定講習(一般講習等)を周期内に受講しているか修了証を確認する | 文書警告・車両使用停止 |
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