四国運輸局管内でトラック運送事業者に文書警告、労働局合同監査による処分概要
四国運輸局自動車運送事業安全監理室は、2026年8月18日付でトラック運送事業者に対する行政処分等の状況を公表しました。
公表された対象は1事業者(1営業所)で、労働局と合同で実施された監査を端緒として、過労運転防止措置や点呼の実施・記録、業務記録および運行記録計の管理において計5件の法令違反が確認されました。
今回の処分内容は「文書警告」であり、車両使用停止処分や違反点数の付与(0点)は伴わないものの、運行管理体制の是正と再発防止が強く求められる内容となっています。
処分の内訳:文書警告1件、違反点数は0点
| 処分の種類 | 件数 | 事業者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 文書警告 | 1 | 車両使用停止や違反点数の付与は伴わないものの、違反事実が文書により厳重注意され、速やかな改善と再発防止の徹底が求められる状態 |
日車数と違反点数の仕組み:累積による行政処分リスクと警告措置の位置づけ
トラック運送事業者の行政処分において用いられる「日車(にっしゃ)」は事業用自動車の使用停止規模を示す単位であり、原則として10日車ごとに1点の違反点数が付与されます。
違反点数は過去3年間にわたり累積され、累積点数が51点以上に達すると事業停止処分、81点以上で事業許可取消処分という致命的な処分に直結する仕組みです。
今回の文書警告は車両使用停止(日車)処分を伴わないため違反点数は0点ですが、過去に指導や警告を受けた事業者はその後のフォローアップ監査の対象となりやすく、是正が怠られた場合にはより重い処分へ進展するリスクを孕んでいます。
主な違反類型:過労防止・点呼・業務記録・運行記録計の基本管理に不備
四国運輸局による今回の行政処分公表では、労働局との合同監査により、運行管理・安全管理の根幹に関わる5件の違反が確認されました。それぞれが現場実務に直結する重要な項目です。
運転者の過労防止に関する措置が不適切(貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第4項)
事業者は、事業用自動車の運転者の過労運転を防止するため、拘束時間や運転時間の限度、休息期間の確保など国土交通省告示(改善基準告示)に定められた基準を遵守して運行を管理しなければなりません。
今回の事案では、運転者の過労防止に関する措置が不適切であり、所定の拘束時間および1日当たりの運転時間の限度を超え、さらに所定の休息期間が十分に確保されない状態で乗務していた運転者が存在していたことが確認されました。
自社点検においては、デジタルタコグラフ等の運行データや勤務実績から、拘束時間の上限超過や休息期間の不足が発生していないか厳密に照合し、手待ち時間と休憩時間の混同を排除した実行可能な乗務割が組まれているかを確認することが不可欠です。
点呼の実施義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第1項・第2項・第3項)
事業者は、乗務前・乗務後に対面(やむを得ない場合は電話等または所定のIT点呼機器)で点呼を行い、酒気帯びの有無、健康状態、日常点検結果などを確認し、必要な安全指示を与えなければなりません。
今回の監査では、運転者等に対する乗務前後の点呼が確実に行われていなかった事実が認められました。
自社点検の着眼点としては、早朝・深夜帯を含めて運行管理者または補助者が確実に点呼を実施できる体制にあるか、電話点呼が法令で許容されるやむを得ない出先宿泊等の場合に限定されているか、点呼の実施漏れが生じるシフト構造になっていないかを徹底確認することが求められます。
点呼の記録内容の不適切(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項)
事業者は、点呼を実施した際には、点呼を行った旨並びに報告及び指示の内容など所定の事項を確実に点呼記録簿へ記録し、1年間保存しなければなりません。
本件では、運転者等に対する点呼の実施結果について、その記録内容が不適切であったことが違反として指摘されました。
自社点検においては、点呼記録簿にアルコール検知結果、酒気帯びの有無、健康状態、指示事項などの法定記載事項が漏れなく記入されているか、運行記録計の出退勤ログや点呼機器の客観的データと記録内容・時刻に齟齬がないかを点検する必要があります。
業務記録の作成・管理不備(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条)
事業者は、運転者が乗務を行った際には、法令で定められた業務記録(運転日報)に所定の事項を記録させ、これを1年間保存する義務を負っています。
今回の事案では、運転者等の業務について定められた事項の記録が確実になされていなかったことが確認されました。
自社点検では、乗務の開始・終了日時、主な経過地、休憩・手待ち時間などの必須記載事項に抜け漏れがないか、運行記録計のデータと照らし合わせて辻褄の合わない記録が放置されていないかを定期的に点検する体制の確立が求められます。
運行記録計による記録義務違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条)
事業者は、所定の事業用自動車について運行記録計(タコグラフ)を正しく作動させ、瞬間速度、運行距離、運行時間を確実に記録・保存しなければなりません。
今回の監査では、運行記録計による記録が確実になされていなかった事実が指摘されました。
自社点検にあたっては、装着義務のある車両において運行記録計の未装着や故障による未記録が生じていないか、カードの未挿入やデータ欠損がないかを運行管理者が日常的にチェックするフローを整備することが重要です。
注目事例:労働局との合同監査を端緒として5件の管理不備が発覚した事案
事例1: 労働局との合同監査で過労運転防止や点呼など5件の不備が発覚(池田興業株式会社 四国支店営業所 / 愛媛県松山市)
- 監査の端緒: 令和7年9月19日に、労働局と合同で監査が実施されました。
- 違反の内容: 拘束時間・1日当たりの運転時間の限度超過および休息期間の不足(安全規則第3条第4項)、点呼の未確実な実施(同第7条第1項・第2項・第3項)、点呼記録内容の不適切(同第7条第5項)、業務記録の未確実な作成(同第8条)、運行記録計による未確実な記録(同第9条)の計5件の違反が確認されました。
- 処分結果: 文書警告、違反点数0点(営業所・事業者ともに0点)。
- 教訓: 労働基準監督機関との合同監査では、労基法上の労働時間管理と輸送安全規則に基づく運行管理が一体となって精査されます。改善基準告示の超過だけでなく、その裏付けとなる点呼簿・業務記録・デジタコデータといった法定帳票類に記録漏れや不備があると、多角的な違反指摘につながるため、帳票間の整合性を日頃から維持管理することが極めて重要です。
実務チェックポイント:労働時間・点呼・運行記録計の点検基準
| チェック項目 | 根拠条項 | 確認の方法 | 不備が招く処分 |
|---|---|---|---|
| 拘束時間の上限遵守 | 安全規則第3条第4項 | デジタコおよびタイムカードから始業・終業時刻を算出し、告示上限を超えていないか照合する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 運転時間の限度遵守 | 安全規則第3条第4項 | 運行記録計のデータから1日当たりの実運転時間を集計し、基準超過がないか点検する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 休息期間の確保 | 安全規則第3条第4項 | 勤務終了から次の勤務開始までの継続した完全解放時間が基準を満たしているか確認する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 乗務前点呼の確実な実施 | 安全規則第7条第1項 | 点呼執行日時と運行記録の出勤時刻を突き合わせ、乗務前に直接対面等で実施されているか点検する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 乗務後点呼の確実な実施 | 安全規則第7条第2項 | 運行終了後の帰庫時に運行管理者または補助者が対面等で確認を行っているか照合する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 点呼の指示事項・報告内容の確認 | 安全規則第7条第3項 | 点呼時に健康状態や安全運行に必要な具体的指示が伝達されているかを手順書と突き合わせる | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 点呼記録簿の法定記載事項 | 安全規則第7条第5項 | アルコール検知結果や酒気帯び有無、指示内容の記載漏れがないか点呼簿を点検する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 業務記録(運転日報)の記載内容 | 安全規則第8条 | 乗務員ごとの業務記録に所定事項(日時・経過地・休憩等)が漏れなく記入されているか精査する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 業務記録の保存管理 | 安全規則第8条 | 作成した乗務等の記録が法令の規定どおり1年間適正に保管されているか確認する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 運行記録計の正常稼働 | 安全規則第9条 | タコグラフの故障・不作動がないか日常点検および運行前点検で動作を確認する | 文書警告、車両使用停止処分 |
| 運行記録データの保存 | 安全規則第9条 | 瞬間速度・運行距離・運行時間のデータが欠落なく1年間保存されているかストレージを点検する | 文書警告、車両使用停止処分 |
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出典
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の対応については行政機関の公式情報をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
